リスキリング レポート

転職におけるリスキリングの有効性に関する実態調査

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調査: スキルアップ研究所

近年、社会の変化に伴いキャリアの多様化が進展する中で、転職を検討する際にリスキリングが有力な選択肢の一つとなっている。しかし、実際にリスキリングが転職の際にどの程度役立っているのかは、これまで明確な実態が明らかにされていなかった。

そこでスキルアップ研究所では、転職におけるリスキリングの有効性について、詳細な実態調査を行った。

リスキリングは転職に役立つというイメージは強い

リスキリングが転職に役立つというイメージは強い傾向にあることが、本調査で明らかになった。リスキリングに取り組んだことがある方を対象に「リスキリングは転職の役に立つと考えていましたか?」と尋ねたところ、84.8%の人が「はい」と回答した。

つまり、実際にリスキリングを行った人々の大多数が、リスキリングを転職の有力な手段と捉えていたことになる。新しいスキルを身につけることで、希望する職種や業界への転職が現実的になると考えられていたのだろう。

リスキリングで選択肢を増やせるという考え方が半分を超える

リスキリングが転職に役立つと考えた理由について、「より多くの職業選択肢を持てる」と回答した人が52.4%と最も多数を占めた。

また、「収入アップのために専門的なスキルが必要」と回答した人も49.3%と高い割合だった。希望の収入水準を実現するには、よりレベルの高い知識・技術が求められるという認識があったと考えられる。

転職以外の目的では収入アップを目指す人が最も多い

リスキリングの目的は転職に限らず、様々なケースが見受けられた。転職以外の目的として「収入を増やすため」と回答した人が45.4%と最多だった。

現在の職場においても、よりレベルの高い専門スキルを身につけることで昇給や賃上げにつなげようという狙いがあるようだ。同様に「現在の職業で必要とされるスキルを得るため」(41.2%)、「キャリアアップや昇進を目指すため」(40.8%)と回答した層も4割前後に上った。

一方、「個人的な興味を満たすため」とリスキリングを趣味的な目的で行う人も36.4%と一定数存在した。また、「将来使うかもしれない」と漠然と将来の可能性を残す人も38.2%に上った。

つまり、リスキリングには転職を見据えた実利的な目的以外にも、単なる趣味的な目的、将来の可能性を考えた目的など、多様な動機があることが明らかになった。

リスキリングが実際に役立つと感じた人は転職者の8割超

リスキリングが実際に転職において役立ったかを尋ねたところ、リスキリングに取り組み、かつ転職も果たした人の81.8%が「はい」と回答した。

実際にリスキリングを行い、その後転職を果たした8割超の人がリスキリングの効果を実感していたことになる。

分野としては満遍ないがITがやや多め

リスキリングが転職に役立ったと答えた人々が、実際にどの分野でリスキリングに取り組んだのかを見ると、分野は比較的満遍なく分散していた。

その中でもIT関連の分野が47.2%と最も多く、約半数近くに上った。ITリテラシーの重要性が高まる中で、プログラミングやWebデザインなどIT関連のスキルを身につける人が目立った。

次いで会計・財務の22.2%、デザイン系の20.8%、医療系の20.1%と続いた。いずれも一定の割合を占めており、特定の分野に偏ることなく幅広い層がリスキリングに取り組んでいることがうかがえる。

一方、法律・法務関連は12.5%にとどまった。資格取得などハードルが比較的高いことが影響したと考えられる。

業種理解を役立った理由とする人がおよそ3割

リスキリングが転職の際に役立った理由として、「新しい業界や職種に対する理解が深まったため」と答えた人が28.3%と最多だった。

リスキリングを通じて、これまで接していなかった分野の実情や知識を身につけることができ、円滑な転職を後押ししたようだ。事前に業界理解を深められたことが、スムーズな適応につながったと考えられる。

次いで「応募資格や必要なスキルセットを満たすことができたため」が18.9%、「キャリアの選択肢が広がった」が17.6%と続いた。確かにリスキリングによって、これまでは応募資格を満たせなかった企業や職種にも門戸が開かれ、選択の幅が広がったに違いない。

リスキリングを転職に役立てるためにはニーズ理解と興味が重要

リスキリングを転職に役立てるうえで重要なポイントを尋ねたところ「自分の興味や強みに合った分野を選ぶ」ことが56.3%と最多の回答となった。

リスキリングには相当の労力を要するため、無理なく意欲的に取り組めるかが大きなカギとなる。自身の関心や適性に合った分野を選ぶことで、モチベーション維持にもつながるだろう。

同時に「目標とする職業や業界のニーズを理解する」ことも54.9%と高い割合を占めた。リスキリングの成果を最大化するには、事前に十分なニーズ調査が不可欠なのである。学習する内容と実際に求められるスキルがマッチしていなければ、転職においても活かせない。

その他、「効率的な学習方法を見つける」(40.3%)、「学んだスキルの定期的なアップデート」(36.8%)など、学習そのものへの工夫も重要視されていた。一過性の取り組みに終わらせず、継続的な見直しが欠かせない。

ニーズ理解と自身の興味関心を擦り合わせることが、リスキリングを円滑に進める鍵となるだろう。

リスキリングが転職に役立っていない要因

分野としては同様にIT分野が多い

リスキリングが転職に役立ったと感じていない人々についても、どの分野でリスキリングに取り組んだのかを見ると、IT関連が70.3%と最多となった。

リスキリングが役立ったと答えた層と同様に、IT分野へのリスキリングが目立つ結果となった。一方で、会計・財務(35.1%)、教育系(24.3%)、医療系(21.6%)などの分野にも一定数が取り組んでいた。

つまり、リスキリングが転職に役立つか否かは、必ずしも特定の分野に依存するわけではないことがうかがえる。同じIT分野でも、一部の人はリスキリングの効果を実感できず、別の人は大いに役立ったと捉えている。分野自体よりも、個人の適性や学習方法、就職活動の仕方など、他の要因が影響する可能性が考えられる。

役立たなかった理由の7割は「仕事との関連がなかった」

リスキリングが転職に役立たなかった理由として、最も多かったのが「リスキリングの内容が転職先の仕事に直接関連しなかったため」との回答で70.3%に上った。

つまり、習得したスキルと実際の職務内容にギャップがあり、期待した効果が得られなかったケースが最多であったことがわかる。転職先で求められる実務とリスキリング内容がマッチしていないと、投資した努力が無駄になってしまう危険性が極めて高いと言える。

次いで「習得した新しいスキルが市場での需要が低かった」が29.7%と続いた。スキル自体は身につけられたものの、実際の求人市場での通用性に欠けていたケースも少なくない。リスキリングは単に新しい知識を得るだけでなく、確実に需要のあるスキルを選ぶ必要がある。

このように、リスキリングが役立たなかった主な理由は、事前の市場調査やニーズ把握が不十分だったことにあると考えられる。リスキリングを有効に活用するには、ニーズに沿った適切な内容を選定し、実務で役立つスキルを身につけることが何より重要であることが改めて確認された。

リスキリングを行っても転職しない人が6割ほど

本調査で明らかになったのは、リスキリングを行った人の中で実際に転職を果たした層は34.0%にとどまり、58.5%もの人がリスキリングをしながらも転職していない実態だった。

つまり、リスキリングを行うからといって、必ずしも転職に踏み切らなければならない、また転職に踏み切れるわけではないことがうかがえる。リスキリングには転職以外にも、スキルアップやキャリアアップ、昇給・昇進、趣味的な目的など、様々な動機があることが改めて裏付けられた。

習得したスキルが現職で役立つケースは多い

リスキリングを行いながらも転職しなかった理由として、最も多かったのが「リスキリングが必ずしも転職を目的としていなかったため」で30.6%を占めた。

このことからも、リスキリングには転職以外の様々な目的があることが改めて裏付けられた。スキルアップやキャリアアップ、昇給・昇進、趣味的な学びなど、リスキリングの動機は多岐にわたる。

次いで「リスキリングで得たスキルを、現職で活かすことができると感じたため」が25.8%と高い割合を示した。つまり、リスキリングによって身につけた新しいスキルを、現在の職場で活用する機会が得られたことで、転職する必要性を感じなかったケースが少なくなかった。

リスキリングは必ずしも転職を前提とするものではなく、現職でのスキルアップやキャリア形成にも大きく寄与することがわかる。習得したスキルを現職で活かせれば転職の必要性が下がるのは自然な流れだろう。ただし、リスキリング後に転職を希望する場合は、適切な求人の発掘やマッチング、不安払拭などの課題に目を向ける必要がある。

リスキリングを生かして転職したい人は6割を超える

リスキリングを行ったものの現時点では転職していない人々に対し、「将来的にリスキリングを活かして転職したいか」を尋ねたところ、65.3%の人が「はい」と回答している。

つまり、転職には至っていないものの、6割を超える人がリスキリングの成果を将来的に転職に生かしていきたいと考えていることがわかる。リスキリングへの投資を無駄にすることなく、キャリアチェンジのための布石としての位置付けをしていると推測される。

全体として、リスキリングを転職に役立てたいという意欲の高さが伺える結果となった。リスキリングは単に新しいスキルを身につけるだけでなく、将来のキャリアビジョンを具現化する重要な手段と捉えられていることがうかがえる。

総括

リスキリングは実際に分野の偏りなく役に立つことが多いが、目標とする業界のニーズを把握することがリスキリングを転職に活用できるかの分かれ目とも言える。それに加えて興味のある分野や継続性なども大切になる。

しかし今すぐに転職をしなくても、リスキリングで取り組んだことが現職や将来の転職で役に立つこともある。

また、リスキリングを転職に活かしたいという声は多い。まずは業種のニーズ理解などが重要だということの理解が広まれば、リスキリングを活かして自分の興味にあった職業につける人も今後ますます増えていくだろう。

総じて、リスキリングには様々な目的と可能性があり、転職にも大きな役割を果たし得ることが実証された。ニーズの正確な把握と自身の適性を考慮した上で、リスキリングを戦略的に活用していくことが肝要である。

調査概要

項目

詳細

調査名

転職におけるリスキリングの有効性に関する実態調査

対象者

20代以上の社会人の方で、スキルアップに取り組んだ経験のある人(現在取り組んでいる方も含む)

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024/03/18~03/24

回答数

500

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