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IT業界のジェンダーに関する調査

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調査: スキルアップ研究所

現状、IT業界で働く人の割合は男性の方が多い。しかし、IT業界で女性が働くことには、様々な視点からの意見が飛び交うなどの利点がある。

IT業界の女性や女性幹部の割合、直面している課題、男女間での年収格差、企業の取り組みなどにはどのような傾向があるだろうか。IT業界におけるジェンダー間での格差を解明するべく、スキルアップ研究所では調査を実施した。

「IT業界のジェンダーに関する調査」結果のポイント
  • 7割が女性幹部の割合は10%以下と回答
  • 女性が直面している一番の課題は育児との両立
  • 出産・育児の制度拡充に取り組む企業も多い
  • IT業界の年収格差の認識は男女で異なる

IT就労経験者の4分の3以上が「女性割合40%以下」と回答

IT企業 女性割合

IT業界における女性の割合は、やはり決して高くない。

本調査で「職場の女性の割合はどのくらいですか」と尋ねたところ、全体の4分の3が40%以下と回答する結果となった。

IT業界においては男女同数といえる状況にはないことが明らかとなり、全体的な底上げがこれからの課題であると言える。

約7割が「女性幹部の割合は10%以下」と回答

IT 女性幹部 割合

IT業界の女性幹部の割合も非常に低い。「職場にいる女性幹部の割合はどのくらいですか」という質問に対し、計67.6%が職場の女性幹部の割合は10%以下だと回答した。中でも、0%と回答した人が全体の2割にのぼった。反対に、幹部の過半数が女性だという回答は全体の2.8%にとどまっている。

結婚や出産など、女性は男性に比べて、仕事を離れる機会が多いため、昇進の機会が得にくいのが一つの原因となっていると考えられる。

IT業界で働く女性が少ない理由は「育児への不安」

「IT業界で女性の入社が少ない理由は何だと思いますか」という質問に対し、男女共通で50%以上の人が「労働時間が長かったり不規則なことがあり、将来的に育児が不安」と回答した。IT業界に女性が少ない理由に関しては、概ね男女で意見が割れることはなかった。

しかし、昇進機会への認識については、男女間での差が顕著に現れた。29.3%(22人/75人)の女性が「男性に比べて昇進の機会が少ない」と回答し、これを選んだ人の割合では男性に比べ2倍以上となった。現状、女性幹部の割合は男性幹部に比べてかなり少ない。企業内に新たな文化を作ることは難しく、現状の女性幹部の割合が少ないことが、女性の新たな昇進機会の少なさに繋がっていることが推察できる。

IT業界の女性にとっての労働環境

IT業界は他の業界に比べて女性が働きやすいと思われている

IT 女性にとっての働きやすさ

「IT業界は他の業界に比べて働きやすいと思いますか」という質問に対し、男女ともに約3分の2の人が「はい」と回答した。男性目線でだけでなく、女性目線でも働きやすい環境が整っていると思われていることが実証されたのは意義深い。

IT業界は女性や女性幹部の割合が少ないといった課題もあるが、IT業界で実際に働いている人は働きやすいと認識している傾向があることが判明した。

IT業界が働きやすいと思われている理由はリモートワーク

IT 働きやすい リモートワーク

「IT業界が女性にとって働きやすい理由は何だと思いますか」という質問に対し、男女ともに56.3%の人が「企業によってはリモートワークが許可されているから」と回答した。また、IT業界では現場での力仕事が少ないという観点からも、女性にとって比較的働きやすい業界だと言えるだろう。

多くの企業が女性の働きやすさ改善に努めるべき

IT企業 女性の働きやすさ 取り組み

「あなたの所属する企業では女性の働きやすさ改善のためにやっていることはあると思いますか」という質問に対し、50%近くが「いいえ」と回答した。

つまり、IT業界の女性の働きやすさは、各企業の努力の結果ではなく、IT業界のもつ特色に依存するものだと指摘できる。現状IT業界は男性の割合が高い。企業による女性の働きやすさ改善の取り組みにより、IT業界で働く女性の割合や平均勤続年数をさらに上げられるだろう。

リモートワークや出産・育児手当の拡充が女性の働きやすさ改善の手段

IT女性の働きやすさ 取り組み 例

「あなたの職場では女性の働きやすさ改善のために具体的に何をしていますか」という質問に対し、53.7%の人が「出産・育児関連の制度の拡充」と回答した。また、24.4%の人が「女性専用の交流コミュニティを増やす」、12.2%の人が「リモートワークやフレックス制度など柔軟な働き方を採用している」と回答した。

IT業界は男性の割合が多い。女性ならではの意見を取り入れることは企業の成長のためにとても重要なことであるため、このような施策はこれからも続いていくだろう。

IT業界に女性従業員が必要とされる理由

IT業界における女性の重要性については多くの意見がある。

「IT業界における女性従業員の必要性は何だと思いますか」という質問に対して、「社会的促進の平等」や「丁寧なタスク管理」、「職場の雰囲気が華やかになる」など、どの業界でも当てはまるような回答もあれば、「男性従業員だけでは思いつかない案が得られる」といった男性の割合が多いIT業界特有の回答も多かった。

IT業界のさらなる発展や、今後の最新技術の普及には、より一層様々な観点で物事を見る必要性があるといえる。男性の割合が高いIT業界では、女性の活躍が不可欠である。

IT業界で女性が直面している課題は育児と昇進

IT 女性 課題

IT業界で働く女性が直面している問題としては大きく二つ挙げられる。

「IT業界で働く女性が直面している一番大きな課題は何だと思いますか」という質問に対し、46.9%の人が「拘束時間が長く、育児との両立が難しい」と回答した。また、34.1%の人が「幹部層に女性が少なく、昇進も難しい」と回答しており、こちらも重要な問題と認識されている。

これらは、前述の「女性入社が少ない理由」と重なっており、IT業界にとって解決が急務である課題であることが改めて示されたといえる。

女性を雇う上で大変なことはライフイベントによる離脱

IT 女性を雇う 大変

「IT企業が女性を雇う上で大変なことは何だと思いますか」という質問に対し、67.0%が「結婚や育休などで離脱されるリスクが男性よりも高い」と回答した。

男性による育児家事などが少しずつ世間で浸透してきている中だが、結婚や育休による女性の離脱は企業にとって不安視せざるを得ない点となっていることが分かる。

IT業界における年収格差に対する認識は男女で異なる

「IT業界における女性の年収は男性の年収よりどのくらい低いと感じますか」という質問に対し、男性は51.5%の人がIT業界の男女間の年収差は0~50万円だと回答しており、最も割合が高い階級となっている。また、女性も36.0%の人が年収格差は0~50万円だと回答しており、最も割合が高い階級となっている。

しかし、年収格差が100~150万円あると回答した女性の割合が男性に比べてかなり高いことから、性別による年収格差は一定存在すると推測される。

今後の展望・課題

現状、IT業界の人口は男性の方が多い。ダイバーシティ・男女平等の観点のみならず、多様な視点から男性だけでは得られない新しいアイデアを生み出すという点からも、女性の積極的な採用が求められる。

IT業界で女性が直面している課題としては、人材不足による長時間労働により育児に支障が出ることや、男性に比べて昇進機会が少ないことなどがあげられる。昇進機会が少ない状況は、IT業界の女性幹部の割合にも色濃く反映されている。

また、IT業界ではリモートワークを取り入れたことにより、女性の働きやすさが改善方向に向かっていることがうかがえる。出産や育児など、女性がライフイベントをきっかけに会社を離脱してしまうことは仕方がなかった。しかし、リモートワークのさらなる推進によって育児との両立がしやすくなり、女性の勤続年数や昇進機会の増加が期待できるだろう。そうなれば、調査で懸念された年収格差も、解決に向かうと推測される。

今後、より女性が働きやすい社会をつくるために、リモートワークの普及等で素地の整っているIT業界が、改革の先陣を切っていくことが期待される。

調査概要

項目

詳細

調査名

IT業界のジェンダーに関する調査

対象者

IT業界に従事した経験がある方

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024年5月16日~2024年5月23日

回答数

179名

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