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猛暑と通勤リスクに関するレポート

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調査: スキルアップ研究所


※気象庁・消防庁・東京消防庁の公表データと、総務省統計局の通勤・通学時間(会社員の通勤時間の参考値として使用)をもとに、スキルアップ研究所が試算。通勤時間には電車・バスの車内や駅構内などで過ごす時間を含む

うだるような暑さの中を駅まで歩き、ホームで電車を待つ。夏の通勤は毎年の恒例行事のように語られるが、その前提となる「夏」そのものが、数十年前とは別のものになりつつある。

スキルアップ研究所では、気象庁および消防庁・東京消防庁の公表データをもとに、猛暑の長期的な増加傾向と熱中症搬送の実態を整理し、暑熱環境下で行われる通勤の時間がどれだけの規模になるのかを試算した。

本レポートのポイント
  • 全国の猛暑日(最高気温35℃以上)は、1910〜2024年の統計で100年あたり約2.6日のペースで増加しており、最近30年(1995〜2024年)の平均日数は統計開始当初の約3.9倍にのぼる
  • 2025年の全国の熱中症救急搬送人員は100,510人で、調査開始以来最多。中等症と重症の合計は36.4%で、搬送された3人に1人を上回る人が入院を要する状態だった
  • 熱中症の発生場所は、住居(38.1%)に次いで道路が19.7%。屋外の公衆の場(12.1%)を合わせると3割超が屋外の場所で発生している
  • 東京消防庁管内では「道路・交通施設等」での搬送が34.9%を占め、最多の「住宅等居住場所」(36.0%)に迫る
  • 東京都の通勤・通学者の平均時間(1日95分)を会社員の通勤時間の参考値として当てはめると、2025年の真夏日(最高気温30℃以上)に通勤へ費やす総時間は年間約98時間、8時間労働日に換算して約12日分となる。なお、これは車内や駅構内などを含む通勤全体の時間であり、屋外で過ごす時間を示すものではない

※労働日換算は、1日8時間労働として算出

1. 猛暑は「たまたま暑い年」ではなく、構造的に増えている

気象庁の観測によると、全国13地点平均の猛暑日(最高気温35℃以上)の年間日数は、1910〜2024年の統計期間で100年あたり約2.6日のペースで増加しており、この増加傾向は信頼水準99%で統計的に有意である。

統計開始当初の30年間(1910〜1939年)の平均が約0.8日だったのに対し、最近30年間(1995〜2024年)の平均は約3日と、約3.9倍に増えている。

全国の猛暑日年間日数の長期変化。統計開始当初の約0.8日から最近30年は約3日へと約3.9倍に増加

東京に目を向けると、2025年(6〜9月)の真夏日(最高気温30℃以上)は87日、猛暑日は29日にのぼった。6月から9月までの約4か月間、つまり122日のうち87日で気温が30℃を超えていた計算になる。

なお、2026年についても、気象庁が6月23日に発表した3か月予報では、7〜8月の気温は東日本から沖縄・奄美にかけて平年より高く、北日本でも平年並みか高い見込みとされている。また、気象庁は2026年4月、最高気温40℃以上の日を「酷暑日」と呼ぶ気象用語を新たに制定した。

年ごとの変動はあるものの、長期的には猛暑日の増加傾向がはっきりと確認されており、過去の夏をそのまま将来の前提とすることは難しくなりつつある。

2. 熱中症搬送は10万人超で過去最多。3割超は屋外の場所で発生している

消防庁「令和7年(5〜9月)の熱中症による救急搬送状況」によると、2025年の全国の熱中症救急搬送人員は100,510人で、調査開始以来最多となった。前年の97,578人から3.0%の増加である。

このうち、中等症と重症の合計は36.4%を占める。搬送された3人に1人を上回る人が入院を要する状態であり、熱中症は「一時的な体調不良」では済まない健康リスクといえる。

発生場所別に見ると、最も多いのは住居の38.1%だが、次いで多いのが道路の19.7%である。駅の屋外ホームなどを含む公衆の屋外の場(12.1%)を合わせると、3割超が屋外の場所で発生している。

熱中症の発生場所別割合。住居38.1%に次いで道路19.7%、公衆(屋外)12.1%と、屋外の場所での発生が3割を超える

東京消防庁管内(東京都のうち稲城市と島しょ地域を除く)では、この傾向はさらに強まる。東京消防庁によると、2025年(6〜9月)の熱中症搬送人員は9,203人(速報値)で、発生場所別では最多の「住宅等居住場所」3,288人(36.0%)に、「道路・交通施設等」3,185人(34.9%)が迫っている。

なお、これらの統計が示すのはあくまで搬送が発生した「場所」であり、そこで何をしていたかまでは分からない。道路での搬送には、通勤のほか買い物や散歩、業務中の移動なども含まれる。また、東京消防庁の時間帯別統計(2025年6〜9月)では、搬送のピークは12時台(977人)で、11〜15時台が多くなっており、朝夕の通勤時間帯が搬送の最多時間帯というわけではない。

その上で確認できる事実は、通勤経路にも含まれうる道路や交通施設をはじめとする屋外の場所が、熱中症搬送の発生場所の大きな割合を占めているということである。

3. 東京の通勤者を想定すると、真夏日の通勤に費やす総時間は年間約98時間

では、こうした暑熱環境の中で行われる通勤は、時間にするとどれだけの規模になるのだろうか。

総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」によると、東京都で平日に通勤または通学を行った人の通勤・通学時間は1日あたり95分である。この値は通学者を含む平均だが、本レポートでは、これを会社員の通勤時間の参考値として当てはめて試算する。

2025年の東京の真夏日87日に、平日の比率として7分の5を掛けると、平日相当日数の単純推計は年間約62日となる。この62日に1日95分の通勤を行ったと仮定すると、その合計は約5,900分、時間に直すと約98時間にのぼる。

これを1日8時間の労働日に換算すると、約12.3日分に相当する。

なお、この約98時間は、電車・バスの車内や駅構内、地下通路などで過ごす時間を含む通勤・通学の総時間であり、屋外で過ごす時間を示すものではない。屋外部分だけの時間は、今回使用した統計からは算出できない。

指標

真夏日(30℃以上)

猛暑日(35℃以上)

該当日数(東京・2025年6〜9月)

87日

29日

うち平日相当日数の単純推計

約62日

約21日

真夏日・猛暑日に該当する平日相当日の通勤時間の合計

約98時間

約33時間

8時間労働日換算

約12.3日

約4.1日

真夏日・猛暑日に該当する平日相当日の通勤時間の試算。真夏日ベースで年間約98時間=約12.3労働日分


猛暑日(35℃以上)に限っても、平日相当日数は年間約21日、通勤時間の合計は約33時間、労働日換算で約4.1日分となる。

1回あたりの通勤は1時間半程度でも、夏の間それを積み重ねると、まとまった時間が高温の時期の移動に充てられていることになる。

4. 「出社する」という選択には、夏場の移動が伴う

ここまでの数字を重ねると、次の構図が見えてくる。

猛暑は長期的な増加傾向にあり、熱中症搬送は過去最多を更新した。その発生場所の3割超は道路をはじめとする屋外の場所である。そして東京の通勤者を想定すると、真夏日の通勤に費やす総時間は年間約98時間に相当する計算になる。

オフィスに出社して働くこと自体は、多くの企業にとって合理的な選択でありうる。ただし、夏場に限っていえば、出社という選択には、猛暑の時期に移動を行うという要素が構造的に含まれており、その経路には駅までの徒歩など屋外の区間も含まれる。

通勤時間帯が1日の中で搬送の最も多い時間帯というわけではない。それでも、企業が夏の働き方を考える際には、勤務時間中の暑さ対策だけでなく、そこに至るまでの移動という要素も、考慮すべき点の一つになる。

時差出勤、在宅勤務の柔軟な運用、猛暑日の移動を減らす工夫など、選択肢は一つではない。重要なのは、夏の通勤を「毎年のこと」として所与の前提にするのではなく、変化した気候を踏まえて扱うことである。

まとめ

気象庁・消防庁・東京消防庁の公表データと総務省統計局の通勤・通学時間をもとに整理・試算した結果、次のことが確認できた。

猛暑日は1910〜2024年の統計で100年あたり約2.6日のペースで増加しており、最近30年の平均は統計開始当初の約3.9倍となっている。2025年の熱中症搬送は100,510人で過去最多を更新し、発生場所の3割超は道路をはじめとする屋外の場所だった。東京消防庁管内では「道路・交通施設等」での搬送が34.9%と、最多の住宅(36.0%)に迫る。

そして、東京都の通勤・通学者の平均時間を会社員の通勤時間の参考値として当てはめると、真夏日の通勤に費やす総時間は年間約98時間、労働日換算で約12日分となる。

ただし、この約98時間は車内や駅構内などを含む通勤全体の時間であり、屋外で過ごす時間ではない。また、元データには通学者も含まれ、在宅勤務や有給休暇、実際の曜日配置なども考慮していない。あくまで一定の仮定に基づいて、夏の通勤という行動の時間規模を可視化した参考値である。

猛暑が構造的に増えていく中で、夏の通勤をどう扱うかは、働く個人の健康の問題であると同時に、企業の働き方設計の問題にもなりつつある。

付録:試算データ一覧

本レポートで使用した数値の一覧を示す。

基礎データ

項目

出典

時点

全国の猛暑日年間日数(最近30年平均)

約3日

気象庁(全国13地点平均)

1995〜2024年平均

全国の猛暑日年間日数(統計開始30年平均)

約0.8日

同上

1910〜1939年平均

猛暑日の長期増加トレンド

約2.6日/100年

同上(信頼水準99%で有意)

統計期間1910〜2024年

東京の真夏日日数(30℃以上)

87日

東京消防庁(気象庁の東京観測値)

2025年6〜9月

東京の猛暑日日数(35℃以上)

29日

同上

2025年6〜9月

全国の熱中症救急搬送人員

100,510人

消防庁「令和7年(5〜9月)の熱中症による救急搬送状況」

2025年・確定値

発生場所別:住居

38.1%

同上

2025年

発生場所別:道路

19.7%

同上

2025年

発生場所別:公衆(屋外)

12.1%

同上

2025年

中等症と重症の合計(入院を要する程度)

36.4%

同上

2025年

東京消防庁管内の熱中症搬送人員

9,203人(速報値)

東京消防庁(稲城市・島しょ地域を除く)

2025年6〜9月

同:発生場所「住宅等居住場所」

3,288人(36.0%)

同上

2025年

同:発生場所「道路・交通施設等」

3,185人(34.9%)

同上

2025年

同:時間帯別搬送のピーク

12時台(977人)

同上(時間帯別統計)

2025年6〜9月

通勤・通学時間・東京都(1日合計)

95分

総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」

2021年調査

試算の前提(想定値)

項目

考え方

平日相当日数の推計方法

該当日数 × 5÷7

単純推計。祝日・夏季休暇や実際の曜日配置は考慮していない

1日の所定労働時間

8時間

労働日換算用

試算結果の一覧

指標

真夏日(30℃以上)

猛暑日(35℃以上)

該当日数(東京・2025年6〜9月)

87日

29日

うち平日相当日数の単純推計

約62.1日

約20.7日

該当する平日相当日の通勤時間の合計(分)

約5,904分

約1,968分

同(時間)

約98.4時間

約32.8時間

同・8時間労働日換算

約12.3日

約4.1日

計算式

  • 平日相当日数の単純推計 = 該当日数 × 5÷7
  • 通勤時間の合計(分) = 平日相当日数 × 通勤・通学時間(95分/日)
  • 同(時間) = 分 ÷ 60
  • 8時間労働日換算 = 時間 ÷ 8

試算の概要

  • 出典データ:気象庁「全国13地点平均の猛暑日の年間日数」(統計期間1910〜2024年)、消防庁「令和7年(5〜9月)の熱中症による救急搬送状況」、東京消防庁の熱中症搬送統計(2025年6〜9月・速報値・稲城市と島しょ地域を除く管内値)、総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」における平日に通勤または通学を行った人の通勤・通学時間
  • 試算主体:スキルアップ研究所
  • 試算の前提:東京の2025年(6〜9月)の真夏日87日・猛暑日29日を対象に、平日相当日数を該当日数×5÷7で単純推計し、東京都の通勤・通学時間95分/日を会社員の通勤時間の参考値として当てはめ、1日8時間労働で換算
  • 気象データの集計期間:東京の真夏日・猛暑日の日数は2025年6〜9月の値であり、5月は含まれない(東京消防庁の集計期間に準拠)
  • 熱中症搬送データ:全国値は消防庁の2025年(5〜9月)確定値、東京の値は東京消防庁管内の2025年(6〜9月)速報値

留意事項

本試算で用いた通勤・通学時間は、平日に実際に通勤または通学を行った10歳以上の人を対象とした平均値であり、通学者も含まれている。本レポートでは、この値を会社員の通勤時間の参考値として当てはめている。

試算した約98時間は、電車・バスの車内や駅構内、地下通路などで過ごす時間を含む通勤・通学の総時間であり、屋外で過ごす時間を示すものではない。通勤経路のうち屋外部分だけの時間は、今回使用した統計からは算出できない。

また、次の事項は考慮していない。

  • 在宅勤務やハイブリッド勤務
  • 有給休暇・夏季休暇・祝日、および実際に真夏日となった日の曜日配置(平日相当日数は該当日数×5÷7の単純推計)
  • 個人差(通勤手段、経路、体調等)

熱中症搬送の発生場所別データは、搬送がどこで発生したかを示すものであり、通勤中の搬送に限定した統計ではない。道路での搬送には、通勤のほか買い物・散歩・業務中の移動なども含まれる。また、東京消防庁の時間帯別統計では搬送のピークは日中の12時台であり、通勤時間帯が搬送の最多時間帯であることを示すものではない。

そのため、本試算は「夏の通勤が最も危険である」ことを示すものではなく、増加する暑熱環境の中で行われる通勤という行動が、どの程度の時間規模になるのかを、一定の仮定に基づいて可視化した参考値である。

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