リスキリング レポート

リスキリングを始めた経緯に関する実態調査

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調査: スキルアップ研究所

近年、AIの登場やDXの波の到来に伴い、リスキリングが大きな注目を集めている。

国も2022年10月に5年間で1兆円のリスキリング支援や、年功序列型の職能給からジョブ型の職務給への移行を打ち出した。

新たに身につけたスキルを活かし、望んだ環境で働くことができる人もいれば、「リスキリングを始める時に何から手をつければ良いのかわからない」と考えている人も多い。

そこでスキルアップ研究所では、現在リスキリングに取り組む人がどのようにリスキリングを始めたのかについて調査を行った。

「リスキリングを始めた経緯に関する実態調査」結果のポイント
  • リスキリングの情報源はSNSが最多
  • リスキリングの第一歩は手段の確保から
  • 週10時間以内のリスキリングが8割

スキルを身につける際の情報の収集源はSNSが最多

リスキリングに取り組んだ人に対して「スキルを身につける際に参考にした情報源」を尋ねたところ、最も多くの割合を集めたのは「SNSなどで集めた情報」(25.7%)となった。次いで「家族や友人などの身の回りの人からのアドバイス」(21.6%)となった。

新聞・雑誌などの情報や、コンサルティングファームなどによる専門的なレポートで情報収集をしている人は多くなく、スキル選びやスキルを身につける際の情報収集は比較的手軽な手段で始めている人が多いことが調査結果から伺える。

リスキリングの第一歩は手段の確保から

リスキリング決断後まずは教材を購入

リスキリングを決断した後に最初に取り組むことについては、「教材を購入する」が最も多く、54票を集めた。次いで、「講座・教育機関などに申し込む」が37票を集めた。この二つは、1番目・2番目に取り組んだことの総計としても上位となった。

リスキリングを決断した後に2番目に取り組んだこととしては、「朝の時間を有効活用すること」が最多の32票となり、次いで「趣味・家族・友人との時間を減らす」が29票となった。

時間の作り方としては、睡眠時間を減らしたり、休職・退職したりする割合は比較的小さく、朝の時間の有効活用や余暇時間の削減などでリスキリングに取り組む時間を確保する傾向にあることがわかった。

オンライン講座と書籍でリスキリング

リスキリングの手段について尋ねたところ、「オンライン講座」と回答した人が最も多く28.1%(48人)で、次いで「書籍」と回答した人が21.6%(37人)を占めた。

この調査結果から、オンライン講座と書籍がリスキリングの手段のメインになっていることが明らかになった。対面の講座・講義のように場所と時間の制約がかからない形で、自分の都合に合わせてスキルを身につけようとしている人が多いことが伺える。

必要な時間を確保できるかがスキル選びの悩み

リスキリングした人にスキル選びで迷ったかどうかを尋ね、「はい」と回答した人にその理由を尋ねた。

その結果、最も多かったのは「リスキリングに必要な時間を確保できるかどうかわからなかった」で全体の30.4%を占めた。次いで、「これまでの経歴にプラスして身につけるべきスキルが何かわからなかった」と「転職市場において強みとなるスキルが何かわからなかった」が、ともに23.9%となった。

リスキリングによって習得することが求められている仕事のレベルや、習得にかかる時間などが明確でないことがスキル選びで頭を悩ませる原因となることがわかった。加えて、専門家やメンターなどの信頼できる人のアドバイスを受けられる機会が少ないため、自身のこれまでのキャリアとこれからのキャリアの指針に合うスキルの選定に頭を悩ませていることが推測される。

少しずつ、継続的にリスキリングに取り組む傾向

週10時間以内でのリスキリングが8割

平均してリスキリングのために「1週間にかけた時間」が何時間であるかを尋ねたところ、「5時間以内」が39.2%で「5時間から10時間以内」が38.0%となった。

すなわち、10時間以下が全体の77.2%を占めている。

この結果から、多くの人は、リスキリングに投じるのは平均して1日に1時間程度であることがわかった。

リスキリングに取り組む現役世代では、仕事に加えて育児や家事に追われる人も多いために、まとまった時間を確保することが難しいと推測される。

リスキリングの期間は3ヶ月〜6ヶ月が最多

リスキリングにかかった期間を尋ねたところ、3ヶ月〜6ヶ月との回答が32.2%(55人)で最多となった。次いで「6ヶ月〜1年」との回答が24.6%(42人)となった。

リスキリングにかかった期間としては、6ヶ月以内が半数以上で、1年以内が8割以上という結果になった。

以上のことから、多くの人が、短期間で集中的にリスキリングに取り組んでいるというよりは、日々の生活の中で捻出した時間を用いて中長期間で継続的にリスキリングに取り組んでいることがわかる。

リスキリングの費用は「1万円〜5万円」が最多

「リスキリングにかけた費用」について尋ねたところ、「1万円〜5万円」との回答が33.9%で最多を占めた。

また、「1万円未満」との回答が22.8%で続いた。全体としてみると、リスキリングにかけた費用が5万円未満の人が過半数を占め、10万円未満が約4分の3を占めるという結果になった。

近年では、オンライン講座の種類も充実している。これらを上手に活用することで費用を抑えていることが伺える。大学、大学院での学位取得や専門学校での学びなど、高額な費用がかかるスキルの習得方法がリスキリングのメインでないこともこの結果につながっていると推測される。

リスキリングの満足度は高い


「リスキリングにかけた費用・時間に対して期待通りの効果は得られましたか」と尋ねた質問に対しては、「非常に得られた」が15.2%(26人)、「ある程度得られた」が60.8%(104人)で、合わせて約4分の3を占める結果となった。

「ある程度得られた」と「非常に得られた」を足し合わせると全体の4分の3以上を占めるため、リスキリングに取り組んだ人の満足度は高いことが伺える。

総括 〜リスキリングに何から取り組むべきか〜

本調査から、リスキリングに取り組む際の最初の行動としては、教材の購入や講座への申し込みなど、比較的ライトで多くの人が思いつきやすいものであることが多いことが分かった。また、多くの人が懸念するリスキリングにかかる時間についても、大抵の人は無理のなり範囲で少しずつ取り組んでいるようだ。リスキリングをするということが決まったのなら、深く考え込み過ぎずにできることから手をつけていくのが良いだろう。

一方で、課題感が残るのは「リスキリングをする」という意思決定に関わる部分、言い換えれば一歩目を踏み出す前の部分である。

リスキリングに取り組む人にとっての主たる情報源はSNSや身近な人からのアドバイスであることがわかった。また、スキル選びに迷った理由として「必要な時間が確保できるかわからなかった」や「転職市場で強みになるスキルが何かわからなかった」との声が多く挙げられている。

背景として、専門家やメンターなどに相談できる機会がどうしても限られてしまう現状があると考えられる。転職市場の最新の動向や、実務で求められるスキルのレベル、その習得にかかる時間などについて、手探りの中でリスキリングに取り組んでいる人も多いことが推測される。

専門的な知識を持ち、自身のこれまでのキャリアについても理解してくれるような存在を見つけることが「理想的な」リスキリングの始め方だと考えられる。とはいえ、身近にそのような存在がいるという方も稀だろう。企業や行政が体制を整備し、リスキリング経験者とこれからリスキリングを始める方を繋ぐなど、個人がキャリアに対する理解をこれまで以上に深め、必要な要素を知るための仕組みが求められる。

調査概要

項目

詳細

調査名

リスキリングを始めた経緯に関する実態調査

対象者

20代以上の社会人の方で、リスキリングに取り組んだ経験のある方

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024年4月14日〜4月21日

回答数

171

調査結果の引用・転載について

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