近年、働き方改革や終身雇用制度の変化に伴い、本業とは別に副業を始める人が増加している。
今でこそ頻繁に耳にするようになった副業という言葉だが、副業の種類や副業からの収入、副業をしている人の目的意識などは明らかになっていない。
そこで今回スキルアップ研究所では、副業経験者を対象に、副業の目的や手段、その達成について調査を行なった。
- 副業年収は50万円以下の人が8割以上
- 全体の95%が副業の目的として収入増加と回答
- 副業で独立することを考えている人は少ない
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 副業の目的とその結果に関する実態調査 |
対象者 | 副業経験のある人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024年12月1日〜2024年12月8日 |
回答数 | 200 |
副業の分野としては軽作業が最も多い
「現在どのような副業をしていますか?」という質問に対し、「軽作業」と回答した人が19.5%で最も多かった。ついで、「ネットビジネス」が16.5%と多かった。
一方、投資関連やサービス業、WEB・動画制作もそれぞれ10%を超えており、副業の分野にはバリエーションがあることが明らかになった。
本業と関係のない副業をしている人が多い
回答者に本業および副業の業種を尋ねたところ、本業に近い業種の副業をするといった強い相関は見られなかった。
これは後述にもあるように、副業を「本業のためのスキルアップ」ではなく「(本業とは関係なく)収入増加手法」として考えている人が多いことによると考えられる。
一方で、サービス・接客業同士、IT・ソフトウェア業とWEB動画制作の副業、建設業や運輸業と軽作業といった、本業での知識や経験が活かされる特定の分野では、4割前後の比較的強い連関が見られた。
副業からの年収は50万円以下の人が8割以上
「あなたの副業での年収を教えてください」という質問に対し、72.5%が「25万円以下」、14.5%が「25-50万円」と回答した。このように、副業からの年収は7割が25万円以下、85%以上が50万円以下であることがわかった。
また、100万円以上の年収を得ている人は3%、150万円以上は1%にとどまり、副業から100万円を超える年収を得ることは難しいことがわかった。
副業にかける時間は週に5-10時間程度が一般的
「副業に週何時間ほど時間を使っていますか?」という質問に対し、41%が「5時間以下」、34%が「5-10時間」と回答し、7割以上の人が、副業に週10時間以下の時間しか使っていないことが分かった。
一方、週に20時間以上副業に時間を使っている人は6.5%にとどまった。
副業にかける時間と副業収入には相関あり
副業にかける時間と副業からの収入を表にして比較したところ、副業にかける時間が増えるほど、副業からの年収が「25万円以下」と回答する人の割合が減少し、より高い年収を回答する人の割合が増加する傾向が見られた。
特に、週に副業にかける時間が10時間以下の回答者には副業収入が年100万円以上の人は0%なのに対し、10-20時間では7%、20時間以上では31%と、顕著に増加していることがわかる。
また、週に10時間以下しか副業にかけない人では、副業年収が25万円以下の人が87.5%なのに対し、10-20時間以上では、55%に下がるなど、副業時間と副業収入には相関が見られる。
これは、特に軽作業やネットビジネス、接客業などの副業は、かけた時間が直接的に収入に反映する分野であることが要因であると考えられる。
副業の目的は、収入増加が圧倒的に多い
副業の最大の目的は「収入増加」が87%
「あなたが副業をしている『最大の』目的を教えてください」という質問に対し、86.5%が「収入を増やすため」と回答した。
「収入増加」が副業の目的として圧倒的に多いことがわかった。
全体の95%が副業の目的の一つが収入増加であると回答
また、「あなたが副業をしている目的を『全て』教えてください」という質問(複数回答可)に対して、94.4%に当たる189名が「収入を増やすため」と回答。
収入増加を副業の目的の一つとしている人がほとんどであることが明らかになった。
副業の目的として知識や経験、スキル獲得も多い
上記の質問への回答として、「収入を増やすため」に次いで、「新たな知識や経験を得るため」と回答した人が34.9%、「スキルアップのため」と回答した人が27.9%いた。
このように、副業の目的として、副業を通じて得られる経験やスキルを念頭においている人も多いことが分かった。
副業で得られたものは収入増加、次いで新たな知識・経験
「副業で得られたものとして一番大きいものを教えてください」という質問に対し、80%が「収入増加」と回答し最も多かった。副業の目的については収入増加が最も多かったが、この目的は比較的達成されていると言える。
また、「新たな知識や経験」と回答した人も8%おり、収入増加についで多かった。このことから、収入増加を目的とした副業を通して、新たな知識や経験をも得られることが多分にあることが分かった。
副業の結果には約半数が満足
「副業を通じて得られた結果に満足していますか?」という質問に対し、8%が「非常に満足している」、41%が「概ね満足している」と回答し、約半数が副業から得られた結果に満足していることが明らかになった。
また、「どちらかと言えば満足していない」は14%、「満足していない」は6.5%にとどまり、副業からの結果に満足していない人は少ないと言える。
一方で、「どちらとも言えない」と回答した人が30%いた。これは、副業の目的として多くの人が「収入増加」を目指しているため、一定程度の収入増加は得られたが更なる収入増加を目指している人が多いことを反映していると考えられる。
投資関連の副業は収入が安定、WEB・動画制作では高収入も期待
「あなたの副業での年収を教えてください」という質問に対し、投資関連の副業を行っている20名のうち70%に当たる14名が「25万円以下」、30%に当たる6名が「25-50万円」と回答した。他の副業と比較し、「25-50万円」と回答した人数の割合が多く、安定した副業であると言える。
また、同様の質問に対して、WEB・動画制作の副業を行っている24名のうち、75%が「25万円以下」、16%が「25-50万円」と回答した一方、約8%が100万円以上の年収をえていることがわかった。
したがって、WEB・動画制作分野の副業は多くが25万円以下の年収にとどまるものの、成功すれば年収100万円以上も目指せることが分かる。
副業をしている人の約4割は将来的に転職・独立の意思あり
「現在あなたが所属している企業で定年まで働く意思はありますか?」という質問に対し、「ある」と回答した人は21.5%のみである一方、37.5%が「ない」と回答し、副業をしている人の多くが将来的な転職や独立を視野に入れていることが明らかになった。
4割以上が明確に転職の意思あり
「将来的に今働いている企業から転職する意思はありますか?」という質問に対し、41.5%が「ある」と回答した。また、「ない」と回答した人は13.5%しかいなかった。
したがって、副業をしている人の多くが将来的な転職を考えていることが更に明確となった。
副業での独立を考えている人は少ない
「副業について将来的にはどう考えていますか?」という質問に対し、40%が「副業からは一定の収入を確保できれば良い」と回答し最も多かった。また、「あくまで本業をサポートするものだと考えている」と回答した人も26%いた。
このように、副業については主に経済的なサポート要素だと捉えている人がかなり多いことが分かった。
一方、「副業からの収入が安定すれば本業から退職することも考えている」と回答した人は28%おり、多くはないものの、全体では2番目に回答数が多かった。
このことから、一定割合の人は副業からの収入が安定すれば独立なども視野に入れていることが判明した。
副業は副業と割り切って考えている人が6割以上
上記の、本業と副業が関係ないことが多いことに関連して、「副業について本業との関係をどのように考えていますか」という質問をした。
その結果、「本業とは関係なく、副業は副業と割り切っている」と回答した人が63%と最も多く、非常に多くの人が本業と関係ない収入増加手段として副業を捉えていることが明らかになった。
副業の目的や結果に関する今後の展望・課題
今回の調査で、副業にかける時間や副業からの年収、副業の目的などが明らかになった。
特に、副業の目的としてほとんどの人が収入増加を一番に考えていることが判明した。また、本業と関係なく副業は副業として考えている人が多く、実際に本業の分野と副業に強い関連はなかった。
一方で、副業をしている人の多くが、将来的な転職や独立を考えていることを示唆する結果も見られた。特に、現在働いている企業で定年まで働く意思を持っている人は数割にとどまっており、副業収入の安定後に独立を考えている人も一定程度いることが分かった。
本調査では、一般的な副業の傾向や目的を明らかにした。しかし、副業収入の増加方法や安定方法といった、副業の目的である収入増加および将来的な独立を達成する具体的な手法を直接的に示す結果は得られていない。いかに副業によって収入増加やキャリアの実現を達成していくか、さらなる制度構築や理解の促進が求められる。
調査結果の引用・転載について
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