社労士試験の難易度は?合格率の推移や偏差値を他資格と比較して解説

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社労士(社会保険労務士)は、労働保険や社会保険の手続きを専門に行う国家資格であり、試験科目数や毎年改正される法律が原因で難易度が高いことが知られています。

ここでは社労士試験の難易度について、合格率や必要な勉強時間などの観点から他の国家資格と比較しつつ解説していきます。

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社労士試験の難易度

社労士試験の難易度

まずは社労士試験の難易度を合格率や偏差値の観点から見ていきましょう。

社労士試験の合格率

以下の表は、令和4年度を含む過去5年間の社労士試験に関するデータを示しています。各年度の受験者数、合格者数、そして合格率が記載されています。

年度

受験者数(人)

合格者数(人)

合格率(%)

令和5年度

42,741

2,720

6.4

令和4年度

40,633

2,134

5.3

令和3年度

37,306

2,937

7.9

令和2年度

34,845

2,237

6.4

令和元年度

38,428

2,525

6.6

合格率には年ごとに多少の変動がありますが、過去数年間を見ると平均して5~7%の範囲で推移しています。このことから非常に合格が難しい資格試験であると言えます。

社労士試験の合格率と近い資格

資格名

資格試験の合格率

司法書士

4〜5%

社労士

5〜7%

土地家屋調査士

8~10%

行政書士

10〜12%

宅建士

15~17%

社労士と合格率が近い資格を集めてみると、司法書士や土地家屋調査士などの難関国家資格が並びます。

また行政書士や宅建士と比べると社労士の試験合格率は2分の1以下であり、他の国家資格と比べても社労士試験がかなり合格難易度が高いことが伺えます。

社労士試験の合格率が低い理由

社労士試験の合格率が低くなる主な要因の一つは、それぞれの試験科目に対して細かい合格基準点が設けられていることです。

具体的には、選択式問題が5点満点で2~3点、択一式問題が10点満点で4点の合格基準があり、一つでも基準点に達しない科目があると合格はできません。つまり、一部の科目で高得点を取ったとしても、他の科目で基準点を下回ると不合格となります。

また、合格率を下げるもう一つの要因として、試験の範囲が広く、合計で10分野8科目にわたっていることも挙げられます。これらの理由から、社労士試験の難易度は高くなっています。

社労士の難易度を大学受験の偏差値で類推

社労士試験の難易度を大学受験の偏差値に例えると、約60〜64程度、つまりMARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)大学レベルに相当すると考えられます。

社労士試験は知識の量や理解の深さにおいてレベルが高いことから、中でも上位に位置づけられるでしょう。

ただ、多くの社会人が受験するこの試験は、仕事を続けながらでも、半年から1年の間に短期間で合格を目指すことが可能です。

※提示した偏差値は参考値としてお考えください。具体的な評価基準には留意が必要です。

社労士の難易度を他の国家資格と比較

社労士の難易度を他の国家資格と比較

社労士試験は、約5~7%という低い合格率と、その試験内容の高度さから見ても、難易度が高い資格試験の一つとして知られています。

この試験の難易度は、ファイナンシャル・プランナー1級や宅地建物取引士、行政書士と比較しても高いです。一方で税理士や司法書士のようなより専門的知識を要求される資格試験に比べれば、やや易しいと位置付けられます。

国家資格の中で特に難易度が高いとされる「八士業」と称される資格群には、専門的な業務を独占的に扱える魅力がありますが、その分試験の難易度も高めです。「八士業」には、弁護士や弁理士、司法書士、行政書士、税理士、土地家屋調査士、海事代理士、そして社労士が含まれます。

ここでは社労士と他の国家資格の難易度を比較していきます。

行政書士との難易度を比較

行政書士試験は、社労士試験と比較すると、若干難易度が低めに設定されています。

行政書士試験は法律の基本知識に加え、政治や経済の一般知識も問われる範囲が広い試験です。約40文字の記述式問題も含まれますが、基本的な法律知識があれば取り組みやすい内容です。法学をこれから学び始める人にも比較的取り組みやすいと言えるでしょう。

行政書士は、社労士と同じく事務職を目指す人に人気の資格であり、両方の試験を同時に勉強する人も見受けられます。

司法書士との難易度を比較

司法書士試験は、その合格率と試験内容を鑑みると、社労士試験よりも顕著に難易度が高いと言えます。法律系資格試験の中で、司法試験に次ぐ難易度を誇るのがこの司法書士試験です。

受験生は合格に向けて3,000時間以上の学習が必要とされ、その厳しい努力にも関わらず、合格率は約3%に過ぎないという厳しさです。

社労士試験も試験科目の多さで知られますが、司法書士試験はそれを上回る科目数を誇り、その一部は司法試験と同等の難易度があると言われています。これらの点から、司法書士試験は非常に高い専門性と理解度を要求される試験であるといえるでしょう。

税理士との難易度を比較

税理士試験は、その難易度で社労士試験をやや上回ります。両試験ともに多くの試験科目を持ちますが、税理士の場合、合格には11科目中5科目の合格を持って合格となります。

特に、税理士試験では理論問題に加えて、計算問題も多く出題され、特に数学的な内容を含む難易度の高い問題が特徴です。一方で、一度合格した科目は次年度以降免除されるなど、社労士試験にはない特典があるため、長期的な視点で試験戦略を立てることが可能です。

宅建士の難易度を比較

社労士試験と宅建士(宅地建物取引士)試験を難易度で比較すると、社労士試験は合格率が5~7%と宅建士試験の15~17%に比べて明らかに低く、試験科目数も社労士が10科目であるのに対して宅建士は4科目と少なめです。

社労士試験は年度によって出題内容に変動があり、その難易度が一層高まります。反対に宅建士試験は過去問題の傾向が比較的安定しており、対策しやすい側面があります。

これらの科目の範囲、合格率、出題傾向を総合的に見ると、社労士試験の方が宅建士試験に比べて難易度が高いと評価されます。

中小企業診断士との難易度を比較

中小企業診断士試験は社労士試験と比較して、若干高い難易度を持っています。この差は主に、中小企業診断士試験にはプレゼンテーションスキルを試す口述試験が含まれていることに起因します。

勉強時間の点では、両試験ともに同程度の努力が必要だと言われています。中小企業診断士は、経営コンサルタントとしてのキャリアを築くための国家資格であり、企画、会計、財務など多岐にわたる分野の知識が求められます。このため、様々な仕事を経験した受験生が挑戦することが多く、受験生層の質の高さも試験の難易度を高めている要因となっています。

FP1級との難易度を比較

ファイナンシャルプランナー(FP)1級試験と社会保険労務士試験を難易度で比較すると、社労士試験の合格率が一桁台という点で、FP1級よりもやや高い難易度と言えます。

FP1級試験には「ライフプランニングと資金計画」など、社労士試験と共通する分野もあるため、受験者の間で両資格の同時取得を目指す動きが見られます。

しかし、社労士試験はその範囲が更に広く深く、より高度な知識が要求されるため、学習の負担は大きくなります。これらの点から、社労士試験の方がFP1級試験に比べて難易度が高いと考えられます。


社労士試験合格に必要な勉強時間の目安

スキルアップ研究所では、社労士試験に実際に合格した人たちを対象に合格するために要した勉強時間に関するアンケート調査を行いました。

学習時間

回答数

500時間未満

3

500~700時間

4

700~900時間

6

900~1100時間

3

1100時間以上

10

アンケート結果から社労士合格までには1100時間以上を費やした受験者が多数を占めることが明らかになりました。そのため、効果的な学習計画を立てる上では、最低でも1000時間の勉強を見込む必要があるでしょう。

この勉強量を1年でこなすためには日々平均して2時間の学習が必要で、これにより約1年4ヶ月の期間が求められます。

また週末に集中して6時間学習することで、平日の学習時間を削減する戦略も有効です。ただし、これらは一般的な目安であり、学習方法や個人の理解度により必要な時間は変わりうる点には注意が必要です。

社労士の試験科目と合格ライン

社労士試験で問われる内容

社労士試験の内容は、10分野の中から出題されます。10分野は以下の通りです。

  • 労働基準法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険法
  • 労働保険徴収法
  • 労務管理その他の労働に関する一般常識
  • 社会保険に関する一般常識
  • 健康保険法
  • 厚生年金保険法
  • 国民年金法

社労士試験では、選択式と択一式の2つの問題形式が用いられます。

択一式では、指定された10分野から7科目が選ばれ、それぞれ10問が出題されます。各問題は1点で評価され、合計で70点の満点を得られます。

一方、選択式では8科目から各1問ずつ選ばれ、一問あたり5点が与えられ、これが合わせて40点の満点になります。これらを合わせると、試験の総得点は110点満点となります。

社労士試験の合格ラインに必要な得点率

社労士試験での合格を目指すには、選択式と択一式の問題形式ごと、さらには各科目に設定された合格基準点を満たす必要があります。

一般に、試験全体で6~7割の得点率が求められることが多いです。時には、合格基準点の調整が行われる「救済措置」が適用される場合もありますが、それに依存せずに各科目で均等に得点を確保することが大切です。

具体的な合格ラインは、選択式では各科目で空欄3つに正解が必要であり、救済措置によっては空欄2つ(または1つ)でも足りる場合があります。

択一式では、各科目で4点が基本の合格点で、救済措置を用いると3点で合格となることもあります。しかし、これらの基準点をクリアしても、全科目を通じた総得点が合格点に達していなければ合格は難しく、特に得点を稼げる科目である労働者災害補償保険法、雇用保険法、健康保険法などに注力し、加点できるように学習を深めることをおすすめします。

試験科目別の難易度と対策

社労士試験の科目は大きく「労働法関係」と「社会保障関係」に分類することができます。通常、「社会保障関係」の方が受験生にとっては難易度が高いとされます。

「社会保障関係」の中でも「国民年金法」と「厚生年金保険法」の2科目は、法改正によって内容の複雑化が顕著であり、詳細な情報や年齢などの具体的なデータの正確な記憶が求められます。

これらの年金関連科目の理解度は、合否を左右するほど重要視されています。そのため、これらの科目に対しては特に集中して取り組む必要があります。

一方、「労働法関係」の科目は、相対的に受験生にとって理解しやすい部分が多いです。特に、行政書士や司法書士試験の勉強経験がある方は既に学んだ内容や思考法を活用できる可能性があり、この点では有利になります。

また、厚生年金保険法は健康保険法と国民年金法の内容を融合したような特性を持ち、これらの科目との共通点を見つけることで暗記の労力を軽減させる工夫が有効です。

捨て科目は原則作らない

社労士試験では、全科目にわたる網羅的な知識が問われるため、特定の科目を完全に無視する「捨て科目」を作るという戦略は取りにくいです。

苦手と感じる科目があっても、合格への道を切り開くためには、その壁に立ち向かって克服する努力が必須です。

科目が苦手になる理由は、その科目自体への理解が不足していることや、十分な学習時間が確保できていないことにある場合が多いですが、意外と他科目の理解不足が影響していることもあります。例えば、「厚生年金保険法」を苦手とする受験生の中には、「国民年金法」の理解が不十分であることが原因である場合が少なくありません。

社労士試験の科目間には強い相互関連があり、このつながりを把握することが重要ですが、自学では気付きにくいこともあります。そのため、科目間の関連性を明確にするためには、専門の講師による指導を受けることが有効と言えます。

社労士試験のおすすめ対策方法

社労士試験のおすすめ対策方法

社労士試験対策のノウハウを押さえる

社労士試験は毎年90%以上の受験生が不合格になっていることを考えると、闇雲にテキストや問題集を進めるだけでは合格を手にするのは難しいでしょう。

勉強を始める際は各科目の特徴や目安の学習スケジュールなど、試験対策のノウハウを知ることが効率的な試験対策の大前提となります。

一般的に予備校や通信講座のカリキュラムにはこうした試験対策の道筋が反映されています

一方で、資格学校のクレアールが出版している書籍「非常識合格法」のように、予備校等の講座を受講せずとも社労士試験対策のコツを学べる書籍も存在します。特に実際に予備校で指導している講師が執筆した書籍であれば、科目ごとの対策法や具体的な学習スケジュールまで詳しく学ぶことができるでしょう。

現在クレアールではこの書籍を先着100名限定でプレゼントするキャンペーンを実施しているので、これから社労士試験に挑戦する方はぜひこの機会に手に入れておきましょう。


勉強時間は十分に取ろう

多くの受験者が仕事と勉強の両立に苦労している現実があります。特に、受験生の大半が会社員、公務員、または団体職員であるため、勉強時間を見つけ出すのが一筋縄ではいかない状況です。

ただ、忙しさを合格への障害にしてはなりません。社労士試験の成功例を見ると、合格には平均して約1,000時間の勉強が必要だとされています。

実際に、アンケート結果では500時間で合格したケースもありますが、これには個人差が大きく影響します。最終的に合格するためには、1,000時間程度の勉強時間の確保が望ましいと考えられます。忙しい毎日の中でも、合格を目指すためには、勉強に充てられる時間を賢く見つけ計画的に学習に取り組む必要があります。

隙間時間を有効活用しよう

忙しい日々の中で勉強時間を見つけるのは難しいかもしれませんが、毎日1~2時間の学習時間を保ちましょう。実際、長時間連続で勉強することは集中力の維持に不向きな場合があります。

そのため、短時間でも毎日継続することで学習リズムを掴み、学習効果を高めることが可能です。一方で、勉強時間の確保が難しい場合には、スキマ時間の有効活用がお勧めです。

たとえ30分未満の短い時間でもこれを積極的に学習に充てることで、知識を少しずつでも積み重ねることができます。まとまった勉強時間が取れない時でも、このように隙間時間を活用することで効果的に学習を進めることができるのです。

過去問演習は時間をかけて丁寧に

社労士試験では、基本となる知識が非常に重要視されます。この試験においては、過去に出題された問題を入念に復習することが、合格への近道となるでしょう。

過去問題に対しては、実際の試験形式を意識した演習を行うことが勧められます。これを通じて、試験の形式に慣れ親しむことができます。可能であれば、実際の試験と同じ時間に演習を行うことで、より実践的な準備が可能となります。

全科目満遍なく学習しよう

法令科目でも一般常識科目でも、未知の内容には対応できないため、広範囲にわたる暗記が必要となります。しかし、あまりに深く理解しようとして時間を費やすと、他の重要な情報を忘れるリスクがあります。

特に社労士試験では各科目に合格基準点が設けられており、一部の科目だけに偏った学習は避けるべきです。得意な科目も不得意な科目もなく、全科目を均等にカバーする学習計画を立てることが大切です。

社労士試験の独学合格は現実的?

社労士試験の独学は厳しい

社労士試験の難易度を考えると、独学での合格はもちろん不可能ではないものの、非常に厳しい挑戦になることは間違いありません。

独学での学習には、適切な教材の選定や試験に特化した効果的な学習方法の理解が必須です。独学でこれらの準備と情報収集を行うことは大変な努力が求められ、独学での合格は非常に困難と言えるでしょう。

実際、予備校や通信講座の受講生は全国平均の3〜4倍の合格率を記録しているので、​独学者が如何に不利であるかがよく分かります。

特に働きながら合格を目指す社会人の場合、受験期間が長引くと仕事や家庭にも影響を与えかねないので、できる限り短期間で合格するためにも、無理に独学を選択せずに予備校や通信講座を受講してプロの指導のもとで対策を進めることをおすすめします。

オンラインでも学べる通信講座であれば、通勤時間などのちょっとした隙間時間でもスマホで勉強が進められる上に、予備校に通学する時間も必要ないので働く社会人の方にはピッタリと言えます。

特にフォーサイトの社労士講座であれば、こうしたオンライン学習システムが充実している上、実際に令和5年度試験で全国平均の4.13倍の合格率を記録しているなど合格実績も業界トップクラスとなっているので、効率よく社労士合格を目指したい方はぜひフォーサイトの社労士講座もチェックしてみてください。

社労士試験の難易度まとめ

本記事では社労士試験の難易度や必要な勉強時間、対策方法について解説してきました。

社労士試験は合格率は例年約6%と、他の国家資格と比べても非常に高い難易度であることは明らかです。そのため独学での合格を目指すことは難しく、自身でスケジュールを管理し継続して勉強する必要があります。

独学での自身がない方は予備校や通信講座を使う方法もありますので、自分にあった方法を見つけて合格を目指しましょう!