リスキリング レポート

通勤時間の生涯コストに関する試算レポート

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調査: スキルアップ研究所

毎朝の通勤は、多くの人にとって当たり前の習慣である。しかし、その「当たり前」を時間として積み上げると、どれほどの量になるのだろうか。

スキルアップ研究所では、総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」で公表されている通勤・通学時間を会社員の通勤時間の参考値として用い、通勤に費やす時間が年間・生涯でどれだけの規模になるのかを試算した。

本レポートのポイント
  • 平日に通勤または通学を行った人の通勤・通学時間は、全国平均で1日79分、首都圏では94〜100分
  • 首都圏では、年間の通勤時間が約48〜51日の8時間労働日に相当する
  • 40年間働いた場合、神奈川県では通勤時間が約8.3労働年分に相当する
  • 神奈川県では、生涯の通勤時間が試算上の総労働時間の約20.8%に相当する
  • 通勤・通学時間の地域差は、最長地域と最短地域で約1.8倍にのぼる

※労働日・労働年は、1日8時間・年間245労働日として換算

1. 平日に通勤または通学を行った人の平均は1日79分

通勤だけで年間51営業日分の時間を失っている

総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」によると、平日に通勤または通学を行った人の通勤・通学時間は、全国平均で1日79分である。

本レポートでは、この通勤・通学時間を会社員の通勤時間の参考値として用い、年間・生涯の通勤時間を試算する。

都道府県別に見ると、最も長いのは神奈川県の100分である。次いで、千葉県と東京都が95分、埼玉県が94分となっており、上位を首都圏の1都3県が占めている。

片道相当に単純換算すると、神奈川県は約50分、千葉県・東京都は約47.5分、埼玉県は約47分となる。

都道府県別の通勤・通学時間を片道相当に単純換算した参考値。神奈川県が約50分で最長、最短地域とは約1.8倍の差がある

一方、最も短い山形県と宮崎県は56分であり、片道相当に単純換算すると約28分となる。最長の神奈川県100分と比較すると、その差は約1.8倍である。

首都圏で通勤・通学時間が長くなる背景には、職場と住宅の立地関係や交通事情などが影響している可能性がある。

なお、この数値は5年ごとに実施される調査に基づくものである。住宅や職場の立地による影響を受ける一方、テレワークの普及や出社頻度の変化などによって、数値が変動する可能性もある。

※片道相当の数値は、1日あたりの通勤・通学時間を単純に2で割った参考値であり、総務省統計局が公表した片道平均ではない。

2. 年間では約2か月半の労働日数に相当する

この通勤・通学時間を会社員の通勤時間の参考値として用いた場合、1年間でどれほどの時間になるのだろうか。

年間出社日数を245日、1日の所定労働時間を8時間として試算した。

年間245日という日数は、1年間365日から年間休日120日を差し引いたものであり、有給休暇や在宅勤務などは考慮していない。

地域

通勤・通学時間(1日合計)

年間の試算時間

8時間労働日換算

全国平均

79分

約323時間

約40.3日

埼玉県

94分

約384時間

約48.0日

東京都

95分

約388時間

約48.5日

神奈川県

100分

約408時間

約51.0日

年間の通勤時間を8時間労働日に換算したグラフ。神奈川県は約51.0日

神奈川県の平均値を用いた場合、年間で約408時間を通勤に費やす計算になる。

これを1日8時間の労働日に換算すると約51日分であり、1か月の労働日数を20日程度とした場合、およそ2か月半分に相当する。

全国平均でも年間約323時間となり、1日8時間の労働日に換算すると約40.3日分にのぼる。

通勤時間は、毎日の中では細切れの時間に見えるものの、1年間で積み上げると、まとまった労働期間に相当する規模になる。

3. 生涯では約8.3労働年分に相当する

さらに、25歳から65歳までの40年間働き続けた場合を想定して試算すると、通勤時間の総量は次の規模になる。

地域

生涯の通勤時間

8時間労働日換算

労働年数換算

24時間換算

全国平均

約12,900時間

約1,613日

約6.6年

約1.5年

東京都

約15,500時間

約1,940日

約7.9年

約1.8年

神奈川県

約16,300時間

約2,042日

約8.3年

約1.9年

神奈川県の場合、生涯の通勤時間は約16,300時間となる。

これは、1日8時間・年間245労働日を1労働年として換算すると、約8.3労働年分に相当する。

一方、24時間を1日として連続した時間に換算すると約681日、年数では約1.9年となる。つまり、40年間の通勤時間を途切れなく並べた場合、丸2年近い時間に相当する計算である。

全国平均でも、生涯の通勤時間は約12,900時間となり、約6.6労働年分、24時間換算では約1.5年分に相当する。

4. 神奈川県では総労働時間の約20.8%に相当する

通勤時間を、同じ前提で算出した総労働時間と比較すると、その規模がより明確になる。

年間245日、1日8時間、40年間勤務すると仮定した場合、試算上の総労働時間は次のとおりである。

245日 × 8時間 × 40年 = 78,400時間

これに対し、神奈川県の生涯通勤時間約16,300時間は、試算上の総労働時間の約20.8%に相当する。

全国平均の生涯通勤時間約12,900時間でも、試算上の総労働時間に対して約16.5%となる。

40年間の試算上の総労働時間78,400時間に対する通勤時間の比率。神奈川県は約20.8%

つまり神奈川県では、労働時間とは別に、その約2割に相当する時間を職場への移動に費やす計算になる。

なお、ここで示す割合は「通勤時間÷労働時間」で算出した比率であり、通勤時間が労働時間に含まれていることを意味するものではない。

5. 通勤時間は可処分時間の問題でもある

これらの数字が示すのは、単なる移動時間の長さだけではない。

通勤時間は、通勤がなければ学習や休息、家族との時間などに使える可能性のある、可処分時間の一部でもある。

スキルアップ研究所がこれまでに実施した調査では、リスキリングに取り組めない理由として、学習時間を確保できないことが主要な障壁として挙げられてきた。

年間で約40〜51労働日分に相当する時間が通勤に使われるという試算結果は、学習時間や休息時間の不足を考えるうえでも、無視できない規模といえる。

一方で、通勤中に読書や学習を行うことも可能であり、通勤時間のすべてが直ちに不利益になるとは限らない。

重要なのは、日々の通勤という習慣が、40年間では1万時間を超える規模になる可能性を、具体的な数字として把握することである。

まとめ

総務省統計局の公表データを会社員の通勤時間の参考値として用い、一定の前提を設けて試算した結果、通勤時間は年間で約40〜51日の8時間労働日に相当する規模となった。

また、40年間働き続けた場合、全国平均では約6.6労働年分、神奈川県では約8.3労働年分に相当する。

神奈川県の生涯通勤時間は、同じ前提で算出した総労働時間の約20.8%に相当し、24時間換算では約1.9年分となる。

ただし、本試算で使用した元データには通学者も含まれており、在宅勤務、有給休暇、転職、転居、休業なども考慮していない。

そのため、今回の数値は個人の実際の生涯通勤時間を示すものではなく、一定の仮定に基づいて通勤時間の規模を可視化した参考値である。

働き方の選択肢が広がる中で、通勤時間をどう扱うかは、個人にとっても企業にとっても、限られた時間資源の配分を考えるうえで重要なテーマになりつつある。

付録:試算データ一覧

本レポートで使用した数値の一覧を示す。

基礎データ

出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」

地域

通勤・通学時間(1日合計)

分換算

片道相当の参考値

全国平均

1時間19分

79分

約39.5分

神奈川県

1時間40分

100分

約50分

東京都

1時間35分

95分

約47.5分

千葉県

1時間35分

95分

約47.5分

埼玉県

1時間34分

94分

約47分

山形県・宮崎県

56分

56分

約28分

※片道相当の数値は、1日あたりの通勤・通学時間を単純に2で割った参考値であり、総務省統計局が公表した片道平均ではない。

試算結果の一覧

前提:年間出社日数245日/1日の所定労働時間8時間/勤続年数40年(25歳から65歳まで)

指標

全国平均

埼玉県

東京都

神奈川県

年間の通勤時間

322.6時間

383.8時間

387.9時間

408.3時間

年間・8時間労働日換算

40.3日

48.0日

48.5日

51.0日

生涯の通勤時間

12,903時間

15,353時間

15,517時間

16,333時間

生涯・8時間労働日換算

1,613日

1,919日

1,940日

2,042日

生涯・労働年数換算

6.6年

7.8年

7.9年

8.3年

生涯・暦日換算(24時間)

538日

640日

647日

681日

生涯・年数換算(24時間)

1.5年

1.8年

1.8年

1.9年

試算上の総労働時間に対する比率

16.5%

19.6%

19.8%

20.8%

※試算上の総労働時間は、245日×8時間×40年=78,400時間として算出

計算式

  • 年間の通勤時間 = 通勤・通学時間(分/日)× 年間出社日数 ÷ 60
  • 年間・8時間労働日換算 = 年間の通勤時間 ÷ 8時間
  • 生涯の通勤時間 = 年間の通勤時間 × 勤続年数
  • 生涯・8時間労働日換算 = 生涯の通勤時間 ÷ 8時間
  • 生涯・労働年数換算 = 生涯・8時間労働日換算 ÷ 年間出社日数
  • 生涯・暦日換算 = 生涯の通勤時間 ÷ 24時間
  • 試算上の総労働時間に対する比率 = 生涯の通勤時間 ÷ 試算上の総労働時間

試算の概要

  • 出典データ:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」における、平日に通勤または通学を行った人の通勤・通学時間
  • 調査時期:2021年
  • データの位置付け:2026年7月時点で公表されている最新の社会生活基本調査結果
  • 試算主体:スキルアップ研究所
  • 試算の前提:年間出社日数245日、1日の所定労働時間8時間、勤続年数40年
  • 想定する勤務期間:25歳から65歳まで
  • 年間出社日数の考え方:年間365日から年間休日120日を差し引いた245日
  • 試算方法:通勤・通学時間に年間出社日数と勤続年数を掛け、8時間労働日、労働年、24時間単位などに換算
  • 総労働時間:245日×8時間×40年=78,400時間
  • 比率の算出方法:生涯の通勤時間÷試算上の総労働時間

留意事項

本試算で用いた元データは、平日に実際に通勤または通学を行った人を対象とした通勤・通学時間であり、通学者も含まれている。

本レポートでは、この値を会社員の通勤時間の参考値として用いている。

また、年間245日の全日出社、1日8時間勤務、40年間継続して勤務するものと仮定しており、次の事項は考慮していない。

  • 有給休暇の取得
  • 在宅勤務やハイブリッド勤務
  • 転職や離職
  • 転居
  • 育児休業や介護休業
  • 時短勤務
  • 通勤時間の経年変化
  • 交通手段や勤務先の変更

そのため、本試算は個人の実際の生涯通勤時間を示すものではなく、公表統計の平均値に一定の条件を掛け合わせた概算値である。

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調査結果の引用・転載について

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