リスキリング レポート

英会話アプリの利用実態と学習成果に関する調査

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調査: スキルアップ研究所

近年、英会話アプリは手軽かつ継続的な学習手段として定着し、多くの英語学習者にとって欠かせないツールとなっている。

スマートフォンひとつで学習が完結する利便性や、自分のペースで続けられる柔軟さは、従来の英語教材や通学型の英会話スクールにはない特徴であり、幅広い年齢層に受け入れられている。

本稿は、2024年にスキルアップ研究所が実施した「英会話アプリの利用者傾向および使用体験に関する実態調査」を踏まえた追加調査として、英会話アプリの利用実態と学習成果との関係性をより詳細に把握することを目的としたものだ。

学習目的やアプリ選定の理由、成果実感の有無とその背景、さらには利用頻度や学習習慣との関連など、多角的に検証した。

「英会話アプリの利用実態と学習成果に関する調査」調査結果のポイント
  • 「自分の弱点」を把握している9割超が成果を実感
  • 成果を感じない最大の要因は「実践につながらなかったこと」
  • 英会話アプリに「継続性」と「レベルの適合性」を求める人が半数を超える

【調査概要】

項目

詳細

調査名

英会話アプリの利用実態と学習成果に関する実態調査

対象者

英会話アプリを使った経験のある20~60代の人

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2025年6月10日〜6月17日

回答数

200名

英語学習目的・英会話アプリの選び方

英語学習の目的は「海外旅行・教養」が6割

英会話アプリ利用者の学習動機を分析すると、実用的な必要性よりも個人的な興味や趣味の側面が強いことが明らかになった。

「海外旅行を楽しむため」が30.5%で最も多く、「教養として学びたい/学び直し」が29%でこれに続いており、両者を合わせると全体の約6割を占めている。

この結果は、多くの利用者が「必要に迫られて学ぶ」というよりも「できたら良い」程度の動機で英語学習に取り組んでいることを示している。

職場での業務とは関連性の薄い場面での学習が中心となっており、英会話アプリを利用する層の学習意欲の性質が鮮明に現れた結果といえる。

英会話アプリに続けやすさを求めた人は3割越え

英会話アプリの選択理由を調査した結果、学習内容そのものよりも「続けられる設計かどうか」が利用の決め手になっていることが判明した。

「続けやすそうだと感じた」という回答が35.5%で最も多く、3人に1人以上がアプリの継続性を重視していることが明らかになった。

この傾向は、先に述べた学習目的が「身につけられたら」程度の軽いものであることと一致しており、負担を感じずに続けられることがアプリ選びの重要な判断材料になっている実態を裏付けている。

英会話アプリの利用目的と成果実感の関係

難易度の高い目標を持つ人は成果を感じやすい

「会議・商談」「ネイティブのような会話」など、難易度の高い目標を持つ人は成果を感じやすいことが数値としても明らかになった。

学習目的が具体的で、自分の言語スキル向上に対する期待やゴールが明確な利用者は、アプリを戦略的に活用できており、一定の成果実感を得ていることがわかる。

特に中上級者やビジネスユースの層に対しては、具体的な使用シーンを想定した教材や成果の可視化が、さらなる効果につながると考えられる。

利用目的がない人の6割は成果を実感していない

一方で、「海外旅行で不自由しない程度に話せるようになりたい」や「特に決めていない/なんとなく必要だと感じていた」といった漠然とした目的や初級レベルの目標を持つ層では、「あまり成果を感じなかった」との回答が過半数を占めた。

これは、学習内容が簡単すぎて成長実感が得られにくい、あるいは目的意識が弱いためにアプリの活用が不十分であった可能性を示している。

利用頻度と成果実感の関係

ほぼ毎日使っている人の成果実感率は8割越え

「ほぼ毎日」利用している人のうち81.5%が何らかの成果を感じており、そのうち72.2%が「ある程度は感じた」、9.3%が「明確に成果を感じた」と回答している。

この結果は「英語学習=習慣化が重要」という一般的な認識を数値で裏付けるものである。

学習の成果をはっきりと感じるには、ほぼ毎日の反復的な取り組みが必要であり、短期間でも高頻度に取り組んでいる人ほど学習内容を定着させやすく、自己成長を実感しやすい傾向がある。

1回あたり15~30分程度の学習が効果的

「15〜30分程度」学習している人のうち、7割以上の人が成果を感じていると分かった。

この時間は集中力のピークと心理的な負担の少なさが重なる時間で、利用者が自分の成長を実感しやすい絶妙なバランスにある。

この時間内であれば、一定量のアウトプット・インプットを行いつつ、疲労感や飽きも感じにくく、「明日はもう少しこの部分をやりたい」「この部分ができるようになったかも」という前向きな感情を残したまま学習を終えられる。

その結果として、習慣化にもつながりやすく、学習の継続と成果実感の両立が実現されやすいのではないか。

朝・昼の学習は成果を実感しやすい

朝(6〜9時)と昼(12〜15時)に学習した人の75%が何らかの成果を感じている。

朝の時間帯は脳の状態がクリアになっており、情報を処理する力や集中する力が最も高い状況にあるため、記憶への定着や内容の理解が効率的に進みやすい。

さらに、日中の時間帯は生活からの雑音が相対的に少なく、精神的・身体的に落ち着いた状態を維持できることで、学習に向かう積極的な態度や継続する意欲を持ちやすい。

こうした時間帯に学習している人たちは、学習そのものを義務ではなく日課として取り入れている可能性もあり、習慣化と成果実感の好循環が生まれていると推察される。

学習時の意識と成果実感の関係性

「自分の弱点」を把握している9割超が成果を実感

「苦手なスキルを重点的に学習している」と回答した人のうち、95%が何らかの成果を感じている。

また、こうした利用者は、自分の課題と向き合う意識が高く、漠然と「英語力を上げたい」と考えている人とは異なり、学習を具体的な行動に落とし込めている。

その結果として、「何をすればいいかわからない」「成長している実感がない」といった不安が少なく、目に見える前進を感じやすいと考えられる。

自分に合ったコンテンツを選んでいても成果実感は4割

「自分の学習目的に合った機能やコンテンツを選んで使っている」と回答した人のうち、約6割が「あまり成果を感じなかった」と答えた。

「自分に合っていると思って選んでいる」ことと、「実際に効果的な使い方ができている」こととの間に開きが存在する可能性を示している。

また、利用者が自身の現在の実力や弱点を正しく認識できていない場合、「目的に沿ったコンテンツ」だと感じて選んだものが、現実には効果的な練習になっていないケースも少なくないと思われる。

成果を感じない最大の要因は「実践につながらなかったこと」

英語力の向上を「あまり感じなかった」「まったく感じなかった」と回答した人にその理由を尋ねたところ、最も多かったのは「実践的な学習につながらなかった」だった。

「学んだことが使える形で定着していない」「リアルな使用場面で試すことができなかった」ことが、成長の実感を阻害している。

これは、知識を吸収するだけの学習では物足りず、アウトプット(使ってみる、話してみる、書いてみる)を経験することで初めて「自分のものになった」と実感する傾向が顕著であることを表している。

英会話アプリ以外の学習は「動画視聴」に集中し、4割以上は併用なし

「アプリ以外には何もやっていない」と答えた人は63人(31.4%)であり、3人に1人はアプリのみで学習を行っている。

約7割の人は何らかの方法で他の学習手段を使い分けており、中でも「英語教材・参考書」や「オンライン英会話」などは、より主体的な学習アプローチとして取り入れられており、学習への前向きな取り組みを示す層が相応に存在している。

一方で、アプリ単体のみに依存している層も少なくなく、学習方法がアプリの機能だけに限られてしまっている利用者は、アウトプット機会や実践環境が不足している可能性が高い。

これは成果実感との関連でも注目すべき点といえる。

英会話アプリに継続性とレベルの適合性を求める人が半数越え

「自分のレベルに合った教材が用意されている」と「続けやすい工夫がある(リマインダーやゲーム性など)」が、英会話アプリで成果を感じるために最も重要だとされた特徴の上位を占めた。

この結果から、多くの利用者が成果を実感するために重視しているのは、まず第一に自分の現在の実力に見合った内容で学べることであり、次に継続できるかどうかであることが明らかとなった。

どちらも、単発の成功体験よりも、学びを積み上げるプロセスをいかに維持できるかに関心が向いていることが分かる。

課題と展望

今回の調査により、英会話アプリが英語学習の入り口として広く利用される一方で、学習効果を実感するには目的意識の明確さ、継続性、アウトプット機会の確保が重要な条件であることが明らかになった。

その反面、「漠然と使っている」「実践に活かせなかった」という声も一定数あり、知識吸収に偏った学習や独学の限界といった課題も浮き彫りになった。

今後の英語学習支援では、個々の目標に応じた学習設計とモチベーション維持の仕組み、実践的なアウトプットの場の提供がより重要となる。

例えば、Talkfulのように日常的な会話機会を自然に組み込む設計やコーチング機能を備えたサービスは、「継続」と「成果の可視化」を両立する次世代の学習モデルとして注目される。

こうした仕組みこそが、英語学習における新たなスタンダードとして求められているのではないだろうか。

調査結果の引用・転載について

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