社労士には仕事がないからやめとけ?役に立たない資格と言われる理由について解説

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社会保険労務士(社労士)という国家資格は、その存在意義や将来性について疑問視される場合があります。

一部では「役立たず」とさえ言われることがあり、社労士を取り巻く環境には課題が山積しています。

本記事では、そうした課題の背景にあるものを掘り下げ、社労士の本来の役割について考えていきます。

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社労士は仕事がないと言われる実態

社労士は仕事がないと言われる実態

集客の難易度が高く仕事を得にくい

社労士には仕事がないわけではありません。ただ、独立開業した場合には自ら集客活動をしなければなりません

仕事を獲得するためには、人脈づくりや積極的な営業活動が必要となります。そのため資格を取得したからといって、自動的に仕事が舞い込むことはありません。

現代社会では、様々な職種で新規顧客の獲得が重要となっており、社労士も例外ではありません。集客の技術を身につけ、継続的に営業活動を行わなければ、安定した仕事を得ることは難しいでしょう。

資格を持っているだけでは意味がないことも

社会保険労務士(社労士)の資格を持っているだけでは、実際の就職活動において意味がありません。

企業は、資格の有無より即戦力としての実務経験を重視する傾向があります。特に大企業では、「実務経験者」を求める求人が多くみられます。

そのため、社労士資格を持っているからと就職できないと決めつけるのではなく、別の角度から自身の強みをアピールすることが重要になります。

社労士の登録者が増加している

社労士の登録者数は年々増加しており、2022年6月末時点で44,379人に達しています。その多くが都市部、特に東京に集中している状況(東京11,389人)が見られます。

社労士資格の需要は高いものの、供給のパイを取り合っている状態とも捉えられます。

「仕事がない」は国家資格と一緒にしばしば検索されるワード

将来のキャリアを見据えた上で、資格を取得するべきか迷っている方々が判断材料にするために、「社労士 仕事ない」と検索する場合が多くあります。

しかし実際に検索エンジンで「社会保険労務士 仕事がない」と検索すると、「仕事はある」という肯定的な見解や、社労士の将来性を期待する記事が数多く見つかります。

このことから、「仕事がない」「役に立たない」というネガティブな言葉は、正確な情報を得るために使われていることがわかります。

つまり、「社労士に仕事がない」と考えるのは適切ではなく、その将来性や事実を確認したいユーザーが検索しているにすぎません。これらを総合すると、社労士の将来に大きな懸念は無用であると言えるでしょう。

社労士の今後の需要は?

働き方改革による需要の増加が見込める

働き方改革の進展に伴い、社労士がますます重要視されています。企業は優秀な人材の確保と企業イメージ向上のために、積極的に働き方改革に取り組んでいます。

育児休暇制度の整備や残業代の適切な支払い、有給休暇の取得促進など、職場環境の改善には社労士の助言が不可欠となっています。

この流れは中小企業でも同様で、就業規則が未整備の企業や現場の実情を反映していない企業でも、働きやすい環境づくりを目指し、社労士に相談する動きが増えています。

テレワークなどの労働環境も追い風に

テレワークやフレックスタイム制の導入など、ライフワークバランスを重視した働き方改革が進む中、中小企業においてはデジタル化や現場への理解促進など、新しい労働環境への移行が大きな課題となっています。

そのため、専門知識と経験を持つ社労士への相談の需要が高くなっています。社労士の役割は一層重要になり、労働環境改善に貢献することが期待されているため、今後も需要は高まるでしょう。

コンサルタントとしての役割を期待されつつある

社労士の役割は多様化し、企業のパートナーとしての存在が求められています。働き方改革、福利厚生、外国人採用など、企業が抱える課題に対してアドバイスが期待されており、経営改善のためのコンサルタント役割が重要になっています。

また、ハラスメント対策など職場環境の課題にも専門知識が必要とされています。AI・ITの進化によって一部業務が影響を受ける中、コンサルティング領域では引き続き社労士のニーズが高まると予想されます。

企業の課題を的確に把握し、解決策を提示できる能力が社労士に求められており、単なる法律専門家にとどまらず、企業の成長を支えるコンサルタントとしての役割を求められてきています。

社労士の将来性

社労士の将来性

働き方改革の進展や雇用形態の多様化に伴い、労務管理のニーズが高まっています。例えば男性の育児休暇取得推進や労働法の改正など、従業員の労働環境が変化する中で、企業は労働法の専門知識を求めるようになりました。

多様な働き方に対応した適切な労務管理と助成金などの活用が求められる中で、社労士の役割と需要はさらに高まっていくでしょう。

仕事がAIに代替される可能性は?

近年、AIの進化が進む中で、社労士の仕事全体がAIに代替される可能性があるという意見が出始めています。

電子申請の義務化に伴い、AIを活用した人事・労務管理ソフトウェアが主流になりつつあります。一方で、労務や社会保険に関する専門的なアドバイスや指導を行う業務は、AIが完全に代替することは困難と考えられています。

この業務では、相談者の具体的な状況を深く理解し、適切なアドバイスができる能力が求められますが、現時点のAIには人間ならではの深い理解力やコミュニケーション能力が備わっていないためです。

したがって、社労士の一部の業務はAIに置き換えられる可能性がありますが、すべての業務がAIによって代行されるとは限りません。仕事全体が無くなるのは、さらに先の話になるでしょう。

社労士の仕事は減少傾向

AIや電子申請の進化に伴い、社労士の仕事が減少するのではないかという懸念もあります。しかし、企業の労務書類や帳簿の作成は、社労士にしか任せられない独占的な業務です。

さらに、働き方改革やテレワークなど、新しい労働形態が注目される中、社労士の専門知識を活かしたコンサルティングへの需要は高まっています。

したがって、AIや電子申請の普及により業務内容や形態は変化する可能性がありますが、社労士の重要性が失われることはありません

独立するなら営業力を身につけよう

社労士が独立する場合には、自ら努力して顧客を獲得する必要があります。収入を増やすための自由はありますが、仕事が自動的に舞い込むわけではありません。顧客を見つけ、信頼関係を築くための営業力が重要となります。

中小企業が主な顧客であり、大手企業と比べて手作業による書類作成や給与計算などのニーズが高まります。

さらに重要なのが、一過性の依頼にとどまらず、長期的な顧客満足度を高めることです。依頼範囲を超えた新たな提案を行うことで、顧客からの信頼を深め、継続的な収入を確保する機会が広がるでしょう。

社労士の給与・年収

社労士の年収は個人の能力と働き方によって大きく変動します。勤務社労士の場合は400万円から500万円が一般的ですが、独立開業して事務所を構えれば1,000万円以上の高収入も可能です。

自分の力で顧客の問題解決に貢献できれば、高い対価を得られる職業だと言えます。一方で安定収入も望めるため、能力次第で安定と高収入を両立できる職種でもあります。

厚生労働省によるとおよそ500万円

厚生労働省が実施した賃金構造基本統計調査によると、社労士の平均年収は約500万円ですが、個人差が大きく収入は高い人もいれば低い人もいます。

会社員の場合は昇進や役職、ボーナスなどで給与が変動し、男女間の給与格差はあまりありません。

一方、開業社労士の収入は自身の努力次第で、スキルを活かして収入を伸ばせることが魅力的です。

勤務型か独立開業型によって大きく異なる

社労士の給与や年収は、勤務形態によって大きな差があります。事務所や企業に雇用されている勤務型の社労士の場合、おおむね400万円から500万円程度の年収と見られています。

一方、顧客から直接契約を得て事業を行う独立開業型の社労士は、1000万円以上の年収も可能ですが、顧客獲得次第で収入が大きく変動します。新規開業時は100万円程度の年収も珍しくありません。

​自らの将来を鑑みて、安定の勤務型か、高収入を目指せる独立開業型かを選びましょう。

女性でも高収入を目指すことができる

社労士は伝統的な男性職業のイメージがありますが、実際は女性の比率が非常に高い職種です。社労士試験の合格者に占める女性の割合は、他の士業と比べて10%ほど高くなっています。

このことから、社労士は女性に評価が高い資格であることがわかります。特に女性社労士は職務の安定性や働きやすさから、独立開業よりも勤務型を選ぶ傾向にあります。

参考:『賃金構造基本統計調査』

実は女性に向いている側面も

社労士は、産休・育休を取得した後でも専門職としてキャリアを継続できる資格です。キャリア継続を重視する女性にとって、大きなメリットがあります。

社労士の主な業務は、細かい書類作成や計算、社会保険手続きなど、正確さと注意深さが求められます。こうした業務は、一般的に女性が得意とされる領域です。

また相談・指導業務では、女性ならではの配慮と柔軟性が活かせます。さらに、社労士が扱う労働法や社会保険は、女性の関心が高いテーマです。そのため、女性の社労士志望者が増加していると考えられます。

社労士として活躍するには

社労士の資格を取得したとしても、就職することはまた別の話であり、難しいといわれることがあります。しかしもちろんたくさんの社労士がすでに活躍しています。

資格取得後に実際に社労士として活躍するにはどうすればよいでしょうか。

まずは副業を始めて経験を積もう

社労士を目指す人にとって、副業から始めることで就職に非常に有利になります。近年、副業がより柔軟に認められるようになり、社労士としての実務経験を積む場が広がっています。

社労士会やハローワーク、労働基準監督署などでのアルバイトは、行政の仕事にも関わりながら実践を重ねる良い機会です。特に実務経験がない場合、転職は困難です。そこで、副業を自身の成長の場と捉え、実務を通じてスキルを磨くのが賢明でしょう。

また、副業は自分に社労士の仕事が合っているかを確かめる有効な方法でもあります。実際に業務を体験することで、自身の適性や志向性をよりよく理解できます。

転職先を広く探してみよう

社労士の活躍の場は多岐にわたり、転職の選択肢を広げることができます。社労士が専門とする人事・労務分野は、企業規模を問わずあらゆる企業に必要不可欠な領域です。

特に少人数の企業では、勤怠管理や労働保険・社会保険の手続きができる人材が不足していることが多く、社労士の存在価値は高くなります。その結果、社労士資格を持つ人材は重用される傾向にあります。

また、社労士事務所においても、所長以外で社労士資格を持つ者が少ないケースが見受けられます。事務所勤務を通じて、実践的な知識を身につけることで、将来的な独立開業につなげることもできます。

転職エージェントを利用してみよう

転職を検討する際、転職エージェントの活用は非常に有用です。近年では、ハイクラス向けの専門転職エージェントも増えてきました。一般の求人サイトでは、自分の希望に合った条件の求人を見つけるのが難しい場合があります。

しかし、転職エージェントを利用すれば、専門のコンサルタントが希望条件をヒアリングし、適切な求人を紹介してくれます。また、面接の日程調整など転職活動全般をサポートしてくれます。

さらに、転職エージェントのサービスはほとんどが無料で提供されるため、転職希望者にとって大変有利です。


社労士の主な仕事は3つ

社労士の仕事にはさまざまな業務がありますが、主な仕事は3つと言われています。

業務内容は勤務先によって異なりますが、具体的にどのようなことをしているのか紹介していきます。

人事や労務問題の顧問・相談役

社労士は、企業の人事や労務問題に対する専門的なアドバイザーとして重要な役割を担っています。労働法や社会保険に関する広範囲な知識を持ち、企業が直面する様々な課題に対して適切な解決策を提案します。

近年、ハラスメントやブラック企業問題が社会問題化し、企業内でもそうした問題や悩みが絶えず発生しています。また、雇用形態の多様化に伴い、就業規則の整備や人材育成・採用に関するアドバイスも求められています。

社労士のコンサルティング業務は独占業務ではありませんが、賃金制度や福利厚生など高度な専門性が必要な領域では、企業から社労士の知識を活用したいというニーズが多く寄せられています。

各種保険の手続きや給料の計算

また社労士は、従業員の入退社時の保険手続きや賃金計算、就業規則の作成などを担当します。これらの業務は高度な専門知識が必要とされる独占業務であるため、社内に該当する知識を持つ人材がいない場合は、外部の社労士に依頼するのが一般的です。

一方、社内で従業員が実務を行う場合は、資格は必須ではありませんが、業務に精通している必要があります。

年金関係の手続き・支払状況の確認

「消えた年金問題」が社会問題化して以降、年金に対する関心が一般の人々だけでなく企業からも高まりました。

そのような状況の中で、年金や社会保険の専門家である社労士の役割が重要視されるようになりました。社労士は、複雑な年金制度を熟知しており、公的年金に関する唯一の国家資格者だからです。

社労士の主な業務の一つが、年金受給手続きのサポートです。年金受給資格者が円滑に年金を受け取れるように手続きを整備し、適正な年金額が支払われているかをチェックします。

社労士試験に最短で合格するためのポイント

社労士試験の難易度は高い

社労士試験は合格率が約6%と極めて難しい試験です。科目ごとに最低合格点が設定されており、それぞれを網羅的に学習する必要があります。

しかしその試験内容は労働者の権利や社会保障制度など、私たちの生活を支える重要な知識に関するものです。

労働基準法、労災保険法、雇用保険法などの労働関連法規や、健康保険、年金などの社会保障制度について深く学ぶことで、就労者や就労不能者を守る制度を適切に理解することができます。

社労士試験の合格基準点

社労士試験の合格基準は、試験の採点結果が出てから決められます。つまり、事前に具体的な基準は設けられていません。過去のデータから、各科目で40%以上、全体で60~70%以上の正解率が求められることがわかります。

ただし、重要なのは「各科目」の正解率です。全科目でこの基準を満たさなければ、総合点が基準に達していても不合格となります。一方で、合格者数に上限はありません。

基準点を超えれば誰でも合格できます。そのため、順位や他者との競争ではなく、自分の力量で基準点を突破することに集中することが大切です。

難易度が高いからといって諦めるべき資格ではない

社労士試験は難易度が高いとされていますが、一流大学出身者だけの特権ではありません。自己評価が低い人や学歴を重視しない人でも、勉強次第で合格することができます。

重要なことは、自分に合った勉強方法を見つけることです。社労士試験を目指す多くの受験生は、会社員や学生など、時間的制約がある中で勉強せざるを得ません。そのため、通信講座や通学講座、教材の選択などを、自分のライフスタイルに合わせて行う必要があります。

近年ではオンライン講座が増え、時間や場所を選ばずに学習できるようになりました。体験版もあり、自分に合うものを探すためにもいくつか試してみるのがよいでしょう。

通信講座を利用して合格しよう

社労士試験に合格するには、孤独な独学に頼るだけでなく、予備校や通信講座を活用することが賢明です。通信講座は時間や場所に制約のある社会人にとって便利なツールです。

自分のペースで学習時間を作り出せるだけでなく、学習スケジュールの作成や最新の対策情報も手に入れやすくなります。

限られた時間の中で効果的に学習を進めるためには、通信講座の活用が社労士試験の最短合格につながる秘訣となるでしょう。

社労士は意味ないのかまとめ

社労士の資格取得を目指す方々向けに、この資格が役に立たないと言われていることについて説明してきました。

社労士の役割や価値について誤解があるのは事実です。しかし、労働関連法制の遵守は企業活動の基盤であり、その重要性は高まっています。

ぜひこの資格の持つ価値を忘れず、予備校や通信講座を受講することで社労士合格を目指してみてください!