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テレワークで「容易に行えたこと」と「行えなかったこと」に関する分析レポート

更新日:

調査: スキルアップ研究所

※総務省「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」(2021年3月調査)のテレワーク実施者(n=286)の回答をもとに、スキルアップ研究所が集計

テレワークを実際に行った人が、何をできるようになり、何をできないままだったのか。
テレワークの質について触れられることはあまり多くない。

そこで今回スキルアップ研究所では、公的統計と民間調査をもとに、テレワークを実施した人が業務のどの部分を容易に行えて、どの部分に難しさが残ったのかを整理した。

本レポートのポイント
  • テレワークの利点の第1位は「通勤時間が削減される」で81.5%。第2位との差は27.7%もある
  • テレワークで「容易に行える」ことの上位は、通信・機器の準備(54.2%)、作業スペースの確保(51.4%)、業務の進捗の把握(50.7%)だった
  • 一方、「容易に行えない」ことの第1位は「上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること」で32.9%
  • 「気軽に相談や会話すること」が容易に行えない割合は、「業務の進捗の把握」が容易に行えない割合(13.2%)の約2.5倍にあたる
  • 別の民間調査では、「同僚とのコミュニケーションに支障がある」が48.0%だったのに対し、「取引先や顧客とのコミュニケーションに支障がある」は20.6%にとどまった

※本レポートの中心データは2021年3月時点の調査結果である。時点の扱いについては「留意事項」を参照

テレワークの利点の第1位は「通勤時間の削減」で81.5%

総務省が2021年3月に実施した「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」では、テレワーク実施者(n=286)に対してテレワークの利点を尋ねている(複数回答)。

最も多かったのは「通勤時間が削減される」で81.5%だった。

第2位は「好きな場所で作業をすることができる」53.8%、第3位は「家族等のための時間をとりやすくなった」45.1%で、第1位との差は歴然である。

テレワークの利点。「通勤時間が削減される」が81.5%で、第2位の53.8%を27.7ポイント上回る

以下、「作業に集中できる」37.1%、「病気の予防になる」32.9%と続く。

利点として挙げられた項目のうち、8割を超えたのは「通勤時間が削減される」のみである。テレワークを実施した人にとって、この働き方の価値は、まず通勤という移動をなくす点に集中していることがうかがえる。

以前弊メディアにて公開した「通勤時間の生涯コストに関する試算レポート」 では、総務省統計局の通勤・通学時間をもとに、年間の通勤時間が8時間労働日に換算して約40〜51日分に相当することを示した。テレワークの利点の第1位が通勤時間の削減であることは、その時間が働く人にとって実感される規模であることと整合する。

「容易に行える」ことの上位は、道具・場所・進捗の把握だった

同じ調査では、テレワーク実施者に対して、テレワーク中に7つの項目をどの程度容易に実施できたかを5段階で尋ねている。

このうち「容易に行える」と「どちらかといえば容易に行える」を合算すると、上位は次のとおりである。

項目(複数回答可)

「容易に行える」と「どちらかといえば容易に行える」を合算

業務に必要な通信や機器等を取りそろえること

54.2%

十分な作業スペースを確保すること

51.4%

業務やプロジェクトが今どこまで完了しているか把握すること

50.7%

作業・仕事を中断せずに終えること

47.2%

作業・仕事を行うための意欲の維持

41.9%

上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること

37.1%

上司や部下、同僚と共同で作業を行うこと

32.9%

上位3項目は、いずれも半数を超えている。

注目したいのは第3位の「業務やプロジェクトが今どこまで完了しているか把握すること」である。
一見、テレワークは今の作業進捗を確認しにくくさせるような印象を持つ。
しかしテレワークにおいて、業務の進捗という情報の共有は、比較的うまく行えていたことになる。

「容易に行えない」ことの第1位は「気軽に相談や会話すること」

一方、同じ7項目を「容易に行えない」側から見ると、順位は入れ替わる。

項目

「容易に行えない」と「どちらかといえば容易に行える」を合算

上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること

32.9%

上司や部下、同僚と共同で作業を行うこと

32.2%

作業・仕事を行うための意欲の維持

23.1%

十分な作業スペースを確保すること

22.4%

作業・仕事を中断せずに終えること

21.3%

業務に必要な通信や機器等を取りそろえること

18.9%

業務やプロジェクトが今どこまで完了しているか把握すること

13.2%


テレワークで「容易に行えない」割合。「気軽に相談や会話すること」が32.9%で最も高く、「業務の進捗の把握」13.2%の約2.5倍

「上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること」を容易に行えないとした割合は32.9%で、7項目中で最も高い。

「業務やプロジェクトが今どこまで完了しているか把握すること」と比べて19.7ポイント高く、割合にして約2.5倍にあたる。

同じ「人と人とのやりとり」でありながら、進捗という情報を共有することと、気軽に相談や会話することとの間に、これだけの差がついている。

また、「業務に必要な通信や機器等を取りそろえること」を容易に行えないとした割合は18.9%にとどまる。通信環境や機器といった、テレワークの前提となる道具の面は、相対的に問題になっていない。

これらを並べると、道具をそろえること、場所を確保すること、業務の進捗を把握することについては半数以上が容易に行えたと答えた一方で、気軽な相談や会話については容易に行えたとする回答が最も少なく(37.1%)、容易に行えないとする回答が最も多かった(32.9%)、という順序になる。

ただし、「気軽に相談や会話すること」についても37.1%は容易に行えたと答えており、すべての回答者ができなかったわけではない。ここで示せるのは、7項目のなかで相対的に難しさが残ったのがこの項目だった、という程度の差である。

コミュニケーションの課題は、社外よりも社内に偏っている

「コミュニケーションが課題である」という結果は、テレワークに関する調査で繰り返し現れる。ただし、そこで言われるコミュニケーションが誰との対話を指すのかは、区別して見る必要がある。

日経BP総合研究所 イノベーションICTラボが2020年10月14日から30日にかけて実施した「新たな働き方に関する調査」では、テレワーク利用の阻害要因を複数回答で尋ねている。

なお、同ラボは2020年春からテレワークに関する調査を継続的に実施しており、後年の日経クロステックの記事では、このシリーズは「働き方改革に関する動向・意識調査」の名称で言及されている。本レポートでは、各回の報道時点の調査名で表記する。

第1位は「同僚(上司や部下を含む)とのコミュニケーションに支障がある」で48.0%だった。これに対し、「取引先や顧客とのコミュニケーションに支障がある」は20.6%にとどまり、その差は27.4ポイントある。

テレワーク利用の阻害要因。「同僚とのコミュニケーションに支障がある」48.0%に対し、「取引先や顧客とのコミュニケーションに支障がある」は20.6%

同じ「コミュニケーションに支障がある」という選択肢でありながら、相手が社内か社外かで、選ばれた割合が2倍以上異なっている。

同ラボが半年前の2020年4月に実施した「新型コロナ対策テレワーク実態調査」(有効回答約3,000件)では、「同僚とのコミュニケーションに支障がある」を選んだ人は37.3%であり、10月調査までの半年間で10.7ポイント増えている。また、同ラボが2021年10月に実施した「働き方改革に関する動向・意識調査」でも、この項目は43.8%で第1位を維持している。なお、これらは同一シリーズの別々の回であり、各回の回答者は同一ではない。

前章までの総務省調査でも、社内に限った比較ができる。テレワーク実施の課題・障壁を尋ねた設問では、「社員同士のコミュニケーション」が17.8%、「上司からの確認・指示を得にくい」が10.8%で、その差は7.0ポイントだった。上司からの指示を受けることよりも、社員同士のやりとりのほうが多く挙げられている。

ただし、日経BP総合研究所の調査は、日経BPのデジタルメディアの読者・会員を対象としたウェブ調査であり、働く人全体の平均値として読むことはできない。

3年後の調査でも、最大の課題は「同僚との対面でのコミュニケーション」だった

ここまでに扱った調査は、いずれも2020年から2021年にかけて実施されたものである。テレワークが緊急的に広がった時期の結果であり、その後に環境が整った可能性は考慮しなければならない。

本章では、より新しい調査で同じ構図が見られるかどうかを確認する。

スキルアップ研究所が2024年7月10日から17日にかけて実施した「IT業界のリモートワークに関する実態調査」(インターネット調査、全国、回答数287)では、「リモートワーク中で最も課題と感じるものは何ですか」という設問に対し、業界を問わず最も多かった回答は「同僚との対面でのコミュニケーション」だった。

同じ調査で、「リモートで働く一番のメリットはなんですか」という設問に最も多かった回答は「通勤時間の削減」であり、約50%がこれを挙げている。

利点の第1位が通勤時間の削減であり、課題の第1位が同僚とのコミュニケーションであるという構図は、2021年の総務省調査と2024年のこの調査とで一致している。

まとめ

テレワーク実施者にとっての利点の第1位は「通勤時間が削減される」で81.5%と突出していた。

一方、テレワークで容易に行えないことの第1位は「上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること」で32.9%であり、「業務やプロジェクトが今どこまで完了しているか把握すること」の13.2%の約2.5倍にあたる。

道具や場所の準備、そして業務の進捗の把握については、いずれも半数以上が容易に行えたと回答している。7項目のなかで相対的に難しさが残ったのは、業務の情報を共有することではなく、気軽な相談や会話の部分だった。

また、コミュニケーションの課題は社外よりも社内に偏っており、社内でも上司からの指示より社員同士のやりとりのほうが多く挙げられていた。

通勤時間を減らすことと、気軽な相談や会話を保つこと。この2つを両立させられるかどうかは、テレワークをどこまで働き方の選択肢として使えるかを左右する論点になりうる。

付録:試算データ一覧

本レポートで使用した数値の一覧を示す。

基礎データ1:テレワークの利点

出典:総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」/令和3年版情報通信白書 図表2-3-4-16 対象:テレワーク実施者(n=286)/複数回答

項目

割合

通勤時間が削減される

81.5%

好きな場所で作業をすることができる

53.8%

家族等のための時間をとりやすくなった

45.1%

作業に集中できる

37.1%

病気の予防になる

32.9%

その他

1.7%

基礎データ2:テレワークで容易に実施可能なこと

出典:総務省(2021)同上/令和3年版情報通信白書 図表2-3-4-17 対象:テレワーク実施者(n=286)/単一回答(5段階)

項目

容易に行える

どちらかといえば容易に行える

どちらとも言えない

どちらかといえば容易に行えない

容易に行えない

業務に必要な通信や機器等を取りそろえること

24.1%

30.1%

26.9%

14.0%

4.9%

十分な作業スペースを確保すること

20.3%

31.1%

26.2%

16.8%

5.6%

業務やプロジェクトが今どこまで完了しているか把握すること

18.2%

32.5%

36.0%

8.7%

4.5%

作業・仕事を中断せずに終えること

19.6%

27.6%

31.5%

17.8%

3.5%

作業・仕事を行うための意欲の維持

14.3%

27.6%

35.0%

17.1%

5.9%

上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること

13.3%

23.8%

30.1%

25.5%

7.3%

上司や部下、同僚と共同で作業を行うこと

10.5%

22.4%

35.0%

23.4%

8.7%

集計結果の一覧(スキルアップ研究所が上表を合算)

項目

容易に行える(合算)

容易に行えない(合算)

業務に必要な通信や機器等を取りそろえること

54.2%

18.9%

十分な作業スペースを確保すること

51.4%

22.4%

業務やプロジェクトが今どこまで完了しているか把握すること

50.7%

13.2%

作業・仕事を中断せずに終えること

47.2%

21.3%

作業・仕事を行うための意欲の維持

41.9%

23.0%

上司や部下、同僚と気軽に相談や会話すること

37.1%

32.8%

上司や部下、同僚と共同で作業を行うこと

32.9%

32.1%

※白書本文は、「容易に行えない」の合算値として「気軽に相談や会話する」32.9%、「共同で作業を行う」32.2%、「意欲の維持」23.1%を記載している。上表の合算値とは0.1ポイント差があるが、これは白書が端数処理前の値で合計しているためと考えられる。本文中では、白書本文に記載のある項目は白書の公表値(32.9%等)を、記載のない項目は上表の合算値(13.2%等)を用いた。

基礎データ3:テレワーク実施の課題・障壁

出典:総務省(2021)同上/令和3年版情報通信白書 図表2-3-4-18 対象:テレワーク実施者及びテレワークを実施していない人/複数回答 n:白書に明示なし(他の設問と異なり、当該設問の回答者数は白書本文・掲載データのいずれにも記載がない) ※白書は、課題・障壁として挙げられた割合が10%以上のもののみを掲載している

項目

割合

テレワークに適した仕事ではないため

36.3%

勤務先にテレワークできる制度がないため

27.9%

会社に行かないと利用できない資料

22.8%

会社でしかできない手続き

19.4%

社員同士のコミュニケーション

17.8%

上司からの確認・指示を得にくい

10.8%

基礎データ4:テレワーク利用の阻害要因

出典:日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ「新たな働き方に関する調査」(2020年10月14日〜30日実施)および「新型コロナ対策テレワーク実態調査」(2020年4月13日〜19日実施/有効回答約3,000件) 調査方法:ウェブ調査/日経BPのデジタルメディアの読者・会員が対象/複数回答 ※調査結果は日経クロステックおよび日経クロステックActiveの記事にて公表されたもの。同ラボの調査シリーズは、後年の記事では「働き方改革に関する動向・意識調査」の名称で言及されている

項目

2020年10月調査

2020年4月調査

同僚(上司や部下を含む)とのコミュニケーションに支障がある

48.0%

37.3%

取引先や顧客とのコミュニケーションに支障がある

20.6%

※同ラボが2021年10月に実施した「働き方改革に関する動向・意識調査」では、「同僚(上司や部下を含む)とのコミュニケーションに支障がある」は43.8%で第1位

計算式

  • 容易に行える(合算) = 「容易に行える」+「どちらかといえば容易に行える」
  • 容易に行えない(合算) = 「どちらかといえば容易に行えない」+「容易に行えない」
  • 気軽な相談や会話と業務の進捗の把握の差 = 32.9% − 13.2% = 19.7ポイント
  • 同(倍率) = 32.9% ÷ 13.2% = 約2.5倍
  • 利点の第1位と第2位の差 = 81.5% − 53.8% = 27.7ポイント
  • 社内と社外のコミュニケーション課題の差 = 48.0% − 20.6% = 27.4ポイント
  • 社員同士と上司からの指示の差 = 17.8% − 10.8% = 7.0ポイント
  • 同僚とのコミュニケーション課題の半年間の変化 = 48.0% − 37.3% = 10.7ポイント

分析の概要

  • 中心データ:総務省(2021)「ウィズコロナにおけるデジタル活用の実態と利用者意識の変化に関する調査研究」。令和3年版情報通信白書(2021年7月30日公表)に掲載
  • 調査時期:2021年3月
  • 調査方法:ウェブアンケート調査。日本居住者1,000人が対象
  • テレワーク関連設問の対象:上記のうちテレワーク実施者(n=286)
  • 補強データ1:日経BP総合研究所 イノベーションICTラボ「新たな働き方に関する調査」(2020年10月14日〜30日実施)ほか同ラボの継続調査シリーズ
  • 補強データ2:スキルアップ研究所「IT業界のリモートワークに関する実態調査」(2024年7月10日〜17日実施/インターネット調査/全国/回答数287)
  • 分析主体:スキルアップ研究所
  • 分析方法:白書が公表している選択肢別の割合を合算し、項目間の差と比率を算出

留意事項

本レポートの中心データは、緊急事態宣言下でテレワークが緊急的に拡大した2021年3月時点の調査結果である。その後に通信環境やツールの整備が進んだ可能性はあり、実際、日経BP総合研究所の調査でも「同僚とのコミュニケーションに支障がある」は2020年10月の48.0%から2021年10月には43.8%へ低下している。本レポートが示すのは現在の水準ではなく、テレワークで業務のどの部分が容易に行えて、どの部分に難しさが残ったのかという構造である。

いずれの調査も、扱っているのは回答者の主観的な評価であり、生産性や業務成果を測定したものではない。また、標本には偏りがある。総務省調査はウェブ調査であり(白書自身が、デジタル活用経験の豊富な回答者に偏る可能性を注記している)、テレワーク関連設問の対象はn=286と比較的小さい。日経BP総合研究所の調査は同社メディアの読者・会員が対象で、働く人全体の平均値ではない(本文第4章参照)。スキルアップ研究所の調査(回答数287)は、正確な割合が非公開の設問があるため順位のみを引用した(本文第5章参照)。

異なる調査は、調査主体・時期・対象・設問がいずれも異なる。このため、倍率や差の算出は同一調査・同一設問形式の項目間に限り、異なる調査の数値どうしは比較計算していない。また、日経BP総合研究所の調査結果の利用は、公表された数値の引用とグラフの自作にとどめ、記事本文や図版そのものは転載していない。各調査の名称・実施時期・回答数の詳細は、付録「基礎データ」を参照されたい。

引用・転載について

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引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」などの形で出典を明記し、本記事およびスキルアップ研究所(https://reskill.gakken.jp/)へのリンクを付してください。

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調査結果の引用・転載について

本レポートの著作権は、株式会社ベンドが保有します。 引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」のような形で出典を明記し、本記事のリンクを付してください。 引用・転載されたことにより利用者または第三者に損害その他トラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いません。