リスキリング レポート

リスキリングの市場規模とは?市場の現状や今後の展望も詳しく解説!

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調査: スキルアップ研究所

岸田政権が5年で1兆円規模の支援を表明するなど、リスキリングが近年高い注目を集めています。

政府や企業がリスキリング支援に取り組む中で、リスキリングの市場規模はどのくらいであるのか、またリスキリング市場の現状についても着目すべきではないでしょうか。

そこで今回は世の中に出ている公開情報やスキルアップ研究所の独自調査をもとに、リスキリングの市場規模や国内のリスキリング市場の現状・動向について解説します。

リスキリングの市場規模

リスキリングの市場規模はどのくらいのものなのでしょうか。リスキリング市場の概要と併せて見ていきましょう。

日本のリスキリング周辺市場の市場規模

矢野経済研究所によると、リスキリングの手段の1つであるeラーニングの日本国内の市場規模は3,705億円となっています。

しかしながら、これはあくまでeラーニングの市場規模です。実際には、リスキリングにはeラーニング以外の手段も当然用いられます。さらに、当然eラーニングの中にはリスキリングとは全く関係のない領域も多く含まれます。

このように、リスキリングの市場規模や動向を見ていくためには、リスキリングに関連する市場規模を複数組み合わせて分析する必要があります。

今回はリスキリングの周辺市場としてeラーニング、企業向け研修サービス、リカレント教育の3つの市場に注目し、国内外のデータを調査しました。

eラーニング

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出典:矢野経済研究所 eラーニングに関する調査について

まずはeラーニングについてです。国内eラーニングの市場規模は2022年で3,705億円の見込み(矢野経済研究所調べ)であり、世界全体の市場規模は2021年時点で約2,150億米ドル、日本円にして約32兆円(グローバルインフォメーション調べ)とされています。

外出制限のあったコロナ禍を機に市場規模が格段に伸び、国内市場は2019年から2022年までのわずか4年間で60%近く成長しています。コロナ以降は市場規模の伸長は落ち着いているものの、以前として拡大傾向にあります。

企業向け研修サービス

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企業向け研修サービスの国内市場規模は2022年度で5,370億円、世界の市場規模は2023年時点で2,671億米ドル(約37兆5,000万円)でした。

国内市場についてはコロナ禍によってやや落ち込みが見られましたが、その後回復し、成長を続けています。

リカレント教育

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リカレント教育の国内の市場規模は2021年度で467億円であり、世界市場規模についてのデータは確認できませんでした。

こちらも、近年の注目度の高まりに伴い堅調に市場規模を伸ばしています。

このすべての数字がリスキリングの市場規模と言えるわけではもちろんありませんが、リスキリングの市場は少なくとも数千億円というかなり大きい規模であると考えられます。

市場の成長スピードは鈍化だが引き続き増加

以上のデータから、リスキリングの国内の市場規模は、成長スピードの変化はありつつも、堅調に増加を続けていることが推察されます。

これは、2020年から2021年にコロナ禍によってインターネットで学ぶということが一般的になった影響や、巣篭もり需要によりリスキリングが爆発的に成長スピードを上げたことが背景にあると考えられます。そして市場成長の鈍化は、コロナウイルスの流行による追い風が落ち着いたためと判断して良いでしょう。

ただし、まだ潜在的な市場全体にeラーニングや企業向け研修サービスの利用、リカレント教育が行き渡っているわけではありません。そのため2023年度以降も引き続き成長していく市場であると考えられます。

リスキリング市場の現状

ここからは企業や個人がリスキリングにどの程度取り組んでいるのかという観点から、リスキリング市場の現状について解説します。

リスキリング支援を行う企業はわずかかつ偏りあり

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出典:リスキリングナビ

リスキリングナビによると、2023年度3月決算対象企業の中で人的資本開示に「リスキリング」の記載があった企業の割合はわずか6.9%でした。

決算対象企業の割合がこの数字なので、国内企業全体の数字はさらに低いと考えられます。

リスキリングがかなり注目され、政府も本腰を入れて支援を始めていますが、企業の取り組みはまだ然程進んでいないようです。

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さらに、リスキリングをしている企業の業種を見ていくと、偏りがあることがわかります。

上のグラフからわかる通り、リスキリングに取り組んでいる業種は銀行業、保険業のような無形商材系の業種に偏っています。

また、その下のグラフを見てわかる通り、DXに取り組んでいない企業はリスキリングに取り組んでいる割合も低いことがわかります。

無形商材系の業種は新しい技術を取り入れやすく、また人が財産になるためDX化やリスキリングに取り組む割合が高いと考えられます。

リスキリングを行う個人も僅かかつ偏りあり

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出典:SOKKIN

SOKKINによると現在(2023年10月時点)リスキリングに取り組んでいる人の割合は34%とのことです。さらに個人で取り組んでいる割合は88%で、多くの人が会社ではなく個人で取り組んでいることがわかります。

また、スキルアップ研究所の調査(リスキリングアンケート集計1)によるとリスキリングを行っている人の年齢は30代、40代に偏っており、50代以降で取り組んでいる人の割合は大きく落ちることがわかります。

リスキリングの内容も、ビジネス英語に取り組んでいる人が特出して多く、2番目にそれ以外の言語、3番目にプログラミングに取り組んでいる人の割合が多いことがわかりました。

政府がリスキリング支援を進めている理由の一つにDX化に対応できるIT人材を増やす、というものがありますが、政府の意図しているITスキルのリスキリングは現状ではあまり進んでいないようです。

リスキリング市場は今後も成長継続か

リスキリング市場の成長継続はこれから紹介する4つの理由で今後も継続すると考えられます。

ポストコロナ下のオンライン教育需要増加

コロナ禍を経て(デジタルトランスフォーメーション)が社会的に推進されており、そのための人材育成としてリスキリングが注目されています。

リスキリングでは学習レベルが個人によって異なること、本業との兼ね合いの中で学習を続けていかなければならないことなどの特徴があるため、時間や場所を選ばないオンライン教育サービスとの相性が非常に良いです。

そのため、今後もリスキリング需要の増加に伴ってオンライン教育の需要や、自分のスキルを把握するためのサービスなどもオンラインを中心に増加していくと考えられます。

政府による1兆円のリスキリング支援投資

岸田総理は2022年10月3日に5年で1兆円を個人のリスキリング支援に投資すると所信表明をしました。

これにより日本では「リスキリング」という言葉が流行語大賞にノミネートされるほど一気に注目を浴びるようになりました。

政府は「人への投資」を新しい資本主義の柱として位置付けていますが、この支援はその「人への投資」の中でも政府が力を入れている政策であるため、今後も政府による支援は何らかの形で行われていくと考えられます。

リスキリング市場への新規参入増加

リスキリング市場、特にeラーニング市場は、矢野経済研究所によると、2022年度で前年度比4.3%増加の3,705億円に上るなど、コロナ禍以降新規参入が増加しています。

日本は海外と比べリスキリング市場がまだ未開拓であり、その競争の中には国内だけではなく海外の企業も入ってきています。

特に法人契約を中心としたリスキリングサービスは日本で目を見張るような広がりを見せており、「日本における法人契約の伸びは、グローバルの平均成長率を超えるようなペースで推移している」とも言われています。

さらに、前の見出しの政府の支援表明も後押しとなり、リスキリングへの注目が高まっていることも大きな要因であると考えられます。

矢野経済研究所 eラーニングに関する調査について

DX人材育成意欲の高まり

国際経営開発研究所(IMD)が発表した「世界デジタル競争力ランキング」の2023年度版によると日本は32位で先進国の中でDX化が遅れているといえます。

第4次産業革命下でchatGPTのようなAIが登場するなどテクノロジーの進化が著しい今、日本はIT人材を育てDX化を進め業務の効率化をする必要があり、政府がDXを推進しているという現状があります。

これにより企業がDX人材を育成する意欲が高まり、企業が先導して行う形になって行くことよりリスキリングのしやすい環境へと変わっていくだろうと考えられます。

世界デジタル競争力ランキング

リスキリング市場の今後の展望

リスキリング市場の今後の展望については以下のように考察できます。

ニーズの落ち着きと価格競争激化

eラーニングがけん引するリスキリング市場は潜在顧客に行き渡り今後ニーズが落ち着いていくと考えられます。

そしてニーズが落ち着くと今度は競争が激化し、既存顧客の取り合いになり、顧客単価の低下などが進行していくと予測できます。

BtoB、BtoCどちらの市場も顧客は安く良いサービスを提供している企業の商品を使うようになっていくため、今後も顧客のニーズに合わせたサービスの多様化が進んでいくと考察できます。

スキル可視化サービスの必要性増加

リスキリングをある程度の人がするようになったら次はそのリスキリングで得たスキルを可視化し評価していくスキル可視化サービスの必要性が増加することが考えられます。

その流れは日本の雇用が終身雇用を背景とする「メンバーシップ型」ではなく、専門性を前提とする「ジョブ型」にシフトしていることが後押しとなっています。

日本は新卒一括採用後にその企業が独自のスキルを教育していく「メンバーシップ型」の雇用でした。

しかし近年では欧米のようにその職務に必要なスキルを持った人材を採用する「ジョブ型」雇用へとシフトしつつあり、そのため個人が汎用性の高いスキル、特に現在ではITスキルを身に着けていく必要性が増し、リスキリングが注目されるようになっています。

サイトエンジン株式会社が行った調査によるとジョブ型雇用を過去も含めて導入している企業は41.5%で、この数字は今後も上昇していくと考えられます。

ジョブ型雇用に関するアンケート

リスキリングの市場規模まとめ

この記事では、リスキリングの市場規模について紹介してきました。

リスキリングの注目度は年々高まっていますが、それに伴い、今後もリスキリング関連の市場規模は拡大していくと考えられます。

リスキリング市場の拡大は、より多くの企業や個人がリスキリングに取り組むことを意味します。リスキリングによるスキルアップやキャリアップが実現しやすい社会の構築が目指されるべきですが、その指標として、リスキリングの市場規模に今後も注目していきたいところです。

参考資料

調査結果の引用・転載について

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