岸田政権がリスキリングの推進を表明するなど、昨今リスキリングへの注目度は高まっている。
その中で「家庭や子育てと自身のキャリアとの両立」という課題が度々挙げられる女性は、リスキリングにどの程度取り組めているのだろうか。また、女性がリスキリングへの取り組みを阻まれているとしたらその要因は何であろうか。
女性のリスキリングをめぐる実態を解明すべく、スキルアップ研究所では女性のリスキリングに関する実態調査、並びに比較のため男性にも同様のアンケートを実施した。
- 女性のリスキリング実施率は男性より低く、特に子育て世代で男女の乖離がみられる
- リスキリングによる効果の実感率は高い
- 女性のリスキリング取り組みの壁をなくすには周囲の協力が必須
リスキリングに取り組む女性は25%
調査の結果、リスキリング(就業時間外のスキルアップ)に取り組んでいる女性は約25%であった。これは、男性の取り組み率である35%と比較しても低い数値となっている。
年代別の女性のリスキリング割合
上述のように女性のリスキリングに取り組んでいる割合は男性と比べて低い結果となったが、特に育児などで忙しいことが多い30代の女性の取り組み率は20%にとどまっている。
20代や50代では30%を超える割合を示しているものの、所謂「子育て世代」では数字が落ち込むことも明らかになった。
職業別の女性のリスキリング割合
職業別では、非正規雇用の人が38.7%と最も高い取り組み率を示し、正社員は30%であった。この結果は、正規採用や昇格などの目標により、リスキリングへの取り組みが活発になることを示唆している。
女性のリスキリング・スキルアップの方法
リスキリングの手段としては、42%の人が書籍を利用していることが明らかになった。次いでオフライン講座が20%、オンライン講座が15%となっている。
書籍は移動中などの隙間時間にも読みやすく、効率的な学習方法として選ばれているようだ。一方で、オンライン講座は現状では活用の割合が低くなっているが、移動時間が不要であり、仕事や家事との並行がしやすいため、これらの教材の活用を推進することがリスキリングに取り組む女性の増加に寄与する可能性がある。
女性たちがリスキリングに取り組めない理由とは?
子育て中の女性は取り組み率が低くなる傾向
子育てが最も多忙とされる30代の女性では、リスキリングへの取り組み率が顕著に低下している。一方で以下のグラフのように、この傾向は男性には見られず、20代・30代の男性ではリスキリングの取り組み率が40%超と極めて高くなっている。
また、全体としてリスキリングに取り組む女性は4分の1に留まり、多くの女性がリスキリングについて「したいと思うが諦めている」ことがわかった。必要性は感じつつも、目の前のことに追われてなかなかリスキリングに取り組めない女性の多さが目にみえる結果となった。
圧倒的に時間が足りない?
現状行っていない方に「スキルアップに取れそうな時間」を尋ねたところ、週あたり5時間以下が72%となった。
これは男性の59%より高くなっており、時間がないと感じている女性の多さが際立つ。
一方で、リスキリングに取り組む女性に1週間にかけている学習時間を尋ねたところ、5時間以下(=1日に直すと最大でも約40分)である人が64%となった。
リスキリングでキャリアアップを実感
73%がキャリアアップを実感
リスキリングに取り組んでいる女性のうち、73%がキャリアアップを実感しているということがわかった。これは、男性の効果実感率(80%以上)と比較するとやや低いものの、リスキリングの効果を感じている女性が多いことを示している。
特に、ビジネス英語やFP・簿記などの会計・金融系、医療・福祉系などの分野でリスキリングに取り組む人が多く、これらの分野でのスキルアップがキャリアアップに直結しているようだ。
リスキリングによるメリットとは?
リスキリングによって得られると考えられるメリットとしては、「自身の成長につながる」「収入が増える」「キャリアアップにつながる」といった点が多く挙げられた。
実際の声では、
- 「転職活動中ですが、簿記3級を取得したことで書類選考が通りやすくなりました。」
- 「給料に資格手当てとして支給されるようになりました。」
- 「自分が今どれぐらいできるのかを確認することができ、自信につながった。勉強が佳境に入ると主人に家庭のことは手伝ってもらって乗り切りました。
などがあった。
女性がリスキリングに取り組む環境づくりが重要
男性に比べてキャリアアップの壁はまだ高い
今回の調査で、女性がキャリアアップ、およびそのためのリスキリングに取り組むための環境は、男性より厳しいものであることが明らかとなった。
特に子育て世代においてリスキリングの取り組み率が男女で大きく乖離していることは、その困難さを物語っているといえる。リスキリングに取り組めない理由として、「家事・子育てで忙しいから」をあげる女性は30%にのぼる一方で、男性は6.5%に留まり、男女間で家庭内の仕事の分担に未だに明確な差があるといえる。
また、時間についても、リスキリングにあてている時間・あてられそうな時間ともに男性の方が長い傾向にある。
女性のスキルアップに関する声の中には、実際に「家庭のことは手伝ってもらっていた」というケース、「スキルアップに取り組んでいた時代は独身だったため家庭のことを気にしなくてよかった」というケースも多数みられた。女性がスキルアップに取り組むには、現状よりも家庭の負担を軽減することが必須だ。
また、キャリアアップの実感率も、女性でも十分高いとはいえ男性の82.9%にのぼる実感率とは約10ポイントの差がある。女性が評価されづらい、あるいは評価されるまでの努力を十分積めていない可能性が指摘できる。
今後はキャリアアップ、成長の実感をより多くの女性たちに
一方で、リスキリングによってキャリアアップを実感している女性は7割以上にものぼることから、リスキリングによりメリットが得られることは明白である。
女性が活躍する社会をより高次元で実現するためにも、リスキリングへの取り組みが重要である。そのためには、女性自身だけでなく、社会全体で女性がリスキリングに取り組みやすい環境を整えることが求められる。
リスキリングに意欲がある女性は多い。男性の家事協力や企業による環境整備が重要となる。
調査概要
項目 | 詳細 |
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調査名 | 女性のスキルアップに関する実態調査 |
対象者 | 20代以上の女性の方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024年1月28日~2月3日 |
回答数 | 500名 |
項目 | 詳細 |
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調査名 | 男性のスキルアップに関する実態調査 |
対象者 | 20代以上の男性の方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024年2月8日~2月13日 |
回答数 | 445名 |
調査結果の引用・転載について
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