近年、柔軟な働き方がしやすいことでフリーランスへ転身する人が少なくない。その中でも、高収入になりやすい職業としてITエンジニアが注目されている。
今回はフリーランスのITエンジニアへの興味を持った理由から年収、労働時間まで、フリーランスのITエンジニアの実態について解明すべく、調査を実施した。
- フリーランス転身前にエンジニア経験ありは65%
- エンジニア経験者の方が高所得である割合が高い
- フリーランスの7割がスキルアップに取り組んでいる
- 案件数の相場はひと月当たり2~3件
フリーランス転身前にエンジニア経験ありは65%
フリーランスになる前のエンジニア経験の有無について尋ねたところ、フリーランスのITエンジニアになる前にエンジニア職を経験している人が過半数を占めることが分かった。
その一方、約35%はエンジニア職未経験からフリーランスのITエンジニアに転職している。
エンジニア経験者はITエンジニアの需要も動機に
エンジニア未経験者が在宅ワークにおいてITエンジニアに興味を持った一方、経験者がITエンジニアに興味を持った理由は「在宅で働けるから」が34.8%(22人)、「ITエンジニア分野は需要のある業界だと思ったから」が31.6%(20人)という結果になった。
在宅ワークが魅力的であることに関しては未経験者と共通しているが、経験者たちはITエンジニアの需要について考慮して、ITエンジニアに興味をもった人も多い事が分かった。
高所得は経験を積んでから
現在の年収について尋ねたところ、経験者では「200~600万円未満」に合計8割近くが集中した。
一方、未経験者では、ボリュームゾーンが経験者に比べて低い傾向がみられた。特に、400万円以下の層が経験者では4割強であるのに対し、未経験者では約6割となった。また、1000万円以上の所得に注目してみると、経験者は計12.2%であるのに対し、未経験者は0%という結果になった。
以上から、年収の相場は経験者の方が高く、高所得も経験者の方が期待値が高いといえる。20代の内に経験を積んで30代・40代にフリーランスへ転身する人が多いのも納得であろう。
フリーランスの労働時間の違い
専業フリーランスの1日の労働時間を尋ねたところ、6時間以上働く層が全体の7割以上を占めた。専業のフリーランスの場合、自身の働きが収入面に影響しやすいことから、長時間働いている人が多いと考えられる。
一方、副業フリーランスに労働時間を尋ねたところ、「~4時間」が最も多く、半分近くを占めることが分かった。副業として働いていることから、元のスケジュールの中で、フリーランスの仕事に取り組める時間を見つけ、短時間働く形態が取られていることが分かる。
定休日は週休2日
1週間あたりの定休日について尋ねたところ、専業、副業どちらも「定休日が2日/週」が約6割で一番多い事が分かった。
一方で、専業フリーランスは「定休日が1日/週」が約3割なのに対し、副業は約2割という結果となり、専業フリーランスの働き方において副業よりも自由度が高く、労働量が多くなる傾向にあることから、稼働日数が多くなっていると考えられる。
最初は副業からフリーランスを始める
年収について専業/副業に分けて尋ねたところ、専業フリーランスの場合は「~500万円未満」に7割以上が集中した。これは、副業フリーランスにおいてもほぼ同様だった。
一方で、「500~900万円未満」の層には大きく差が生まれ、専業フリーランスでは11.5%だったのに対し、副業フリーランスでは29.7%となった。
副業の年収は本業と合わせての年収であることから、「500~900万円未満」の層について専業フリーランスと比較して差が生まれたと考えられる。
フリーランスの7割がスキルアップに取組んでいる
スキルアップをしているかどうか尋ねたところ、7割の人がスキルアップに取り組んでいることが分かった。
個人の実力に応じて案件の内容や報酬が変わりやすいことを考慮すると、スキルアップをしなければフリーランスの世界で生き残ることができない。そうした環境下では、スキルアップへの取り組みが加速していくことが伺える。
スキルアップの勉強方法を尋ねたところ、「本以外で独学」が44.4%で一番多く、「通信講座や専門学」が28.9%、「本で独学」18.9%ということが分かった。
「本以外で独学」や「通信講座や専門学」の回答数が多いことから、動画などで勉強するのが主流だと考えられる。
案件と仲介業者について
案件数の相場はひと月当たり2~3件
ひと月当たりの案件数は2件が39.7%、3件が30.2%と、合計7割を占め、ひと月当たりの案件数が2~3件が相場であると言える。
ひとつの案件にかかるスパンや仕事量にもよるが、案件に集中して取り掛かるためにはひと月当たり2~3件が限度であるようだ。
仲介業者は1~2社が相場
仲介業者は1社が33.3%(21人)、 2社が30.2%(19人)という結果となり、フリーランスが利用する仲介業者数の相場は1~2社ということが言える。
3社以上仲介業社を利用している人は多くはなく、仲介業者を利用していない層も2割以上存在することがわかった。
今後の展望と課題
経験者が未経験者よりもフリーランスとして高収入を得やすいということから、専門技能を持つフリーランスへの需要は引き続き高いと見られる。
ノーコード・ローコード開発の普及により、プログラミングの技術的ハードルが低くなることで、新たなフリーランスの市場が大きくなる可能性がある。これにより、技術的な知識が少ない人でもフリーランスとして参入しやすくなる。
未経験者が経験者と比べて収入が低いことから、この収入差を埋めるためのスキルアップをどのように推進していくかが課題である。政府は実際に、企業のDX推進の変化や生成AI等のデジタル技術の進展を踏まえ、デジタル人材育成の政策を進めている。このように、未経験者へ充実した研修や支援プログラムの拡充が求められる。
また、多くのフリーランスがスキルアップに励んでいる状況であるが、急速に変化する技術環境に対応するためには、より効果的かつアクセスしやすい学習リソースが必要である。
ITエンジニアに対して高まる需要の中で、人材育成に注力し、フリーランスのITエンジニアに挑戦しやすい環境をつくっていくことが労働力の確保にも繋がっていくだろう。
調査概要
項目 | 詳細 |
調査名 | フリーランスのITエンジニアに関する実態調査 |
対象者 | フリーランスでITエンジニアをしている方 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | アンケート調査 |
調査期間 | 2024/5/12~2024/5/19 |
回答数 | 63 |
調査結果の引用・転載について
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