リスキリング レポート

転職に際するリスキリングに関する実態調査

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調査: スキルアップ研究所

近年、「リスキリング」という言葉をよく耳にするようになった。キャリアチェンジやスキルアップを目指す人々にとって、リスキリングは重要な手段として注目を集めている。

一方で、その実際の効果や転職にどれほど役立つのかについては、これまで明確な実態が把握されていなかった。

そこで今回、転職前にリスキリングを経験した人を対象に、リスキリングが転職活動にどのような影響を与えたかについて明らかにすべく、スキルアップ研究所では調査を実施した。

「転職に際するリスキリングに関する実態調査」結果のポイント
  • 1番人気のスキルは「ITリテラシー」
  • リスキリングの2大障壁は時間・理解度、3分の2以上を占める
  • 3分の2以上がリスキリング後の転職で年収アップを実現

リスキリングを行う理由は「キャリアアップ」が最多

「リスキリングを行った理由として最も近いものを教えてください。」と質問したところ、「キャリアアップを目指して」という理由が最も多く、全体の33%を占めていることがわかる。次に多かったのは「転職先で求められるスキルを習得するため」で、24%であった。

これらの結果から、リスキリングを行う理由はさまざまだが、多くの人がリスキリングをキャリアの向上や新しい仕事への適応手段として捉えていると考えられる。

リスキリングで1番人気のスキルは「ITリテラシー」

「リスキリングを行った分野を教えてください。」と質問したところ、リスキリングを行った分野で最も多いのは「ITリテラシー」であり、全体の28.9%を占めた。

世の中の様々なサービスがITを活用して急速に変化している一方で、多くの企業でIT人材が不足していることから、「ITリテラシー」が人気の背景には、「ITリテラシー」に取り組むことで人材需要の高い領域でキャリアを築くことができるようになることなどが推察できる。

リスキリングに取り組む際の課題

リスキリングの2大障壁は時間、理解度で3分の2以上を占める

リスキリングを行う際に最も困難だったことを尋ねたところ、「学習時間の確保」が31%で最多となった。多くの人が日々の生活や仕事の中で学習時間を捻出することに苦労していることがうかがえる。

次いで、「学習内容への理解不足」が30%となっている。新しいスキルや知識を習得する際の難しさによる学習時間の増加なども示唆している。

「少しづつでも学習を進める」ことで2大障壁を克服

リスキリング時の障壁に対してどのように克服を図ったかについて、リスキリング時に感じたと回答した障壁別に分析したところ、「少しずつでも学習を進める」という方法を取る人が各層で最も多く見られた。

この結果から、「少しずつでも学習を進める」という学習方法が、学習時間の確保や理解不足、不安に対する有効な手段であることが考察できる。

実際に、リスキリングを行った際の学習方法を尋ねる質問では、自主学習(書籍、動画等)が最も多く選ばれており、自己主導で学習を進める方法が多くの人にとってアクセスしやすく、柔軟な学び方として人気があることを示している。

また、学習時間の確保や理解不足に対して、「家族や職場の理解を得る」ことが重要な役割を果たしている。職場や家庭でのサポートが学習環境の整備に大きく貢献している可能性が考えられる。

リスキリングの実際の効果

リスキリングは主に転職活動の初期段階でのアピールに強い

「取得した資格やスキルがどのように転職活動に役立ちましたか?」と質問したところ、最も多くの回答者が、面接や書類選考の段階で有利に働いたと答えた。

リスキリングは主に転職活動の初期段階でのアピールに強く、書類選考や面接を通過する上で非常に有効であると考えられる。

また、業務に直接関連するリスキリングは即戦力としての評価を受けやすいが、関連性が薄い場合、その効果が限られるため、適切な資格選びが重要であると推測できる。

3分の2以上がリスキリング後の転職で年収アップを実現

「リスキリングをした後に転職したことで、年収に変化はありましたか?」と質問したところ、リスキリング後の転職で年収増加を達成した人は3分の2以上にのぼった。

分野別で見ると、特にマーケティング、ITリテラシーに取り組んだ人で年収増加傾向が顕著だった。

適切な分野でリスキリングを行うことで、転職後の年収アップの期待は高まるだろう。

リスキリングによって役職が直接的に昇進するケースは少ない

リスキリングをしたことで、役職に変化はあったかについて尋ねたところ、昇進した人の割合が最も高いのは30代であった。

この結果から、他の年代と比べて、特に30代が昇進していることから、昇進や役職の変化を目指す場合、リスキリングに加えて、経験やタイミング、企業の昇進体制など、他の要因も考慮する必要があると考えられる。

リスキリングでスキル向上を実感した人は7割以上

リスキリングをしたことによる自分の能力やそのレベルの変化をどのように評価するかについて尋ねたところ、75%の人が能力の向上を実感しており、リスキリングが個人のスキルアップに寄与していることが明らかとなった。特に「非常に向上した」と感じる人が13%いることから、大きな効果を得た人も一定数存在していることがわかる。

総じて、リスキリングによってスキルを伸ばすことができるのは確実であり、徒労に終わることはないと考えられるだろう。

リスキリングはキャリアにポジティブな影響を与えている

リスキリングがキャリアにどのような影響を与えたかについてリスキリングの目的別に分析したところ、いずれの層でも給与の上昇・転職の成功・キャリアアップが主要な影響であることがわかった。

リスキリングを行った目的と照らし合わせると、当初の理由に合致した成果が得られているケースが多いことが読み取れる。特にスキル習得や新しい分野への挑戦が明確である場合、その結果として自身の向上や給与アップ、転職成功が得られる傾向が見られる。

また、給与の向上のみを期待するよりも、キャリアアップやスキル習得、将来のキャリアを念頭においた方が結果として給与向上につながりやすいことも読み取れる。

一方で、役職や責任の増加、評価の向上などは、リスキリングや転職が直接的に即座に結びつく成果ではなく、長期的な視点が必要であることが示唆される。

転職者に相応しいスキルや資格

リスキリングは多くの職種で必要とされている

「リスキリングが求められていると思う職種を教えてください」という質問に対しては、「営業職」「技術職」と回答する人が各14%、「事務職」「専門職」と回答する人が各13%という結果となり、顕著に回答を集める職種はなかった。

リスキリングは多くの職種で必要とされているといえ、各職種において、デジタル化や業務効率化のスキルが求められる傾向があることが背景にあると考えられる。

マーケティング・ITリテラシー・データ分析スキルが求められている

「どのようなリスキリングが求められていると思いますか?」という質問に対しては、26%が「マーケティング」、22%が「ITリテラシー」と回答した。

実際に行われたリスキリングの内容でも上位に入った分野が、求められているリスキリングとしても上位に入る結果となった。

これらは現代のビジネス環境において非常に価値が高いスキルである。特にデジタル技術の進展に伴い、データ分析やIT関連スキルの習得がキャリアの成長に重要な要素となっていることを示唆している。

デジタル化とグローバル化に対応するスキルが人気

今後のリスキリング実施の意向やその内容について尋ねたところ、全体の8割以上が何らかのリスキリングの実施意向があると回答した。

全体的に、デジタル化とグローバル化に対応するスキルが今後のリスキリングで強く求められていると考えていることがわかる。企業や職場の変化に合わせて、これらのスキルを身につけることが、キャリアアップや新しい職業機会をつかむための鍵となると考えられる。

今後の課題・展望

実態調査を通じて、現代の急速に変化するビジネス環境において、リスキリングはキャリアアップや市場価値の向上に直結することが多いことが確認できた。

しかし、すべてのリスキリングが同様の効果を持つわけではないことも見てとれた。需要のない分野でリスキリングを行っても、費やした時間や資金分のリターンを得られる期待値は低く、かえってキャリアに悪影響を及ぼすリスクがある。そのため、リスキリングを検討する際には、自分のキャリア目標や市場の需要をしっかりと把握し、どのスキルが将来的に役立つのかを見極めることが重要である。

本調査では、人材需要の高い分野でリスキリングを行うことによる年収面でのメリットや、リスキリングに際し目的をもつことによるキャリアへの影響が明らかになった。適切なリスキリングを行うことで、自己肯定感や自信の向上につながり、結果的に転職活動にも良い影響を与えることが期待できる。

今後の課題としては、リスキリングの効果を最大限に引き出すことが求められる。個々のキャリアプランに応じたリスキリング戦略を立て、効果的にスキルを習得していくことが、成功のカギとなるだろう。市場の変化を常に把握し、自分自身の強みや興味を反映したリスキリングを行うことで、未来のキャリアの展望を最大限に広げることができるはずである。

調査概要

項目

詳細

調査名

転職活動におけるリスキリングに関する調査

対象者

転職前にリスキリング(資格取得や学び直し)を経験した人

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024年8月22日〜2024年9月5日

回答数

100

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