コロナ禍以降、雇用制度の変化や定年延長により、60代以降も働き続ける選択肢が現実的となってきた。
しかし、急速な技術革新やビジネスモデルの変化に対応し続けるためには、リスキリングが不可欠である。
本調査では、50代~70代を対象に「定年前にリスキリングの必要性をどの程度感じているか」と「リスキリングに対する主な障壁」を明らかにし、定年後も活き活きと働くための具体的な戦略を提案する。
- 定年付近の7割超が「定年後の学び直し」に前向き
- 何を学ぶべきか迷う人が約4割
- 成功事例を知っている人は1割にも満たず、情報浸透が鍵
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 定年後のリスキリングとその目的に関する実態調査 |
対象者 | 50代の以上の働く人々 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査機関 | 2025年1月5日〜1月11日 |
回答数 | 300 |
【回答者内訳】
今回の調査では、回答者の大半(80.3%)が50代であり定年を意識し始める年齢層の声が中心となっている。
60代も18%と一定数おり、調査では定年後の再雇用や新たな働き方を積極的に模索している姿がうかがえた。
定年前後の年代のリスキリングに関する意識調査
リスキリング認知度は低迷ー2割未満が「よく知っている」
リスキリング自体の認知度を調査したところ、「よく知っている」層はわずか17.3%に留まり、定年前後の世代においてリスキリングという概念がまだ十分に浸透していないことが明らかとなった。
しかし、「少し知っている」「聞いたことはある」層を合わせると約64.4%に達し、基礎的な認知は進んでいる。
今後の情報提供により「学び直し」の具体的なメリットや方法を明確に伝えることで、より多くのシニア層がリスキリングに対する理解を深め、実際に取り組む動機付けが期待できる。
定年後も“経済的安定”が最優先
定年後の目標や優先事項については、半数を超える人が「経済的安定」を最重要視している点が特徴的である。
「健康維持」(26.3%)や「趣味を深める」(14.3%)といった回答も見られるが、定年後の“お金”の不安が大きいことがよくわかる結果となった。
経済的懸念を持つ層にリスキリングが浸透すれば、リスキリングによって就労機会を増やしたり、収入源を多角化したりすることを通して不安の払拭につなげられる可能性がある。
定年延長で“キャリア意識”に変化
定年延長や高年齢者雇用制度の改定により、約4~5割が「キャリアプランに変化があった」と回答している。
具体的なキャリアの意識については、「現職でキャリアを続けたい」が最多の6割となった。
一方で、新しい職種や、副業・フリーランスなどの新しい働き方を視野に入れる人も目立った。各選択肢に回答が集まり、複数のキャリアプランを広く視野に入れている人も多いことが推測される。
また、いわゆる「シニア起業」や複数収入源の確保など、多様な働き方が現実味を帯びてきているとも考えられる。
リスキリングへの意欲と障壁
7割超が“定年後の学び直し”に前向き、一方で何を学ぶべきか迷う人が4割
リスキリングへの興味について尋ねたところ、「非常に興味がある」「少し興味がある」を合わせて8割近くが学び直しに好意的であった。
一方、「すでに取り組んでいる」がわずか13.7%にとどまり、「興味はあるが、何を学べばよいかわからない」が約4割に達した。リスキリングについて、シニア層で具体的な指針や情報が不足している実態がうかがえる。
情報提供の拡充やキャリア相談の場を設けることで、実際に行動に移す層が増える可能性が高いだろう。
デジタルスキルへの関心が34.7%
学びたいスキルについては34.7%が「デジタルスキル」を望んでおり、ITリテラシーの強化が今後の働き方を左右する重大要素になっている。
「趣味スキル」(32.3%)も僅差で多く、セカンドキャリアとして好きなことを仕事にしたい意欲も見える。
リスキリングの必要性については8割超が「必要」と答えており、定年後の再就職や新事業立ち上げを成功させるために、学び直しが欠かせないと考えている人が多数である。
4割超が新職業に挑戦希望
リスキリングに取り組む目的については、「新しい職業に挑戦するため」と答えた人が最も多く、定年後であってもキャリアチェンジを積極的に考える層が一定数存在している。
「趣味を深めるため」(26.3%)も2番目に多く、ライフワークを兼ねたビジネス展開を視野に入れる人もいると推測できる。
いずれも「自己実現」や「新しい収入源確保」という方向性が背景にあり、リスキリングのモチベーションにつながっているようである。
成功事例の普及とサポート不足がリスキリング浸透への課題

「定年後に成功したリスキリング事例を直接聞いたことがある」人はわずか9.3%に過ぎなかった。具体的な成功事例が広まることで、リスキリングの具体的なイメージがつき、リスキリングに取り組みやすくなる人は多いだろう。
また、リスキリングを行うにあたって必要なサポートについては「無料・低価格の講座情報」「初心者向けガイド」がそれぞれ38%と高い割合を示しており、経済的負担の軽減と学習の入り口の整備が求められていることが明らかとなった。
これに加え、経験者による体験談の共有やメンター制度の導入が進めば、リスキリングを始めるための心理的障壁を低減し、シニア層の積極的な学び直しを促進することが期待できる。
リスキリングは定年後の可能性を広げる武器に
多くの人が「定年後の経済的安定」を求める中、新たな働き方や副業・フリーランスへの興味を示し、学び直しの必要性を8割以上が認めていることが本調査から明らかとなった。
しかし、「何を学ぶべきかわからない」「費用が高い」「成功事例が少ない」といった障壁が存在し、実際に行動に移せていない人も多い現状が浮き彫りとなった。
定年前後であっても、学び直しを始めることで、新しいキャリアや収入源を得るチャンスは十分に存在する。
リスキリングは定年後の人生を大きく変える鍵となり得るが、個人だけでなく企業や自治体のサポート、情報提供、そして仲間との連携が不可欠である。
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