社会人の学び直しのテーマとして、真っ先に思い浮かぶ「英会話」。グローバルなビジネスの場で必要とされるのはもちろん、海外旅行で現地の人々と交流したい、将来的には英語でコミュニケーションが取れるようになりたいと考える人は多い。
このような中、近年AIを活用した英会話アプリが急速に普及している。しかし、こうしたアプリの未利用者が依然として多く存在することから、スキルアップ研究所では『AI英会話アプリ未利用者の潜在意識に関する調査』を実施した。この調査では、AI英会話アプリの利用を躊躇させる要因を明らかにすることを目的としている。
今回は、彼らがAI英会話アプリを利用していない理由や、英会話学習サービスの現状、そしてAI英会話アプリに求められる要素について詳しく見ていきたい。
- AI英会話アプリ利用における最大の障壁は認知度の低さ
- AI英会話アプリを選ぶ上で最も重視するのはAI講師の質と料金のバランス
- 英会話学習サービスの利用経験の有無により、AI英会話アプリをどの程度使いたいかに差がある
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | AI英会話アプリ未利用者の潜在意識に関する調査 |
対象者 | AI英会話アプリを使った経験のない20代~60代の人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット |
調査期間 | 2025年1月12日~1月19日 |
回答数 | 300名 |
AI英会話アプリを利用しない理由とは
そもそも認知度が低いのが最大の障壁
「AI英会話アプリを利用していない理由を教えてください」という質問に対し、64.2%が「AI英会話アプリがどんなものなのか知らない」と回答した。
多くの人がAI英会話アプリの実態を把握できておらず、費用やAIの性能といった要因以上に、アプリの利用を妨げる大きな障壁となっているのであろう。
自然な対話ができないというイメージが強い
「AI英会話アプリのデメリットとして自身のイメージに当てはまるものを全て選んでください。」という質問に対し、48.2%が「自然な対話ができない」と回答した。
近年、AIは急速な進化を遂げているものの、人間のように状況に応じた柔軟な会話ができないというイメージが依然として根強く残っていることがわかる。
この結果の背景には、先にも述べたように、多くの人々がAI英会話アプリの実態を知らないという事実があると考えられる。まずは、実際にAI英会話アプリを利用してみて、AI英会話アプリに対する理解を深めてもらうことが望ましいだろう。
英会話学習サービスの現状
英会話アプリは英会話塾より普及している
「現在主に利用している英会話学習サービスを教えてください」という質問に対し、40.5%が「英会話アプリ(AIでないもの)」と回答した。この割合は英会話塾の利用者数を上回っており、英会話学習サービスにおいて英会話アプリが主流となっていることが明らかになった。
また、英会話塾においても、対面での受講(4.3%)よりオンライン受講(23.4%)が好まれている。以下でこの背景について考察していく。
「そのサービスを利用している最大の理由を教えてください」という質問に対し、38.9%が「自分のペースで学習を進めたいから」と回答した。
つまり、英会話アプリが支持を集めている主な要因として、自分のペースで学習を進められるかどうかが重視されていることが挙げられる。
さらに、英会話塾でもオンライン受講が好まれている背景には、時間や場所に縛られない学習スタイルへの需要があることが考えられる。
英会話アプリは毎日利用されている
前項の「現在主に利用している英会話学習サービスを教えてください」という質問に対し「英会話塾あるいは英会話アプリ(AIでないもの)」と回答した人に普段利用している頻度を尋ねると、英会話塾利用者の多くは週1〜3回または2週間に1回の利用であるのに対し、英会話アプリ利用者の7割が毎日利用していると回答した。
これらの結果から、英会話塾は費用面や講師との時間調整、個人のスケジュールなどの制約により毎日の学習が難しい一方で、英会話アプリは気軽に利用できるため日常的な学習が可能であり、習慣化しやすいことがわかる。
過半数の予算は月額1000円以下
英会話学習サービスの予算について尋ねたところ、全体では過半数が『1000円/月以下』と回答したものの、現在の利用状況によって予算設定に大きな差が見られた。
現在英会話学習サービスを利用している人は月額5000円以上の投資を行う人も一定数いる一方で、これまで一度も利用経験のない回答者の6割以上が月額1000円未満を希望している。
この結果から、英会話学習サービスを利用したことがない人であればあるほど価格が利用を検討する際の重要な判断基準であることが推察される。
AI英会話アプリに求められるもの
手軽にできるというイメージが強い
「AI英会話アプリのメリットとして自身のイメージに当てはまるものを全て選んでください。」という質問に対し、69.6%が「24時間好きな時間に使える」、57.9%が「教室に行く手間がかからない」と回答した。
これらの利点が広く認識されている一方、この2点はあくまで「アプリ」としての利点にすぎない。多くの人が実際に利用していない背景には、AI英会話アプリの具体的な効果や利便性への信頼不足があると考えられる。
気軽さに加え、AIならではの独自性や付加価値をどのように伝えるかが普及への鍵となる。
利用者が最も重視する要素とは?
「AI英会話アプリをこれから利用するとしたら最も重視したいポイントを教えてください」という質問に対し、35.3%が「AI講師の質」、33%が「料金の安さ」と回答した。
一方で、「ゲーム感覚でできるか」は3.7%、「口コミや評判」は6%と、比較的低い割合にとどまった。
この結果から、教育の質を最優先に考えながらも、料金も同程度に重視されていることがわかる。内容と料金のバランス、つまりコストパフォーマンスが選択の重要な判断基準となっている。
利用状況によってAI英会話アプリを使いたい頻度は異なる
AI英会話アプリの希望利用頻度について尋ねたところ、現在の英会話学習サービスの利用状況によって回答に顕著な差が見られた。
現在英会話学習サービスを利用している回答者の多くが『毎日』と答えたのに対し、過去に利用経験がある回答者は『週3〜6回』、未経験者は『週1〜3回』が中心となり、利用経験に応じて希望頻度が段階的に減少する傾向が明らかになった。
この結果から、AI英会話アプリの未経験者であっても、英会話学習サービスの利用経験によって求めるサービスの内容や水準が大きく異なることが示唆された。
例えば、既存の英会話学習サービスの利用者からは、既存のサービスに匹敵する充実した内容、あるいはそれを補完するような毎日学習できる内容へのニーズが高く、その一方で、英会話学習サービスを利用したことがない人からは学習を始めやすいライトな内容のニーズが高いのではないかと考えられる。
課題と展望
調査結果から、AI英会話アプリの普及には主に三つの課題が浮かび上がった。一つ目は認知度の低さ(64.2%が「AI英会話アプリがどんなものなのか知らない」と回答)、二つ目はAIとの対話の自然さへの不信感(48.2%が「自然な対話ができない」と回答)、三つ目は価格設定(多くの未利用者が月額1000円以下を希望)である。
一方で、既存の英会話アプリ(AIでないもの)の利用者の7割が毎日利用しているという事実から、AI英会話アプリは日常的な学習ツールとして十分な価値を持ちうることが示唆された。
グローバル化が加速する現代社会において、英会話力の向上は個人のキャリア形成において重要な要素となっている。AI英会話アプリはその有効な手段として、今後さらなる発展が期待される。開発企業は、多様な人々のニーズに応じた段階的なサービス展開をしていくべきだろう。また、利用者においても、先入観にとらわれず、十分な情報収集と判断のもと、自身の成長に必要な投資を積極的に行うことが望まれる。
調査結果の引用・転載について
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