近年、社会人になってからのスキルアップの一環として、ワーホリや留学が注目されている。
しかしながら、実際に英語力や専門性の向上に効果があるのか、仕事を退職、休職してまでワーホリ・留学にいく金銭的、社会的なメリットがあるかは明確ではない。
そこで今回、スキルアップ研究所では、社会人になって以降ワーホリや留学をした人を対象に調査を行い、そのスキルアップへの効果を年収や転職・昇進といった観点から検証した。
- ワーホリ・留学の結果に対する満足度は95%
- キャリアアップ・年収増加に大きく期待できる
- 95%以上の人がワーホリ・留学の目的を達成
社会人のワーホリ・留学の満足度は約95%
「 ワーホリ・留学に行ってご自身が得られた変化について、満足していますか?」という質問には95%以上の人が「はい」と回答した。
このことから、社会人になって以降もワーホリ・留学にいく効果は明確だと言える。
最も大きな理由は仕事の幅が広がったから
上記質問で「満足している」と回答した人に満足している最も大きな要因を尋ねると、約3割が「仕事の幅が広がったから」と回答し、最も多かった。
次いで、「特定の分野についての知識が身についたから」を上げる人が多かった。
これらの結果は、海外での経験が職業的スキルや専門知識の向上に直接的に寄与していることを示唆している。
ワーホリ・留学によりキャリアアップ・年収増加に効果あり
本調査では、ワーホリ・留学にいった際のキャリアや年収への効果も尋ねた。
約90%の人がキャリアアップを実感
「ワーホリ・留学に際して、意図していたような転職・昇格などのキャリアアップは得られましたか?」と言う質問に対し、キャリアアップを意図していなかった19名をのぞいた68名のうち、約90%がキャリアアップを実感していた。
そのため、ワーホリや留学は単に仕事の幅が広がるだけでなく、キャリアアップの効果も明確にあると考えられる。
約83%の人が年収増加
また、「ワーホリ・留学に際して意図していたような年収の増加は得られましたか?」という質問では、年収増加を意図していなかった27名を除いた60名のうち、83.3%が年収増加に成功したことが明らかになった。
8割以上が年収増加を経験しているため、社会人になってからのワーホリ・留学による年収増加は大いに期待できると言える。
しかしその一方で、「得られなかった」が16.7%、「想定していたほどではないが得られた」が43.3%と、60%の人が想定していたほどの所得増加を得られていないことがわかる。
年収増加は期待できるものの、それが期待に沿うものであるとは限らないようだ。
社会人になってからのワーホリ・留学にはデメリットを感じる場合も
一方で、ワーホリ・留学にはデメリットがないのかや、ワーホリ・留学時の仕事の継続についても調査した。
ワーホリ・留学にかかる金銭的コストの方が所得のメリットよりも大きい
「ワーホリ・留学に行って感じたデメリットのうち、もっとも大きなものを教えてください」という質問に対し、17.2%が「ワーホリ・留学にかかる金銭的コストの方が所得のメリットよりも大きい」と回答した。
先にも述べたように、ワーホリ・留学後の年収増加が想定未満だったと感じる人は6割にのぼることからも、金銭的なコストの方が大きく感じてしまう人は少なくないのであろう。
海外での生活がストレス
上記の質問にはまた、16.1%の回答者が「海外での生活がストレスだった」と答えており、海外生活に伴う心理的負担が一定数にとって大きな課題となっていることが示された。
しかしながら、同じ海外での経験が多くの参加者にとってポジティブな側面も持ち合わせていることが、別の質問への回答から浮かび上がってきている。後述にもあるように、「ワーホリ・留学の経験を通して得たものの中で現在仕事において最も役立っているものはなんですか?」という質問では、「異文化体験」と回答した人が18.4%で全体で二番目に多い結果となった。このように、海外での生活は帰国後の価値観等に大きくポジティブな影響を与え得る。
海外にいる期間はストレスが大きいかもしれないが、のちに文化の違いをプラスに捉えることができるといえる。
約8割がワーホリ・留学のために仕事を退職・休職
「ワーホリ・留学時の仕事の継続について教えてください」という質問に対し、57.5%が「退職した」、20.7%が「休職した」と回答した。約8割の人が、ワーホリや留学に行くために退職または休職したという結果となっている。
また、「ワーホリ・留学に行ってご自身が得られた変化について、満足していますか?」という質問に「いいえ」と回答した人を対象とした、「満足していない最も大きな要因はなんですか?」という質問では、回答した12人中4人が「転職や復職の際に苦労したから」と回答しており、最も多くなっている。したがって、退職・休職後の復職や転職に苦労する人も一定数いることがわかる。
上記の質問で「退職した」または「休職した」と回答した人を対象とした、「ワーホリ・留学後のキャリアについて教えてください」という質問に対しては、20.3%が「同じ会社に復職」、36.2%が「日本国内で正社員として転職」、13%が「海外の会社に正社員として転職」と回答しており、退職・休職した人のうち約7割が、ワーホリ・留学後の復職や転職に成功している。ワーホリ・留学先から仕事を継続した人や、仕事の一環としてワーホリ・留学に行った人と合わせると、ワーホリ・留学後も安定して職を得られている人が多いといえる。
一方で、「アルバイト・パート勤務」「非正規雇用」と回答する人も一定数存在する。彼らがこの働き方を選んでいるのか、正規雇用を望んでいるにも関わらずこの働き方になっているのかは定かではないが、ワーホリ・留学後の転職支援や、スキル・経験の正当な評価を促進する余地があるだろう。
ワーホリ・留学での目的達成について
ワーホリや留学にいくことを躊躇している人の中には、海外で達成したい目的はあるもののそれが本当に達成できるかがわからず不安になっている人も多いと考えられる。
そこで、ワーホリや留学の当初の目的と、その達成についても尋ねた。
95%以上が当初の目的を達成
「ワーホリ・留学に行った目的とワーホリ・留学を通して得たものは一致していますか?」という質問に対し、64.4%が「一致している」、33.3%が「部分的に一致している」と回答した。95%以上の人がワーホリ・留学にいった当初の目的の一部または全部を達成できていることがわかる。
ワーホリ・留学に行ったにも関わらず当初の目的を果たせないケースはかなり稀であるといえ、目的が明確に存在する人にはワーホリ・留学に行くことを強く推奨できる結果となった。
想定していた以上のものを得られる可能性も十分にある
「ワーホリ・留学に行った目的を教えてください」という質問に対し「異文化体験のため」と回答した人は39人、「国際的なネットワーキングのため」と回答した人は9人だけだった。
これに対し、「ワーホリ・留学の経験を通して何を得ることができましたか?」という質問に対して「異文化体験」と回答した人は52人、「国際的なネットワーク」と回答した人は26人と、当初これらを目的にしていなかった人も貴重な体験や人脈を得ることができていると言える。
ワーホリ・留学先について
ワーホリ・留学先はオーストラリアが最も多い
「ワーホリ・留学先を教えてください」という質問に対して、87名のうち30名が「オーストラリア」と回答し、最も多かった。また、オーストラリア、アメリカ合衆国、カナダ、イギリスの上位四カ国を合わせると約78%となっている。
この他にもニュージーランドなどを合わせると8割以上の人が英語圏に行っていることがわかる。
ワーホリ・留学で得たもので仕事に一番役立っているのは語学力
また、「ワーホリ・留学の経験を通して得たものの中で現在仕事において最も役立っているものはなんですか?」という質問には、40%以上に当たる37名が「語学力」と回答した。
このように、語学力(特に英語力)は現代社会で活躍する上で大きな武器となる上、ワーホリや留学に行くことによって得られやすいことがわかる。
したがって、ワーホリ・留学におけるおすすめの渡航先は主に英語圏である。特に、オーストラリアは、実際に今回の調査に回答した人のうち34%が渡航しているためノウハウなども得やすいと考えられる上、渡航費や日本からの距離、文化の多様性などを考慮すると多くの人にとって一番良い渡航先だと言える。
総括
調査結果から、社会人になってからのワーホリ・留学は年収増加やキャリアアップに明確な効果があることがわかった。
95%の人がワーホリ・留学に行った目的を達成し、自らの得たものに満足していることから、明確にワーホリや留学で達成したい目的がある場合は行くべきだといえる。
一方、多くの人がワーホリ・留学の際に退職・休職するなど、ワーホリ・留学に行くことは大きな決断になる。しかし、ほとんどの人が転職や復職に成功しており、総合的に見るとワーホリ・留学に行くメリットのほうが圧倒的に大きいといえる。
グローバル化が進む現代社会において、このような海外経験の重要性はさらに高まると予想される。企業や政府は、社会人のワーキングホリデーや留学を支援する制度を充実させ、より多くの人々がこの貴重な機会を活用できるよう環境を整備していくべきだろう。
調査概要
項目 | 詳細 |
調査名 | 社会人のワーキングホリデーおよび留学における実態調査 |
対象者 | 就職後にワーキングホリデーおよび留学を経験した人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット |
調査期間 | 2024年6月14日〜2024年6月21日 |
回答数 | 87 |
調査結果の引用・転載について
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