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※厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」、三鬼商事「オフィスマーケットデータ」(2026年6月時点・共益費別)等をもとにスキルアップ研究所が試算
オフィスのコストというと賃料が思い浮かぶが、企業が「社員が出社して働く」ために払っている費用はそれだけではない。9割前後の企業が支給している通勤手当は、その代表格である。
スキルアップ研究所では、前回の「席代」試算に続き、賃料以外の費用も積み上げて「出社1日あたりのコスト」を試算した。
- 通勤手当は、支給された労働者1人平均で月12,700円(厚生労働省・令和7年就労条件総合調査)。支給割合は諸手当の中で最も高く(諸手当を支給する企業の90.2%、全企業ベースでは82.5%)、金額は5年前から8.5%増えた
- 賃料(席代)・通勤手当・電気代を合計すると、社員1人あたり月約8.5万円、年間約102万円になる
- 年間245日出社した場合、出社1日あたりのコストは約4,172円
- 週3日出社(年147日)に減らしても年間の総額は変わらないため、出社1日あたりの単価は約6,953円と約1.67倍に上がる
- 通勤手当は、従業員30〜99人の企業で月15,300円と、1,000人以上の企業(12,300円)を上回る
9割前後の企業が払っている「見えないオフィス代」─通勤手当
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、諸手当を支給する企業のうち90.2%が通勤手当を支給しており、諸手当の中で最も割合が高い(全企業に対する割合では82.5%)。支給された労働者1人あたりの平均は月12,700円(令和6年11月分)である。
この金額は、5年前の調査(令和元年11月分・11,700円)から8.5%増えた。鉄道各社の運賃改定が相次いでいることを踏まえると、企業の負担は今後も増加する可能性がある。
企業規模別に見ると、30〜99人の企業は月15,300円で、1,000人以上の企業(12,300円)を約3,000円上回る。

なお、12,700円は「支給された労働者」1人あたりの平均であり、全労働者の平均ではない点に注意が必要である。また本調査の対象は常用労働者30人以上の企業であり、30人未満の企業は含まれない。
積み上げると、社員1人あたり月約8.5万円
賃料に通勤手当と電気代を加えて、社員1人あたりの月額コストを積み上げる。
賃料は、都心5区の平均募集賃料22,993円/坪(三鬼商事・2026年6月時点・共益費別)に、1人あたり面積3坪(業界目安。レンジ2〜4坪)を掛けた約68,979円。電気代は公的統計が存在しないため、業界で目安とされる1人あたり月2,000〜5,000円の中間値3,500円を用いる。
費目 | 月額 | 出典の種別 |
|---|---|---|
賃料(席代) | 約68,979円 | 市況データ(三鬼商事)×業界目安(面積) |
通勤手当 | 12,700円 | 公的統計(厚労省) |
電気代 | 約3,500円 | 業界目安(幅:2,000〜5,000円) |
合計 | 約85,179円 | ― |

年間では約102万円。賃料だけを見ていると、1人あたり月1.6万円程度を見落とすことになる。中でも通勤手当は賃料の約18%に相当する、公的統計で確認できる「見えないオフィス代」である。
週3出社にしても総額は変わらず、1日あたりの単価は1.67倍になる
この年間コスト約102万円を出社日数で割ると、「出社1日あたりのコスト」が見えてくる。
年間245日(週5日)出社の場合、1日あたり約4,172円。これに対し週3日出社(年147日)では、1日あたり約6,953円と約1.67倍になる。ただしこれは年間の総額が変わらないことの裏返しであり、出社を減らせばコストが増えるという意味ではない。

理由は単純で、最大の費目である賃料が出社日数では減らない固定費だからである。出社を減らしても、支払う総額はそのままに、1日あたりの単価だけが悪化する。
この試算が示すのは、ハイブリッド勤務がコスト面では中間的な最適解になるとは限らない、ということである。オフィスの規模を出社実態に合わせて見直すか、出社日数を維持するか──固定費の構造上、中途半端な状態が最も単価の高い状態になりうる。
※本試算では、出社日数を減らしても賃料・通勤手当・電気代のいずれも変わらないと仮定している。実際には、定期券から実費精算への切り替えによって通勤手当が減ったり、縮小移転によって賃料が下がったりする場合があり、その際の単価上昇はこれより小さくなると予想される。
入口と出口にも、まとまった費用がかかる
月々の費用に加えて、オフィスには入居時・退去時のコストもある。これらは公的統計が存在せず、業界メディア等の目安に基づく概算だが、100人企業(必要面積300坪)を想定すると規模感は次のようになる。
内装工事費は坪10〜30万円が目安とされ、中間値の坪20万円なら約6,000万円。退去時の原状回復費は坪2〜5万円が目安で、中間値なら約1,050万円。契約時に預ける敷金・保証金は賃料の6〜12か月分が一般的とされ、9か月分なら約6,208万円にのぼる。
いずれも幅のある目安だが、オフィスを「持つ」「移る」「手放す」という判断には、月々の賃料以外にもまとまった資金が動くことがわかる。
まとめ
公的統計と市況データをもとに試算した結果、社員1人あたりのオフィス関連コストは、賃料・通勤手当・電気代の合計で月約8.5万円・年間約102万円となった。出社1日あたりでは約4,172円(年245日出社)である。
そして、週3日出社に減らしても年間の総額は変わらないため、1日あたりの単価は約1.67倍に上がる。賃料が出社日数に連動しない固定費である以上、出社頻度とオフィスの持ち方は、本来セットで設計すべきテーマといえる。
ただし、1人あたり面積・電気代・内装費・原状回復費・敷金は業界目安に基づく概算であり、幅を持って見る必要がある。
付録:試算データ一覧
基礎データ
項目 | 値 | 出典 | 種別・時点 |
|---|---|---|---|
通勤手当(支給された労働者1人平均) | 12,700円/月 | 厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」 | 公的統計・令和6年11月分 |
通勤手当の支給企業割合(諸手当支給企業に占める割合) | 90.2%(全企業ベース82.5%) | 同上 | 公的統計 |
通勤手当(前回調査) | 11,700円/月 | 厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」 | 公的統計・令和元年11月分 |
通勤手当:30〜99人の企業 | 15,300円/月 | 令和7年調査 | 公的統計 |
通勤手当:1,000人以上の企業 | 12,300円/月 | 同上 | 公的統計 |
賃料(都心5区・共益費別) | 22,993円/坪・月 | 三鬼商事「オフィスマーケットデータ」 | 市況データ・2026年6月時点 |
1人あたり面積 | 3坪 | 業界目安(レンジ2〜4坪) | 公的統計なし |
電気代(1人あたり) | 3,500円/月 | 業界目安(2,000〜5,000円の中間値) | 公的統計なし |
内装工事費 | 20万円/坪 | 業界目安(10〜30万円の中間値) | 公的統計なし |
原状回復費 | 3.5万円/坪 | 業界目安(2〜5万円の中間値) | 公的統計なし |
敷金・保証金 | 賃料9か月分 | 業界慣行(6〜12か月の中間値) | 公的統計なし |
年間出社日数(週5想定) | 245日 | 想定値 | ― |
年間出社日数(週3想定) | 147日 | 想定値(245×3/5) | ― |
試算結果
指標 | 値 | 計算式 |
|---|---|---|
1人あたり月額合計 | 約85,179円 | 68,979+12,700+3,500 |
同・年額 | 約1,022,148円 | 月額 × 12 |
出社1日あたり(週5) | 約4,172円 | 年額 ÷ 245日 |
出社1日あたり(週3) | 約6,953円 | 年額 ÷ 147日 |
週3÷週5 | 約1.67倍 | 6,953 ÷ 4,172 |
通勤手当が賃料に占める比率 | 約18.4% | 12,700 ÷ 68,979 |
100人企業:内装工事費 | 約6,000万円 | 300坪 × 20万円 |
100人企業:原状回復費 | 約1,050万円 | 300坪 × 3.5万円 |
100人企業:敷金・保証金 | 約6,208万円 | 300坪 × 22,993円 × 9か月 |
試算の概要
- 出典データ:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(2025年12月公表)、三鬼商事「オフィスマーケットデータ」(2026年6月時点)
- 試算主体:スキルアップ研究所
留意事項
本試算は公的統計と業界目安が混在する。通勤手当は公的統計だが、1人あたり面積・電気代・内装工事費・原状回復費・敷金は公的統計が存在せず、業界で目安とされる値(幅のある値)の中間値を用いた概算である。
通勤手当12,700円は「支給された労働者」1人あたりの平均であり、全労働者の平均ではない。また同調査の対象は常用労働者30人以上の企業である。支給企業割合90.2%は諸手当を支給した企業に占める割合であり、全企業に対する割合は82.5%である。
通勤手当は全国平均、賃料は都心5区(東京)のデータであり、本試算は「都心にオフィスを構える企業」のモデルケースである。地方都市の賃料水準ではこれより小さくなる。また賃料は募集賃料であり、成約賃料とは異なる場合がある。
賃料は共益費別であり、共益費を含めた実際の負担はこれより大きい。
週3出社の試算は、出社日数を減らしても賃料・通勤手当・電気代のいずれも変わらないという仮定に基づく。
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