リスキリング レポート

公認会計士の転職に関する実態調査

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調査: スキルアップ研究所

現代社会では、転職が一般的になっており、公認会計士もその例外ではない。

むしろ、公認会計士は転職しやすい職業として知られ、多様なキャリアパスが注目されている。

しかし、転職未経験者にとっては、転職市場の実情が見えにくい上、転職にはさまざまな不安や懸念が伴うため、踏み切れないという方も多いだろう。

スキルアップ研究所では、公認会計士の転職市場を把握すべく、公認会計士の資格を持ち、実際に転職経験のある方を対象にアンケート調査を実施した。

勤続5年以内に転職する人が全体の8割

公認会計士で転職経験のある方に、前職での勤続年数を尋ねたところ、最も多かったのが「1~3年未満」で51%、ついで多かったのが「3~5年未満」で27.4%という結果になった。

この結果から、公認会計士の間で比較的早期のキャリア移動が一般的であることがわかる。

公認会計士は、最初の数年間を基礎的なスキルと経験を獲得する期間として捉え、その後キャリアアップや専門性の向上を目指して転職を考えるケースが多いと考えられる。

20〜30代は8割以上が3ヶ月以内で転職

転職活動の期間は年代によって差異が見られることが分かった。

20代、30代の若手では、転職活動を始めてから次の職場に移るまでの期間が3ヶ月未満という回答が8割以上を占めていた。一方、40代以上では、3ヶ月以上かかったケースが6割以上を占めていた。

40代以降で転職までに時間がかかる理由として、20代、30代の若手の方が、将来性や柔軟性があると見なされ採用されやすいのに対し、40代以降は、より高い専門性を求められることが多く、適切なポジションを見つけるのに時間がかかることが考えられる。

さらに、40代以降は、家族や生活の安定性などを考慮し、より慎重に転職先を選んだり、自分のスキルや経験に合った希望条件を妥協しにくい傾向にあるのかもしれない。

8割以上が転職後に年収アップ

「以前の職場に比べて年収はどう変化しましたか」という質問では、54.5%が「~100万円程度増加」、18.2%が「100~300万円程度増加」、5.5%が「300~500万円程度増加」、3.6%が「500万円以上増加」と回答し、全体の8割以上が転職後に年収が増加していた。

この結果を見ると、転職後に年収が減少するリスクは比較的小さいといえる。

転職時にはワークライフバランスを最重要視

「転職時に最も重要視していたことを教えてください」という質問に対して、最も多かったのが、「ワークライフバランス」で29.0%だった。

公認会計士の主な就職先となる監査法人での仕事は激務であるため、転職先の選定において、仕事と生活の調和を重視する傾向が見られるようだ。

ついで21.8%の人が「やりがいのある職務内容」を選択しており、キャリアと生活の調和を図りつつも、自身のスキルを最大限に活用し、さらなる成長ができる職場を望んでいることが分かった。

公認会計士の転職動向

公認会計士の転職先の選び方には、年代による違いが見られた。

「現在の職場を教えてください」という質問に対して、30代は大手監査法人が63.6%、中小監査法人が15.1% と監査法人が8割近くを占めていたのに対し、30代以外では、一般企業を選んだ人が最も多く、いずれの世代でも半数を占めていた。

この結果から、30代では監査法人で経験を積み、その後、その経験を活かして一般企業に転職する傾向があるのではないかと考えられる。

また、若い世代の中には最初から一般企業を選ぶ傾向も見られ、公認会計士のキャリア選択の多様性を反映しているのかもしれない。

公認会計士の転職では保有資格や実績を持つ人が強い

転職時のアピールポイントは資格や実績

「転職の際、自分のアピールポイントにしたことを教えてください」という質問に対して、最も多かったのが「資格」で38.3%だった。

専門性の高い公認会計士業界において、資格が極めて重要な役割を果たしていることがわかる。公認会計士資格自体が高度な専門性を証明するのはもちろん、その他の保有資格も転職活動において役立つだろう。

また、ついで多かったのが、「前職での実績」で30.8%となった。

実績をアピールすることは、採用側に入社後の活躍を具体的にイメージさせたり、自身の仕事に対する姿勢や問題解決能力といった人柄を知ってもらう良い機会になるだろう。

面接では職歴や実績が重要視される

「面接で実際に聞かれて最も重要だと感じたことを教えてください」という質問に対して、最も多かったのが「これまでの職歴や実績」で41.9%、ついで「保有資格」が29.0%だった。

この結果から、公認会計士の転職市場では、実践的なスキルや経験や保有資格が高く評価されていることがわかる。

面接で転職希望者の経験やスキルを測るためにこれらの指標が重要視されるのは当然のことだろう。

転職のために新たに資格を取る人はほとんどいない

「公認会計士以外に転職に向けて新たに取得した資格はありますか」という質問に対して、「ない」と答えた人が92.7%だった。

この結果から、新たに資格を取得しなくても、十分に転職が可能であるといえる。これは、公認会計士の資格自体が難易度が高く、価値のあるものだからだろう。

上記で述べたように、自己アピールや面接の際に、保有資格が転職に有利に働くことは十分あるが、公認会計士以外に保有資格が無いことが不利に働くことはないと言っていいだろう。

転職の満足度とその理由

30代での転職が最も満足度が高い

「直近の満足度をお答えください」という質問に対し、30代では72.7%が「非常に満足」、21.2%が「満足」と回答し、全体の9割が満足しているという結果になった。

また20代も「非常に満足」または「満足」と回答した人が7割にのぼり、若い世代の満足度の高さがうかがえた。

満足の理由は収入の増加

「直近の転職の満足度をお答えください」に「非常に満足または満足と答えた方」に理由を尋ねたところ、最も多かったのが「収入が増えたから」で52.8%だった。収入の増加は具体的に数値で感じられる変化であるため、満足度向上に繋がりやすいのだろう。

また、次に多かったのが「ワークライフバランスが整ったから」で23.7%だった。転職時に最も重要視していたことで最多だったのがワークライフバランスであるため、当然の結果と言える。

内定先が決まるかを最も不安に感じている

「転職で最も不安だったことを教えてください」という質問に対して、最も多かったのが、「内定先が決まるか不安」で27.2%、次いで多かったのが「年収が下がることが怖い」で21.8%となった。

また、「どの会社がいいのか判断できない」と「転職を後悔するのが怖い」も16.4%と高く、自分に適した企業を選ぶことの難しさや、転職後の不安を感じていることが明らかになった。

転職には多面的な不安や懸念が伴うため、綿密な準備、情報収集、そして心理的な心構えが不可欠であると言えるだろう。

今後の展望

公認会計士の間では、早期の転職が一般的であることが明らかとなった。調査では勤続5年以内に転職した人が全体の約8割を占めていた。

この傾向から、公認会計士にとって最初の数年間はスキルや経験を獲得する重要な期間であり、その後、より適した職場やキャリアアップを目指して転職を考える人が多いと推察される。その際、転職を有利に進めるには、現職での実績や資格取得が重要となるだろう。

また、30代以外の全世代で、転職先として監査法人以外を選択した人が半数に上ったことは、公認会計士の需要が監査業務以外にも広がっていることを示している。

この背景には、ワークライフバランスや福利厚生を重視する価値観の変化も影響していると考えられる。

これらの傾向から、公認会計士のキャリアパスは今後さらに多様化していく可能性が高い。

また、個々の公認会計士は自身のキャリア目標に合わせたスキルや実績の獲得が重要となると予想される。

調査概要

項目

詳細

調査名

公認会計士の転職に関する実態調査

対象者

公認会計士の資格を所持していて転職経験のある方

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2024年7月29日〜2024年8月5日

回答数

55

※調査結果内の回答数はすべて有効回答のみを記載しているため、設問ごとに異なる場合があります。

調査結果の引用・転載について

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