昨今、キャリア形成における転職の重要性が高まっている中、高給与と魅力的な職務内容からコンサルティング業界が注目を集めている。
一般に難易度が高いとされるコンサルティングファームへの転職だが、その実態はどうなのか。本調査では、転職準備の際に転職者が直面する課題、求められるスキルや資格など、多角的な視点から転職経験者にアンケートを実施した。
また、これらの観点から、コンサルティング業界への転職を成功させるために何が大切で、どのような準備が必要なのかを探り、転職希望者に実践的な指針を提供する。
- ケース面接とWEBテストの対策が大きな課題
- 転職者のほぼ半数が英語の資格を取得
- 半年以内に転職先が決まるケースが約8割
どの会社がいいのか判断できないことが転職時の1番の不安
コンサルティング業界への転職を検討する際、最も大きな不安要素として浮かび上がったのは「どの会社がいいのか判断できない」ことであった。また、2番目に多かった回答は「転職を後悔するのが怖い」というものだった。
これらの結果から、転職希望者は慎重に企業選びを行い、後悔のない決断を下すことに高い関心を持っていることがうかがえた。転職活動時には、志望企業について入念に調べ、可能であれば実際に働く人とコンタクトを取るなど、適切な転職先を選定するための情報収集が重要となる。
他方、「内定先が決まるか不安」も同数で2番目に多い回答となった。転職活動をするにあたって、その目的が達成されるかどうかは当然ながら多くの人が懸念しているようである。
給与水準が高いことが第一の判断基準
「就職先のファームや企業を選んだ基準を教えてください(複数回答可)」という質問に対しては、60.7%が「給料が他よりいい」を選択した。コンサルティング業界自体の魅力に高給であることが挙げられ、転職の際に業界を志望する動機にも給与面が大きく影響することから、ファームを選ぶ際にも給与面が重要な指標となるのは当然だろう。
次いで「仕事内容が楽しそう」が42.9%で2位となった。この結果から、転職希望者が金銭的な待遇を最優先しつつも、仕事の内容にも高い関心を持っていることがわかる。転職先の選定において、給与水準が決定的な影響力を持つ一方で、やりがいのある仕事内容も重要な判断基準となっているようだ。
未経験の転職ではITコンサルティングファームが約半数
今回の調査では、回答者28人のうち24人が未経験からの転職であった。以下では、未経験からの転職先としてどの分野のファームが選ばれているかを調査した。
未経験者のコンサルティング業界への転職先として、ITコンサルティングファームが最も人気が高いことが明らかになった。
調査結果によると、未経験からの転職者の45.8%がITコンサルティングファームを選択している。これに続いて、総合コンサルティングファームが29.2%、戦略コンサルティングファームが20.8%となっている。
ITコンサルティングファームが約半数を占める理由としては、業界の需要拡大や、場合によっては前職でのIT関連知識を活かせる可能性が高いことなどが考えられる。
転職準備で大変なことはケース面接とWEBテストの対策
「コンサル転職の中で最も大変だった項目を教えてください」という質問では、「ケース面接」と「適性検査・WEBテスト」がともに32.2%で首位を占める結果となった。
コンサルティング業界特有のケースインタビューへの対策と、転職者向けのWEBテスト対策が最も難しく、時間と労力を要する項目であるようだ。
ケース面接や適性検査では、論理的思考力や最低限の知識・言語能力などが問われ、特にケース面接は業務への適性を判断する重要な選考フローである。コンサルティング業界への転職準備をする際は、これらに特に力を入れて準備する必要があると判断できる。
履歴書には「資格」「数値の伴った前職の実績」が使いやすい
「履歴書の中で一番の自分の売りにしていたものを教えてください」という質問に対して、「数値が伴った前職での実績」を最大の売りとした回答者が35.6%で最多を占め、次いで「資格」が28.6%という結果となった。
具体的かつ客観的に評価可能な実績や能力は、採用担当者にも伝わりやすく、評価を受けやすい。自身の過去の業績を数値化して提示したり、関連する資格を取得したりすることで、より効果的に自己をアピールできると考えられる。
資格のなかでほぼ半数が「TOEIC・TOEFL」を取得
「コンサルティング業界への転職のためにどんな資格を取得したか教えてください(複数回答可)」という質問では、「TOEIC・TOEFL」と回答した人が半数を占めた。これは、コンサルティング業界、特に外資系ファームにおいて英語能力が高く評価されることを反映しているといえる。
次いで「PMP」と「中小企業診断士」がともに14.3%で続いており、プロジェクトマネジメントや経営診断のスキルも重要視されていることがわかる。
また、全体の8割が資格を取得している一方で、資格を取得していない層が17.9%にのぼることも指摘できる。英語力の証明が重要視される中、他のスキルや経験も併せて評価される傾向にあると言えるだろう。
英語能力はTOEIC700点前後がボリューム層
コンサルティング業界への転職者の英語能力について、具体的な分布が明らかになった。
調査結果によると、TOEIC 600~740点(TOEFL 70~80点相当)の範囲が28.5%で最多となっており、次いでTOEIC 550~600点(TOEFL 60~70点相当)が25.0%を占めている。
この結果から、TOEIC 700点前後がコンサル転職者の平均的な英語力のレベルであると考えられる。また、TOEIC 740点以上の高得点者も合計で35.8%存在しており、英語力の高さが評価される業界の特性を反映している。
コンサルティング業界への転職では、TOEIC 700点程度を目安としつつ、より高得点を目指すことで競争力を高められる可能性があると考えられる。
転職活動時にとっておきたかった資格は「中小企業診断士」
「転職活動時にとっておきたかった資格を教えてください(複数回答可)」という質問に対して、「中小企業診断士」が28.6%で首位となった。
この資格は、取得に800~1000時間もの膨大な学習時間を要し、最短でも1年以上の準備期間が必要とされる。そのため、多くの転職希望者が「取っておきたかった」と感じながらも、時間的制約から断念せざるを得なかったと推測されるが、取得により経営に関する知識を身につけられるため、取得できた場合入社後に活かせる点は多いだろう。
次いで「MBA」が21.4%で2位となっており、中小企業診断士と同様、経営に関する高度な知識やスキルへの需要の高さがうかがえる。
コンサルティング業界への転職に際して資格の取得が必ずしも必要であるわけではないが、取得を目指す場合は、高難易度の資格を取得することも視野に、長期的な視点での資格取得計画が重要である。
半年以内で転職先が決まるケースが約8割
調査の結果、転職を考え始めてから実際に転職先が決まるまでの期間は、比較的短いケースが多いことがわかった。特に、「2ヶ月以下」と「3ヶ月」の回答がともに17.9%で、合わせて35.8%を占めている。
さらに、6ヶ月以内に転職先が決まったケースが全体の78.5%に達している。適切な準備を行えば、半年以内という比較的短期間でコンサルティング業界への転職が実現可能であることを示している。
集中的な準備期間を設けることで、効率的な転職活動が可能であることがうかがえた。
課題と展望
コンサルティング業界への転職を成功させるためには、複合的なアプローチが必要だということが以上の調査結果より理解できる。
志望企業を決める段階では、会社の実態や業務内容についての情報を精力的に収集することが、不安要素をなくしていくために必要な手段となるだろう。今後の需要を鑑みて転職先のファームや部門を選定していくことも有効である。内定先が決まるかどうかについては、約8割が転職先が半年以内に決まっていることから、不安視しすぎる必要はないだろう。
また、対策に際して特に注力すべき点は、ケース面接とWEBテストへの対策だ。これらは多くの転職者が最も力を入れている項目であり、論理的思考力や問題解決能力を磨くことが不可欠である。自己アピールの面では、数値化できる実績や関連資格の取得を軸に考えていく必要がある。
これらの準備を計画的に進め、自身の強みを明確に示すことができれば、コンサル転職の成功率を大きく高められるだろう。同時に、転職後のキャリアパスや自己成長の機会についても十分に考慮し、長期的な視点で転職を捉えることが重要である。
調査概要
項目 | 詳細 |
調査名 | コンサルティング業界への転職時の準備に関する実態調査 |
対象者 | コンサルティング業界への転職経験者 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2024年5月16日〜2024年5月23日 |
回答数 | 28 |
調査結果の引用・転載について
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