「リスキリングレポート2025」では、スキルアップ研究所がこれまでに行ったリスキリングに関する調査を分析し、リスキリングの効果と現状、および課題を整理した。
本レポートの結果は、今後リスキリングを推進し、各個人の能力が最大限に引き出され、納得のいくキャリアを作っていくために求められる意識や行動、およびその環境づくりのために社会および企業がすべきことについて重要な示唆を与えるものとなった。
- リスキリングとしての資格取得は効果・満足度ともに高い
- リスキリングへ興味のある人は多い一方、実施率は低い
- リスキリングの主な課題は金銭的・時間的負担及び目的の不明確性
- 企業にはリスキリング支援に向けた制度拡充や風土変化が求められる
リスキリングとしての資格取得の意義
インターネットスキル認定普及協会の井島氏も指摘するように、「リスキリングとしての学びは、スキルの証明にもなり、業界を俯瞰する学びの指針ともなる」。
以下では実際に、リスキリングによる資格取得などの効果や意義について見ていく。
資格取得の効果
スキルアップ研究所でこれまでに行ってきた調査の結果から、資格取得は非常に多くの場合でキャリアアップや収入増加に繋がることが判明した。
「リスキリング時の助成金の認知・利用に関する実態調査」 によれば、7割の人がリスキリングをして収入を増加させている。
また、「資格取得の効果・満足度に関する実態調査」 によれば、資格取得によってキャリアアップを得られたとした人も7割いる。
リスキリングの動機により満足度が異なる
「資格取得の効果・満足度に関する実態調査」 によれば、約8割の回答者が資格取得によって得た変化に満足しているなど、資格取得の満足度は総じて高めである。
ただし、自分の興味やキャリアプランなどから主体的に取得する資格を選んだ場合と、資格の知名度やコスパ、会社からの要請で取得した場合には、満足度に差があることが分かった。
このように、主体的にリスキリング先を選択することが結果的な満足につながることが分かった。日本FP協会の上松氏も指摘する ように、「リスキリングが必要だからといって、興味がなければ本当に身につけることはできない」と言える。
リスキリング実施の現状
リスキリングは現在、どれくらいの人に、どのような形で実施されているのだろうか。
以下では、リスキリングへの熱意や実施率、リスキリングにかける時間及び費用について見ていく。
リスキリングに熱意がある人は多いものの、実施率はまだ低い
「リスキリングに対する労働者の現場の声に関する調査」 によれば、リスキリングに熱意がある人は8割いる。
しかし、「リスキリング時の助成金の認知・利用に関する実態調査」 で明らかになったように、リスキリングに実際に取り組んだことがある人は25%程度と、リスキリングの実施率はまだ低い。
また、「リスキリングに対する労働者の現場の声に関する調査」 の結果から、リスキリングのきっかけの半数以上が「今後のキャリアへの不安」であることが分かった。
リスキリングかかる費用や時間は多くはない
「リスキリングを始めた経緯に関する実態調査」 によれば、リスキリングとしての資格取得では、基本的に週に10時間以内、一年程度で取得する人が多い。
また、リスキリングにかけた費用については10万円以下が4分の3、5万円以下が半数近いことが分かった。
このように、コツコツと学習を続ければ、あまり長い時間や多くのお金を費やすことなく資格取得は可能であると分かった。
企業研修の実情
「企業研修によるリスキリングの実態調査」 によれば、従来の企業研修のメインであった「コミュニケーションスキル」(30票)に加えて、DX社会に適応するためのITリテラシー・DXが企業研修として浸透している。
また、企業研修におけるリスキリングの期間は約3ヶ月〜1年程度と比較的短期間であることも判明した。
企業研修の満足度は高い
一方で同調査によると、約7割が企業によるリスキリング研修を満足に感じるなど、研修の満足度は高めであることが分かった。
リスキリング研修の内容自体に加え、研修後に社員が新たなスキルを発揮できる環境を整備し、適切に評価やフィードバックがなされることが、満足度向上のカギとなる。
実務技能検定協会の保坂氏が指摘するように、労働力不足の現代にあって、新人育成で上司や先輩がどのように関わっていくかがリスキリングの文脈でも重要になってくると言える。リスキリングなどによる個人の成長が、ひいては企業全体の成長に繋がっていくと保坂氏は述べる。
リスキリングへの課題
調査によって判明したリスキリングへの課題としては、主に「金銭的負担」「時間の不足」「方向性の不明確さ」の三つが挙げられる。
「リスキリングに取り組む際の課題に関する実態調査」 で、リスキリングに取り組んでいない人に対して理由を尋ねたところ、「金銭的余裕がない」「時間的余裕がない」「何をしたらいいのかわからない」という回答が上位を占めた。
以下では、それぞれについて詳しく確認する。
金銭的な余裕のなさがリスキリングの障壁
費用補助が会社から出るならリスキリングに取り組むかについて尋ねたところ、7割近くの人々が「取り組む」あるいは「取り組みを前向きに検討する」と答えた。
金銭的な負担が軽減されるだけで、多くの人がリスキリングに取り組めるようになると考えられる。
リスキリング支援の助成金の認知度は総じて低い
「リスキリング時の助成金の認知・利用に関する実態調査」 で明らかになったように、助成金の認知度は総じて低い。
一般教育訓練給付金の認知度は22.5%、特別一般教育訓練給付金の認知度は18%、専門実践教育訓練給付金に至っては15.5%と、認知度はかなり低く止まっている。
また、利用率はそれぞれ5%、2%、2%とさらに低いのが現状である。
日本FP協会の上松氏 が「一般教育訓練給付金などの制度を使うことも良い」と利用を勧めるように、リスキリングを考えている人にはぜひ利用してほしい制度であるだけに、認知の拡大は急務だと言える。
時間がないことも大きな課題
「リスキリング時の助成金の認知・利用に関する実態調査」 では、リスキリングに取り組んだ人が最も大変だったこととして、時間的な余裕がなかったことが挙げられている。
また、金銭的理由や成果への不安など、複数の心配・不安が存在することも分かった。
統計質保証推進協会の竹村氏が指摘する ように、「リスキリングの課題は時間の確保」であり、「効率的に学ぶ方法を見つけることが大事」になる。そのためにも、「柔軟な学習方法や体系的な学習プランと継続性が重要」となることは明らかであろう。
時間的余裕もリスキリング促進には重要
「リスキリングに取り組む際の課題に関する実態調査」 では、時間的余裕のなさもリスキリングへの取り組み率が低い要因であることが判明した。
実際、同調査の「残業が減ったらリスキリングに取り組みますか?」という質問に対しては、6割の人々が「取り組む」または「取り組みを前向きに検討する」と回答している。
このように、リスキリングをする時間的余裕が生まれれば半数以上の人が取り組みたいと考えていることが分かる。
リスキリングのために取り組むべきことが不明確
また、同調査で判明したリスキリングをしていない理由として、「何をしたら良いのかわからない」という理由が二番目に多かった。
企業による取得推奨資格の提示など、リスキリングの方向性の明確化がなされていないことが、リスキリングが普及しない大きな理由の一つとなっていると言える。
企業に今後求められること
「リスキリングに対する労働者の現場の声に関する調査」 によれば、自分の会社にはリスキリングができる環境が整っていると評価した人は全体の約3割にとどまっている。
では実際に企業ではどのような支援が行われ、どのような支援・制度が社員から求められているのだろうか。
補助金など、資格取得の支援を求める声が多数
リスキリングをする際に、労働者が会社に求めることは「資格取得の支援」が最も多く、次いで「リスキリングのための補助金」だった。
この結果から、資格取得のための金銭的な支援が最も求められていることが分かった。
これは、金銭的負担がリスキリングの足枷になっている現状を端的に表していると言える。
また、「会社ではリスキリングへの補助金の仕組みは整えられていますか?」という質問に対して「はい」と答えた回答者は27%にとどまり、リスキリングを支援する補助金の仕組みが整っている会社は少ないことが分かった。
会社内で補助金などの仕組みを整えることが、社員のスキルアップに繋がることは言うまでもなく、こうした制度整備が求められている。
リスキリングの方向性を示しているが会社は少ない
「会社から取得するべきスキルや資格は明示されていますか?」という質問に対し、約7割が「いいえ」と回答した。
この結果から分かるように、推奨資格など、社員がリスキリングをするにあたっての指針・方向性を明確に示している会社が少ないことは大きな課題だと言える。
リスキリングの方向性を示すことは重要
「リスキリングに取り組む際の課題に関する実態調査」 では、「会社から推奨資格や取り組むべきことを明示されたらリスキリング取り組むか」という質問に対して、8割近くに上る人が「取り組む」あるいは「取り組みを前向きに検討する」と回答した。
リスキリングでの取得推奨資格やリスキリングの評価の明確化が、社員のリスキリングへのモチベーション向上・維持につながると言える。
日本ディープラーニング協会の岡田氏 も、リスキリングと、それによって得た知識を実際に役立てて活躍することを結びつける発信の重要性を指摘し、リスキリングの成功例をより広く知ってもらうべきだとしている。
企業側の風土が変化することが求められている
「リスキリングに取り組む際の課題に関する実態調査」 で判明したように、会社風土がリスキリングを推奨するものに変化した場合に「リスキリングに取り組む」という人は68.5%にのぼる。
企業側は、金銭的な支援はもちろん、スキル習得と連動した評価制度やリスキリングに向けた業務の調節制度など、従来の在り方の見直しを迫られていると言える。
総括・今後の展望
今回の「リスキリングレポート2025」では、スキルアップ研究所がこれまでに行ったリスキリングに関する調査を分析した。
その結果、リスキリングの意義、リスキリング実施の現状および課題が明らかとなった。
リスキリングによる資格取得は効果と満足度の両方が高い一方、現状の実施率は低い。その理由として主に、「金銭的負担」「時間的負担」「方向性の不明確さ」の三点が挙げられる。
これらの課題を踏まえて、企業は資格取得などのリスキリングに向けた支援制度拡充など、リスキリングを取り巻く環境のさらなる変化が求められている。
調査結果の引用・転載について
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