現状、IT業界で働く労働者の割合は、文理では理系の方が多い。しかし、IT業界の人材不足が危惧されている中、多くの文系出身の人材が活躍している。
IT業界における文理間での年収や勉強時間、昇進の速さ、能力の高さ、プログラミング経験の有無などには、文理それぞれにどのような傾向や差があるのだろうか。IT業界での文系出身者の実態を解明するべく、スキルアップ研究所では調査を実施した。
- 80%以上が文系出身のITエンジニアが職場に在籍と回答
- 文理による年収や昇進スピードの格差はほとんどなし
- IT業界で働く過半数の人がIT関連の資格を取得
- IT業界の志望動機で最も多いのは人材需要の高さによる高年収への期待
80%以上が文系出身のITエンジニアが職場に在籍と回答
「あなたの職場には文系出身のITエンジニアはいますか?」という質問に対し、80%以上の人が在籍していると回答した。
IT業界では、今後さらに人材不足になることが予想されるため、文理を問わずITエンジニアの需要は伸びていくだろう。今後、ますます多くの企業が文系出身のITエンジニアを雇うことになると推測できる。
IT業界を志望する動機は文理で異なる
「なぜIT業界で働こうと思ったのですか?」という質問に対し、文系では7割近く、理系も4割以上の人が「人材需要が高く、高年収が期待できると思ったから」を理由にあげている。
その他では、理系出身の人材に関しては、大学時代の学部・学科が情報系であったことが志望動機にある人も多い。一方で、文系出身者については「行きたい企業があったから」という志望動機も多い。IT業界の志望理由は文理で異なる傾向があると判明したが、様々な理由で志望されているという点はIT業界の魅力が多岐にわたることを示している。
IT業界勤務者の週の平均勉強時間は5~10時間が多い
約3割が週5日以上勉強
IT業界に入ってから週何時間勉強に励んでいるかとについては、文系と理系で特徴が分かれた。「IT業界に入ってから平均で週何日間勉強していますか?」という質問に対し、文系では40%近くの人が「週1~2日」と回答した。一方、理系では各選択肢に回答者が偏在する結果となった。
しかし、文理ともに週0日の人はほとんどいないことから、IT業界では一定の勉強量が求められていることがうかがえる。
平均勉強時間は約8割が週15時間以下
「IT業界に入ってから週に平均何時間勉強していますか?」という質問に対し、文理ともに5〜10時間の割合が一番高く、約80%の人が一週間での勉強時間は15時間以下であると回答した。
IT業界勤務者の一週間の平均勉強時間の傾向には文理でほとんど差が見られず、バックグラウンドに関わらず継続的なスキルアップが求められる業界であると推測される。
文理の差によるITエンジニアの格差はほとんどなし
文理によるITエンジニアの年収格差はほとんどない
「文理によるITエンジニアの年収格差はどのくらいだと感じますか?」という質問に対して、約半数が「0~50万円」と回答した。また、約80%の回答が0~150万円の間に集まっていることからも、文理における年収の差は埋めようがないほど開いているわけではないことがうかがえる。
このことから、年収の差は文理いずれの出身であるかは関連せず、当人の能力の差によるものが大きいと推測できる。
半数以上が「ITエンジニアの昇進スピードに文理は関係ない」と回答
昇進スピードについても同様に、文理による違いはほぼ見られないようだ。
「文理によるITエンジニアの昇進スピードは差があると思いますか?」という質問に対し、「文理は関係ない」と答える人の割合が5割以上と最も高くなった。このことから、年収同様、昇進スピードについてもITエンジニアとしての個々人の能力次第で決まるであろうことが指摘できる。
しかし、「理系の方が早い」と回答した人は4割にのぼったことから、ITエンジニアとしては理系の方が能力が高い傾向にあることは否定できないだろう。これは、後述にあるように、現状理系の方がプログラミングスキルを学生時代から学んでいる傾向が高いことに起因するだろう。
学生時代のプログラミング経験は理系でも6割
学生時代からプログラミングを学んでいる人は理系の方が多いということが分かった。
「あなたは学生時代からプログラミングを学習していましたか?」という質問に対し、文系では「はい」と回答したのはわずか17.2%であった。
しかし、理系でも学生時代にプログラミングを経験していた人は6割ほどにとどまり、IT業界においても学生時代にプログラミング経験がない人は多いと予測できる。
学生時代にプログラミングを学んだ理由の多くは学校の授業
「あなたはどうして学生時代からプログラミングを学んでいたのですか?」という質問に対し、44.7%が「学校の授業でしなければいけなかったから」と回答した。また、「作りたいものに必要だったから」という人も多い。
一方で、「希望する職種に必要である」という将来を見据えたような理由で学んでいた人の割合は低いことが分かった。
IT業界では「IT知識」「ロジカルシンキング」を重要視
「IT業界で働くうえで1番目と2番目に重要視されている能力は何だと思いますか?」という質問に対し、「ITに関する知識量」や「ロジカルシンキング」に多くの回答が集まった。
仕事の速さや丁寧さといった普遍的なスキル以上に、専門性や思考力が求められる現場の実態が明らかとなった。
文理によるITエンジニアの能力の差
「ITエンジニアは文理によって能力に差があると感じますか?」という質問に対し、ITエンジニアの能力の差は「理系か文系かは関係ない」という回答と「理系」という回答に二極化した。
学生時代からプログラミングを学んでいる人の割合が理系の方が高いため、「理系」に回答が集中するのは納得できる。しかし、就業後の研修やフォローアップでカバーできることもあり、ITエンジニアの能力における文理の差は次第になくなっていくために、「文理は関係ない」という回答が集まったとも考えられる。
IT業界勤務者の過半数の人がIT関連の資格を取得
「あなたはIT関連の資格を取得していますか?」という質問に対し、文系は65.9%、理系は55.2%の人がIT関連の資格を保有していると回答した。IT業界では資格の知識が業務に直結することが多く、このことがIT関連資格の保有率の高さに直結していると考えられる。
IT業界勤務者に人気の資格はITパスポートと基本情報技術者
「あなたはなんのIT資格を持っていますか?」という質問に対しては、ITパスポートと基本情報技術者に多くの回答が集まった。
また、理系においては、学生時代からプログラミングを学んでいる割合が高いことが、応用情報技術者の取得者も多い結果につながっていると考えられる。
IT転職で人気の転職エージェントはdoda
「IT転職の際に使った転職エージェントは何ですか」という質問に対し、19.6%の人がIT業界への転職で最も使われている転職エージェントはdodaであると回答した。一方、23.5%の人が転職の際に転職エージェントを活用しなかったと回答した。
今後の展望
文理によるITエンジニアの待遇や能力については、約半分の人は文理での差はないと回答している。一方で、理系の方が優遇されていると回答した人も一定層いるが、これは理系出身者の方が学生時代からプログラミングなどを学ぶ機会が多く、能力が入社前から備わっていたことが要因にあると考えられる。
今回の調査を通して、IT業界においては文理によって待遇が著しく異なるようなことはないとわかった。
昨今では、どの業界も人手不足に苦しんでいる。とりわけIT業界では、需要の高さから、さらに人材不足が深刻化することが推測できる。今後、人材不足を少しでも緩和するためにも、より一層文系出身者のIT業界での活躍が期待されるだろう。
項目 | 詳細 |
調査名 | 文系出身者のIT転職に関する実態調査 |
対象者 | 20代以上の社会人の方で、IT業界に転職経験がある方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024/05/04~05/11 |
回答数 | 102名 |
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