グローバル化が進む現代社会において、英語でのコミュニケーション能力は、ビジネスから日常生活まで、ますますその重要性を増している。特に近年、AIを活用した英会話アプリの登場により、英語学習の選択肢は大きく広がり、従来の英会話教室との間で、学習方法の多様化が進んでいる。
本調査では、英会話アプリと英会話教室という二つの主要な学習方法に焦点を当て、ユーザーがどちらを選択するのか、その背景にはどのような要因があるのかを明らかにすることを目的とする。
年齢や英語レベルが学習方法の選択に与える影響を分析し、利用者の実態と潜在的ニーズを深く掘り下げることで、今後の英会話学習市場の展望について具体的な示唆を得ることを目指す。
- 英語レベルと年齢層で英語学習方法の選択傾向は異なる
- 今後利用したいのは英会話アプリが圧倒的
- 英会話アプリ普及の鍵は「認知度向上」と「手軽な体験」
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 英会話アプリと英会話教室の利用選択とその背景についての実態調査 |
対象者 | 20代~60代の社会人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年5月10日〜5月17日 |
回答数 | 300名 |
調査対象の定義
本調査における各用語の定義は以下の通りです。
- 英会話アプリ:主にAIとの会話練習に特化したスマートフォンアプリを指します。(例: Talkful, スピークバディ, ELSA Speak)
- 英会話教室:人間(講師)との会話レッスンを中心とした英語学習サービスを指し、対面形式とオンライン形式の両方を含みます。(例: ベルリッツ, Kimini英会話)
英語学習方法の現状
初級者は英会話アプリ、中級者は英会話教室
現在の英語学習方法について、回答者の英語レベル別に分析した結果、興味深い傾向が明らかになった。
初級レベルの学習者では、英会話アプリの利用者が英会話教室の利用者を上回った。一方で、中級レベルの学習者では、その逆の傾向が見られた。
この結果は、AIを活用した英会話アプリが、特に英会話初心者に浸透している可能性を示唆している。
20代は英会話アプリが圧倒的優勢
現在の英語学習方法について、回答者の年齢別に分析した結果、顕著な傾向が明らかになった。
20代では、英会話アプリの利用者が英会話教室の利用者を圧倒的に上回る結果となった。
一方で、その他の年代では、英会話アプリと英会話教室の利用者数に大きな差は見られなかった。さらに、英語学習をしている割合を年代別に見ると、20代が最も高いことも判明している。
これらの結果を総合すると、この傾向は、20代が英語学習に非常に積極的であること、そして新しい技術やサービスに対する感度が高いことを明確に示唆していると言えるだろう。
英会話アプリと英会話教室のメリット・デメリット
英会話アプリのメリットとは
現在英会話アプリを利用しているユーザーにその主な理由を尋ねたところ、「時間や場所を選ばない(いつでも、どこでも学習できる)」「自分のペースで進められる」「費用が安い / 無料で使える」がトップ3を占め、非常に高い割合を示した。
従来の英会話学習は、教室への移動時間や決められたレッスンスケジュール、そして高額な受講料といった制約が少なくなかった。しかし、英会話アプリはこれらの学習における物理的・経済的な障壁を大幅に取り除くことを可能にした。
今後も、この「いつでも、どこでも、気軽に」学べるという英会話アプリ独自の価値を前面に押し出すことが、さらなる普及のカギとなるだろう。
英会話アプリのデメリットとは
現在英会話アプリを利用していないユーザーに対し、その利用をためらう一番の理由を尋ねたところ、興味深い結果が得られた。
現在の英語学習方法が「英会話教室」と回答した層、および「英語学習をしていない」層の双方で、最も多かったのが「英会話アプリについてよく知らない」という回答であり、非常に高い割合を示した。
このことは、英会話アプリの認知度向上が喫緊の課題であることを明確に物語っている。英会話アプリの名前を知っていてもその内容や効果について具体的なイメージを持てていない可能性がある。
一方で、「どちらも利用しておらず、他の学習方法のみを利用している」層で最も多かった理由は「費用がかかる」であった。これは、書籍やYouTubeなどの無料または非常に安価な学習リソースと比較して、英会話アプリに費用が発生することへの抵抗を示していると考えられる。アプリに対して、彼らが支払える「費用」に見合うほど魅力的であるとまだ感じていないことを示唆している。
英会話教室のメリットとは
現在英会話教室を利用しているユーザーにその主な理由を尋ねたところ、「講師から直接指導やフィードバックを受けられる」「学習習慣が身につきやすい / 継続しやすい」「リアルな対人コミュニケーションを練習できる」がトップ3を占め、非常に高い割合を示した。
英会話アプリの台頭により、英会話教室はかつてないほどの競争に直面している。しかし、上記のメリットが示すように、英会話教室が提供する「人的な温かみ」や「リアルで予測不能な会話」、そして決められた時間に教室へ通う「強制力」は、アプリでは代替しにくい強みとして今後も存在し続けるだろう。
英会話教室のデメリットとは
現在英会話教室を利用していないユーザーに対し、その利用をためらう一番の理由を尋ねたところ、「費用の高さ」がダントツのトップであった。
この結果は、英会話アプリや生成AIといったより安価な選択肢が増えている中で、従来の講師と直接会話する学習方法の費用が相対的に高く感じられている可能性を示唆している。
英語学習のニーズが高まる一方で、多様な学習方法が登場する現代において、費用対効果の認識がユーザーの選択に決定的な影響を与えていると言えるだろう。
英会話アプリも英会話教室も利用しない人は時間的・金銭的制約がトップ
現在「英会話アプリも英会話教室も利用しておらず、他の学習方法のみを利用している」層、および「英語学習をしていない」層に対し、英会話アプリも英会話教室も利用したいと思わない主な理由を尋ねたところ、「金銭的な余裕がない」「時間的な余裕がない」という2つの回答が非常に高い割合を示した。
この結果から、多くの人々にとって経済的・時間的な制約が、英語学習を始める上での根本的な障壁となっていることが明らかになった。
たとえ英会話アプリのように安価で手軽な学習方法が登場しても、これらの根深い制約が解決されない限り、新たな学習への一歩を踏み出すのは難しいという現状が浮き彫りになっている。
英会話アプリへの高い期待と普及の鍵
今後利用したいのは英会話アプリが圧倒的
「今後、英会話でのコミュニケーション能力(話す・聞く)を向上させるために、英会話アプリと英会話教室のどちらをより利用したいと思いますか?」という質問に対し、現在の英語学習方法別に分析した結果、興味深い傾向が明らかになった。
もちろん、現在英会話アプリを利用している回答者は引き続き英会話アプリを、英会話教室を利用している回答者は英会話教室を今後も利用したいと回答する割合が高かった。
しかし、ここで特筆すべきは、現在「どちらも利用しておらず、他の学習方法のみを利用している」層と「英語学習をしていない」層の双方において、英会話教室よりも圧倒的に英会話アプリの方を今後利用したいと考えている点である。
これまで英語学習に積極的でなかった層や、他の方法で学習してきた層が英会話アプリに関心を示しており、英会話アプリの必要性やニーズが非常に高まっていることを示唆している。
無料トライアルと安価な料金設定への高いニーズ
「今後、AI英会話アプリ(AIと会話練習を行うアプリ)の利用を検討するとした場合、どのような情報提供や機能の改善があれば『利用してみたい』と感じますか?」という質問に対し、半数以上が「無料トライアルの充実、または手頃な価格設定」と回答した。
どんなに優れた機能を持つアプリでも、初期費用が高かったり、試す機会が少なかったりすれば、利用へのハードルは高くなる。単にアプリの品質を高めるだけでなく、いかに多くの人にその存在を知ってもらい、敷居を低くして体験してもらうかが重要であることを示している。
課題と展望
今回の調査は、英会話学習の現状と今後の方向性を明らかにした。
英語レベルや年齢層によってアプリと教室の利用傾向が異なり、特に手軽さや費用面で優位性を持つ英会話アプリは、潜在的な学習ニーズを持つ層から高い期待が寄せられている。
今後、英会話アプリは、その体験価値や学習効果をいかに効果的に訴求し、潜在ユーザーの認知度を高めるかが鍵となるだろう。アプリの開発はもちろんのこと、広告やアピールの仕方も重要となる。
一方、英会話教室は、学習習慣の形成やリアルな対人コミュニケーションといった独自の強みを活かし、ビジネス英会話や試験対策など、特化したニーズに応える専門性の高いプログラムを提供することで、その存在感を維持していくことが期待される。
総じて、英語学習への普遍的な障壁である「金銭的・時間的な制約」を乗り越えるためにも、それぞれの学習方法が強みを発揮し、より多くの人々が英語学習にアクセスできる環境を整えていく必要がある。
調査結果の引用・転載について
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