2024年1月1日にNISAの新制度が開始してから約一年が経過した。2014年に開始したNISAによって「投資」、「積み立て」といった考え方が一般に浸透し、老後に向けた資金積立や若年層による投資など、国民の投資に対する意識が変わってきたと考えられる。
そこで今回スキルアップ研究所では、NISAの利用状況や利用者の投資方法、NISAに関する情報流通においてメディアが果たす役割などについて、社会人を対象に調査を行い、NISAの現状や更なる普及、金融リテラシーの向上のための方策などを考察した。
- NISA利用者は回答者全体の43%
- NISAによる投資目的の6割以上が老後の資産形成
- NISA関連情報の収集に最も利用されるのはインターネット・SNS
- NISA非利用者の約半数が開始手続きガイドを求める
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 新NISAの利用に関する実態調査 |
対象者 | 20代以上の社会人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年2月2日〜2025年2月9日 |
回答数 | 500 |
NISAとは?
NISAとは、投資利益への非課税制度である。NISA口座で取引された株式や投資信託といった金融商品から得られる利益が非課税となる。
NISAは18歳以上の国内居住者であれば誰でも利用できるが、開設できる口座は1人一つまでとなっている。
2024年の制度変更により、非課税保有限度額が最大1800万円になり、非課税保有期間も無期限となった。
このように、NISAは個人が少額からでも投資を開始し、安定的に資産形成をするために最適な投資利益非課税制度であると言える。
NISAを上手に運用するためには、FP資格取得などによる知識の習得が重要だと言える。スキルアップ研究所ではFP資格のおすすめ講座も紹介しているのでぜひご覧いただきたい。
NISAを利用している人は全体の43%
「NISAを利用していますか?」という質問に対し、43%に当たる215人が「はい」と回答した。
今回の調査対象者では、NISAの利用者は半数に満たないことが明らかになった。
利用者の約8割が今後も同じような運用を希望
「今後のNISAの利用について教えてください」という質問に対し、NISA利用者のうち79%が「これまでの目的通り継続したい」と回答した。
このように、NISAを一度始めた人のほとんどが同様に今後も継続していきたいと考えていることがわかる。
新NISA移行後にNISAを始めた人は少ない
NISA利用者を対象とした「いつから利用していますか?」という質問に対し、74%が「新NISA移行以前から」と回答した。この結果から、新NISA移行をきっかけにNISA利用を始めた人は少ないことが分かった。
一方で、約4分の1が新NISA移行後に利用を始めている事実から、制度変更に伴う周知キャンペーンや注目度の向上は一定の効果を持っていたと言える。
毎月一定額の積立が一般的な利用方法
利用者に対して「NISA利用の現状について教えてください」と質問したところ、79%が「毎月一定額を積み立てている」と回答し、最も多かった。
定期的にNISAに投資をする計画的な利用が一般的であることが分かった。
つみたて投資枠の利用が一般的
新NISAの投資枠には「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2種類がある。
利用者を対象に利用している枠を尋ねたところ、「両方利用している」人が46%と最も多く、ついで「つみたて投資枠のみ利用している」している人が39%と多かった。
NISAの非課税枠をフルで利用している人は少数
NISAの利用者に対し「NISA枠利用の現状について教えてください」と尋ねたところ、30%が「年間の非課税枠をフル活用するようにしている」、70%が「NISA枠を部分的に利用している」と回答した。
このように、枠を全て使い切る人は多くはなく、基本的に自分が利用できる範囲内の金額で運用している人が多いことが明らかになった。
投資目的の6割以上が老後資産形成
NISA利用者に運用目的を尋ねたところ、「老後資産」と回答した人が最も多く利用者の61%にあたった。
このように、NISA利用者の大部分は長期的な運用で老後の資産形成を見据えていることが明らかになった。
リスク分散の一部としても利用が進む
上記の質問に対し、「リスク分散の一環」と回答した人は14%と「老後資産」についで多かった。また、特に「投資経験がかなりある」と回答した人の25%が主な利用目的は「リスク分散」と回答している。
このように、投資先を増やすリスク分散としての役割もNISAは担っている。
NISA利用者のほとんどが投資未経験・初心者
「投資経験について教えてください」という質問に対し、56%が「NISAで初めて投資をした」と回答した。また、「NISA以外にも少しだけ経験があった」と回答した人が37%と、NISAの利用者は投資の未経験者や初心者が多いことが分かった。
この結果から、NISAは投資初心者が始めるのに適していることが分かる。
NISAで利用されている商品では投資信託が多い
「NISAで購入している商品について当てはまるものを全て選んでください(複数回答可)」という質問の結果から、65%が投資信託を購入していることが分かった。ついで国内株式を購入している人が42%と多かった。
このことから、投資信託や国内株式など安定性や購入時の不安が比較的小さい商品が利用されやすい傾向にあることが分かった。
NISA利用の金融機関は楽天証券が半数以上
NISAを利用している金融機関を調査したところ、53%が楽天証券を利用しており最多だった。
また、ついでSBI証券が30%と多く、本調査ではこの2社の利用者が8割以上となった。
NISAの認知や情報収集にインターネットやSNSが役立っている
「NISAについてどのように知りましたか?」という質問に対し、「インターネットの検索や記事」という回答が24%で最も多かった。また、「SNSやYouTubeなどの動画プラットフォーム」という回答も18%と3番目に多く、インターネット上の情報がNISAを知るきっかけとして多くの割合を占めていることが判明した。また、「家族や友人からの案内」も約24%と非常に多かった。
一方、「金融機関からの案内」や「行政や公共機関からの情報」によってNISAについて知った人は非常に少なかった。
この結果から、情報プラットフォームとしてのインターネットはこうした金融制度の周知にも有用であることが明らかになった。
NISAに関する情報収集でもインターネットやSNSの利用が一般的
「NISAの投資に関する情報はどのように集めていますか?」という質問に対して、「インターネットやSNS」と回答した人は189人で利用者の88%がインターネットなどの方法でNISAに関連する情報を集めていることが分かった。
この結果からNISA利用拡大にはインターネット上での情報流通が重要になると言える。
NISA非利用者でも認知度は高い
NISAを利用していない人を対象に「NISAの存在を知っていますか?」と尋ねた質問に対し、「名前は知っている」と回答した人が53%と最も多く、ついで40%が「内容や仕組みまで少しは知っている」と回答した。
したがって、非利用者でもNISA自体や仕組みの概要は理解している人が多いことが分かった。
NISAを始めない主な理由は資金不足やリスク忌避
「NISAを利用していない理由を教えてください」という質問に対し、NISA非利用者の27%が「お金に余裕がない」と回答し最も多かった。また、「投資はリスクが高いと感じる」と回答した人が20%と2番目に多かった。
これらの結果から、NISAをさらに普及させるためには、余剰資金の確保と投資の仕組みの正しい理解の促進が重要であると言える。
NISAの仕組みが理解できないことも大きな要因の一つ
上記の質問への回答のうち、19%が「NISAの仕組みが分からない/難しそうに感じる」であり、12%が「NISAを始める手続きが面倒そうだと思った」であった。このように、約3割がNISAの仕組みや手続きの面で利用しない決断をしていることが分かる。
NISAの仕組みを分かりやすく広く伝えることや、手続きをより簡潔にすることがNISAの更なる普及につながるといえる。
NISAは全体的に分かりにくいというイメージ
「NISAのどの部分が分かりにくいと感じますか?」という質問に対し、非利用者の47%が「投資自体が初心者なので全体的に分かりにくい」、44%が「投資商品の選び方」、42%が「制度の仕組み」、37%が「どの金融機関を選べば良いか」と回答した。
このように、NISAのどの部分を分かりにくいと捉えるかは多岐に渡っており、手続きや利用を通じた利用サポートが求められていると言える。
NISA非利用者の6割以上が投資未経験者
NISA非利用者に対し、「投資経験について教えてください」と尋ねると、約63%が「全く経験がない」と回答した。また、「少額の投資はしたことがある」と回答した人が約27%と、合わせて9割が投資初心者・未経験者であることがわかった。
NISA利用拡大のためには、投資未経験層へのアプローチが不可欠であると言える。また、NISA利用者の55%もNISAで初めて投資を経験した人であることから、NISAは未経験者に向いている投資制度であると考えられる。
非利用者の4割は、資産運用を始めるならNISA
非利用者に対し、「資産運用を始めるとしたら何から始めますか?」という質問をしたところ、39%が「NISA」と回答し最も多かった。
この結果は「定期預金(18.9%)」よりも多く、NISA非利用者や投資未経験者におけるNISA利用の潜在層の多さが明らかになった。
NISAに興味があるのは非利用者の65%
NISA非利用者に将来的な利用の意向を尋ねたところ、17%が「興味があるので始めたいと思っている」、49%が「興味はあるが、始めるかは検討中」と回答した。
この結果から、NISA非利用者のうち約65%がNISA利用に興味はあることが判明した。
初心者向けの手続きガイドが強く求められる
NISA非利用者に対し、「NISAを始める場合、どのようなサポートがあれば最も良いと思いますか?」と質問したところ、46%が「初心者向けの手続きガイド」と回答し最も多かった。
このように、約半数の非利用者がNISA開始までの手続きを説明するガイドをサポートとして求めていることが判明した。これらの施策が、NISA利用を拡大させるために求められると言える。
将来的な資産運用に肯定的な人は約85%
「将来的に資産運用をすることを考えていますか?」という質問に対し、「今すぐ始めたい」と回答した人が10%、「数年以内に始めたい」と回答した人が19%、「具体的な計画はないが、興味はある」と回答した人が55%と、合わせて約85%の人がNISAなどの資産運用を将来的に行うことに肯定的であることが判明した。
こうした層に対してどのようにNISA利用を拡大させていくかが課題となる。
総括
今回の調査を通じて、NISAの利用は半数以下であることや、NISA利用者の一般的な運用方法および目的、非利用者のNISAへのイメージや要望が明らかになった。
特に、NISAを知ったきっかけやNISA利用での情報収集に果たすインターネットやSNSの役割が大きいことは重要だと言える。今後さらにNISA利用者の拡大を増やすにあたって、政府や金融機関もこれらの手段で非利用者にアプローチしていく必要があると言える。
また、NISAを利用していない理由として、「資金不足」「リスク忌避」「仕組みの複雑さ」が主に挙げられたが、これらは公的機関や金融機関が正しく情報発信をし、資産運用の重要性やNISAの仕組みなどについて、国民の金融リテラシーを高めていく必要性を示している
さらに、非利用者へのアンケートから、将来的なNISA利用に興味がある人はかなり多いことがわかった。一方で、複雑な仕組みや手続きから避けられている側面があるため、初心者に向けた開始までの手続きガイドが求められる。
今後、現在のNISA利用者の中でも正しい情報を普及させつつ、非利用者で関心がある層に対してどのようにアプローチし、利用を促進するのかが課題であると言える。
調査結果の引用・転載について
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