スキルアップのために資格取得に挑む人は少なくない。しかし、資格取得が実際にどのような効果をもたらすのか、その具体的な成果は明らかにされておらず、どのようにすれば資格取得後の効果を最大化できるのかについても不透明なところが多い。
そこでスキルアップ研究所では、キャリアアップを目指して実際に資格を取得した人々を対象に調査を行い、資格取得の効果及び資格取得の効果を高める方法について検証した。
- 資格取得による自身の変化に満足している人は約8割にのぼる
- 資格取得によるキャリアアップ・年収増加の実感率は高い
- 自身の興味やキャリアプランの重視が資格取得による効果を高めるために重要
資格取得による満足度は約80%
「資格を取得してご自身が得られた変化について、満足していますか」という質問には約80%が「はい」と回答した。
資格取得によって多くの人が具体的な変化を実感し、「資格を取得してよかった」と感じているようだ。
最も大きな理由は「知識がつくから」
上記質問で「満足している」とした人に最も大きな要因を尋ねたところ、約3割が「特定の分野についての知識が身についたから」と回答した。次いで、「仕事の幅が広がった」「転職に繋がった」をあげる人が多かった。
キャリアへの影響はもちろんのこと、第一に「自分の能力が高まる」という面で自己の成長に満足している人が多いようだ。
資格取得によりキャリアアップ・年収増加に効果あり
資格を取得した際のキャリアや年収への効果についてもアンケート内で尋ねたところ、明確な実感の高さが明らかになった。
キャリアアップの実感率は約70%
「資格取得に際して、意図していたような転職・昇格などのキャリアアップは得られましたか?」という質問に対し、キャリアアップを意図していなかった71名を除く429名のうち、70.4%がキャリアアップできたと回答した。
知識が身についただけでなく、資格取得によってキャリアにも効果があるといえる。
約58%が年収増加
「資格取得に際して、意図していたような年収の増加は得られましたか?」という質問に対し、年収増加を意図していなかった96名を除く404名のうち、57.7%が年収が増加したと回答した。
過半数が年収増加したと回答する結果となり、資格取得による年収増加は期待できるといえる。一方で、資格の取得が年収増加を保証するものでは無いことも窺える結果となった。
資格取得にはデメリットもある
一方で、資格取得にはデメリットがないのかについても調査した。
想定よりキャリアアップ・スキルアップに繋がらない
「資格を取得して感じたデメリットがあれば教えてください」という質問には、45.0%が「デメリットは特に感じない」とした一方で、18.4%が「当初思っていたより自身のキャリアアップに繋がらなかった」、11.6%が「当初思っていたより自身のスキルアップにならなかった」と回答した。
また、キャリアアップを実感したかという質問にも、「『想定していたほどではないが』得られた」と回答する人が34%存在した。
当初の想定通りの結果を得られないというケースは一定数あるようだ。
時間的コスト・金銭的コストがリターンより大きい
「資格を取得するための時間的コストが取得のメリットより大きい」と感じている人が14.8%、「資格を取得するための金銭的コストが取得のメリットより大きい」と考える人が10.8%にのぼることが明らかになった。
裏を返せば、資格取得による効果を感じられれば、デメリットは感じなくなるということである。
資格取得をキャリアアップに繋げるには
資格取得に満足できている人とそうでない人、取得によるメリットを得られる人と得られない人の間にはどのような違いがあるのだろうか。満足度について、さらに分析を進めた。
「自身の興味」や「キャリアプラン」の重視がカギ
資格取得に際し最も重視したことを尋ねたところ、重視する内容によって満足度に差があることがわかった。
「自身の興味」「今後のキャリアプランとの関連度」「その資格を持つ人材の将来的な需要」など、自分を主体にした意思決定や、キャリアを優先した意思決定をした場合は満足度が80%を超える。
一方で、「資格の人気・知名度」「資格の難易度や取得にかかる時間」「講座等を含めた取得にかかる金銭的コスト」など、資格そのものや資格取得のコストを優先すると、満足度は5~7割程度に下がってしまう。また、会社から資格取得を要請された場合も満足度は7割となる。
また、資格取得の際に重視したこと別に「資格を取得して感じたメリットがあれば教えてください」という質問に対する回答について分析した。その結果、自分を主体にした意思決定である方がメリットを上げる個数が多くなっている、つまり、より多くのメリットを感じられていることが明らかになった。
満足度の高い資格は?
DX化が進む現代において、IT・プログラミング系の資格が特に有用と考えられがちであるが、実際には独占業務を持つ不動産や法律系の資格、また業務内容に直結するマネジメントやコミュニケーション関連の資格の方が満足度が高いことが分かった。
このことからも、流行やイメージに流されることなく、自分が本当に追求したい分野やキャリアに合った資格を選択することの重要性が浮かび上がった。
IT・プログラミング系の資格については、取得している人は多いものの、その満足度は相対的に低めである。DXという大きな流れの中で、「何となく」資格を取得している人も少なくないのかもしれない。
企業によるリスキリング推進で資格を活用するためには
アンケート結果からわかるように、企業がリスキリングを推進するにあたり資格を活用する際には、従業員の将来のキャリアプランやその人の意思との関連性を重視することが重要だ。
資格取得を通じてスキルアップを図ることは有効であるが、それが従業員個々のキャリア目標や興味、意欲と合致していなければ、その効果・満足度は低くなってしまう。従って、企業はリスキリングのプログラムを設計する際に、従業員一人ひとりのキャリアビジョンを理解し、それを支援する形で資格取得の機会を提供することが望まれる。
調査概要
項目 | 詳細 |
調査名 | 資格取得の効果・満足度に関する実態調査 |
対象者 | 過去に資格を取得した経験がある人(学生除く) |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024年2月21日〜2月27日 |
回答数 | 500 |
調査結果の引用・転載について
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