近年急速に変化する技術革新や市場環境の中で、キャリアアップや転職市場での競争力向上など、リスキリングの重要性が増している。
しかしながら、「時間が無いためリスキリングに取り組めない」という声をしばしば耳にする。
そこで、リスキリングに際して時間を確保する工夫、またその時間がどの程度の成果に繋がっているのかについて、リスキリングに興味がある社会人を対象に調査を行った。
- リスキリングへの取り組みに生活リズムは関係ない
- リスキリングに取り組んでいる人の半分以上が夜に時間確保
- 6割が「忙しくて時間が取れない」
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | リスキリングのための時間確保に関する実態調査 |
対象者 | リスキリングに興味がある社会人の方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年1月14日〜1月21日 |
回答数 | 300 |
リスキリングへの取り組みに生活リズムは関係ない
今回は、リスキリングに興味がある社会人300人に対して調査を行った。彼らにリスキリングに実際に取り組んでいるかを尋ねると、「はい」と回答した人は134人で全体の44.7%であった。ここから、興味はあるが、何らかの要因でリスキリングに取り組めていない人が半分近くいることが分かる。
また、彼らに生活リズムを尋ねたところ、リスキリングに取り組んでいる層/取り組んでいない層の間に顕著な生活リズムの差は見られず、朝型の人が占める割合はいずれも45%前後であった。
一般的に朝型の生活リズムのほうが勉強などに取り組みやすいイメージがあるが、実際のところは自身の生活の中で少しでも時間を生み出していく姿勢や、リスキリングへの意欲そのものなどの方が重要であると言える。
6割が「忙しくて時間が取れない」
リスキリングに取り組んでいないと回答した方に対してリスキリングに取り組んでいない理由を尋ねると、全体の60.8%が「忙しくて時間が取れない」と回答し、最も多かった。
改めて、リスキリングに取り組む際に時間が大きな障壁になることが明確に示された。
忙しさがリスキリングの障壁となっているということは、企業が従業員に対して学習のための時間やリソースを十分に提供できていない可能性も考えられる。企業が業務時間内での研修や教育プログラムを導入するなど、従業員のスキルアップを支援する仕組みを整えることも重要だと言える。
時間確保のために趣味やリラクゼーションの時間を削る人が多い
リスキリングに取り組んでいると回答した方を対象に「リスキリングを行う時間をどのように確保していますか?」と尋ねたところ、全体の37.9%が「趣味やリラクゼーションの時間を削る」と回答し、最多となった。
仕事や家庭、その他の生活の義務に追われ、自由な時間が限られていることがうかがえる。そのため、趣味やリラクゼーションのような「削りやすい時間」を犠牲にしているものと考えられる。
学習時間は夜が半分近く
同じくリスキリングに取り組んでいる方に対して「リスキリングを行う時間帯はいつが多いですか?」と尋ねたところ、全体の38.8%が「夜(18:00~22:00)」と回答し、一番多かった。
「深夜(22:00以降)」と回答した層も15.7%を占め、18時以降が計54.5%となった。
このことから、仕事や生活の優先事項をこなしながら、限られた時間でスキルアップを目指している人が多いことが推測される。
睡眠時間を削ることは効率的ではない
同様に、リスキリングに取り組んでいる方に対してリスキリングに際して睡眠を削った際の影響について尋ねると、57.4%が「睡眠を削り、悪影響があった(『集中力が続かず、効率が悪くなった』『記憶力や理解力が低下したと感じた』『作業ミスが増えた』のいずれか)」と回答した。
リスキリングのために睡眠時間を削るという無理なスケジュールは、結果的に学習の質を低下させるという逆効果を生む。計画を立てる際は、可能な範囲内で、効率を重視し健康的な時間管理を行うことが重要だといえよう。
大半の人はリスキリングについて話し合いをしていない
「リスキリングの時間を確保するために周囲(家族や職場など)と話し合いをした経験はありますか?」と尋ねると、「いいえ」と回答した人は76.4%で、時間を確保するために周囲(家族や職場など)と話し合いをする人が少ないことが分かった。
多くの人がリスキリングに関する時間の調整や確保を、家族や職場と話し合わずに自分だけで解決しようとしているが、現状のままではリスキリングを始めるハードルが高くなってしまうだろう。
今後の課題と展望
リスキリングの重要性が高まる中、社会人の多くがリスキリングに取り組めていない現状がある。
主な原因には、忙しさによる無理な学習スケジュールや、家族・職場との調整不足、さらに企業側の研修機会の不足があると言える。
これを解決するには、手軽に取り組めるオンライン学習の活用や無理のないスケジュール作成が重要だ。企業が業務時間内の研修導入や助成金を活用した教育支援を行うことで、従業員の負担を軽減することができるだろう。
また、個人が時間管理のスキルを伸ばしたり、周囲に相談したりするなどして学習環境を整えることが求められるだろう。
調査結果の引用・転載について
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