リスキリング レポート

女性のスキルアップについての実態調査

更新日:

調査: スキルアップ研究所

人生100年時代と言われる現代において、個人のキャリア形成における学び直しの重要性は増すばかりである。特に、ライフイベントによるキャリアの中断や、柔軟な働き方を志向する女性にとって、リスキリングは自身のキャリアを主体的に築き、社会で活躍し続けるための重要な鍵となる。

しかしながら、その意欲や必要性が叫ばれる一方で、女性がリスキリングに取り組む上では、特有の課題も指摘されている。

本調査では、女性のリスキリングに対する意識、取り組みの実態、そしてその阻害要因を明らかにし、昨年の調査結果と比較した上で、女性がより主体的に学び、キャリアを築いていくために必要な示唆を得ることを目的とする。

「女性のスキルアップについての実態調査」結果のポイント
  • リスキリングへの意欲は高まっているものの、男性と比較して実施率は低い
  • 時間的制約と家庭の協力が女性のリスキリングにおける重要な課題
  • スキルアップへの取り組みの男女差は女性がより強く感じている

【調査概要】

項目

詳細

調査名

女性のスキルアップについての実態調査

男性のスキルアップについての実態調査

対象者

20代以上の社会人

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2025年4月28日〜5月5日

回答数

男女各200


2024年実施の前回調査はこちら


女性のリスキリングへの意識と取り組みの現状

リスキリングに取り組む女性は増加傾向か

調査の結果、リスキリング(就業時間外のスキルアップ)に取り組んでいる女性は約27.5%であった。これは、男性の取り組み率である33.5%と比較して低い数値となっている。

しかし、去年の結果と比較すると、リスキリングを行っている・過去に行っていたことがある女性の割合は61.8%(2024年時調査)から74.0%(2025年、今回)に増加している。世の中のリスキリングへの意識の高まりを反映しているといえる。

子育ての有無で異なるリスキリングへの意識の男女差

調査の結果、女性は子育てしている方がしていない方と比較してリスキリングに取り組んでいる割合が低くなるのに対して、逆に男性は子育てしている方がしていない方と比較してリスキリングに取り組んでいる割合が高くなるという傾向が見られた。

女性は子育てによる時間的制約やキャリアの一時中断が、新たなスキル習得への取り組みを遅らせるのではないかと考えられる。

一方、男性は子育てを機に、将来の経済的な負担増への備えや、家族を支える責任感から、自身の市場価値を高める必要性を強く意識し、リスキリングに積極的に取り組む傾向にあるといった背景が考えられる。

スキルアップの男女差は女性がより強く感じている

調査の結果、女性の方が男性よりも「スキルアップへの取り組みに男女差がある」と思う割合が高いことがわかった。

この背景には、依然として女性に偏りがちな育児や家事の負担があり、スキルアップのための時間を確保することの難しさが、男女間の差に対する意識の差を生んでいると考えられる。

さらに言えばこの結果は、女性の方が男女差を強く認識している一方で、男性側がこの現状に気づいていない可能性も示唆しており、その点も看過できないのではないだろうか。

女性のスキルアップに取り組む時間と方法の実態

増加傾向にある女性のリスキリング時間、依然として男性を下回る

調査の結果、リスキリングに取り組む女性に1週間にかけている学習時間を尋ねたところ、5時間以下(=1日に直すと最大でも約40分)である人が64.1%(2024年時調査)から58.6%(2025年、今回)に減少しており、リスキリング時間が増えていることがわかった。

一方で、男性の5時間以下の割合は48.6%であり、女性の方がリスキリングに時間をかけられていない傾向がある。

女性は家事・育児の間に学習時間を確保している

調査の結果、スキルアップのための学習時間を男女ともに週末・休日に確保する割合が最も高かった。興味深いのは、「家事・育児の間」と回答した割合が女性23.0%に対し男性5.9%と大きな差が見られた点である。

この差は、依然として女性が家事・育児の中心的な役割を担っている現状を反映しており、限られた時間の中でスキルアップを図ろうとする女性の工夫が垣間見える。

女性のスキルアップ方法はオンライン化が進む

調査の結果、女性のスキルアップ方法の傾向に変化が見られた。依然として書籍が最も多く用いられているものの、オフライン講座の割合は20.8%(2024年時調査)から10.1%(2025年、今回)へと減少した一方、オンライン講座・ネット上の無料講座の割合は32.6%から39.1%へと増加した。

この変化は、子育てや家事と両立しながら柔軟に学習できるオンライン形式や、費用を抑えながら学習できる無料コンテンツの活用が進んでいることを示唆している。

女性のスキルアップはビジネス英語が圧倒的人気

調査の結果、女性のスキルアップ分野でビジネス英語が22.0%と圧倒的な割合を占めたのに対し、男性は12.3%であった。一方、男性の方が割合の高い分野としては、プログラミングやIT・技術系(資格含む)が挙げられた。

この背景には、グローバル化が加速する現代において、多くの女性がキャリアアップや仕事の機会拡大に英語力を不可欠と認識していることが考えられる。対照的に男性は、より専門性の高いITスキルを自身のキャリア形成に重要と捉える傾向があると言えるだろう。

女性のスキルアップの阻害要因

女性は男性よりスキルアップの効果を実感できていない

調査の結果、スキルアップによってキャリアへの効果があった実感について、「明確にある」と答えたのは女性が13.8%、男性が16.8%、「部分的にある」と答えたのは女性が59.4%、男性が64.3%であり、いずれの回答においても女性の方が低い割合を示した。

この背景には、女性がスキルアップに取り組む上での時間的制約や昇進・評価の機会差などが影響していると考えられる。今後、女性がスキルアップの効果をより実感できるよう、柔軟な学習機会と適切な評価環境の整備が社会的に求められる。

リスキリングを阻む壁、依然として女性に偏る家事・育児の負担

調査の結果、リスキリングに取り組めない理由として「家事・子育てで忙しいから」と回答した女性は20.5%に達した一方、男性は0%であり、昨年と同様に家庭内における仕事の分担には依然として明確な差が見られる。

スキルアップ支援への期待、男女間で異なる家庭の理解

調査の結果、スキルアップを進めるにあたり、企業や社会・家庭にどのようなサポートを期待するかという質問に対し、男女ともにコスト面の支援が半数近くを占め、トップであった。

興味深いのは、女性の40.9%に対し男性は25.9%と、「家庭(パートナー含む)の理解・協力」を期待する割合が女性の方が男性よりも圧倒的に高いことである。

この背景には、女性がスキルアップに取り組む上で、時間的制約に加え、家事や育児といった家庭内での役割分担の偏りから、周囲の理解と協力が不可欠であるという認識が強く影響していると考えられる。

課題と展望

今回の調査結果は、リスキリングへの意識が高まる中で、女性が依然として特有の課題に直面している現状を浮き彫りにしたと言えるだろう。

男性と比較してまとまった学習時間を確保しにくい女性が、より細切れの時間を活用せざるを得ない状況となっている。

女性がより主体的にスキルアップに取り組めるよう、社会全体で時間的制約を軽減し、柔軟な学習環境を整備していく必要性を示唆していると言えるだろう。企業の支援はもちろん、家庭内の家事・育児分担の見直しが急務と言える。

特に、女性が男女差を強く認識する一方で、男性側の意識が低い可能性は看過できない。男性の意識改革と配慮ある行動が、真の男女平等には不可欠である。

今回の調査結果が、女性の活躍推進に向けた議論を深め、具体的な行動、そして男性の意識変革を促す一助となることを期待する。

調査結果の引用・転載について

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