リスキリング レポート

AIの台頭による業務への影響調査

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調査: スキルアップ研究所

近年、人工知能(AI)が急速に発展し普及したことで、ビジネス環境が大きく変化した。

AIの導入により、様々な業界で業務効率が上がり生産性が向上する一方で、従来の仕事や職種にどのような影響があるのかについても議論が交わされている。

また、AIを活用することで、どの分野で効率化が図られているのかを把握することで、そうした情報を踏まえて適切なスキルアップを選択することが可能になる。

そこでスキルアップ研究所では、AIの台頭が仕事内容にどのような影響を及ぼしたのかについて調査した。

AIが職場で活用されているのは約4割

まず、AIが職場で活用されているかどうかについて尋ねたところ、活用されていると答えた割合は約4割だった。

過半数には至っていないながらも、AIの導入は一定の割合では行われており、技術の浸透が進んでいると言える結果となった。

データ管理・分析へのAIの利用が最多

AIが活用されている業務分野に関するデータを見ると、「データ管理・分析」の分野でAIが最も活用されていることがわかる。

全体の30.2%を占めている。次いで「データ入力や書類作成などの事務作業」が27.0%、「ライティング」が23.3%と続く。これらの分野では、大量のデータ処理やテキスト生成などの作業が発生するため、AIの能力を活かしやすいことが導入が進んでいる理由だと考えられる。

一方、「スケジュール管理や会議の調整」(6.3%)、「製品やサービスのシステムの管理」(4.8%)、「財務報告や会計業務」(4.8%)などの分野では、AIの活用がそれほど進んでいない。これらの分野では臨機応変な対応や人間の判断力が求められるため、現状ではAIよりも人間に頼らざるを得ない状況にあると考えられる。

AIにより業務効率化を実感した人が7割弱

業務の効率化がAIの最大の効果であることが、このデータからも裏付けられた。

68.2%の人が「業務の効率化」を最も大きな効果として挙げており、AIの活用によりかなりの業務効率化が実現できていることがわかる。

一方で、「品質の向上」はわずか10.0%、「ビジネス機会の創出」はわずか2.0%にとどまっている。このことから、AIは業務を効率化させる点では大きな役割を果たすものの、創造的な面での効果は現状では限定的であると言える。

また、「創造性の向上」を選んだ人は3.0%と少数にとどまっている。AIは定型的な作業を効率化するのは得意だが、新しいアイデアを生み出したり創造性を高めたりする役割は、まだ十分に果たせていないことが示唆される。

AIの活用により人の作業は代替できるのか

代替できると感じた人は8割超え

実際にAIを職場で活用している人の83.0%が、人による作業をAIで代替できたか、または代替できる見込みがあると回答した。

AI技術の進歩に伴い、従来の仕事の中には代替可能なものが増えてくる一方で、新しいスキルを身につけられない人は職を失うリスクにさらされかねない、という事実が浮き彫りになる結果にもなった。

AIに任せられる単純作業はAIにゆだね、人間は創造性や判断力が求められる高度な作業に特化するなど、AI時代に適した新しい働き方を模索することが不可欠であることが窺える。

事務作業・データ作業での代替が中心

AIによる人的作業の代替は、主に事務作業やデータ処理作業を中心に進む見込みがある。

調査によれば、「データ管理・分析」と「データ入力や書類作成などの事務作業」がともに27.0%と最多である。AIは大量のデータを効率的に処理できるため、こうした分野での活用が進んでいる。

一方で「スケジュール管理や会議の調整」5.5%、「製品やサービスのシステムの管理」3.5%、「財務報告や会計業務」5.0%など、臨機応変な対応が必要な業務分野でのAI代替は現状進んでいない。

総じて、現状のAIの活用分野とかなり近しい結果となった。

AIに任せたい業務の第一位も事務作業

人々がAIに任せたい業務の第1位は「データ入力や書類作成などの事務作業」で25.5%を占めている。また、「データ管理・分析」が19.1%で2番目に多く、全体としてデータを扱う事務作業をAIに任せたいという傾向が強いことがわかる。

一方で、「財務報告や会計業務」が6.8%、「製造業」5.8%、「プログラミング」7.7%など、創造性や高度な専門性が求められる業務については、AIに任せたい割合は低い。「ソーシャルメディアやウェブサイトのコンテンツ管理」は1.2%とごくわずかである。

このように、定型的な事務作業や単純なデータ処理作業はAIに任せたいという意識が顕著である。反対に、創造性や専門性を必要とする分野では、人間の関与が引き続き求められていることがうかがえる。

コミュニケーションスキルや状況判断力は代替できない

AIが人間の業務を実質的に代替できなかった最も多い理由が「人間との対話や感情理解が重要な業務だから」という結果になった。

対人コミュニケーション能力は現状のAIには大きな限界があり、この部分に関しては人間が強みであると言える。

その他にも状況判断力、高度な知識の不足もAIが代替できない主な理由として挙げられている。

対人対応や臨機応変な判断、長年の経験に裏付けられた専門性など、人間ならではの能力が代替不可能な壁となっており、AIの台頭が進む中で今後必要になってくる能力であることがわかる。

AIに勝つためのスキルは対人力という意見が6割超

AIに代替されないために今後必要となるスキルとして、「対人コミュニケーション」が62.4%と最も多くの人が挙げる結果となった。

確かにAIには人間同士のようなリアルなコミュニケーション能力が備わっておらず、この点が人間との大きな違いである。対話を通じて相手の気持ちを理解し、適切に対応することは、AIにはなかなか難しい。

そのため、人間ならではの対人コミュニケーション力を身につけることが、AIに代替されない最大の武器になると多くの人が考えているのだろう。

次いで「創造性」45.4%と高い割合となっている。AIは既存のデータから答えを導き出すのが得意だが、全く新しいアイデアを出すのは不得手とされる。人間の創造力には、まだAIは遠く及ばない

その他にも「状況判断力」25.2%、「戦略的思考能力」24.4%、「倫理的な判断力」24.8%など、単にデータを処理するだけでなく、状況に応じて合理的に判断する能力が求められていることがわかる。

AIの台頭に関する人々の印象

AIの台頭に対して人々は概して前向きな印象を持っていることがわかる。

具体的には、「期待している」が28.4%、「どちらかと言えば期待している」が37.8%と、合わせて66.2%の人々がAIの発展に期待を寄せている。一方で、「AIの発展によって自身の仕事が奪われるのではないかと懸念している」は13.6%にとどまる。

しかし、「期待と懸念どちらもある」と答えた人が20.2%と無視できない割合で存在する。

つまり、AIの発展そのものには前向きな印象が強いものの、自身の雇用への影響などに対する不安も一部にはあり、期待と懸念が入り混じった印象を持っている人が一定数いるということができる。

AIの台頭によりリスキリングを考えている人は半数

AIの台頭を受けて、新しいスキルを身につけようと考え始めた人が52.6%と過半数を占めていることがわかる。

これは、AIの進化が雇用にも大きな影響を及ぼす可能性があると多くの人々が認識し始めていることの表れだと言えるだろう。AIに代替されかねない既存の業務から、自らの価値を保つために新たなスキルの習得が必要不可欠と考えられているのである。

一方で、47.4%の人々はまだリスキリングを考えていない。AIの影響を過小評価しているのか、自らの仕事がAIに置き換わられる可能性は低いと判断しているのかは定かではない。

しかし、AI技術がさらに進歩すれば、いずれはほとんどの職種で何らかの影響が出る可能性は高い。今後、AIの浸透が加速する中で、リスキリングは避けて通れない課題となってくると考えられる。

リスキリングを怠れば、AI時代の高付加価値な仕事から取り残されかねない。個人個人が、能動的に新しい知識・技術の習得に努め、時代に適応できる人材を目指さなければならない。

今後の展望・課題

データを扱う事務作業は、AIが得意とする領域であり、実際にも多くの企業でAIが活用されている。AIの導入により業務の効率化を実感した人が7割近くおり、AIの有効性は高いと考えられることから、今後もAIの活用はさらに進んでいくだろう。

その一方で、AIの発展に伴い人的作業が代替されてしまうのではないかとの懸念も一部にある。しかし、対人コミュニケーション力、創造性、複雑な問題解決能力など、データだけでは対応しきれない分野においては、人間ならではのスキルがAIには代替できない。

実際、半数以上の人がAIの台頭を受けてリスキリングを考え始めており、AIの影響は無視できない規模にあると言える。これからはAIにはない、人間特有の能力を高めていくことが求められる。単にデータを扱う作業はAIに任せ、人間は創造性や判断力を発揮する能力を磨く必要がある。

そうでなければ、AIの方がはるかに優れた効率で作業を行えるため、人間の存在価値が失われてしまう可能性があるだろう。AI時代に向けて、ただちにリスキリングを始め、AIにはない能力を高めていくことが、我々に課された課題となっている。

調査概要

項目

詳細

調査名

AIの登場による業務への影響調査

対象者

20〜50代の働いている社会人の方

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024年4月16日〜23日

回答数

500

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