データサイエンスの基礎である統計の魅力とは|統計質保証推進協会

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ビジネスにおけるデータ活用の重要性が叫ばれ、データ分析の基礎となる統計分野に高い関心が集まっています。

統計に係る資格試験の中でも最も高い知名度を誇るのが統計検定です。

今回は、統計検定を実施されている統計質保証推進協会にて代表理事を務めておられます、竹村彰通様にお話を伺いました。


統計検定の特徴

北川
北川

本日はお忙しい中、貴重な機会をいただき誠にありがとうございます。株式ベンドの北川と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。 

竹村様
竹村様

統計質保証推進協会で代表理事を務めております竹村です。本日はよろしくお願いいたします。 

北川
北川

近年ではデータサイエンスに係る資格として、データサイエンティスト検定リテラシーレベルなど統計検定以外の資格試験が実施され始めています。これらの資格と比較した際の統計検定の特徴について教えていただけますでしょうか。 

竹村様
竹村様

はい。まずは統計検定の生い立ちから話していきましょうか。

統計検定は2011年から実施されています。当時の日本では、「データサイエンス」という言葉は一般的ではありませんでしたが、統計学の教育が重要であることは認識されていました。

しかし、日本の統計教育は他国、特にアメリカに比べて遅れていたため、統計学の基礎から専門的な知識までを体系的に学べる場を提供するために、統計検定を始めました。

統計検定は、4級から1級までの段階があり、非常に幅広い内容をカバーしているのが特徴です。やや単純化して言うと、4級は中学生レベル、3級は高校生レベル、2級は大学の教養課程レベル、準1級は大学の専門課程レベル、1級は大学院レベルとなっています。この構成により、初心者から専門家まで、自分のレベルに応じた学習と検定が可能になっています。 

また、問題は研究者を中心に作成されており、日本統計学会が認定しているため、検定としての質と学術的な信頼性が担保されています。 

さらに、統計検定ではコンピュータベースのテスト(CBT)により問題の正答率などを細かくチェックし、それぞれの問題が適切な難易度になるように調整しています。 

加えて、公的統計の分野も重視してきました。こちらは、国家公務員や地方公務員、調査会社の職員の方を対象とした統計調査士・専門統計調査士の試験を実施しています。 

これらが統計検定の特徴であると思います。 

北川
北川

ありがとうございます。近年、学生にとどまらず社会人の受験者が多いと伺ったのですが、その要因はどこにあるのでしょうか。 

竹村様
竹村様

社会人の受験者が多い要因の一つとして、日本の大学で統計学があまり教えられてこなかったことが挙げられます。そのため、社会に出てから統計の重要性を認識し、リスキリングとして統計検定を受験しようとする人が増えているからではないですかね。

特に転職やキャリアアップを目指す社会人にとって、統計検定がその能力を証明するための有力なツールとなっているのでしょう。 

データサイエンスと統計学

北川
北川

先ほどデータサイエンスに統計学の教育が重要であるとおっしゃられていましたが、データサイエンスと統計学の関係について詳しく説明していただけますか。 

竹村様
竹村様

統計学はデータの収集、分析、解釈を行うための学問であり、データサイエンスの基礎となります。データサイエンスを理解し、実践するためには、まず統計学の基礎をしっかりと理解することが重要です。 

例えば、データの平均や分散、相関係数といった基本的な統計量は、データの特性を把握するために欠かせません。また、回帰分析や仮説検定などの手法は、データサイエンスにおけるデータ分析の中核をなしています。これらの手法を駆使することで、データから有益な情報を引き出し、意思決定に役立てることができるのです。 

つまり、データサイエンスにおいて統計学の教育が重要なのは、データの背後にある意味を理解し、正確に解釈する力を養うためだと言えます。データは単なる数字の羅列ではなく、その中にパターンやトレンドが隠されており、それらをうまく汲み取れなければデータサイエンティストを名乗ることはできないでしょう。 

北川
北川

なるほど。データサイエンスの教育に関する代表的な取り組みなどについて教えていただけますでしょうか。 

竹村様
竹村様

はい。近年では、日本においてもデータサイエンスの重要性が認識されており、多くの大学でデータサイエンス学部が設立されています。例えば、滋賀大学のデータサイエンス学部では、統計学を基礎にしたカリキュラムを提供し、学生はデータの分析手法やAIの応用について深く学んでいます。データサイエンス学部では、次世代のデータサイエンティストを育成しています。

リスキリングの重要性

北川
北川

データサイエンティストが企業の中でその能力を発揮するために、お互いにどのようなことが必要になってくるのでしょうか。 

竹村様
竹村様

企業側には、データサイエンティストと効果的に連携するために、統計やデータ分析の基本知識が求められます。特に、プロジェクトによっては古典的な統計手法が重要な役割を果たすことが多く、現場ではこの基礎知識が欠かせません。

AIや機械学習の先進的な手法を使用する場合でも、まずは基本的なデータの処理を行う必要があります。企業側の担当者がこれらの基礎を理解していないと、プロジェクトの成功は難しいです。 

データサイエンティスト側には、最新の技術に加えて、古典的な統計手法やデータの基本的な取り扱いについての深い理解が必要です。 

北川
北川

ありがとうございます。ここで一つお聞きしたいのですが、将来、機械学習やAI技術でデータを分析していくようになっていくとしたら、データサイエンティストが不要になっていくのではないかという心配の声もあります。そのような声に対してはどうお考えですか。 

竹村様
竹村様

その点は論点になる部分です。しかし、我々としてはデータ分析の手法の中身をしっかり知っておくことはこれからも必要であると考えています。 

これについては「予測」と「因果」という観点で見てあげると良いでしょう。わかりやすい例ですと、余命予測の事案です。

機械学習やAI技術が発達していけば、傷病者の余命計算は正確になってくると思います。しかし、実際に必要なことといえばその原因を突き止めること、さらにその原因の治療法を見出すことです。この「因果」を突き止める手法については現在のAI技術などでは賄えない部分になります。とはいえ、これからの進展は大いにあると考えられるので一概に不可能だとは断定できかねます。 

今の段階では、「因果」を突き詰めることはAIでは置き換えられないと考えています。 

北川
北川

なるほど、全てをAI技術に任せっきりにすることは現実的ではないのですね。そういった意味から、社会人のリスキリングというものが今後重要になってくるのでしょうか。 

竹村様
竹村様

そうですね。現代の職業環境において、リスキリングは非常に重要になってくると言えます。特にデジタルトランスフォーメーションの進展により、新しい技術や知識を習得することが求められています。これは特にデータサイエンスや統計学の分野において顕著であり、そう言った意味でも統計検定はリスキリングに非常に役立つと言えるでしょう。デジタル技術の進化が速く、既存のスキルだけでは対応しきれない状況が多くなっています。 

もっといえば、データサイエンスや統計学の知識に加えて、AIや機械学習の手法、さらにはデジタルツールの使い方なども大事なスキルになってきます。エクセルでの基本的なデータ分析から、PythonやRを用いた高度なデータ解析まで、幅広いスキルが求められるようになるでしょう。 

企業や教育機関もリスキリングを支援するためにさまざまな取り組みを行っています。多くの企業がリスキリングのための研修プログラムを提供しており、大学や専門学校も社会人向けのコースを開設しています。加えて、先ほどご紹介した滋賀大学のデータサイエンス学部では、社会人向けのプログラムも提供しており、実務で使えるスキルを習得できるようサポートしています。 

北川
北川

ありがとうございます。こういった社会人のリスキリングに関する課題は何であるとお考えですか。 

竹村様
竹村様

リスキリングを行う際の大きな課題は、時間の確保だと言えるでしょう。仕事や家庭の時間を割いて勉強する必要があるため、効率的に学ぶ方法を見つけることが重要です。オンラインコースや夜間の講座など、柔軟な学習方法が提供されることが望まれます。また、どこから手をつけるべきか迷うことも多いので、体系的な学習プランを立てることも重要であると思います。統計検定などの資格試験は学習の目標設定に役立ちます。

リスキリングを成功させるための重要なポイントは、継続的に学ぶ姿勢を持てるかどうかです。データサイエンスや統計学の分野は日々進化しているため、最新の情報をキャッチアップし続けることが求められます。また、それらを実際の業務にどう活かすかを考えながら学ぶことで、より実践的なスキルが身につくでしょう。 

日本の強みと課題

北川
北川

昨今のデータサイエンスの発展が凄まじい一方で、日本は現状としてその最前線からは遅れているかと考えられます。その中で日本はどのような強みを持って世界と渡り合っていけば良いのでしょうか。また、課題としては何が挙げられますか。 

竹村様
竹村様

日本が世界の最前線から遅れているというのはその通りです。世界と渡り合うことにおいて日本が持つ強みは製造業や素材産業でしょう。例えば、精密機器や化学素材などは世界トップクラスの技術を誇ります。今日の日本経済を支えているのはこれらの技術だと言っても過言ではありません。 

そしてこれらの産業をデジタル技術で強化することが我々日本の今後の課題だと言えるでしょう。そこで、まず必要になってくるものとしては、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進ですね。DXは単にITツールを導入するだけでなく、業務プロセス全体を見直し、データを活用して効率化を図ることを意味します。例えば、製造業においては、製造プロセスの最適化や品質管理に統計学やデータサイエンスの手法を用いることで、大幅な効率化が可能となります。さらに、IoT技術を活用してリアルタイムでデータを収集・分析することで、より高度な生産管理が可能になるでしょう。それによって、製造ラインのセンサーから得られるデータを分析し、機器の故障を予測する予知保全や、製品の品質をリアルタイムで監視するシステムなどで応用できるのではないでしょうか。 

北川
北川

ありがとうございます。今、日本のデータサイエンス部門についての弱みの話をいただきましたが、このような課題が解決されてくれば、日本はどのような社会になっていくと思われますか。 

竹村様
竹村様

そうですね。そのような社会では、専門性を持った人たちの待遇がより充実した社会になっていくと考えられます。日本では昔から、入った会社の中であらゆることを経験していくというのが出世コースとして考えられています。 

それが日本の良さではありますが、それだけですと技術的に尖ったところでは負けてしまうのです。

統計の分野で言えば、アメリカでは統計の専門家が様々な企業にコンサルティングをすることでその専門性が認められています。 

そういった点においては日本ではまだまだ弱さが浮き出ています。これらを改善する動きがみられるようになれば、社会人を対象としたリスキリングがかなり広く受け入れられるような世の中になっていき、専門性を持った人たちのキャリアパスがより明確に考えられるような社会になっていくと考えられます。 

今後の展望

北川
北川

最後に、日本のデータサイエンス分野における今後の展望や必要な取り組みについてお話いただけますか。 

竹村様
竹村様

はい。まず、日本はDXの重要性を認識し、データサイエンス教育の拡充に力を入れるべきですね。そのためには、大学や専門機関での教育だけでなく、社会人向けのリスキリングプログラムの提供も不可欠です。データサイエンス学部やデータサイエンス関連の修士課程を増やすなどして、専門人材の育成を進めることが求められるでしょう。 

そして、企業との連携を強化し、データサイエンティストが実際の業務で活躍できる環境を整えることも重要です。企業はデータサイエンスの専門家を積極的に採用し、社内のデータ活用能力を向上させるためのトレーニングを提供すべきです。特に、日本の強みである製造業や素材産業において、データを活用した生産性向上や品質管理の向上を図ることが競争力の強化につながるでしょう。 

さらに、政府の支援と政策も重要な役割を果たします。文部科学省や経済産業省は、データサイエンス教育の拡充や企業支援プログラムを通じて、データ駆動型社会の実現を推進するべきです。また、統計検定などの資格を通じて、データサイエンスの知識と技能を評価・認証する仕組みを整備し、社会全体でのデータ活用能力の底上げを図る必要があります。 

最後に、個人の取り組みとして、継続的な学び直しの重要性を強調したいです。デジタル技術の進展が速いため、個々の専門家が新しい知識や技術を常にアップデートすることが求められます。こういったことが、個人のキャリアの柔軟性と競争力を維持し、日本全体のデータサイエンス力を向上させることに繋がるでしょう。 

つまり、国際競争力を強化するには、教育機関、企業、政府が一体となって、データサイエンスの発展を支えていくことが重要なのです。こうした取り組みがなされて初めて、アメリカや他のアジアの国などのデータサイエンス分野における先進国と競争していけると言えるでしょう。 

北川
北川

本日は貴重なお話をいただき誠にありがとうございました。