リスキリング レポート

リスキリング時の助成金の認知・利用に関する実態調査

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調査: スキルアップ研究所

様々な目的のためにいざリスキリングをしようとしても、金銭的問題で諦めてしまう人は多い。

実際リスキリング支援のための助成金が存在するにも関わらず、その知名度の低さと利用率の低さが課題となっている。多くの個人や企業がこの機会を活用できていない実情があり、ポテンシャルの完全な活用への障壁である。

スキルアップ研究所では、リスキリングに関する助成金の認知や利用の実態を解明すべく、アンケートを実施した。

リスキリングに関する助成金の調査結果のポイント
  • リスキリングに際して金銭面で悩む人は多い
  • リスキリングに対する助成金はあるものの、認知率は30%以下
  • 助成金を利用し、リスキリングをより手軽で身近なものにしていくことが必要

リスキリングに取り組んだ経験がある人は3割未満

調査の結果、リスキリングに取り組んだことがあると答えた人は27.5%で、およそ4人に1人がリスキリングに取り組んでいることが判明した。

まだリスキリングは浸透しておらず、リスキリングへの取り組みは活発ではないことが分かる。

リスキリングに際して資格の取得を目指す人は多い

リスキリングに取り組むにあたり、資格取得ができたことを効果として上げる人も多い。資格取得をすることによってスキルをわかりやすく証明し、自身の市場価値を高めることに繋がる。

資格を新しく取得することには、次のような利点がある。

1つは、目標を達成することで自尊心が向上し、仕事に対する積極性が増すという点だ。また、新しい知識を系統的に学習することで、業務上の新しい問題や解決策を発見する機会が生まれることもある。

もう1つは、職場やビジネスパートナー以外で「専門的知識を持つ人々との繋がり」が築かれる点である。共通の関心事を持つ人々と出会い、互いの成長を支え合うことは、相互に良い刺激になり得る。

資格の取得には費用がかかる

しかし資格を取得するには、受験料、教材費、講座費用、交通費・宿泊費など、さまざまな費用が必要となる

特に高度な資格ほど、関連する費用は高額になる傾向があり、勉強時間分の機会費用も増大していく。一方で、資格取得によるスキルアップやキャリアアップのメリットは大きいため、費用をかけて資格を取得することは将来的な投資と考えられる。

リスキリングに取り組む際のネックはお金と時間

リスキリング経験者が辛かったことは金銭負担と時間

リスキリングに際し大変だったことをリスキリング経験者に尋ねたところ、時間のなさに追われている人が多数にのぼる結果となった。

その一方で、金銭的な負担により苦労している人が全体の30%に上っている。先述の通り、リスキリングの代表格である資格取得には諸費用がかかるなど、やはりリスキリングに際しては金銭的負担を免れない場合が多いのは事実であるようだ。

また将来の給与に関する不安を抱えている人も同程度いる。リスキリングが実際に効果をもたらすかどうかについても、多くの人が疑問を持っているようだ。

リスキリングに取り組んでいない人も金銭負担と時間を懸念


リスキリングをしない理由としては、「金銭的な余裕がない」「何をしたら良いのかわからない」という意見が多いということが判明した。

また未経験者の懸念事項としても、金銭的余裕のなさを挙げる人が多くを占めた。

金銭的な負担が減るなら4人に3人がリスキリングをしたい

リスキリング未経験者を対象に、今後リスキリングの講座を受講したいかという質問を行った。無条件でリスキリングをしたい人は37.9%であったのに対し、「金銭的な負担が減るまたはなくなる」という条件をつけたところ、約2倍の74%の人がリスキリングをしたいと回答した。

金銭面がネックになりリスキリングを断念している人や、金銭的負担の減少を望む潜在的な層の存在が明らかになった。

リスキリングをした人の70%が収入増加

「リスキリングをして月収は上がりましたか?」という質問に対しては、約70%の人がリスキリングにより給与が上がっていると回答した。最も多い層が1~2万円の増加であり、大幅な増加を体験している人は少ないものの、リスキリングによる収入の向上はあることが判明した。

少額の給与の増加でも、長い目で見れば最終的な収支はプラスになるといえる。このことが分かれば、リスキリングに取り組む際の精神的なハードルが下がるという方は多いのではないだろうか。

リスキリングに関する助成金の知名度は20〜30%

長期的な年収増加のみならず、助成金の活用によって、最初の一歩はさらに踏みやすくなる。しかし、リスキリングに活用できる「教育訓練給付金」の知名度は非常に低いことが明らかになった。

一般教育訓練給付金を利用したのは5%

一般教育訓練給付金を知っているかという質問では、全体の回答者200人中145人、すなわち約72.5%が「知らなかった」と回答し、一般教育訓練給付金の認知度は非常に低いことがわかった。

また、「知っていたが、利用していない」と答えた人が45人、全体の22.5%であった。助成金の利用には単に制度を知っているだけではなく、利用までの障壁(申請の複雑さ、資格要件、知識不足、利用へのモチベーション不足など)があることが推察される。

特定一般教育訓練給付金は認知率20%

特定一般教育訓練給付金に関する認知度は、一般教育訓練給付金よりもさらに低いことが分かった。「知っていて利用した」と答えたのは全体の2%のみで、大多数が「知らなかった」と回答している。

一般教育訓練給付金に比べて、特定一般教育訓練給付金はより対象範囲の狭い支援策であることから、そのため一層の認知度の低さにつながっていると考えられる。

専門実践教育訓練給付金も認知率20%以下

専門実践教育訓練給付金も一般教育訓練給付金や特定一般教育訓練給付金と同様に、その認知度は非常に低いことが示された。「知っていて利用した」と回答したのは2%にとどまり、「知らなかった」と回答した人は80%を超えた

特に専門実践教育訓練給付金に関しては大多数が支援策の存在を知らないと回答しており、実際に利用している人はほとんどいない。これらの結果から、リスキリング支援策に関する情報提供や、支給窓口の認知向上が急務であることが示唆される。

助成金を利用するには

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出典:厚生労働省「教育訓練給付制度」

教育訓練給付制度とは、働く人々の能力開発やキャリア形成を支援するための制度で、指定の教育訓練を修了した際受講費用の一部が支給される。

給付金の対象となる教育訓練は、専門実践教育訓練、特定一般教育訓練、一般教育訓練の3種類があり、それぞれ支給額や条件が異なる。支給額や講座の例は画像の通りである。

支給に際しては細かな条件があるが、ハローワークで支給要件紹介が可能となっており、支給申請も同じくハローワークで行うことができる。

助成金の認知度を高めリスキリングをより手軽なものに

リスキリングへの意欲は多くの人が持っているが、金銭面や時間的制約の問題によって断念している人も多いことが判明した。

金銭面では、教育訓練給付金を利用して負担を減らせることができるものの、その認知度は非常に低く、利用率はさらに低い。この認知率・利用率が向上すれば、金銭面で断念する人が減り、さらにリスキリングに取り組める人が増えていくだろう。

リスキリングをすることにより、職業の多様性とキャリアの機会が広がり、経済全体の競争力も向上する。そのためリスキリングは、今後の働き方に不可欠な要素だ。リスキリングをより身近に、手軽にするために、助成金制度の情報拡散とアクセス性の向上が求められる。

調査概要

項目

詳細

調査名

リスキリング時の助成金の認知・利用に関する実態調査

対象者

20代以上の社会人の方で、転職経験がある方

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024年2月27日〜3月4日

回答数

200

※データは小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。

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