リスキリング レポート

リモートワークの現在地2026-取り巻く環境とこれからの働き方-総集編レポート

更新日:

調査: スキルアップ研究所

「テレワークはもう終わった」という声と、「リモートワークは当たり前になった」という声。2026年のいま、この2つの語りが同時に流通している。どちらが正しいのだろうか。

スキルアップ研究所では、通勤・オフィスコスト・テレワークの実態をテーマとする11本のレポートを公開してきた。1本ずつは、通勤時間、席代、実施率といった個別の分野を扱ったものである。本レポートでは、この11本を重ね合わせたとき、リモートワークがいまどのような状況にあり、これから何が論点になるのかを総括する。

先に結論を述べれば、答えは「終わった」でも「当たり前になった」でもない。

リモートワークは、増やす力と減らす力が拮抗したまま、少数派の働き方として定着した。

そしてその水準は、「そもそもリモートで行える仕事が限られている」という職業の構造と、「行える仕事の内側に残った課題」という2つの層に分けて説明できる。

本レポートのポイント
  • 都内企業のテレワーク実施率は43.8%でここ2年ほど横ばい、全国の実施率も14〜17%の範囲で推移している。リモートワークは「消えつつある」のでも「標準になった」のでもなく、少数派の働き方として定着した
  • 制度の導入率は64.0%へ上昇を続ける一方で出社回帰も進んでおり、制度が制限・廃止されればテレワーカーの41.3%が働き方の見直しを検討すると答えている。増やす力と減らす力が拮抗している
  • 出社する働き方のコストは上がり続けている。通勤にかかる時間は生涯で約8.3労働年分かかる地域もあり、社員1人にかかる出社コストは年間約102万円、都心オフィス賃料は前年比10.1%の上昇である
  • テレワークを導入していない企業に理由を尋ねると、「テレワークに適した仕事がない」が79.0%で最も多い。つまり全体の実施率の低さは、テレワークの有効性が低いことの表れではなく、そもそも対象になりにくい業種・職種が多いという産業構造を映した数字と読める。
  • その上で、テレワークが可能な仕事の内側で残った課題は「上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること」(容易に行えない32.9%)に集約された。道具や場所、作業進捗の共有など業務に関わるものは、容易に行えたとの回答が半数を超えている
  • 以上を総合すると、2026年の論点は「リモートワークをするかどうか」から「自社の仕事のどこまでが可能で、それをどう設計するか」へ移りつつある

※各数値の出典・対象・時点は付録および各レポートを参照。異なる調査の数値を計算で結合してはいない

リモートワークは「終わって」いない。ただし、増えてもいない

制度として導入している企業は64.0%、その月に実施した企業は43.8%。差は20.2ポイント


東京都の月次調査によると、都内企業(従業員30人以上)のテレワーク実施率は43.8%(令和8年6月)である。

コロナ禍期の最高値65.0%からは約21%低いものの、コロナ前の調査開始時(令和2年3月・24.0%)よりは約20%高く、ここ2年ほどはおおむね40〜45%の範囲で横ばいが続いている。

全国でも、雇用者のテレワーク実施率は2020年5月の31.5%からほぼ半分の水準まで低下したのち、直近3年ほどは14〜17%の範囲での推移である。

昨今出社回帰のニュースが取りざたされることがあり、テレワークはだんだんと縮小しつつあるように見えるかもしれないが、実のところは実施率は下げ止まり、少数派の働き方としての定着という形に落ち着いている。

ただし、この横ばいの内側には奇妙なねじれがある。
制度としてテレワークを導入している都内企業は64.0%で、前年度から6.0%上昇している。制度は広がり続けているのに、実施は横ばい。両者の差は20.2%にのぼる。
調査が異なるため厳密な引き算はできないが、「制度はあるのに使われていない」企業が相当数ある可能性を示す構図である。

また、テレワークのやり方も週3日以上の高頻度から週1日・半日単位で行う場合が増えてきており、新しい形への再編が進んでいるように見える。

制度・実施・頻度のいずれを見ても、リモートワークは全面採用と全面撤退のあいだの、中間的な状態のどこかに各社が散らばっている。これが2026年の出発点である。

増やす力と減らす力が拮抗している

テレワーク制度が制限・廃止された場合、働き方の変更を検討24.9%と退職・転職を検討16.4%を合わせ、テレワーカーの41.3%が働き方の見直しを検討

では、この横ばいは「ちょうどよいところに落ち着いた」ことを意味するのか。各レポートのデータを重ねると、そうは読めない。

減らす方向の力は確かに働いている。全国の実施率はコロナ禍当初のほぼ半分になり、複数の民間調査が出社頻度の引き上げを報告している。出社頻度の増加を検討する企業の理由の上位は「マネジメントをしやすくするため」(52.6%)や「生産性を向上させるため」(47.4%)で、自社の課題に基づくものだが、同時に「他社の出社回帰の動向に影響されたから」を挙げた企業も35.6%あり、3社に1社超が他社の動きを判断材料の1つとしている。

一方で、増やす方向の力も消えていない。リモートワーク制度の導入率は上昇を続けており、全国のテレワーク経験者の割合はコロナ禍後の減少から増加に転じた(25.2%・前年度比+0.6ポイント)。

テレワーク経験者を対象とした民間調査では、維持・拡大の意向が60.7%と縮小意向(5.7%)を大きく上回る。求職者側では「フルリモート」の仕事検索が5年で1.7%から35.9%へ拡大し、「完全リモートなら所在地にかかわらず前向きに転職を検討する」人は約85%にのぼる。

そして、この綱引きの当事者どうしで、見えているものが違うことを示すデータがある。勤め先のテレワーク制度が制限・廃止された場合、「退職・転職を検討する」と答えたテレワーカーは16.4%。働き方の変更の検討を合わせると41.3%=100人中41人が現在と同じ働き方を続けない可能性があると答えている。

ところが同じ設問への管理職の回答は9.6%で、テレワーカーとの差は6.8ポイント、約1.7倍である。ITエンジニアに限れば、出社回帰が転職を考えるきっかけになると答えた人が43.7%いる一方、企業側で離職率の上昇を見込むのは21.0%にとどまる(設問・対象が異なるため直接比較はできないが、方向は一致する)。

増やす理由も減らす理由も実在し、しかも立場によって見えている代償の大きさが違う。横ばいとは、この拮抗の産物であって、合意の産物ではない。だからこの均衡は、外側の条件が変われば動く。

その間にも、「出社の前提」のコストは上がり続けている

生涯の通勤時間は全国平均約6.6労働年、東京都約7.9労働年、神奈川県約8.3労働年に相当

前項ではリモートワークは増えている部分と減っている部分があり、それが両者同じ程度の力で綱引きをしているため均衡しているという話だ。

しかし、出社を前提とする働き方にかかる「コスト」が、時間・お金・リスクのすべての面で上がっている。

時間・お金

通勤・通学時間は神奈川県で1日100分と全国最長であり、年間出社245日・1日8時間労働の前提で換算すると、生涯では約8.3労働年分=試算上の総労働時間の約20.8%に相当する。この規模の時間が、働く時間とは別に移動へ充てられている。2025年、東京都の転入超過は4年ぶりに縮小し、転入超過が全国で最も拡大したのは神奈川県だった。その神奈川県は、通勤・通学時間が全国で最も長い地域である。移動の理由は統計からわからないため因果は主張できないが、働く場所が都心に集中したまま住む場所が外へ広がるかぎり、住む場所の選択は通勤負担の増加という形で表れやすい。この構造のもとでは、出社の頻度がそのまま生活時間の配分を左右する。
時間をお金に変換する働き方をしている一般的な会社員としては、出社による機会損失はお金を失っていることと等しいと感じる。
「働いてない時間」であって「休めてる時間」でもない。無給で拘束されている、という意味では実質的にタダ働きに近い性質を持っている上、都心に楽に出社するために会社の近くに住むとなれば、大きなお金を払って都心に住む必要がある。

リスク

その通勤が行われる夏は構造的に暑くなっている。猛暑日は100年あたり約2.6日のペースで増加し、2025年の熱中症搬送は100,510人で過去最多、発生場所の3割超は道路をはじめとする屋外だった。家庭の側では、学童の待機児童が夏休みへ向けて集中的に発生し(5月16,330人→10月7,363人)、共働き世帯の夏は毎年、預け先の確保という制約と重なる。

企業の帳簿でも、方向は同じである

社員1人の出社コストは賃料68,979円・通勤手当12,700円・電気代3,500円の合計で月約85,179円=年間約102万円


企業視点から見ても、出社におけるコストの上昇は明確である。

お金

東京都心5区の平均募集賃料は22,993円/坪(2026年6月時点・共益費別)で前年同月比10.1%の上昇、空室率は1.99%と約6年ぶりの1%台であり、賃料は当面下がる見込みの薄いコストである。1人3坪の目安で席1つの賃料は年間約83万円=平均給与の約17.3%。通勤手当と電気代を加えれば、社員1人の出社関連コストは年間約102万円にのぼる。しかも賃料は出社日数に連動しない固定費であるため、出社を週3日に減らしても総額は変わらず、出社1日あたりの単価が約1.67倍に上がる。中間的な状態が、単価の面では最も割高になりうる──第1章で見た「中間のどこかに散らばる各社」にとって、これは他人事ではない構造である。

採用

リモート可を明記する正社員求人は全職種平均9.6%と希少で、明記するだけで目立ちうる状態にある。それにもかかわらず、リモートワークを「採用競争力の強化」として導入した企業は19.6%にとどまる。求職者側の需要拡大(前章)と併せると、費用として払っているものの価値が、採用の文脈では十分に認識されていない可能性がある。

事業継続

12年ぶりに改定された首都直下地震の被害想定では、平日12時のエレベーター内閉じ込め約15,800人のうち約99.4%が事務所での発生と想定された。人が日中どこにいるかが、そのまま災害時のリスクの所在になる。また、生産・サービス低下による被害37.5兆円は、BCP(事業継続計画)の策定率100%だけで12.9兆円(65.6%減)と試算されており、国のガイドラインはテレワークの推進方針を策定してBCPに位置付けるよう企業に求めている(この削減は経済的被害のうち生産・サービス低下の範囲に限られ、人的被害や資産被害の軽減には耐震化などのハード対策が不可欠である)。

働く人の生活時間でも、企業の損益でも、災害の備えでも、「全員が毎日同じ場所に集まる」ことを無条件の前提にする働き方は、年々高くつくようになっている。これが、第2章の綱引きの背後で静かに進んでいる変化である。

そもそも、多くの仕事はリモートでは行えない ─ 実施率の上限を決める職業の構造

テレワークを導入しない理由の1位は「テレワークに適した仕事がないから」79.0%。「社内のコミュニケーションに支障があるから」は16.3%で4位
まず、リモートワークが少数派の働き方である理由はそもそも、リモートで行える仕事が限られているという、職業の構造である。

総務省「令和7年通信利用動向調査」(2025年8月末時点・常用雇用者100人以上の企業対象)によると、テレワークを導入しておらず導入予定もない企業が挙げる理由は、「テレワークに適した仕事がないから」が79.0%で突出した1位である。2位の「業務の進行が難しいから」(33.7%)を45ポイント以上引き離しており、「社内のコミュニケーションに支障があるから」は16.3%で4位にとどまる。導入しない企業の約8割にとって、テレワークは「課題があるからやらない」のではなく、「そもそも仕事がそれに適していない」ものである。

この構造は産業別の導入率にはっきりと表れる。同じ調査で、テレワーク導入率は情報通信業の92.8%に対し、運輸業・郵便業は32.5%と、約2.9倍の開きがある。現場・対人・設備を前提とする仕事と、画面の中で完結しうる仕事とでは、そもそもの土俵が違う。求人側から見た既報の数値──リモート可を明記する求人が全職種平均9.6%である一方、ソフトウェア開発では47.7%(#06)──も、同じ職種差の裏返しである。働く人の側でも、テレワークの課題・障壁の1位は「テレワークに適した仕事ではないため」36.3%だった(総務省・2021年調査、#09付録)。

産業別のテレワーク導入率は情報通信業92.8%から運輸業・郵便業32.5%まで約2.9倍の差

さらに、導入している企業の内側にも同じ壁がある。テレワーク導入企業のうち、過去1年間にテレワークを利用した従業者が「5%未満」にとどまる企業は40.2%を占める。制度を持つ企業の中でも、テレワークで働けるのは一部の職種・部署に限られていることがうかがえる。

つまり、都内43.8%・全国15.4%という実施率の水準は、まず「リモートで行える仕事の範囲」という上限によって規定されている。この上限は、通信環境の整備やツールの進歩では動かない。第1章で見た横ばいの、これが第一の説明である。

なお、この調査でテレワークの導入率自体は50.1%と前年から2.8ポイント上昇しており、第2章で見た「制度を増やす力」とも整合する。制度は広がりながら、利用は仕事の性質が許す範囲にとどまる──という二重の動きである。

リモートが可能な仕事の内側で、残った課題が「気軽な会話」だった

テレワークで容易に行えないことの1位は「上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること」32.9%で、「業務やプロジェクトの進捗の把握」13.2%の約2.5倍

では、リモートで行える仕事に就いている人たちの間では、何が起きているのか。第二の層はここにある。

テレワーク実施者を対象とした調査(総務省・2021年3月、#09)では、利点の第1位は「通勤時間が削減される」で81.5%と突出していた。一方で、通信・機器の準備(54.2%)、作業スペースの確保(51.4%)、業務の進捗の把握(50.7%)はいずれも半数以上が容易に行えたと答えたのに対し、「上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること」には相対的な難しさが残った(容易に行えない32.9%=進捗把握13.2%の約2.5倍)。コミュニケーションの支障も一様ではなく、取引先(20.6%)より同僚(48.0%)に大きく偏る。道具・場所・情報共有の問題がおおむね解けたなかで、社内の、議題のない、気軽な相談や会話という狭い一点に難しさが残り、この構図は2024年のスキルアップ研究所の調査でも一致している。

ここで、前章との関係を正確にしておきたい。この「気軽な会話」の難しさは、リモートワークを行わない理由の主役ではない。導入しない企業の理由としてコミュニケーションを挙げたのは16.3%にすぎず(前章)、実施率全体の水準を決めているのは職業の構造のほうである。

一方で、リモートが可能な仕事の内側で起きている変化──制度があっても使われない(20.2ポイントの差)、週3日以上から週1日への頻度の引き下げ(#07)、そして出社回帰──を説明する要因としては、この残った課題が最も有力である。実際、リモートワークが最も浸透した層でも出社回帰は起きている。ITエンジニアを採用する企業の25.3%が出社頻度の増加を検討しており、その理由の上位はマネジメント(52.6%)・生産性(47.4%)・コミュニケーション(37.0%)だった(#08)。導入率9割超の産業で起きているこの動きは、職業の構造では説明できない。説明できるのは、同じ場所に集まらないことの代償のほうである。

こうして2つの層を重ねると、構造が見えてくる。リモートワークの最大の利点(通勤をなくすこと)と残った弱点(気軽な会話が生まれにくいこと)は、「同じ場所に集まらない」という同じ一つの選択の裏表である。そして、その選択がそもそも可能かどうかは仕事の性質が決め、可能な場合にどこまで使うかは、利点と弱点の重み付け(人により、組織により、業務により異なる)が決める。

実施率がどちらにも振り切れず横ばいで定着したのは、第一に職業の構造という上限があり、第二に、上限の内側のトレードオフに万人共通の正解がないからだと考えるのが、データを通して最も整合的な説明である。

これからの論点 は「するかどうか」から「どう設計するか」へ

以上を総合すると、2026年のリモートワークをめぐる問いは、すでに形を変えていると言える。「リモートワークをするべきか、やめるべきか」という二者択一の問いは、データの上では決着がつかない。どちらの選択にも実在する利点と、実在する代償があるからである。意味を持つのは、その次の問いである。自社は・自分は、何を通勤と出社で買っていて、その価格はいくらなのか。リモートへの転換により浮くコストは?そもそも可能なのか?

各レポートと公表統計が示した構造からは、この問いを考えるうえでの論点を5つ挙げることができる。

第一に、自社の仕事のどこまでがリモートで行えるかを見極めること。導入しない企業の約8割が挙げるとおり、仕事の性質はテレワークの前提条件である。全社一律の議論ではなく、職種・業務ごとに「可能な範囲」と「不可能な範囲」を分けたうえで、可能な範囲について以降の論点を検討することになる。

第二に、セットで設計すること。出社頻度・オフィスの持ち方・通勤・事業継続の備えは、固定費の構造を通じて連動している。出社頻度だけを単独で動かすと、総額は変わらないまま1日あたりの単価だけが約1.67倍に悪化するように、部分の変更は歪みとして表れやすい。

第三に、残った課題を名指しで扱うこと。テレワークを働き方に組み込むなら、設計課題はもはや通信環境や勤怠管理ではなく、「気軽な相談や会話をどう保つか」に絞られている。逆に出社へ軸足を戻すなら、通勤の時間・費用と、テレワーカーの41.3%が見直しを検討すると答えた事実を、代償として数字で織り込んだうえで判断することになる。

第四に、判断の根拠を自社に置くこと。出社頻度の増加を検討する企業の35.6%が他社の動向を判断材料の1つに挙げているが、第5章・第6章で見たとおり、可能な仕事の範囲も、利点と弱点の重みも、組織ごとに異なる。他社にとっての最適が自社の最適である保証は、この構造上どこにもない。

第五に、立場による見え方の差を前提にすること。同じ制度変更でも、管理職とテレワーカーでは検討する行動が約1.7倍違って見えている。働く場所の方針を決める側と受け止める側の認識の差そのものが、把握しておくべきリスクである。

いずれの論点も、特定の働き方を推奨するものではない。ただ、これらを感覚や空気ではなく数字で検討できる材料が、公表統計としてすでに揃っていることがこれまでスキルアップ研究所が11本のレポートを通して確認してきたことである。

まとめ

スキルアップ研究所が試算した内容では、2026年のリモートワークの現在地は次のように描ける。

実施率は横ばいで、リモートワークは少数派の働き方として定着した。ただしその横ばいは、増やす力と減らす力が拮抗した結果であって、満足の均衡ではない。拮抗の背後では、通勤時間・オフィス費用・災害リスク・人口移動といった独立した統計が揃って「出社を前提とする働き方の価格の上昇」を指し示している。

それでも実施率が伸びない理由は、2つの層に分けられる。第一に、そもそもリモートで行える仕事が限られているという職業の構造である。導入しない企業の79.0%が「テレワークに適した仕事がないから」を理由に挙げ、産業別の導入率には約2.9倍の開きがある。第二に、リモートが可能な仕事の内側でも、「気軽な相談や会話」という、同じ場所に集まらないことの構造的な代償が残っている。制度があっても使われない、頻度が下がる、出社回帰が起きるといった変化は、この第二の層の現象である。

したがって、これからの論点は「するかどうか」ではなく「どう設計するか」である。自社の仕事のどこまでが可能で、可能な範囲について何を通勤と出社で買い、その価格がいくらで、何を代償として引き受けるのか。この問いは、もはや感覚ではなく、公表されている数字で検討できる。

本総集編がその検討の入口となり、詳細については各レポートの本文・付録・留意事項が参照されることを願っている。

付録1:本総集編で新たに引用したデータ

出典:総務省「令和7年通信利用動向調査」(企業編・2026年5月29日公表)。調査対象:公務を除く産業に属する常用雇用者100人以上の企業(有効回答2,489社)/調査時点:2025年(令和7年)8月末/調査方法:郵送・オンライン

項目

備考

テレワーク導入率

50.1%

前年(47.3%)から2.8ポイント上昇

導入しない理由1位:テレワークに適した仕事がないから

79.0%

導入しておらず導入予定もない企業(n=1,033)・複数回答

同2位:業務の進行が難しいから

33.7%

同上

同3位:情報漏えいが心配だから

16.8%

同上

同4位:社内のコミュニケーションに支障があるから

16.3%

同上

産業別導入率:情報通信業(最高)

92.8%

産業別導入率:運輸業・郵便業(最低)

32.5%

情報通信業との差は約2.9倍(92.8÷32.5)

導入企業のうち利用従業者が「5%未満」の企業

40.2%

過去1年間に1度でもテレワークを利用した従業者の割合

付録2:収録レポート一覧

本総集編の根拠とした11本のレポートを示す。各数値の全データ表・計算式・留意事項は各レポートの付録に掲載している。

No.

レポート

本総集編で用いた主な数値

URL

#01

通勤時間の生涯コストに関する試算レポート

神奈川県100分/日・生涯約8.3労働年=総労働時間の約20.8%

https://reskill.gakken.jp/5229

#02

猛暑と通勤リスクに関するレポート

猛暑日100年あたり約2.6日増・2025年搬送100,510人(過去最多)・3割超が屋外

https://reskill.gakken.jp/5230

#03

学童保育の待機児童と夏休みに関するレポート

待機16,330人→7,363人(5月→10月)・夏に集中する需要

https://reskill.gakken.jp/5231

#04

社員1人の「席代」に関する試算レポート

22,993円/坪(前年比+10.1%)・席代年間約83万円=平均給与の約17.3%

https://reskill.gakken.jp/5232

#05

オフィスの「隠れコスト」に関する試算レポート

出社コスト年間約102万円・週3出社で1日単価約1.67倍

https://reskill.gakken.jp/5233

#06

リモートワーク求人と採用力に関するレポート

リモート可求人9.6%・フルリモート検索1.7%→35.9%・所在地不問で検討 約85%・採用の武器と捉える企業19.6%

https://reskill.gakken.jp/5234

#07

テレワーク実施率の定点分析レポート

実施率43.8%(2年横ばい)・導入率64.0%・差20.2pt・規模差約1.5倍

https://reskill.gakken.jp/5235

#08

出社回帰の代償に関する試算レポート

全国実施率31.5%→15.4%・制限廃止なら見直し検討41.3%・管理職との差約1.7倍・他社動向35.6%

https://reskill.gakken.jp/5236

#09

テレワークで「容易に行えたこと」と「行えなかったこと」に関する分析レポート

利点1位 通勤削減81.5%・容易に行えない1位 気軽な相談や会話32.9%(進捗把握の約2.5倍)・同僚48.0% vs 取引先20.6%

https://reskill.gakken.jp/5238

#10

首都直下地震の被害想定と防災・減災対策の効果に関する分析レポート

12時のEV閉じ込めの約99.4%は事務所・BCP策定率100%で生産・サービス低下の被害65.6%減

https://reskill.gakken.jp/5239

#11

東京圏の人口移動と通勤時間に関する分析レポート ─ 住む場所と働く場所の分離

東京都転入超過の87.8%は20〜24歳・最も拡大した神奈川県は通勤時間全国最長

https://reskill.gakken.jp/5240

総集編の概要

  • 根拠としたレポート:スキルアップ研究所が2026年7月から8月にかけて公開した11本のレポート(上表)
  • 作成主体:スキルアップ研究所
  • 数値の時点:各レポート公開時点(2026年7月)で公表されている統計・公開データ、および本総集編で新たに引用した総務省「令和7年通信利用動向調査」(2026年5月29日公表)に基づく
  • 作成方法:各レポートの公表値および上記統計を横断的に整理し、共通する構図を考察として記述した。数値の再掲のみを行い、新たな試算・推計、および異なる調査の数値どうしの計算は行っていない(産業別導入率の倍率は同一調査内の公表値どうしの比)

留意事項

本総集編で並べて示した数値は、対象・方法・時点が互いに異なる調査の公表値である。「増やす力と減らす力の拮抗」「出社の価格の上昇」といった整理は、これらの並置から導いた本総集編の考察であり、調査間の統計的な比較や因果関係の検証に基づくものではない。

第5章・第6章の「実施率の水準は職業の構造という上限に規定され、上限の内側のトレードオフに万人共通の正解がない」という整理は、各調査の結果から導いた解釈であり、実施率の横ばいの原因を統計的に特定したものではない。総務省「通信利用動向調査」は常用雇用者100人以上の企業を対象としており、それ未満の規模の企業は含まれない。導入しない理由は複数回答であり、「テレワークに適した仕事がないから」を選んだ企業が他の理由を持たないことを意味しない。また、東京都調査(従業員30人以上)・日本生産性本部調査(雇用者個人)とは対象・方法が異なるため、実施率・導入率の数値を相互に比較することはできない。

第7章の5つの論点は、各レポートと公表統計が示した構造から導いた設計上の論点の整理であり、リモートワーク・出社のいずれか特定の働き方を推奨するものではない。

個別の数値の前提と限界は、各レポートの留意事項に記載のとおりである。主なものとして:通勤・通学時間は通学者を含む参考値であり、換算値は一定の前提(年間出社245日・1日8時間労働など)による概算である。41.3%はテレワークを実施している人の中での割合で、意向を聞いた調査であり実際の離職率を示すものではない。#06および維持・拡大意向、出社頻度に関する一部のデータは民間調査に基づく。BCPによる65.6%の削減は経済的被害のうち「生産・サービス低下による影響」に限った数値である。

引用・転載について

本総集編および各レポートの著作権は、株式会社ベンドが保有します。

引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」などの形で出典を明記し、該当するレポート記事およびスキルアップ研究所(https://reskill.gakken.jp)へのリンクを付してください。#06「リモートワーク求人と採用力に関するレポート」の数値を引用する際は、同レポートで引用している各社の定める条件に従い、各社の出典も併記してください。
本レポートをその他各レポートの出典として記載することはできません。

各レポートの表あるいは情報を引用される場合には本レポートではなく各レポートを引用元に定義してください。

引用・転載されたことにより、利用者または第三者に損害その他のトラブルが発生した場合、当社は一切の責任を負いません。

調査結果の引用・転載について

本レポートの著作権は、株式会社ベンドが保有します。 引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」のような形で出典を明記し、本記事のリンクを付してください。 引用・転載されたことにより利用者または第三者に損害その他トラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いません。