近年、転職が一般的になりつつある中、コンサルティング業界は多くの転職希望者にとって魅力的な選択肢として注目されている。一方で、コンサルタントとしてのメリットやデメリットについては様々な噂が飛び交っている。しかしその実態は、特に未経験者にとっては見えにくいのが現状である。
そこで本調査では、業界の実態をより客観的に把握するため、コンサルタント経験者の配偶者を対象にアンケートを実施した。ここでは、業務だけでなく、家庭的な影響なども含めた多角的な側面からコンサルティング業務の実態を提供する。
- 「給料が高い」ことが1番のメリット
- 半数以上が「激務そう」と感じる
- 家庭満足度は8割以上
半数が未経験からの転職
配偶者のキャリア経歴を尋ねたところ、半数が他業界からコンサルティング業界へ転職していることが判明した。一般に、未経験者には参入が難しいと思われがちなコンサルティング業界だが、実際には多くの方が業界未経験からの転職を経験していることが明らかになった。
また、コンサルティング業界内での転職経験者は28.6%、転職経験のない人は21.4%であった。これより、業界内での流動性が高いことも示唆されている。
未経験での転職では63.6%が日系ファームへ
他業界からコンサルティング業界へ転職した人を対象とした、「配偶者さまはどのコンサルティングファームへお勤めですか」という質問では、63.6%が日系ファームに転職していると回答した。
この結果から、未経験者にとって日系ファームへの転職の方が、比較的垣根が低いことが指摘できる。日系ファームが多様なバックグラウンドを持つ人材の受け入れに積極的である可能性も考えられる。
経験者全員がコンサルへの転職で外資系ファームへ
コンサルティング業界内での転職動向を調査したところ、同業種からの転職者全員が外資系ファームを選択していることが明らかになった。
同業界内の転職では、仕事内容の面白さ・待遇など、各種水準の高さを求める場合が多いが、それらの要求を満たす企業として外資系ファームが認識されていると考えられる。
給料が高い点がコンサルティング業界の1番のメリット
「コンサル業界の良いと思うところを教えてください(複数選択)」という質問では、半数が「給料が高い」と回答し、さらに25%が「昇給が早い」と回答した。
給与の高さは、転職市場において常に注目される要素である。特に配偶者の視点からは、家計への貢献度が高いことから、今回の結果が顕著に現れたのであろう。コンサルティング業界が金銭的な面で魅力的であることを裏付ける結果となった。
8割以上が週5日以下の出勤
プロジェクト中の週平均出勤日数を尋ねたところ、82.1%が週5日以下の出勤であると回答した。内訳としては週5日が50.0%と最も多く、次いで3日以下が17.9%、4日が14.3%となった。
この結果は、コンサルティング企業がワークライフバランスを重視し、多様な働き方を取り入れていることを示唆している。出勤は週5日以下の勤務体制が主流であることから、リモート体制など、柔軟な働き方が可能な環境が整っていると考えられる。
回答の67.9%が「仕事内容が激務そう」だと感じている
「コンサル業界の悪いと思う点を教えてください(複数回答)」という質問では、67.9%が「仕事内容が激務そう」だと回答した。一般的なイメージにもあるように、激務である点が業界の最大の懸念事項であることを示している。
加えて、この結果が配偶者という外部の視点から得られたものであることに重要な意味を持つ。当事者自身は仕事の忙しさに慣れ、環境の厳しさを客観的に認識しにくい場合がある。しかし、身近な存在である配偶者の目を通して、業務の過酷さを客観的に評価することができたといえる。
繁忙期では96.4%が家事を補助してもらっている
「仕事が忙しい時、家事の負担は誰が担っていますか?」という質問に対し、コンサルタントが自身で家事を担当しているケースはわずか3.6%となった。繁忙期ではほとんどのコンサルタントが家事を代行してもらっていることが明らかになった。
この結果は、コンサルタントの繁忙期では、家庭生活との両立が困難な状況にあるほど非常に業務が忙しいことを示唆している。
年に数回体調を崩してしまう人が多い
「配偶者さまの健康状態を教えてください」という質問に対し、半数が「年に1、2回体調を崩すことがある」と回答した。さらに、25.0%が「年に3、4回体調を崩すことがある」と答えており、合わせると74.9%が年に複数回体調を崩していることがわかった。
一方で、「いつも元気」と答えた人は17.9%にとどまっている。この結果は、コンサルタントの仕事が心身に与える影響の大きさを示唆している。
コンサルタントとして成功するためには、高度な専門知識やスキルだけでなく、心身の強さも重要な要素であることが明らかになった。
共働き家庭が全体の71.4%
「共働き家庭ですか」という質問では、71.4%が「はい」と回答した。この結果は、コンサルティング業界においても共働き家庭が主流となっていることを示している。
厚生労働省の調査によると、2022年時点で「雇用者の共働き世帯」は1,262万世帯、「男性雇用者と無業の妻からなる世帯」は539万世帯であり、夫婦のいる家庭のうち共働き世帯の割合はおよそ7割であることがわかる。(出典:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書 共働き等世帯数の年次推移」)
既述してあるように、コンサルティング業界は給与水準が高いとされている。その上で、全体とほぼ変わらない7割以上の家庭が共働きを選択しているという事実は注目に値する。この傾向は、近年の社会全体における共働き世帯の増加傾向と一致していることが明らかになった。
一人っ子の家庭が1番多い
「お子さんは何人いらっしゃいますか」という質問では、57.1%が「1人」と回答し、最も多い結果となった。厚生労働省の調査によると、一人っ子の割合は子どものおよそ4人に1人以下であることから、一人っ子の割合は非常に高いといえる。(出典:第4回21世紀出生児縦断調査結果の概況 )
年代によってはこれから子供の人数が増える可能性も考えられるが、子供の人数を年代別に分析すると、本調査ではむしろ高い年代の方が1人っ子の割合は高かった。
コンサルティング業界では給与水準が比較的高いことを考慮すると、一人っ子を選択する主な理由は経済的な要因よりも、時間的な制約にあると推測される。コンサルタントの仕事は多忙であり、子育てに十分な時間を割くことが難しい可能性がある。
この結果は、コンサルティング業界におけるワークライフバランスの課題を示唆している。高収入を得られる一方で、家族との時間を確保することの難しさが、家族計画に影響を与えていると考えられる。
家庭の幸福度に対して82.1%が満足している
家族の幸福度について調査したところ、82.1%が満足していると回答した。
これは、コンサルティング業界で働く人々の家庭生活が、予想以上に良好であることを示唆している。本調査で、コンサルティング業界の様々なメリットとデメリットが明らかになったが、配偶者という目線で総合的に見れば、家庭内においては高い満足度が得られていることが証明された。
課題と展望
今回の調査により、配偶者の視点から見たコンサルティング業界の実態が明らかになった。この業界には確かに長時間労働や激務といったデメリットが存在する。しかし同時に、高給与であることや、出勤日数が特別多いわけではなく、柔軟な働き方が可能であることなど、多くのメリットも併せ持っていることがわかった。
総合的な評価として、家族の満足度が8割を超えるという結果は注目に値する。
今後の業界としての課題は、労働環境改善が挙げられる。働きやすい環境づくりを目指すことで、より多くの人材を惹きつけ、業界の発展につながるだろう。
一方、労働者の視点からは、これらのデメリットを十分に理解した上で就職を決断することが重要である。また、配偶者の協力を得られるような家族環境の構築も、キャリア成功の鍵となるだろう。
調査概要
項目 | 詳細 |
調査名 | 配偶者に聞いたコンサルティング業界の実態調査 |
対象者 | コンサルタント経験者の配偶者 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024年5月17日〜2024年5月23日 |
回答数 | 28 |
調査結果の引用・転載について
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