ウェブデザイン技能検定とIT業界のリスキリング|インターネットスキル認定普及協会に聞く

更新

今回は、インターネットスキル認定普及協会の理事を務めておられます、井島様にインタビューをさせていただきました。


ウェブデザイン技能検定創設の背景と目的

井島様

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

本日はお忙しい中、取材のお時間をいただき誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。

井島様
井島様

インターネットスキル認定普及協会の理事を務めております、井島です。よろしくお願いいたします。

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

まず最初に、簡単にウェブデザイン技能検定が発足した目的についてお話しいただけますでしょうか。

井島様
井島様

近年インターネットが生活に普及していく中で、Webコンテンツなどの制作が一つの職業になってきました。厚生労働省が、職種として伸びていくだろうと技能検定化を検討していたと言うこともあり、その関わりの中で指定試験機関として作られました。

ウェブデザイン技能士の資格と聞くと、ホームページを作るようなイメージが強いかと思いますが、デザインのみならず、実際にはさまざまなプログラミングや法令の知識が絡んでくる領域になります。

例えば、サーバーシステムやデータベースとの連携を考える必要もありますし、セキュリティ対策も必須です。また著作権や個人情報の取扱い、パソコン作業での労働関連に関する知識等、ウェブデザインに関わる職業全般に必要とされるスキルと知識を技能として測っていく形で作られてきました。

パソコン上での作業だけではなくて、周辺の知識も踏まえ技能として捉えていく形になっています。

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

井島様ご自身は、どういった経緯でこちらの検定に携わる形となったのでしょうか。

井島様
井島様

私自身、インターネットの黎明期からIT業界に携わっておりました。
当初はIT技術者の派遣や教育、携帯電話が普及してiモードが始まってからは、ガラケーなどを中心にコンテンツの開発に携わり、次第にPCやスマホなどのフィールドに移行していきました。

このウェブデザイン技能検定については、その中で若い人の技術を育成するためということで縁あって関わることになりました。

ウェブデザイン技能検定の特徴

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

ウェブデザイン技能検定を通して具体的に学べることについてはどのようなことがあるのでしょうか。

井島様
井島様

IT業界は非常に移り変わりが激しいです。

今やスマホの手のひらでさまざまな情報が得られるような状態として生活に入ってきているというところで、ITに関する必要な知識、技能などを体系化していかないといけません。

本検定では、それらに今関する情報について出題していくことで学んでもらうことを目的にしています。特定の人のみならず、一般に標準的に使われていく部分を知ってもらうための試験を作成しています。

専門的な知識だけではなく、業界で標準的なものとして定められた内容を中心に出題する形をとっています。

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

他のウェブデザイン分野の検定と本検定の違いについてはどうお考えでしょうか。

井島様
井島様

国が認めているという点で、特定の企業に特化しているものではありません。ISOやJIS規格に当てはまる、標準技術をカバーしている検定になっています。それに対する知識技能の有無を、学科と実技の観点から測れるというのが大きな特徴です。

もちろん他の資格にもそういった内容は含まれているとは思いますが、作問する中で、一時の流行りで廃れない内容かどうかも含めて議論をしています。

国家資格というところで、その部分ではかなり重責を帯びた内容だと言えます。

そのため、試験運営についても、国家資格の水準なので高い質で行う必要があります。厳格な試験運営が敷かれていると考えております。

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

本検定では、1〜3級までの設定があることを確認させていただいたのですが、級ごとにどういったターゲットを設定されているのでしょうか。

井島様
井島様

3級に関してはエントリーレベルで、発注元の担当者レベルを想定しています。自分で作るというよりは制作会社に依頼することが多いような方を想定して、コンテンツを制作をする人と話が通じるくらいの知識や技能を学べるイメージになっています。実際に様々な企業のコンテンツ担当者やウェブ担当者が受けられていますが、中には高校生の受検者もいらっしゃたりします。

2級については、制作会社の担当レベルを想定しています。ウェブサイトを通じてできることについて、実技と学科の両面から身につけていただきます。技能士としてはどちらの能力も必要になってきますし、コンテンツ制作を実際に仕事としている人をターゲットの中心にしています。

1級に関しては、他の国家資格のレベル感とも合わせるために、高度なものに設定しています。情報系の専門大学における、大学院レベルの知識や技能が必要になる試験にしています。非常に狭き門にはなっていますが、この資格を取得できれば第一線で働けるレベルだと考えています。

ウェブデザイン技能検定のメリットとは

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

ウェブデザイン技能検定を取得することによるメリットはどのようなところにあるとお考えですか?

井島様
井島様

IT業界では、仕事と直結しているところの多い試験になっていると思います。そのため、一定のここまでの知識・技能はわかっている、という評価軸になるのではないでしょうか。未経験でも最低限の知識技能を持っていると証明する手段にはなれると考えます。

また、ホームページが作れるのみならず、法律的知識や専門の用語に加え、業務上で気をつけるべきところまでカバーされているのもメリットだと考えます。

ウェブデザインとリスキリングの関係性

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

ウェブデザイン技能検定は社会人のリスキリングとどう繋がってくるとお考えですか?

井島様
井島様

現状、IT業界の人手不足は深刻なものがあります。リスキリングでこの業界を目指す人が増えると嬉しいですし、そうした人がもっと活躍できる環境が整備されると良いと考えています。

例えば未経験の方がIT業界に入ってくる際に、本検定のような資格は一つ大きなスキルの証明の手段になるのではないかと考えています。

本検定はウェブの制作テクニックを問うだけのものではありませんし、IT業界に携わる上で全般を俯瞰するための一つ大きな学びの指針になるのではないかと考えています。

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

なるほど、IT業界への入口といったイメージで皆さんに受けてもらえる試験として位置付けているということでしょうか。

井島様
井島様

その通りだと思います。過去の問題も公表されていますし、出版社も本を出しています。そのため、どんな方でもチャレンジいただける環境になっていると考えています。

今後のウェブデザイン技能検定の展望は?

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

ウェブデザイン技能検定について、今後の展望を教えてください。

井島様
井島様

もっとも大切なのは、しっかりと検定を認知していただくことです。本領域には他にも様々な検定がありますが、技術の流行り廃りを受けやすい業界です。

本検定は国家試験である以上、継続性は担保しないといけないことが一つの特徴といえます。

IT業界は技術も早いスピードで新しくなるので、すぐに実態とズレが出てしまいます。ただ改変が早すぎても、業界で標準化されるかについての疑問も出てしまい、価値の低下につながる可能性もあります。

そのバランスを保ちながら、信頼されていく運営をしていくことが大切だと考えています。その上で知名度を上げて、受検者の裾野を広げていきたいと思っています。

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

古さと新しさのバランスをとりながら、より多くの方に試験を受けてもらいたいということですね。

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

最後に、インターネットスキル認定普及協会として、世の中に向けたメッセージをお願いいたします。

井島様
井島様

IT業界は、まだまだ伸びしろのある業界だと考えています。現在はAI技術も注目されていますが、それもインターネットにつながったものだと考えています。

加えて、情報を発信していくとなるとWebの利活用が必要になってきます。それもパソコンやスマホなど、さまざまなデバイスに合わせて対応する必要があります。デバイスも情報媒体も多様化が進む中で、今後も仕事が増えてくると思われます。

面白そうな業界だと思ったら、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

スキルアップ研究所
スキルアップ研究所

私自身も今後より多くの方がIT業界に関わっていく世界になればと感じました。

本日は貴重なお話をいただき誠にありがとうございました。