リスキリング レポート

フリーランス転身時の実務面の変化に関する実態調査

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調査: スキルアップ研究所

近年、フリーランスという働き方が注目を集め、従来の雇用形態から離れ、自らの専門性を活かして独立する道を選ぶ人が増加している。

フリーランスならではの自由度と可能性に魅力を感じる人が多い中、従来の雇用とは異なる点が多く、フリーランスへの転身を躊躇する人も少なくない。特にフリーランスは自身で案件獲得をする必要があり、営業スキルなど、会社時代に重要視されていなかった能力が必要になる場合もある。

フリーランスならではの実務に関する実態を解明すべく、スキルアップ研究所では、フリーランス転身時の実務面の変化について調査を実施した。

「フリーランス転身時の実務面の変化に関する実態調査」結果のポイント
  • フリーランスへの転身時期は20代後半から30代
  • エンジニア系は年収が増加傾向、他の職種は年収増加が厳しい状況
  • 年収増加の要因は自己管理やコミュニケーション能力
  • 4割以上が営業活動を自身で行っている

フリーランスへの転身時期は20代後半から30代

フリーランスへの転身時期を尋ねると、30代前半が31.0%を占め、最も多いことが調査結果から明らかになった。次いで、20代後半・30代後半が多くなっている。

一方で、40代以降の転身は比較的少数派であり、全体の4分の1程度にとどまっている。

この結果から、多くの人が20代後半から30代にかけて、ある程度の経験を積んだ後にフリーランスへの転身を決意する傾向があると推測できる。

転身理由は「ライフステージの変化・家庭の事情」が最多

フリーランスへの転身を決意する理由は多岐にわたるが、最も多い回答は、全体の26.0%が「ライフステージの変化や家族の事情」を主な理由としており、個人の生活環境の変化がキャリアの転換点となっていることが明らかになった。

次いで多かったのは「労働条件の不満」で15.0%であった。「年収が低い、上がらない」が14.0%と続いた。これらの回答から、従来の雇用形態における待遇面での不満足が、フリーランスへの転身を促す大きな要因となっていることがわかる。

フリーランスへの転身は、単に仕事の内容を変えたいという欲求だけでなく、より良い労働条件や生活との両立を求める動きの表れであると考えられる。

フリーランス転身の準備期間は7割以上が半年未満

フリーランスへの転身にかかった準備期間に関して、最も多かった回答は「3ヶ月未満」で全体の41.0%を占めている。次いで「3〜6ヶ月未満」が32%となっており、この二つを合わせると計73.0%の人が半年未満の準備期間でフリーランスへ転身していることがわかる。

フリーランスへの転身は比較的短期間で決断され、実行に移されるケースが多いことが示唆される。これは、転身を決意した時点で既にスキルや顧客基盤がある程度確立されているケースや、リスクを恐れずに挑戦する姿勢を持つ人が多いことを反映していると考えられる。

一方で、約4人に1人は半年以上の準備期間を設けているように、より慎重に準備を進める層も存在する。

個人の状況や業界の特性、転身の理由などによって適切な準備期間は異なる。自身のスキルや顧客基盤の有無、貯蓄額等に応じ、状況に応じた準備期間の設定が重要であると言える。

フリーランスの年収は職種によって特徴がある

フリーランスの年収を尋ねたところ、職種ごとで特徴が見られることが分かった。

エンジニア系フリーランスの年収は比較的高い層に分布しており、400万円以上が6割以上を占めている。これは他の職種と比較して高い水準であり、エンジニアのスキルに対する市場の需要の高さを反映していると言える。

その他の職種では400万円未満が7割弱〜9割以上を占めている。フリーランスと一口に言っても、各職種で年収の分布はさまざまであり、転職の際には「フリーランス」ではなく「どの職種のフリーランス」かを意識することで前もって年収のイメージを掴みやすくなるだろう。

エンジニア系は年収が増加傾向、他の職種は年収増加が厳しい状況

フリーランスへ転身してからどのくらい年収が変化したかを尋ねてみると、こちらも各職種で特徴があることが分かった。

エンジニア系は、全体的に増収傾向が強い。50万円以上100万円未満の増加が25.6%と、年収分布が高かったことからも、前職から年収を増加させやすいようである。この結果は、IT業界の好調さとエンジニアスキルへの高い需要を反映していると言える。

その他の職種に関しては、マーケティング系を除き年収増加を達成した割合が半分以下であるなど、比較的厳しい状況にあることがわかる。

また、全体として年収の増加及び減少の額は広く分布する傾向にあり、フリーランスの収入が個人の影響力や契約内容によって収入が大きく変動することを示唆している。

年収増加の要因は自己管理やコミュニケーション能力

「フリーランスとしての年収が増加した要因は何ですか?(複数回答可)」という質問に対しては、「タスクや時間、体調などにおける自己管理能力の向上」と回答した人が15.9%で最多となった。

フリーランスとして成功するためには、自己管理能力が極めて重要であることがこの結果から読み取れる。効率的な時間管理や体調管理が、結果として生産性の向上や品質の改善につながり、収入増加に寄与していると考えられる。

次に多かったのは「コミュニケーション能力の向上」で15.4%となっている。フリーランスにとって、クライアントとの良好な関係構築や、自身の価値を適切に伝える能力は収入に直結する重要なスキルである。

この能力の向上が、リピート案件の獲得や新規クライアントの開拓につながり、結果として年収増加に貢献していると推測される。

年収減少の要因は営業スキル不足や営業活動の減少

「フリーランスとしての年収が減少した場合、その理由は何だと思いますか?(複数回答可)」という質問に対し、最も多かった回答は「営業スキルが低い」で17.9%だった。フリーランスにとって、自身の価値を適切に伝え、新規クライアントを獲得する能力は収入に直結する。この結果は、営業スキルの重要性と、その不足が収入減少に大きく影響することを明確に示している。

次に多かったのは「営業活動の減少」で16.9%となっている。これは、スキルの問題だけでなく、実際の行動量の減少も収入に大きな影響を与えることを示唆している。継続的な営業活動がフリーランスの安定した収入確保には不可欠であることが浮き彫りになっている。

4割以上が週休2日

フリーランスの週休日数は、個人によって大きく異なるようだ。

週休日数について尋ねたところ、最も多かった回答は「2日」の休暇取得で、全体の42.5%を占めている。この結果は、多くのフリーランスが一般的な勤務形態に近い週休2日制を自主的に採用していることを示唆している。

次に多かったのは「1日」の休暇取得で18.0%となっている。これに「とっていない」を合わせると、週に1日以下の休暇しか取得していないフリーランスが全体の35%に達することがわかる。

この層は、仕事量の多さや締め切りの厳しさ、あるいは高い収入目標などの理由から、より多くの時間を仕事に充てている可能性が高い。

過半数が1~2社から案件を請け負っている

フリーランスに対して案件を請け負っている会社数を尋ねると、最も多かった回答は「1社」からの案件受注で、全体の36.0%を占めている。次に多かったのは「2社」からの案件受注で26.5%となっている。

つまり、62.5%のフリーランスが1〜2社からの案件で仕事を行っていることになる。

複数の取引先から案件を受けることにより収入の安定を図るよりも、比較的少数の取引先との関係性を重視し、特定の取引先からの安定した仕事の確保する傾向が強いと考えられる。

一方で、より多くの企業から案件を受注しているフリーランスも一定数存在する。「3社」からの受注が16.5%、「4社」が4.5%、そして「5社以上」も16.5%となっている。この層は、多様な案件を手がけることで収入の安定化やスキルの多角化、リスク分散を図っていると推測される。

コミュニケーションが仕事に影響していると感じる人が半数以上

フリーランスは自分で営業をするなど、コミュニケーション力が重要ともいえる働き方である。

そこで、コミュニケーション能力が自身の仕事にどのくらい影響しているか尋ねたところ、回答者の64.5%がコミュニケーション能力が自身の仕事に「影響している」または「非常に影響している」と回答する結果となった。

この結果からも、フリーランスの成功にとってコミュニケーション能力が不可欠であるという認識が広く共有されていることを示している。

一方で、26.5%の回答者が「どちらとも言えない」と答えており、職種による差も一定存在することが分かる。

4割以上が営業活動を自身で行っている

案件獲得にあたり自身で営業を行っているか尋ねたところ、回答者の41.0%が現在自身で営業活動を行っていると回答した。さらに、現在は営業活動を行っていないものの、今後自身で営業をする計画があると回答した層が35.0%を占めた。

フリーランスの多くが自己営業の重要性を認識し、将来的にはその実践を視野に入れていることを示唆している。

一方で、24.0%の回答者が「していない、あるいは今後も自身で営業をする計画がない」と回答している。この層は、既存のクライアントや紹介などを通じて安定的に案件を獲得できていると考えられる。

週1〜6時間を営業にかけている人が半数以上

現在営業活動を行っている方を対象に、営業にかけている時間について尋ねてみると、「1週間に1時間以上3時間未満」が約半数を占めている。これに「1週間に3時間以上6時間未満」を合わせると、約9割が営業活動に割く時間は6時間未満となっている。

この結果は、多くのフリーランスが本業の専門業務と並行して、定期的に営業活動を行っていることを示唆している。週に1〜6時間という時間配分は、日々の業務の合間を縫って営業活動を行っている実態を反映していると考えられる。

一方で、より多くの時間を営業に費やしているフリーランスも存在する。1週間に6時間以上を割く層が計12.1%となっており、これらの層は、営業活動により多くのリソースを投入し、積極的に案件獲得を目指していると推測される。

営業手法はメールやSNSでのやりとり

営業手法について尋ねてみると、最も多く利用されているのは電子メールで、45.0%の回答者がこの方法を選択している。次いで、ソーシャルメディアやメッセージングアプリの利用で28.0%を占めている。ビデオ会議は11.5%、電話は10.5%とほぼ同程度の利用率となっている。

電子メールのみならず、ソーシャルメディアやメッセージングアプリ、ビデオ会議等の手段も多く利用されているのは、フリーランスのコミュニケーション手段が多様化し、デジタル技術を活用した非対面のコミュニケーションが主流となっていることを明確に示している。

大部分がクライアントとの関係は良好

回答者の65.5%が、クライアントとの関係を「良好」または「非常に良好」と評価している。この高い割合は、フリーランスの多くがクライアントとの間に信頼関係を築き、円滑なコミュニケーションを維持できていることを示唆している。

こうした良好な関係性は、フリーランスの仕事の質や納期の遵守、そしてクライアントのニーズに対する適切な対応など、様々な要因が複合的に作用した結果であると考えられる。

一方で、「あまり良好ではない」「非常に悪い」と回答した層は、計1%と非常に低い割合にとどまっている。転身にあたって、クライアントとの関係を維持できるか不安に思う方も多くいると予想されるが、フリーランスへの転身にあたっての不安要素が軽減される結果となったといえる。

今後の課題と展望

フリーランスとして働くことは、より良い労働環境を実現することに繋がる。しかし、場合によっては年収の増加が難しい現実があることは懸念事項である。フリーランスに転身する際には、収入源の確保、すなわち安定した案件の獲得が重要といえ、今後フリーランスという働き方への公的なサポート、企業の受け入れ拡大等が求められるだろう。

また、クライアントとの良好な関係を築くためのコミュニケーション能力の向上が成功の要因として広く認識されて​おり、フリーランスとしての活動では、転身後も自律的に仕事を進める能力が求められる。フリーランス=自由ではなく、仕事をする上では自己管理と向上心を持って取り組むことが必要である。

調査概要

項目

詳細

調査名

フリーランス転身時の実務面の変化に関する実態調査

対象者

フリーランスとして働いている方

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024年6月20日〜6月26日

回答数

200名

調査結果の引用・転載について

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