近年働き方改革の進展により、転職がより身近になったり自由な時間が増えたりするなど、働き方に変化が見られる。
その結果リスキリングの重要性が増し、それを実践しやすい環境が整いつつあると考えられる。
しかし、実際にこうした傾向がどの程度進んでいるのかは明確ではない。そこで今回は、働き方改革がリスキリングに与える影響やその現状について調査した。
- 半分以上の人が働き方改革が進んでいると実感している
- 自由時間が増えてもリスキリングの取り組み率はほぼ変わらない
- 時間が足りないことがリスキリングをしない最大の理由
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 働き方改革とリスキリングに関する実態調査 |
対象者 | 企業で働く社会人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット |
調査期間 | 2025年4月2日〜4月9日 |
回答数 | 500 |
働き方改革の実態と影響を調査
半分以上が働き方改革が進んでいると実感している
社会人500人を対象に「あなたの職場では働き方改革が進んでいますか?」という質問を行うと、半分以上が「進んでいる」「どちらかといえば進んでいる」のいずれかに回答した。
この結果から働き方改革は多くの職場で進行していることが分かる。
しかし、「進んでいる」と答えた人はわずか9.2%であり、本格的に改革が行われている職場はまだ少なく、働き方改革の普及は十分に進んでいるとは言えない。
働き方改革は主に労働時間や休暇に関する取り組みが進められている
働き方改革として実際に進められている取り組みについて具体的に聞いたところ、「残業時間の上限規制」が44.7%で最も多かった。
その他にも「年次有給休暇の取得を義務化」「育児や介護との両立を支援する制度」「テレワークやフレックスタイム制の拡充」なども3割程度の方が回答している。
この結果から、働き方改革は主に労働時間や休暇に関する取り組みが進められていることが分かる。
約4割の人が働き方改革によって転職しやすくなったと感じている
「働き方改革によって、転職がしやすい環境になったと感じますか?」という質問を行うと、43%の方が「はい」と回答した。
この結果から一定数の人が働き方改革によって転職がしやすくなったと実感していることが分かる。
半分以上の人が自由に使える時間が増えたと実感
「働き方改革によって、自由に使える時間が増えたと感じますか?」という質問に対しては、「はい」と答えた方が56.6%を占めた。
この結果から半分以上の人が働き方改革による自由時間の増加を実感していることが分かる。
自由時間が増えたことによってリスキリングなどのスキルアップに対する意識が高まっている可能性が指摘できる。
4人に1人が職場の人材育成制度が充実したと回答
「働き方改革によって、職場の人材育成制度は充実しましたか?」という質問を行うと、「はい」と回答した方はわずか25.4%であった。
人材育成制度が充実した職場はまだまだ少ないが、一定数の人は人材育成制度の充実を実感している。職場の人材育成制度が充実した人はリスキリングなどがしやすくなったと考えられる。
働き方改革とリスキリングの関係について調査
自由時間が増えてもリスキリングの取り組み率はほぼ変わらない
働き方改革によって自由に使える時間が増えたと感じる人と感じない人それぞれに「リスキリングの経験」の有無について尋ねたところ、どちらもリスキリング経験者の割合は10%台にとどまり、その差は5%程度であった。
この結果から、自由な時間が増えたとしても、それを特にリスキリングに活用する人は多くないことが分かる。
職場の人材育成制度が充実するとわずかにリスキリングの取り組み率が高まる
働き方改革によって職場の人材育成制度が充実したと感じる方、感じない方それぞれにリスキリング経験の有無を尋ねたところ、人材育成制度が充実したと感じる方は29.9%が「経験あり」、人材育成制度が充実したと感じない方は22.8%が「経験あり」と回答した。
人材育成制度が充実したと感じる方の方がわずかにリスキリング経験ありの割合が高いが、明確な影響があるとは言えない。
リスキリングの実態について調査
7割の人がリスキリングが必要だと感じている
「自分にはリスキリングが必要だと感じていますか?」という質問を行うと、70.2%の方が「はい」と回答した。
この結果から、多くの人がリスキリングの必要性を感じていることが分かる。しかし、実際に取り組んでいる人は少ないため、実際に取り組むには何らかの障壁が存在すると考えられる。
リスキリングに取り組む最大の理由は転職
リスキリング経験者に対して「あなたがリスキリングをしている(していた)理由を教えてください。」という質問を行うと、「転職するため」という回答が53.7%で最も多かった。
この結果から、半分以上の人が転職のためにリスキリングに取り組んでいることが分かる。
働き方改革が進み、ワークライフバランスの実現やキャリアアップといった労働者個人の希望が重視されるようになり、転職へのハードルも低下していくと考えられる。そのため、今後さらに転職のためにリスキリングに取り組む人が増えると考えられる。
時間が足りないことがリスキリングをしない最大の理由
リスキリング未経験者に対して、「あなたがリスキリングをしない理由を教えてください。」という質問を行うと、「時間が足りないから」という回答が44%で最も多かった。
しかし、働き方改革によって自由時間が増えた人でもリスキリングの取り組み率が依然として低いことが前の調査で分かっている。
この結果から働き方改革で自由時間が増えたといっても、リスキリングが十分にできるほどの時間が増えたわけではない可能性が指摘できる。
課題と展望
調査の結果、半分以上の人が働き方改革が進んでいるのを実感していることが分かった。働き方改革は主に労働時間や休暇に関する改善が進められており、多くの人が自由時間が増えたと実感している。そのため自由時間を活用してリスキリングをする人が増えていると予想できる。
しかし、実際は働き方改革による自由時間の増加や人材育成制度の充実とリスキリングの取り組み率に関係はあまり見られなかった。時間が足りないことがリスキリングをしない最大の理由であることも考えると、働き方改革によって増えた自由時間はリスキリングを行うには不十分である可能性が指摘できる。
リスキリングの取り組み率をより上げるためには、現状よりさらに可処分時間を確保できるような改革を進めていくことが必要なのではないだろうか。
調査結果の引用・転載について
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