社労士と行政書士のおすすめはどっち?違いや難易度に加えダブルライセンスまで解説

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将来の仕事を考える際、社会保険労務士(社労士)と行政書士のどちらの資格を取得するか迷う方もいるかもしれません。

しかし、両方の資格を持つことで相乗効果が期待できます。

本記事では、それぞれの資格の特徴を解説していきますので、参考にしてみてください。

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社労士と行政書士はどちらも人気上昇中の資格

日本では、資格の取得が一種のステータスとなっています。その中でも、最近は社会保険労務士と行政書士のどちらの資格も注目されてきています。

注目され始めたのはここ数年のことですが、まだその可能性は十分に理解されておらず、これらの資格は収入面やキャリア面での成長が期待できます。

弁護士や司法書士といった専門的な法律家と比べると、社会保険労務士と行政書士の資格取得は簡単です。専門知識は必要ですが、十分な努力さえすれば現実的に取得が可能です。

今後の社会では、頻繁に変わる法律情報を把握し適用できる、社会保険労務士と行政書士の存在が日本社会全体にとって非常に重要となってきています。

社労士と行政書士の仕事は内容が大きく異なる

社労士と行政書士の仕事は内容が大きく異なる

社労士と行政書士では、専門の分野がかなり異なります。

ここでは資格取得後の仕事内容について比較してみましょう。

社労士の仕事内容

社会保険労務士は、企業の人事労務分野を専門的にサポートする専門家です。雇用保険や健康保険、年金などの社会保険の手続きについてを分かりやすく説明しています。

主な業務は3つに分類され、1号業務、2号業務、3号業務と呼ばれています。

1号業務と2号業務にあたる社会保険の手続きと労働条件に関する業務は、社会保険労務士のみが扱える独占業務とされています。

1号業務

社労士の業務には、「申請書の作成」「提出代行業務」「事務代理」があります。依頼者の要望に応え、法に基づいた適切な申請書を作成し、行政機関に提出する役割を担います。

さらに、事業主から委任を受けて、行政機関への主張や陳述を行う事務代理の職務も果たします。これは社会保険労務士の独占業務にあたります。

2号業務

2号業務とは企業が法令を遵守するために必要となる就業規則や賃金規程の作成、労働者名簿の整備など、「重要な帳簿書類の作成」です。

この業務にも専門的な知識が必要とされ、社会保険労務士の独占業務にあたります。

3号業務

社会保険労務士は、人事や労務に関する課題解決のための専門的なアドバイスや指導を行う「労務関連のコンサルティング業務」があります。

この業務は社会保険労務士の独占業務ではありません。

行政書士の仕事内容

行政書士は、行政手続きに関する幅広い知識を持つ専門家です。業務は主に4つの分野に分かれています。

代理人として契約・念書等の書類作成

個人や企業のさまざまな法的手続きにおいて、専門的な知識と経験に基づき、契約書や申請書など各種書類を代筆・作成しており「代書屋さん」とも呼ばれています。

土地の登記や事業許可、婚姻届など生活に密着した幅広い分野の書類を適切に作成し、クライアントの意思を正確に反映させることが求められます。

事実証明に関する書類と権利義務に関する書類作成

また、契約書や示談書、遺産分割協議書、定款などの個人や法人の権利義務に関わる書類の作成を行っています。

さらに、車庫証明や事故調査報告書、財産目録、実測図面など、事実証明に関する書類も作成しています。

役所への提出書類の手続きを代行する

行政書士の専門性を活かし書類提出の手続きの代行も行っています。

事業を営むためには、官公庁から各種の許可や登録を受ける必要があります。飲食店や不動産業などの営業許可は、その典型的な例です。

これらの申請手続きは専門的な知識が求められる他、書類の作成も複雑で細かい規則があるため、代行を頼むことでミスを最小限に抑えることができるでしょう。

行政書士が代理作成できる書類についての相談に乗る

行政書士は、社会生活における様々な法的手続きをサポートする専門家であるため、お客さんからの「〇〇したい時、どのような手続きが必要ですか?」という相談に対し、適切なアドバイスをすることができます。

具体的には、不動産登記や相続手続き、会社設立などの幅広い分野で必要な書類の作成と提出を代行してくれます。

社労士と行政書士のキャリアの違い

社労士と行政書士のキャリアの違い

社労士の方が生活は安泰で稼げる

社会保険労務士は、安定した収入と働きやすい環境を手に入れられる資格です。

会社に勤めれば給与と福利厚生を受けながら専門業務に従事できます。

一方で、独立開業すれば企業と顧問契約を結び安定収入を得ることができ​、案件対応やセミナー開催などの追加の収入源も多数あります。

社労士資格は就職や転職で重宝される

社会保険労務士が就職や転職を検討する際に有利になるのは、人事や労務管理の専門家として企業から求められる知識とスキルを持っているからです。

社労士がいなければ、労働法規の適切な解釈と運用、社会保険手続き、給与計算などの円滑な運営が難しくなります。

社労士資格を持つことで法令遵守体制が強化され、労働関連のリスク管理も効率化し、企業の安定的な運営を下支えすることができます。

加えて、独立開業の機会にもなり、人と深く関わるキャリアパスを歩むことができるのです。

行政書士は継続的な契約を取るのが難しい

行政書士が独立した場合、自らの手で顧客を獲得する必要があるため、安定した収入を得るのが難しいです。書類作成の代理業務は単価が安く、次の契約が保証されません。

実際、独立した行政書士の半数以上が年収300万円未満という状況にあります。他の士業と合同事務所を設け、顧客を共有することで集客を期待することもできます。

他の職種と連携することでさまざまな法務ニーズに応えられ、顧客からの信頼を得て高収入を実現できる可能性があります。

社労士と行政書士の年収の違い

社労士の平均年収

社労士の年収は、開業しているのか勤務しているのかで大きく異なります。

開業社労士の場合、年収は300万円から1,000万円以上と幅がありますが、多くは400万円から500万円程度が一般的です。

一方、民間企業で働く「勤務社労士」の平均年収は600万円から700万円程度と、開業社労士より高い傾向にあります。

行政書士の平均年収

厚生労働省によると、行政書士の平均年収は約580万円となっていますが、実際には個人差が大きくなっています。

その理由は、行政書士の働き方に多様性があるからです。独立して個人事務所を開く者もいれば、法律事務所に勤務する者もいます。このような違いが、年収の差異につながっているのです。

具体的な数字を見ると、年収400万円代の行政書士がいる一方で、年収1,000万円以上を得ている行政書士も少なくありません。

参考|厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査

社労士試験と行政書士の試験の違い

社労士試験と行政書士の試験の違い

社労士の試験概要

社労士試験の受験資格

社会保険労務士試験(通称社労士試験)を受験するには、以下の3つのうち1つを満たす必要があります。

  1. 大卒や短大卒、または4年制大学で62単位以上取得していること
  2. 実務経験として社労士事務所で3年以上勤務していること
  3. 行政書士試験や厚生労働大臣が認める国家試験に合格していること

このように、専門性の高い社労士業務に従事するためには学歴か実務経験、試験合格のいずれかの受験要件を満たす必要があるのです。

社労士の試験内容

社会保険労務士(社労士)試験は、正確な解答力と全科目にわたる総合的な知識を問う厳しい試験となっています。

マークシート方式で出題される択一式や選択式の問題に対し、正確な解答を求められます。

また、全科目で一定の基準点を超えなければ不合格となるため、偏りなく全科目を確実に理解する必要があります。

社労士試験の合格率

社労士試験は極めて難しい試験で毎年6~7%という非常に低い合格率にとどまっており、他の国家資格試験と比べても著しく低い水準です。

社労士試験では、広範な社会保険労務管理に関する知識とその理解および適用力が求められるため、十分な学習が必要となります。

社労士試験合格までに必要な勉強時間

勉強時間回答人数

500時間未満

3

500~700時間

4

700~900時間

6

900~1100時間

3

1100時間以上

10

合計

26

スキルアップ研究所で行った独自の調査結果によると、合格まで1100時間以上勉強した受験生が多いことがわかります。極めて難易度が高く、合格には長時間の学習時間を要することがうかがえます。

特に社会人受験生にとっては、仕事と勉強の両立が課題となっています。

行政書士の試験概要

行政書士試験の受験資格

行政書士試験の大きな特徴は、受験資格に制限がないことです。年齢や学歴、経験などにかかわらず、誰でも自由に受験できます。

他の資格試験が一定の条件を課すのとは対照的に、行政書士試験はあらゆる人々に門戸を開いているのです。

行政書士の試験内容

行政書士の試験は、選択式のマークシートだけでなく、40字程度の記述式の問題が含まれています。以下のような様々な範囲が対象です。

  • 憲法
  • 行政法
  • 民法
  • 商法
  • 基礎法学
  • 一般知識(政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護、文章理解)

社会保険労務士の試験が特定分野の深い知識を問うのに対し、行政書士の試験は浅く広い知識を問うことが特徴となっています。

すべての分野で基準点を超える必要があるため、「広く浅く」学習を行うことをお勧めします。

行政書士試験の合格率

行政書士試験の合格率はかなり低く、約10人に1人しか合格できないという厳しい現実があります。

社労士試験よりは高くなっていますが、それでも10%という数字は決して甘くみてはいけません。

ただ、行政書士試験は絶対評価(180点/300点で合格)で合否が決まるため、その年の問題の難易度や受験者のレベルによって合格率が変動します。

行政書士試験合格までに必要な勉強時間

勉強時間回答人数

500時間未満

4

500~800時間

10

800~1100時間

4

1100時間以上

10

合計

28

行政書士試験に合格するための勉強時間は、個人差があります。

スキルアップ研究所の調査によると、一般的には約600時間が必要と言われています。しかし、実際には合格者の中には500時間未満で合格した人・1100時間以上勉強した人もいました。

しかし働きながら合格を目指す場合、できるだけ効率的に学習を進めたいと思いますよね。

その場合は行政書士試験の講座を活用することをおすすめします。

行政書士試験の難易度は社労士試験よりやや低い

行政書士試験は、法律の基本知識や一般常識を問う内容が中心であり、専門性の高い分野までは深く立ち入らないため、社会保険労務士試験に比べて難易度がやや低いといえます。

記述式問題も基本的に40字程度であり、法律の基本的な知識があれば対応可能で、法学の初心者でも合格できる可能性があります。

このため法律の専門家を目指す人にとって、行政書士試験はおすすめの試験と言えるでしょう。

試験内容の違い

社労士試験と行政書士試験の試験内容は大きく異なるため、どちらか一方が得意でも、もう一方と相性が合わないことがあるかもしれません。

本章では、どちらの試験を受桁ほうが良いのかを考えるため、両者の特徴を解説していきます。

法律の初学者には行政書士がとっつきやすい

法律の世界に初めて踏み入る人にとって、行政書士はとっつきやすいと言えます。行政書士の試験は、法律の基本原則から学び始められるうえ、専門性の深さが必要以上に求められないのが特徴です。

また、実際の仕事現場に即したケーススタディや書式を通じて、即戦力に近い実践的なスキルを身につけることができます。

さらに、行政書士は民間資格であり、法務分野だけでなく、企業や自治体でも活躍の場があります。

社労士は暗記の勉強がメイン

社会保険労務士の試験は、暗記による学習が中心と言っても過言ではありません。

広範囲にわたる法令の条文や数値、条件などを理解し、暗記することが求められます。

その理由は、労働関係法や社会保険法、雇用保険法などの様々な分野の法律知識を正確に身につける必要があるからです。

社会保険労務士の業務では、こうした法令を日々適用しなければならないため、試験では法律に関する知識を問われているのです。

社労士と行政書士はダブルライセンスも可能

行政書士と社会保険労務士においては取り扱う書類には重複がないため、両資格を持つことは無駄にはなりません。

むしろ、二つの資格を活用して業務効率を上げることができます。また、単に業務範囲を広げるだけでなく、収入源の分散により安定した職業生活を送ることができます。

例えば、行政書士の資格だけでは収入面で不安があれば、社会保険労務士の資格を取得することで、その不安を解消できるでしょう。

社労士の受験資格のために行政書士を取得するケースも

社労士を目指す際、高卒者は社労保険労務士の受験資格を得ることができません。

しかし、高卒者は行政書士の資格を取得することで、社労士試験の受験資格が得られるだけでなく、労働法の基礎知識も身につけることができます。

そのため、まず行政書士の受験勉強を経て、その後社労士の勉強に取り組むことで、よりスムーズな学習が可能となります。

さらに、行政書士と社労士の2つの資格を併せ持つことで、クライアントからの信頼も高まり、業務の幅も広がります。

ダブルライセンスを目指すメリット

社労士と行政書士では、実際の業務内容や試験内容に差がありますが、ダブルライセンスを目指すとどのようなメリットがあるでしょうか。

仕事の幅が広くなる

行政書士と社会保険労務士の2つの資格を持つことで、仕事の幅が広がり、オフィスワークだけでなく、裁判所や行政機関との対話にも対応できるようになります。

行政書士の資格を活かせば、納税申告書作成や行政相談を行えます。また、社会保険労務士の資格を活かせば、労働条件や社会保険に関わる業務も担当できます。

それぞれに独占業務があるため、専門性を活かした活躍が可能になります。ダブルライセンスならば、両方の業務をこなすことができ、多様な選択肢が広がるというわけです。

自分の強みが増える

ダブルライセンスを持っていると、独立開業時に自身の事務所のアピールポイントとなります。数多くの事務所が存在する中で、差別化をすることによって信頼を獲得できるでしょう。

そのため一つの事務所でダブルライセンスを備えていると一括して業務を処理できるため、顧客は複数の事務所に行く必要がなく効率的なサービスを受けられることができます。

担当できない分野をお互い補って相乗効果が出る

社会保険労務士と行政書士の業務には相互の補完関係があり、非常に相性がいいと言われています。

企業設立時には、行政書士が許認可申請や定款作成などの手続きを専門的に担当します。一方、社会保険労務士は労働関連の手続きや労務管理を担当します。

通常、企業はこれらの手続きを複数の専門家に依頼する必要がありますが、時間とコストがかかってしまいます。

しかし、ダブルライセンスを取得していれば手続き全体を一元的に管理でき、効率的に会社設立を行うことができるでしょう。

どちらの資格を取得するのがおすすめか?

ここまでで、社労士と行政書士の違いや補完性を理解していただけたかと思います。

では、社労士と行政書士に向いている人はどのような人なのでしょうか。

社労士に向いている人

まとまった勉強時間を確保できる人

社労士の資格取得には多くの時間を費やす必要がありますが、その分報われる魅力的なキャリアも持っています。

社労士試験は極めて難しく1000時間以上の勉強時間が求められるため、仕事や私生活と両立するのは大変な負担となります。

しかし一度資格を取得すると安定した需要が見込めるため、まとまった勉強時間を確保でき人であれば、生涯を通じて活躍できるでしょう。

労務管理がしたい人

社会保険労務士は、企業の労務管理を専門的に担当し、労働法令の遵守や人事制度の構築、従業員のマネジメントなどの人材戦略全般を支援します。

また、企業の法的リスクを軽減し、良好な職場環境を維持・向上させる役割も担っています。

労務管理への関心が高く、その分野でさらに腕を磨きたいのであれば、社会保険労務士の資格取得が向いているといえるでしょう。

以下のページでは社労士試験の対策ができるおすすめ講座をランキング形式でご紹介しているので、社労士を目指す方はぜひチェックしてみてください。


行政書士に向いている人

幅広く法律の知識を持ちたい人

行政書士は、幅広い法律知識を必要とする職業であり、憲法や民法など法の基礎を学ぶことで、法の全体像を掴んでいきます。

更に、依頼者の多様な課題に対応するため、実際の業務を通して試験範囲外の法律についても学ぶ機会があります。

このように、行政書士の仕事は常に新しい法知識を吸収し続けることが求められ、法の探求心がある人にとって魅力的な職業かもしれません。

仕事で行政に携わりたい人

また行政書士は、行政機関と企業や個人の窓口となり、様々な手続きや書類作成を行うことで、行政の仕組みを深く理解していく職業です。

そのため行政に携わり、社会全体の発展に貢献したいという思いを具体化できる職種だといえます。

この資格を最初の一歩としてキャリアアップしたい人

行政書士は、キャリアアップの最初の一歩としておすすめです。

行政書士の試験科目は、司法書士などの他の国家資格試験と重複しているため、幅広い知識が身につきます。

そのため、行政書士の勉強を通じて法律の基礎知識を深めれば、将来的に他の法律関連資格の取得にも役立ちます。

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社労士と行政書士の違いまとめ

本記事では、社労士と行政書士の資格取得を目指す方、あるいは迷っている方向けに、2つの資格試験の違いや業務内容、キャリアへの影響などを説明してきました。

両者は補完関係にあるため、ダブルライセンスを目指すことで自らの市場価値を高めることができるかもしれません。

自分に合った資格を見つけて、合格を目指してみてください。