リスキリング レポート

英語学習アプリにおけるAI英会話の利用実態に関する調査

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調査: スキルアップ研究所

AI英会話は、社会人の学び直しの中でも特に人気の高い「英会話」において、近年その学習効果と利便性から急速に普及が進んでいる。

グローバル化が加速する現代において、ビジネスや自己成長のために英会話の重要性は増す一方であり、AI英会話はその有効な選択肢として確固たる地位を築きつつある。

そこで、スキルアップ研究所では前回の調査に引き続き、「英語学習アプリにおけるAI英会話の利用実態に関する調査」を実施した。前回調査では、AI英会話機能の人目を気にせずに話せる点が、高く評価されていることがわかった。

本調査ではこの結果をさらに深掘りし、具体的にどのような状況で生まれ、学習全体にどう波及するのかを多角的に分析した。また、さらに、ユーザーが次に求める改善点を調査することで、今後の市場の進化の方向性を探った。

「英語学習アプリにおけるAI英会話の利用実態に関する調査」結果のポイント
  • AI英会話の学習効果の実感率は大幅向上している
  • 「間違いを恐れなくていい」体験が、英語学習全体の意欲を向上させる
  • AI英会話は「自分に合うか」で選ぶ時代へ

【調査概要】

項目

詳細

調査名

英語学習アプリにおけるAI英会話の利用実態に関する調査

対象者

英語学習アプリ利用者

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2025年6月11日~6月18日

回答数

300名

2025年実施の前回調査はこちら

AI英会話、利用率・学習効果ともに向上

AI英会話機能搭載アプリを利用している割合は上昇中

本調査では、英語学習アプリ利用者のうち約半数が「AI英会話機能を利用している」と回答した。一方で、「AI機能が搭載されていないアプリを使っている」と答えた人は全体の2割であった。

前回調査では、AI英会話機能付きプランの利用者は3割にとどまっていたことを踏まえると、この短期間で利用者が確実に増えていることがうかがえる。

AI英会話機能の学習効果の実感率が大幅向上

本調査において、利用者の8割以上がAI英会話機能は英会話力向上に「役立っている」と回答し、さらに「全く役立っていない」との回答は0人であった。

前回調査で、AI英会話機能の利用により英会話が「上達した」「やや上達した」と実感した人の割合は53.5%である。

この結果から、AI英会話がより実践的な英会話力向上に直結するツールへと進化し、学習者がその手応えを強く感じるようになったことが示唆される。

AI英会話が支持される理由は間違いを恐れない「心理的安全性」

AI英会話を「使ってみたい」となる一番の理由とは

AI英会話の利用意欲を最も喚起する要因が、「間違いを恐れずに話せる」という利点であることが本調査で改めて浮き彫りになった。

前回調査で最大の利点として挙げられたこの点(41.7%)は、今回「使ってみたい」と感じる情報を尋ねた際も、「時間や場所の柔軟性」や「練習の手軽さ」といった他のメリットを抑えて最多回答となった。

この結果を踏まえ、本稿では「間違いを恐れない」という感覚が具体的にどのような状況で生まれるのかを分析する。それを通じて、学習者がAIに抱く「安心感」の源泉と、それがもたらす学習効果を明らかにする。

AI英会話は自分の英語に自信がなくても大丈夫

具体的にどのような瞬間に「間違いを恐れずに話せる」かを尋ねたところ、「相手(AI)にどう思われるかを気にせず話せる時」がトップとなり、次いで「自分の発音や文法に自信がない言葉を使う時」という回答が続いた。

対人特有の心理的な壁を取り払い、スピーキングへのハードルを劇的に下げる「安心できる練習環境」を提供することこそがAI英会話機能のメリットといえる。

AI英会話機能は弱点克服に最適

AI英会話が人間相手の英会話と決定的に違う点は、学習者が「時間」と「他者の目」というプレッシャーから完全に解放される点にある。

この違いを尋ねた質問では、「自分の話すスピードや沈黙を気にする必要がない」という回答がトップとなり、次いで「誰にも聞かれる心配がない、完全にプライベートな空間だから」が続いた。

これは、対人英会話で焦りや羞恥心を生む原因となりがちな「相手を待たせる気まずさ」や「うまく話せない恥ずかしさ」を、AI相手ならば感じる必要がないことを意味する。

結果として、学習者は自分のできなさを気にすることなく、本当に苦手な部分や自信のない表現に、自分のペースで何度でも向き合うことが可能となる。

AI英会話の「間違いを恐れない」メリットを95%以上が実感

AI英会話における「間違いを恐れない」体験が、実に95%以上の学習者に対し、英語学習全体から日常生活にまで好影響を及ぼしていることが明らかになった。「好影響はない」との回答は5%未満であった。

具体的には、約4割が「英語を話す心理的ハードルが下がり、学習意欲が高まった」と回答し最多となった。さらに「コミュニケーション全般への自信向上」や、「日常で意識的に英語に触れる機会の増加」といった肯定的な変化も報告された。

AI英会話に求めるものは「会話の豊富さ」より「自分に合った内容」へ

AI英会話にユーザーが求める改善点は、単なる「会話の多様性」から、「自分のレベルや目的に合った会話」と「的確で分かりやすいフィードバック」へとシフトしていることがうかがえる。

今後の利用意向を高める改善点を尋ねた調査では、「自分の英語レベルや学習目的に合わせて会話内容や難易度が最適化される」が最多回答となり、次いで「発音や文法の間違いをより的確に、分かりやすくフィードバックしてくれる」が続いた。

注目すべきは、これらの要望が、前回調査で不満点のトップであった「会話の単調さ」に関する項目を上回った点である。

これは、各社の開発努力により会話のバリエーションがある程度確保され、かつての主要な不満が解消されつつあることを示唆している。

その上で、ユーザーの期待は単なるコンテンツの多様性を超え、より個人に最適化された「学習体験の質」を求める新たなステージへと進んでいると分析できる。

今後は、自分のレベルに合わない、意図した会話ができない、フィードバックがわかりにくいといった課題を解決することが求められる。

課題と展望

本調査を通して、AI英会話が多くの人に受け入れられている一番の理由は、「間違いを気にせず話せる安心感」にあることが再確認された。

その一方で、AI英会話が当たり前の存在になるにつれて、ユーザーが求めるものも変化している。

以前は「会話が単調なこと」が主な不満だったが、今回の調査では「自分に合ったレベルや内容で話したい」「もっと的確なアドバイスがほしい」といった、より自分個人に合わせた学習機能を求める声が大きくなった。

この結果は、AI英会話に求められる役割の変化を示唆している。これからのAI英会話に求められるのは、誰にでも同じように応対する練習相手ではなく、学習者一人ひとりの実力や目標に応じて振る舞いを変える「専属のAIコーチ」への進化である。

具体的には、学習者の能力に応じて会話の難易度や語彙を動的に調整する機能や、間違いの指摘に留まらず「なぜそうなるのか」「どうすればより良くなるのか」まで踏み込む質の高いフィードバックの実現が、今後の差別化における重要な鍵となるだろう。

今後の市場は、この「パーソナルで教育的な価値」を最も高い解像度で実現したサービスが牽引していくことになる。

調査結果の引用・転載について

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