![]()
※総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」(2026年2月3日公表)をもとにスキルアップ研究所が集計・分析
「東京一極集中」という言葉は、これまで漠然と「あらゆる人が東京に集まる」というイメージで語られてきた。しかし、2025年の人口移動の統計を年齢別に見ると、転入超過(転入者数から転出者数を差し引いた値)として実際に東京都に集まっているのは、ほぼ特定の年齢層に限られることがわかる。
スキルアップ研究所では、総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」をもとに、人がどこからどこへ移動しているのかを整理し、さらに移動先の地域の通勤時間(総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」の通勤・通学時間を参考値として使用)と重ね合わせて分析した。
- 2025年の東京都の転入超過は65,219人で全国最多。ただし前年より14,066人減少し、4年ぶりに縮小した
- 東京都の転入超過65,219人のうち、20〜24歳が57,263人と87.8%を占める。一方、0〜9歳と35歳以上の各年齢階級は転出超過だった
- 前年に比べ転入超過数が最も拡大したのは神奈川県(+1,089人)で、埼玉県も転入超過数で全国3位だった
- 転入超過が最も拡大した神奈川県は、1日の通勤・通学時間が100分と全国で最も長い地域である(2021年調査の参考値)
- 転出超過は40道府県にのぼり、日本人移動者で見た東京圏の転入超過は30年連続。東京圏への人口集中の構造自体は続いている
※転入超過数は、特に断りのない限り日本人および外国人を合わせた移動者の集計値
東京都の転入超過は全国最多、ただし4年ぶりに縮小した
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」によると、2025年(1月〜12月)の東京都の転入超過数(転入者数から転出者数を差し引いた値)は65,219人で、都道府県別で全国最多だった。
一方で、前年(2024年)の79,285人と比べると14,066人の減少であり、東京都の転入超過の縮小は4年ぶりである。
東京都のなかでも特別区部(東京23区)の転入超過は39,197人で、前年の58,804人から19,607人(約33.3%)減少している。
縮小の理由は本統計からは特定できない。参考として、総務省統計局は2023年の分析(統計Today No.194「2023年春の東京都の転入超過の状況」)で、20代で東京都に転入した層が30代で結婚・出産等を機に割安な住宅を求めて周辺県へ転出する傾向と、東京23区の住宅価格高騰が影響している可能性に触れている。
ただしこれは2023年時点の統計局の分析であり、2025年の縮小そのものを説明するものではない。
東京都の転入超過の87.8%は、20〜24歳だった
東京都の転入超過65,219人を年齢別に見ると、その中身は大きく偏っている。
20〜24歳の転入超過だけで57,263人にのぼり、全年齢の転入超過の87.8%を占める。逆に言えば、20〜24歳を除いた東京都の転入超過は7,956人にとどまる。

さらに、0〜9歳と35歳以上の各年齢階級では、転入よりも転出が多い「転出超過」となっている。年齢階級別で転出超過が最も多いのは60〜64歳の4,222人である。
20〜24歳という年齢層の移動は、進学や就職に伴うものが主因と考えられる。つまり2025年の統計が示すのは、「東京都は、進学・就職期の若者を集める一方で、子育て期以降の年齢層は流出している」という年齢構成の偏りである。
なお、この年齢別の傾向は移動の「結果」を示すものであり、個々の移動の理由や動機は本統計からはわからない。
転入超過が全国で最も拡大したのは、神奈川県だった
都道府県別に転入超過の顔ぶれを見ると、転入超過となったのは東京都(65,219人)、神奈川県(28,052人)、埼玉県(22,427人)、大阪府(15,667人)、千葉県(7,836人)、福岡県(5,136人)、滋賀県(353人)の7都府県のみで、残りの40道府県はすべて転出超過だった。
注目されるのは前年からの変化である。前年に比べ転入超過数が拡大したのは3県で、そのうち最も拡大したのは神奈川県(+1,089人)だった。一方、最も縮小したのは東京都(−14,066人)である。

東京都の転入超過が縮小し、隣接する神奈川県の転入超過が全国で最も拡大した。
それぞれの流入元・流出先の内訳は本レポートで引用した数値には含まれておらず、「東京都から周辺県へ人が移った」といった移動の方向をここから断定することはできない。
同様に、神奈川県の転入超過が拡大した理由(家賃、住宅取得、働き方の変化など)も本統計からは特定できない。ここで示せるのは、移動の結果としての数字のみである。
転入超過が最も拡大した神奈川県は、通勤・通学時間が全国で最も長い
では、転入超過が最も拡大した神奈川県は、通勤の面ではどのような地域なのだろうか。
総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」によると、平日に通勤または通学を行った人の1日あたりの通勤・通学時間(往復)は、神奈川県が100分で全国最長である。転入超過数で全国3位の埼玉県も94分で、いずれも全国平均の79分を大きく上回る。
本レポートでは、スキルアップ研究所の既報「通勤時間の生涯コストに関する試算レポート」 と同様に、この通勤・通学時間を会社員の通勤時間の参考値として用いる。

神奈川県の100分と全国平均の79分の差は1日21分である。年間出社日数を245日、1日の所定労働時間を8時間として単純換算すると、この差は年間で約85.8時間、8時間労働日に換算して約10.7日分に相当する。
つまり、2025年に人の流入が最も拡大した神奈川県は、住む場所として選ばれる一方で、通勤時間という面では全国で最も大きな負担を伴う地域でもある。
ここで重要なのは、因果関係を主張しないことである。「通勤が長くても神奈川県が選ばれた」のか、「別の理由で選んだ場所がたまたま通勤の長い地域だった」のかは、統計からはわからない。示せるのは、「都心から離れて住む人が増えている」ことと「その地域は通勤時間が最も長い」ことという、2つの事実の並置である。
働く場所が都心に集中している限り、住む場所を都心から離すという選択は、通勤時間の増加という形で表れやすい。今回の2つの統計の重なりは、その構造を示唆している。
一極集中の構造そのものは続いている
ここまでの数字は「東京都の転入超過の縮小」を示すものだが、これをもって「東京一極集中が終わった」「地方移住が進んだ」と読むことはできない。
第一に、転出超過は40道府県にのぼり、転出超過数が最も多いのは広島県の9,921人、次いで福島県の7,197人、静岡県の6,711人である。地方から大都市圏への人口流出は続いている。
第二に、東京圏(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県)全体の転入超過は123,534人で、前年より12,309人縮小したものの、依然として大幅な転入超過である。日本人移動者に限った集計では、東京圏の転入超過は112,738人で、1996年以降30年連続の転入超過となっている。
第三に、地方移住への「関心」と実際の移動には距離がある。内閣府「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2023年3月調査)では、東京圏在住者の35.1%が地方移住に関心を持ち(2020年5月調査の30.2%から上昇)、20歳代では44.8%にのぼった。しかし、2025年の移動実態は前述のとおり東京圏への転入超過の継続であり、関心の高さがそのまま地方への移動に結びついているとは言えない。なお、この内閣府調査は第6回(2023年3月)で終了しており、これより新しい同一の定点データは存在しない。
まとめると、2025年の統計が示すのは「一極集中の終わり」ではなく、「一極集中は続いたまま、その中身(集まる人の年齢構成と、東京圏の内側での行き先)が変わりつつある」という構図である。
まとめ
総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」を年齢別・地域別に整理すると、東京都の転入超過65,219人の87.8%は20〜24歳であり、0〜9歳と35歳以上は転出超過だった。東京都は、進学・就職期の若者を集め、それ以外の年齢層を送り出す構造になっている。
また、東京都の転入超過が4年ぶりに縮小する一方で、神奈川県の転入超過は全国で最も拡大した。その神奈川県は、1日の通勤・通学時間が100分と全国で最も長い地域である(2021年調査の参考値)。
働く場所が都心に集中している構造のもとでは、住む場所を都心から離す選択は通勤時間の増加と重なりやすい。住む場所と働く場所の距離をどう扱うかは、個人の生活時間にとっても、企業の働き方の設計にとっても、今後の重要なテーマといえる。
なお、東京圏への転入超過は日本人移動者で30年連続であり、東京圏への人口集中の構造自体は続いている。本レポートの数字は「地方移住が進んだ」ことを示すものではない点に留意されたい。
付録:分析データ一覧
本レポートで使用した数値の一覧を示す。
基礎データ(人口移動)
出典:総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」(2026年2月3日公表)
項目 | 値 | 備考 |
|---|---|---|
東京都の転入超過(全年齢) | 65,219人 | 全国最多。前年比−14,066人で4年ぶりに縮小 |
東京都:20〜24歳の転入超過 | 57,263人 | 全年齢の転入超過の87.8% |
東京都:0〜9歳・35歳以上 | 転出超過 | 年齢階級別の転出超過最多は60〜64歳(4,222人) |
東京23区の転入超過 | 39,197人 | 前年58,804人から19,607人(約33.3%)減少 |
神奈川県の転入超過 | 28,052人 | 前年比+1,089人。全国で最も拡大 |
埼玉県の転入超過 | 22,427人 | 全国3位 |
大阪府の転入超過 | 15,667人 | 全国4位 |
千葉県の転入超過 | 7,836人 | 全国5位 |
転入超過となった都府県 | 7都府県 | 東京・神奈川・埼玉・大阪・千葉・福岡・滋賀 |
転出超過となった道府県 | 40道府県 | 最多は広島県9,921人、次いで福島県7,197人、静岡県6,711人 |
東京圏の転入超過 | 123,534人 | 前年比−12,309人 |
東京圏の転入超過(日本人移動者) | 112,738人 | 1996年以降30年連続の転入超過 |
※転入超過数は、特に断りのない限り日本人および外国人を合わせた移動者の集計値。なお、東京都の外国人移動者は2025年に転出超過へ転じており、日本人と外国人で動きが異なる。
基礎データ(通勤・通学時間)
出典:総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」(平日に通勤または通学を行った人の通勤・通学時間)
地域 | 通勤・通学時間(1日合計) |
|---|---|
神奈川県 | 100分(全国最長) |
埼玉県 | 94分 |
全国平均 | 79分 |
計算式
- 東京都の転入超過に占める20〜24歳の割合 = 57,263人 ÷ 65,219人 = 87.8%
- 20〜24歳以外の東京都の転入超過 = 65,219人 − 57,263人 = 7,956人
- 東京23区の転入超過の減少率 = 19,607人 ÷ 58,804人 = 約33.3%
- 神奈川県の通勤・通学時間は全国平均の何倍か = 100分 ÷ 79分 = 約1.27倍
- 神奈川県と全国平均の通勤・通学時間の差(年間換算) = 21分 × 245日 ÷ 60 = 約85.8時間 = 8時間労働日で約10.7日分
分析の概要
- 出典データ(人口移動):総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告 2025年(令和7年)結果」(2026年2月3日公表)。2025年1月〜12月の市区町村への転入・転出の届出に基づく集計
- 出典データ(通勤・通学時間):総務省統計局「令和3年社会生活基本調査」(2021年調査)。平日に通勤または通学を行った人の1日あたり通勤・通学時間。2026年7月時点で公表されている最新の調査結果
- 出典データ(移住への関心):内閣府「第6回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(2023年3月調査・2023年4月19日公表)。同調査は第6回で終了
- 参考文献:総務省統計局「統計Today No.194 2023年春の東京都の転入超過の状況」(2023年公表。統計作成に携わる職員の分析・見解を交えた媒体であり、総務省の公式見解を示すものではない)
- 分析主体:スキルアップ研究所
- 年間換算の前提:年間出社日数245日、1日の所定労働時間8時間(既報「通勤時間の生涯コストに関する試算レポート」と同一の前提)
留意事項
本レポートの転入超過数は、特に断りのない限り日本人および外国人を合わせた移動者の集計値である。東京都の外国人移動者は2025年に転出超過へ転じているなど、日本人と外国人では移動の動きが異なる。
住民基本台帳人口移動報告は住民票の異動届に基づく統計であり、個々の移動の理由や動機は含まれない。本レポートで触れた移動の背景(進学・就職、住宅など)は、年齢構成などから推測される一般的な傾向、または総務省統計局の分析(統計Today No.194・2023年)として紹介したものであり、2025年の移動について統計上の因果関係を示すものではない。
通勤・通学時間は、平日に実際に通勤または通学を行った人を対象とした値であり、通学者も含まれる。本レポートではこの値を会社員の通勤時間の参考値として用いている。調査は2021年実施であり、その後の働き方の変化などによって実態が変動している可能性がある。
年間換算の値は、公表統計の平均値に一定の前提(年間出社245日・1日8時間労働)を掛け合わせた概算値であり、個人の実際の通勤時間を示すものではない。
地方移住への関心に関するデータは2023年3月調査時点の値である。同調査は第6回で終了しており、これより新しい同一設問の定点データは存在しない。
引用・転載について
本レポートの著作権は、株式会社ベンドが保有します。
引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」などの形で出典を明記し、本記事およびスキルアップ研究所(https://reskill.gakken.jp)へのリンクを付してください。
引用・転載されたことにより、利用者または第三者に損害その他のトラブルが発生した場合、当社は一切の責任を負いません。
調査結果の引用・転載について
本レポートの著作権は、株式会社ベンドが保有します。 引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」のような形で出典を明記し、本記事のリンクを付してください。 引用・転載されたことにより利用者または第三者に損害その他トラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いません。