リスキリング レポート

スキルアップとは?方法や効果・リスキリングとの違いまで解説

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調査: スキルアップ研究所

ビジネスの世界では、技術革新と市場の変動が進み、個人と企業の双方が常に進化し続ける必要に迫られています。このような環境下で鍵となるのが「スキルアップ」と「リスキリング」です。スキルアップは、既存の能力や知識を拡張し、さらなる専門性や効率性を追求することを意味します。一方、リスキリングは、変化する市場や業務の要求に合わせて新たな技術や知識を習得し、キャリアの方向性を変えることです。

本記事では、スキルアップとリスキリングの違いと特徴、それぞれがビジネス環境と個人のキャリア形成にどのような影響を及ぼすかについて解説します。

スキルアップとは

スキルアップとは、自分自身の能力を高めるために、学習や訓練に取り組むことを指します。これは生まれながらにして持っている才能とは異なり、人々が後天的に努力を通じて獲得することが可能なものです。

例えば、誰かが元々持っている才能をさらに伸ばす行為も、スキルアップの一形態として捉えることができます。この点において、スキルアップは単に技術や知識を向上させるだけでなく、経験や精神面での成長を含めた広範な概念です。

ビジネスの世界では、スキルアップが特に重要視されます。これは、業務を遂行する上で必要な能力だけでなく、新たな知識の習得や経験の蓄積、さらには思考や態度の成熟も求められるからです。

スキルアップは個人の総合的な力を高めるための努力であり、才能の有無に関わらず誰もが自分自身を成長させる機会を持っています。ビジネスにおいては、このような知識や経験の向上が、組織全体の成長にも繋がるため、個々人のスキルアップが強調されるのです。

スキルアップとリスキリングの違い

スキルアップとリスキリングは、現代の職業生活において重要な概念であり、それぞれが職業人のキャリアパスに大きな影響を及ぼすものです。これら2つの用語は、学びの内容や目的において明確な違いを持っています。

リスキリングは、現代のビジネス環境やデジタル技術の進展に適応するために、全く新しいスキルや知識を身につけることを指します。これは、変化する産業や職業の要求に応じて、従業員が新たな役割や業務に対応できるようにするためのものです。リスキリングの目的は、既存のスキルセットを超えて、新しい領域や技術に適応する能力を身につけることにあります。

一方でスキルアップは、個人が既に持っているスキルや知識をさらに発展させ、向上させることを目的としています。ここでは、現在の職務に直接関連する能力の拡張や深化を図り、より高度な業務を遂行できるようになることを目指します。スキルアップは、個人の職業的成長やキャリアアップに直結し、現在の職場内でのパフォーマンス向上に貢献します。

リスキリングとスキルアップの違いを知っているのは3人に1人

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このような違いがありますが、多くの人々がスキルアップとリスキリングの間にある差異を十分に理解はしていません。スキルアップ研究所が行った調査によると、3人に1人だけがこれらの概念の違いを明確に理解していることがわかりました。

この結果は、これらの用語がしばしば互換的に使用されがちであるにも関わらず、実際には両者の目的や取り組む内容が大きく異なるという事実を浮き彫りにしています。この知識のギャップは、職業人が自分自身のキャリア開発において意識的な選択を行う上で、重要な課題となります。

その他の似た用語との違い

他の似た用語との違いについても、簡単に説明していきます。

アップスキリングとの違い

「スキルアップ」とは、日本独自の表現であり、英語では「アップスキリング(Upskilling)」と言われています。アップスキリングは、現在の職務をより高度にこなすためのスキルや知識を向上させることを指します。

これは、スキルアップと本質的に同じ目的を持ち、現在持っている能力の強化や拡張を意味します。つまり、アップスキリングはスキルアップの英語表現として理解され、両者は同一の概念を指していると言えます。

キャリアアップとの違い

キャリアアップは、経歴や役職の上昇を意味し、スキルアップとは異なります。キャリアアップは職位の昇進やより良い職場への転職など、職業生活における地位の向上に焦点を当てています。

これに対し、スキルアップは能力の向上に限定され、直接的には職位の変化を伴わないことがあります。しかし、スキルアップが評価されることでキャリアアップの機会が生まれることもあるため、両者は相互に関連していますが、同一ではありません。

ブラッシュアップとの違い

ブラッシュアップは、既にある知識や技術をさらに磨き上げ、最適な状態にすることを指します。これはスキルアップと似ていますが、スキルアップが新しい能力や知識をゼロから身につけることを主眼に置くのに対し、ブラッシュアップは既存のものをより良くすることに重点を置きます。

ブラッシュアップは特定のスキルセットを最大限に活用することを目的とし、スキルアップは新たな領域への拡張を含みます。これらの違いを理解することで、個人は自己成長のために最適な行動を選択することができます。

会社・企業でスキルアップを進めていく方法

ここでは、企業として社員のスキルアップを進めていく方法について見ていきます。

研修・教育プログラムの充実化

人材育成の有効な手段の一つとして研修があります。これは人事部などが中心となり、今後の企業活動を見据えたうえで必要な研修・教育プログラムを策定し、社員のスキルアップの機会を半強制的に提供するものです。

新入社員研修や管理職研修などが代表例ですが、実施方法にはOJTとOff-JTの2種類があり、それぞれ一長一短があります。より効果的な社員スキルアップを実現するには、対象者と研修内容に応じてこの2つの方法を使い分けることが重要です。

OJT

OJTとは、On-the-Job Trainingの略で、実際の職場や現場において、上司や人材育成の専任トレーナーが業務を通じて直接指導する教育方法のことです。

OJTの大きなメリットは効率性にあります。実務を通じた学びであるため、机上の空論に終わりがちな集合研修とは異なり、即効力のある実践的な知識とノウハウを習得できます。加えて指導する側の意識も高まり、組織への早期に溶け込む即戦力も効率的に養成できます。

一方で、現場の多忙さから教育的観点が疎かになったり、指導するトレーナーの手腕によって習熟の差が出たりするなどのデメリットもあるので、こうした点に配慮が必要です。

Off-JT

Off-JTとは、Off-the-Job Trainingの略語で、予め日時と場所を設定して受講者を集めて行う研修や講演会、自習型の通信教育などを指します。

Off-JTのメリットは、専門の外部講師を招聘できることで最新鋭の知識や技能を効果的に学べる点や、職場を離れることで研修に専念できる点などがあります。

反面、現場を外れる分だけ業務への支障を招く可能性が否定できません。また、研修で学んだ内容の現場での活用方法が掴めないと意味のない研修に終わってしまいます。仮に活用策が見出せたとしても、研修の効果が実際に表れるまでに時間がかかるため、緊急性の高い分野への適用は難しい側面があります。

人事制度およびサポート制度の強化/改善

会社として社員のスキルアップを後押しする有効な方策の一つが、人事制度や各種サポート制度の拡充・見直しです。

具体的には、既存の制度自体の変更や、スキルアップ支援を目的とした新規制度の創設を行うことで、社員の学び直しや自己研鑽へのモチベーション向上を図ることができます。例えばスキルアップに必要な費用を補助する制度を新設することなどが考えられます。

人事・サポート制度面からのアプローチには大きく3つの方法があり、企業は自社の実状に合わせてこれらを取り入れていくと良いでしょう。制度面的な支援は、社員のスキルアップを後押しする上で欠かせない要素です。

人事評価制度および賃金制度の再検討/改善

人事評価制度と賃金制度の見直しは、スキルアップを促進する効果的な方法です。

社内で必要とされるスキルを明確にし、その習得を人事考課や賃金体系に反映させることで、社員のモチベーション向上を図ることができます。明確な評価基準は、社員に方向性を提供し、動機づけを高めます。

スキルアップ支援などの福利厚生の提供

社員のスキルアップにかかる費用を会社が補助する制度も有効です。

このような支援は、社員が自ら学びたい分野に積極的に取り組むことを促します。ただし、補助の対象となるスキルや資格を適切に限定し、コスト効率を考慮することが重要です。

手当の増額

資格取得や特定スキルの獲得に対して手当を増額することも、スキルアップを促す有効なインセンティブです。

このような手当の拡充は、社員に対する明確な報酬を提供し、モチベーションを高める効果があります。しかし、手当の設定には慎重な検討が必要であり、企業の財務状況や業務への影響も考えましょう。

社員個人でスキルアップを進めていく方法

企業主体で進めるだけではなく、社員個人としてスキルアップを行うことも重要です。ここでは、個人が主体となって進められるスキルアップを見ていきましょう。

資格を取得する

スキルアップを目指すうえで、資格取得は有効な手段の一つです。

資格を持つことはキャリア形成や転職活動において大きなアドバンテージとなり得ます。また、資格取得に向けた勉強は、不合格であっても決して無駄にはならず、合格すればより大きな自信と強みにつながります。

セミナーやスクールに通う

社会経験を重ねる中で、研修等の学びの機会は自然と減っていきます。そのため社内外のセミナーやスクールへの参加は有効です。

経験を重ねる中で減少しがちな学びの機会を、外部のセミナーやスクールを通じて補うことで、新しい知識や技術、他業界の人脈を得ることができ、理論と実践のバランスを取りながらスキルを高めることが可能です。

副業や複業をしてみる

実は副業もスキルアップの好機となり得ます。普段とは異なる業務に接することで、新たな知識・経験を習得できるメリットがあります。未経験の分野に触れることは、視野を広げるだけでなく、自分の適応力を高める訓練にもなるでしょう。

ただし、勤務先の就業規則等で副業が許容されているかについての事前確認が必要です。

隙間時間に新聞やビジネス書を読む

日々の隙間時間を利用して、ビジネス書や新聞を読むことは、知識の更新とスキルアップに効果的です。

特に強化したいスキルや分野に関連する書籍を選ぶことで、目的に合った学習が可能となります。読んだ内容を要約し、整理する習慣をつけることで、情報を効率的にインプットし、自己の知識として蓄積していきましょう。

会社として社員のスキルアップを促進するメリット・効果

企業として、社員のスキルアップを推進することで主に以下の4つの効果を得ることが出来ます。

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一人当たりの生産性の改善

社員のスキルアップは、業務に必要な能力や改善に資する能力の習得を通じて、生産性を向上させます。スキルが向上すると、同じ成果をより短時間で達成できるようになり、これは業務の効率化や生産性の向上に直結します。

結果として、労働環境の改善や業績の向上にもつながります。

社員のモチベーション向上

スキルアップによる業務遂行能力の向上は、社員の業務に対するモチベーション向上にも繋がります。仕事の幅が広がり、業務の質が向上することで、仕事の面白さや達成感、やりがいを感じやすくなります。

特に、会社がスキルアップの支援体制を整えている場合、社員のエンゲージメントが高まり、これが生産性向上にも影響します。

社員の離職率低減

社員のスキルアップ支援は社員の定着率向上にも寄与します。会社から大切にされているという実感が得られ、社員満足度が高まることで、退職率の低下が期待できるためです。

スキルが高まれば、他社から引き抜きの対象になるリスクも高まりますが、会社からの支援を実感できた社員ほど定着意欲が高まり、仕事へのエンゲージメント向上も期待できます。

採用戦略としての企業イメージ向上

社員育成への積極的な取り組みは、採用市場においても良い影響を与えます。

社員への手厚い支援体制は、社員重視の姿勢をアピールし、企業の魅力度を高めることができます。これは、優秀な人材を引き寄せる効果があり、結果として企業の競争力強化に繋がります。

社員個人でスキルアップを行うメリット・効果

社員個人としてのスキルアップにも、主に以下の4つの効果が得られます。

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会社からの評価向上・待遇への反映

スキルアップは社内外での評価を高め、これが給与や賞与といった待遇改善につながる可能性があります。

技術やマネジメントスキルの向上は作業品質の向上や職場環境の改善に貢献し、社員自身の達成感や充実感を支えます。結果として、スキルアップは仕事のやりがいを高め、モチベーションの持続的な推進力となります。

取引先からの満足度の向上

スキルアップによる業務品質の改善は、取引先からの信頼感や評価の向上に繋がります。

これにより、コミュニケーションの円滑化や業務効率化が促進され、営業職においては直接的な業績向上へと繋がります。取引先との良好な関係は、社員個人のモチベーション維持にも寄与し、より良い業務の循環を生み出します。

キャリアの発展が期待される

スキルアップは、社内での昇進や転職市場での評価向上に有利に働きます。

特にマネジメントスキルの獲得は、管理職への道を開く可能性があり、技術の習得も同様にキャリア形成に役立ちます。これにより、社員はより良い待遇やキャリアの機会を得ることができます。

自己評価の向上と満足感の増加

スキルアップは、自己肯定感や充実感の向上に繋がります。能力の向上は自信につながり、仕事の遂行能力が高まれば、やりがいも感じられるようになるでしょう。

スキルアップには「人材開発助成金」の活用も有効

スキルアップの予算不足への対策として、人材育成に活用できる助成金制度の利用は非常に有効です。

国や自治体が提供する助成金は、研修費用の一部を補助することで、企業の負担を軽減し、従業員のスキル向上とキャリア開発を促進します。

人材開発助成金制度の概要

厚生労働省が提供する人材開発支援助成金は、人材育成を目的とした多様なコースを用意しています。

これにはOff-JT(集合研修)、OJT(職場内研修)、労働移動支援、雇用型訓練、教育訓練休暇等、さまざまな形態の支援が含まれています。企業はこれらのコースの中から、自社の目的に合った助成金を選択し、申請することができます。

主要なコース

  1. 人材育成支援コース:社員のスキルアップや資質向上を目的とした研修を行う企業を支援します。
  2. 教育訓練休暇等付与コース:従業員に教育訓練休暇を付与し、その期間中の生活を支援します。
  3. 人への投資促進コース:オンライン学習サービスなど、最新の教育ツールの導入を促進します。
  4. 事業展開等リスキリング支援コース:事業の変化に伴うスキルの再獲得を支援します。
  5. 建設労働者認定訓練コース:建設業に特化したスキルアップ研修を行います。
  6. 建設労働者技能実習コース:建設業における実践的な技能習得を支援します。
  7. 障害者職業能力開発コース:障害者の職業能力の開発や向上を支援します。

オンライン学習サービスが対象となるコースも

「人への投資促進コース」や「事業展開等リスキリング支援コース」では、オンライン学習サービスの利用料を助成対象とする場合があります。

これにより、社員が自らのペースでスキルアップを図ることが可能になります。

申請方法と要件

助成金の申請方法や要件は、各自治体の労働局によって異なるため、事前に確認が必要です。助成金の利用を検討する際は、自社の状況を踏まえ、適切な制度を選択しましょう。

人材育成における予算の制約を効果的に克服するために、これらの助成金制度の活用を積極的に検討することが推奨されます。助成金を活用することで、企業はコストを抑えつつ、従業員のスキル向上とモチベーションの向上を図ることができます。

厚生労働省『人材開発支援助成金』

スキルアップについてまとめ

本記事では、スキルアップとはなにかについてリスキリングとの違いも踏まえてご紹介しました。

スキルアップは、リスキリングと比較してもすぐに成果に繋がる「今のスキルを伸ばす」活動です。個人だけでなく企業主体としてもぜひ推進していくことをおすすめします。

調査概要

本文中に登場した調査の概要は以下です。

項目

詳細

調査名

学び直しに係る用語に関する知名度調査

対象者

20代から60代の社会人の方

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024年1月21日~1月28日

回答数

計500名

参考資料

調査結果の引用・転載について

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