宅建士(宅地建物取引士)は不動産取引に関わる国家資格であり、非常に需要のある資格であると言える。
令和6年には24万人(出典:令和6年度宅地建物取引士資格試験結果の概要)と、多くの人が受験する宅建資格であるが、資格所得にかかるコストの実態や取得前後の所得や働き方の比較などは明らかではない。
そこで今回スキルアップ研究所では、宅建を取得した人を対象に、資格取得の目的やその達成、取得にかかった費用や時間、取得後の待遇や働き方の変化について調査を行った。
また、この調査をもとにおすすめの宅建通信講座も紹介している。
- 宅建取得者の半数が「現在の職業」で活かすことを目的として取得
- 取得者の39%が、宅建資格取得により昇給や昇進
- 300時間以内、3万円以下の時間・費用で取得が目指せる
- 宅建資格を活かして独立した人の9割が収入増
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 宅建資格取得に関する実態調査 |
対象者 | 宅建資格保有者 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年02月17日〜2025年02月24日 |
回答数 | 100 |
宅建資格取得の目的は「現在の職業で活用」が最多
「宅建資格を取得した最大の目的に近いものを教えてください」という質問に対し、「現在の職業で活用するため」と回答した人が49%で最も多かった。
このように、現在の職業での必要性や有用性から宅建の資格を取得する人が多いことがわかる。
また、「就職活動に活かすため」、「転職活動に活かすため」と回答した人も合わせて35%おり、資格を活かして職を得ることを目指す人も多いことがわかった。
「現在の職業で活かす」という目的は90%以上が達成
「宅建資格を取って、資格取得の目的は達成できましたか?」という質問に対し、「そう思う」と回答した人が42%、「ややそう思う」と回答した人が31%と、合わせて73%が目的達成について肯定的な見方をしていた。
また、特に宅建資格取得の目的について「現在の職業で活用するため」とした人では、57%が「そう思う」、35%が「ややそう思う」と回答し、ある程度目的を達成をしたと考えている人が90%以上と多かった。
この結果から、宅建の資格取得目的のうち特に「現在の職業で活かす」という目的は達成されやすいことが分かった。
宅建の取得そのものが自己成長に繋がる
「宅建資格を取って役に立ったことを教えてください(複数回答可)」という質問に対し、51%の人が、「資格取得そのものが自己成長につながった」と回答し、最も多い回答となった。
このように、宅建を取得した人の半数以上が、資格取得そのものが役立ったと実感している。
宅建取得は昇進や昇給など待遇向上にも繋がる
また、上記の質問に対する回答として、「昇進や給与アップに繋がった」と回答した人が39%と2番目に多かった。この結果から、宅建資格の取得が直接的に職場での待遇向上に繋がるケースも多いことが分かった。
これらの結果から、宅建資格はかなり取得の効果が大きいと言える。
宅建取得時の学習手段
学習手段としては市販教材が最も多い
「宅建資格取得の際の主な学習手段について教えてください」という質問に対し55%の回答者が「市販の教材を使って勉強した」と回答し、最も多かった。
このことから、宅建取得のための学習においては市販教材の利用が一般的であることが分かった。
市販教材は満足度も高い
「あなたが利用した主な学習手段に対しての満足度を教えてください」という質問に対し、全体では38%が「高い」、53%が「やや高い」と回答した。また、「低い」と回答した人はいなかった。
一方、市販の教材を利用した回答者の中では「高い」と回答した人は44%、「やや高い」と回答した人が51%と、95%近くの人が満足している。
この結果から、市販教材の満足度は他の学習手段と比較しても特に高いことが分かった。
市販教材は、利用者のリピート率も高い
「再び宅建を受験するとしたら、主な学習手段は何にしますか」という質問に対し、市販教材利用者の83.7%が「市販の教材」と回答し、仮に再度利用する場合でも市販教材を選ぶ人が多いことが判明した。
通学講座の利用者の多くが、次利用するなら通信講座
同質問に対し、通学講座利用者の50%が「通信講座」、40%が「通学講座」と回答した。
通学講座利用者には、再び受験する場合は通信講座の利用を考えている人の方が多いと分かった。
学習手段への満足は、コストパフォーマンス、内容理解が主な理由
学習手段への満足度が高かった人を対象に「そのような満足度になった理由は何ですか?(複数回答可)」と尋ねたところ、56%が「コストパフォーマンスが良かった」と回答し最も多く、ついで「内容を理解しやすかった」と回答した人が45%と多かった。
市販教材やSNS、通信講座などコスパを重視しつつも、しっかりと内容理解も充実する教材を選ぶことが重要だと分かった。
またコストパフォーマンスについては、宅建資格取得に向けた資金計画が重要となる。
宅建合格に最も重視すべきは過去問演習
「宅建資格取得に向けて学ぶ際に最も重視するべきポイントを教えてください」という質問に対して、「過去問演習の徹底」と回答した人が61%で圧倒的に多かった。
このことから、宅建学習では過去問演習が充実している教材や講座の利用が最もおすすめであると言える。
また、「通信講座・通学講座」も「内容理解」や「試験対策」といった部分を満足理由としてあげている人が多くいたため、おすすめだと言える。
宅建取得にかけた時間は300時間以内が約8割
「宅建の取得にかけた勉強時間を教えてください」という質問に対し、22%が「50-100時間」、26%が「100-200時間」、31%が「200-300時間」と回答した。このように、300時間以下で宅建を取得した人が約8割いることが分かった。
一般的には宅建取得には400時間程度の学習時間が必要とされているが、今回の調査対象者には「現職で活かすため」に宅建を取得した人が多かったことなどから、不動産業界で働いて一定程度の素養がある人は比較的短時間で取得できる資格だと言える。
宅建取得にかかる費用は少ない
「宅建資格取得にかかった費用を教えてください(受験料を除く)」と尋ねたところ、かかった総費用が3万円以下の人が合計で68%いた。
この結果から、宅建は比較的少ない予算で合格を目指せる資格だと言える。
宅建取得者の多くがフルタイムで働いていた
「宅建を取得した際の状況について教えてください」という質問に対し、「フルタイムで働いていた」という回答が最も多く、75%の人がこれに該当した。
これらの結果からも、宅建は忙しい社会人でも取得を目指すことのできる資格だと言える。
宅建取得で感じた成果は、業務での知識幅の広がりや評価向上
宅建資格の取得後に仕事で感じた成果について尋ねたところ、34%が「業務知識の幅が広がった」と回答し最も多かった。ついで、「職場での評価や昇進に繋がった」と回答した人が27%いた。
このように、宅建の取得は実務面・待遇面ともに成果を実感できると言える。
宅建資格を活かして独立した/したい人は合わせて46%
「宅建資格取得後、資格を活かして独立しましたか?」という質問に対し、21%が「すでに独立した」、25%が「独立を計画しているが、まだ独立していない」と回答した。このように、独立した人と独立を考えている人が約半数いることが判明した。
宅建の資格を活かした独立は、珍しくはないことが分かった。
宅建取得後に独立したことで、90%が収入増加

宅建資格を活かして独立した人に「独立したことによって収入は増加しましたか?」と尋ねたところ、90%が「はい」と回答した。
この結果から宅建資格を活かして独立すると多くの場合収入を増やせることが分かった。
独立の理由も多くが収入増加のため

宅建資格を活かして独立した人を対象に「独立を決めた理由を教えてください(複数回答可)」と尋ねたところ、9割以上に当たる人が「収入を増やしたかったから」と回答し、最も多かった。
ついで「自分のペースで仕事をしたかったから」と回答した人が33%いた。
この結果から、多くの人が収入増加を目指して独立していることが分かった。また、上記の調査結果からこの目的は多くの場合達成されると言える。
独立しない人は、安定性やリスク回避などが主な理由
宅建資格を活かした独立について「するつもりはない」と回答した人を対象にその理由を尋ねたところ、「安定した収入が欲しかったから」と回答した人が最も多く、67.3%だった
ついで、「経営のリスクを避けたかったから」と回答した人が44.2%と2番目に多かった。
このように、独立しないことを選ぶ理由の多くがリスクを避け、安定性を維持することにあると分かった。
宅建は総合的に見て、おすすめできる資格
「宅建資格取得を他者に勧めたいと思いますか?」という質問に対し、29%が「強く勧めたい」、58%が「勧めたい」と回答し、合わせて87%の宅建取得者が宅建資格をおすすめしていることが分かった。
また、今回の調査で判明したように、実際に昇給や昇進などの待遇改善や、独立による収入増加に繋がるなど取得のメリットが多い資格だと言える。
さらに、取得にかかる時間や費用が比較的少ないことからも、宅建はおすすめの資格であると言える。
今後の課題・展望
今回の調査を通じて、宅建資格取得の目的の約半数が現在の職業で活かすためであることや、宅建資格取得が職場での待遇向上に繋がること、宅建取得への学習方法や取得にかかる時間および費用などが明らかになった。
特に、比較的短期間で取得でき、かかる費用も少ないことは重要である。今後、日本の不動産業界で活躍する人材の中でさらに宅建資格保持者を増やしていくために、宅建資格取得によるメリットを資格運営団体のみならずメディアなど多くの媒体で発信していくことが重要だと言える。
今後の課題としては、宅建資格を活かした独立を目指す人が独立できる環境作りであると言える。宅建資格保持者の4分の1が独立を計画しているものの未だ独立に至っていないことが明らかになっている。
キャリアを考える上で、資格を取得し自らの市場価値を高めることや、独立を目指すことは非常に有用な手段であるといえる。
宅建資格は、数ある資格の中でも挑戦する人が多く、比較的取得への一歩を踏み出しやすい部類に入るだろう。スキルアップ研究所としては、本調査で明らかになった資格取得を肯定的に捉える人の多さや、取得にかかるコストなどを参考に、ぜひ新たに資格取得に挑戦していただきたい。
調査結果の引用・転載について
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