転職に対する考え方は時代が進むとともに変化してきており、今では転職は当たり前の選択肢となりつつある。
しかし、転職のタイミングや転職をする年代は人によって様々であり、とりわけ年代は個人が持つスキル及び人材の市場価値との関連性が高いため、転職活動に際して大きく影響を与える可能性がある因子である。
年代ごとの転職理由や満足度、転職先の選び方、年収の変化などにはどのような違いがあるのだろうか。年代ごとの転職に対する意識や取り組みを解明するべく、スキルアップ研究所では調査を実施した。
- 「ライフスタイルの変化」による転職は年代が高くなるほど割合増加
- 40代以降の50%以上の人が転職で「年齢の壁を感じた」
- 35%が「自分の市場価値の理解」が最も重要と回答
転職理由は人間関係の不和や給与・待遇への不満が多い
「転職を決めた一番の理由は何ですか?」という質問に対し、どの年代にも共通して多かった回答は、「職場の人間関係がよくなかったから」と「給与や待遇に不満があったから」であった。20代や30代などの比較的若い世代になるほどこれらの回答の割合は高くなっている。
また、20代~50代ではライフスタイルの変化を理由に転職を決めた人も多いことが分かった。転職が当たり前になりつつある現代社会では、若い世代は必ずしも新卒で入社した企業で定年まで勤め上げるつもりはなく、転職をキャリア形成の手段と捉える傾向にあると考えられる。その一方で、40〜50代では、長く働くことを優先しつつ、必要に応じて転職という選択肢をとるという感覚が強い傾向にあるといえる。
そのような世代間での転職に対する前提の違いが、転職をする理由の違いにも影響していると考えられる。
転職先選びのポイントは待遇と勤務地
「直近の転職先の企業を選んだ理由は何ですか?」という質問に対して、それぞれの年代の回答に特徴的な結果が現れた。
20代~40代では「高い給与と充実した福利厚生」や「勤務地と通勤の利便性」という回答が多く集まった。若手から中堅のこの世代は、年収アップを目指す人が多く、また子育てなどのために勤務地にこだわる人も多いと推察できる。
50代では、26.7%が「残業時間」を重要視することが分かった。年齢を重ねるにつれて体力的に長時間の労働は厳しいことがうかがえる。
直近の転職への年代別満足度
どの年代でも転職結果に満足している人の方が多い
「あなたは直近の転職結果に満足していますか?」という質問に対し、全ての年代において転職結果に満足している人の割合が70%以上であることが分かった。
中でも、30代~40代の転職結果は満足度80%を越えている。キャリアをある程度長く積んできたことで、今後のキャリアプランや転職の目的をより明確に見据えることができていることが理由だと考えられる。
40代での転職が最も満足できる結果を得やすい
「直近の転職結果の満足度に点数をつけるなら何点ですか?」という質問に対し、転職の満足度は30代と40代では平均点が70点を越えており、比較的高い自己評価となっている。
一方、50代の転職における満足度の平均点は65点と最も低い値となった。企業側の「長く働いてもらえる人材に入社してほしい」という思いと50代の転職者のキャリアビジョンはマッチしづらく、何らかの妥協を強いられている可能性が考えられる。
転職への認識は世代によって差がある
「あなたの周り(職場、家族、友人など)では転職はどのように認識されているように感じますか?」という質問に対し、20~40代では「転職はライフスタイルに合わせた自己実現の手段」と認識されているという回答が最も多かった。
また、20代~30代に関しては、20代では21.6%、30代では26.7%が「転職はキャリアアップのためにするべき」と認識されていると回答し、多くの人が転職を経験する現代社会の様子を表していると言えるだろう。
一方で、50代では40.0%が「転職するより同じ会社に居続けた方がいい」と認識されていると回答しており、世代によって意見が大きく分かれる結果となった。
30〜40代で年収増加幅が大きくなる傾向
「転職をしてどのくらい給料が変わりましたか?」という質問に対し、それぞれの年代の回答に特徴的な結果が現れた。
20代では54.0%の人が50万円未満の年収増加を実現している。他の年代に比べて経験値は低いが、転職によって年収を増加させるのは十分可能であるようだ。
30代~40代はスキルや経験値が増え、20代の転職者に比べて年収の上がり幅が大きくなっている。実際、約10%の人が100~150万円の年収アップを実現させている。一方で、経験値が増えている分、実力に差がついていくため、年収が下がることも珍しくないことが分かった。
50〜60代でも、40代以下と変わらない水準の割合で年収増加を実現できるようだ。年齢的に厳しいのではと諦めず、自分の納得する待遇の求人を根気強く探すことも重要といえる。
40代以降の転職では半分以上が年齢の壁を感じる
「転職活動において年齢の壁を感じましたか?」という質問に対し、40代以降では半分以上が「転職時に年齢で壁を感じる」と回答する結果となった。
一方で同質問に対し、20〜30代では年齢の壁を感じた人が40代以上のおよそ半分またはそれ以下という結果となった。転職市場において「若い世代はポテンシャルが重視されるため有利」とされているのが、数字にも表れる結果となった。
年齢制限や体力的な不安がネック
「転職活動において壁を感じた」と回答した人を対象に転職活動時に壁を感じた場面を尋ねたところ、全ての年代で「求人に年齢制限がある」という回答が多かった。
また、50代以降では、「体力的にきつい」という回答の割合が40代以下に比べ高くなっている。求人はあっても、自身の体力が転職活動のハードさに追いつかない、あるいは、転職先の業務内容的に体力面で不安を感じるというケースが多いと考えられる。
転職は求人情報のチェックと書類制作が大変
「転職活動で苦労したことは何ですか?」という質問に対し、全ての年代で最も多かった回答が「履歴書・職務経歴書の作成」である。最近では履歴書や職務経歴書をオンラインで提出する企業も増えているが、応募する企業が増えるほど履歴書を準備する労力や、各社ごとに内容を精査するなど、かかる時間は増え、かなり大変な作業であると言えるだろう。
一方で、「膨大な求人情報をチェックすること」という回答も多かった。実際、転職エージェントを活用した場合は、希望条件をもとに、担当者からかなり多くの求人を紹介されるケースがある。求人に応募する前に、どの求人に応募するかを決めることに多くの時間を費やすこととなるため、かなり苦労する作業であると言えるだろう。
また、意外にも「ネットワーク(人脈)がない」という回答が、年齢が上がるにつれて割合が高くなることが分かった。要因としては、高年齢層になると周囲で転職活動をしている人が減るため、情報交換がしづらくなることなどが考えられる。
転職で最も大切なことは自分の市場価値を理解すること
「今後転職する人に向けて、転職において最も大切だと感じることを教えてください」という質問に対し、35.0%の人が「自分の市場価値を理解する」と回答している。以下は年代別の分析結果であるが、この傾向は特に40〜50代で強くみられている。
また、全体で32.0%の人が「一つの企業に固執しすぎない」と回答した。これは若い年代でより割合が高くなっており、若さゆえに視野が狭くなってしまっていたが、のちに振り返った時に「他の選択肢も有り得た」と感じる人も多いのかもしれない。
転職は一度社会を経験した状態でもう一度働く業界や職種を選べるチャンスである。
高い目標を掲げたり、特定の企業に愛情を持つことは大切である。しかし、それによって自身の市場価値を分析しなかったり、他の業界や職種を選択肢に入れなかったりすることは、社会人としての視野を広げる機会を失ってしまうことにも繋がりうる。
今後の課題・展望
今回の調査で、転職に関する実態は年代によってかなり異なることが明らかとなった。
転職を決めた理由に関しては、20代~30代の若い世代では人間関係の不和や待遇への不満が挙げられるのに対し、30代~50代ではライフプランの変化を理由とした転職が多い。
また年収の面に関しては、20代では将来性を見込んだ年収アップが期待できるが、30代~40代となってくると実力に差がつき、年収増加に成功する人とそうでない人とで乖離が生まれる傾向がみられた。転職は一般的にキャリアアップとして捉えられ、年収アップも期待されるが、必ずしもそのような結果になるとは限らないといえる。
実際、転職は若い年代の方が有利であり、「年齢の壁」も歳を重ねれば重ねるほど感じやすいという結果がそれを裏付けている。しかし、十分な経験やスキルがあれば、中高年での転職も成功する可能性は十分にある。自身の市場価値を見極め、転職の目的を明確にし、自分に合った転職をすることが重要である。
調査概要
項目 | 詳細 |
調査名 | 転職活動の年代別の実態の変化に関する調査 |
対象者 | 転職活動を経験したことがある方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024年7月3日〜2024年7月8日 |
回答数 | 200名 |
調査結果の引用・転載について
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