近年グローバル化の進展により、業務で英語を使用する人が増えていると考えられる。
しかし、実際にどの英語技能が業務で多く使われ、どの技能が重視されているのかは明確になっていない。
さらに、どの技能を重点的に学んでいるのか、またどの技能に課題を感じているのかについても不明である。
そこで今回は、実際の業務における英語4技能の活用状況と課題について調査を行った。
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 実際の業務における英語4技能に関する実態調査 |
対象者 | 業務で実際に英語を使う社会人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット |
調査期間 | 2025年9月23日~9月30日 |
回答数 | 200 |
- 英語4技能のレベル分布はほぼ同じ傾向
- 業務で最もよく使う英語スキルはスピーキング
- 最も学習されている英語スキルはリーディング
英語4技能のレベル分布はほぼ同じ傾向

英語の4技能について、レベルを4段階に分けて調査したところ、おおむね似たような傾向が見られた。
いずれの技能も「簡単な内容ならできる」という層が6割前後で最も多く、次に「専門的な内容もある程度できる」という層が2~3割弱という結果になった。また、「全くできない」という人は1割程度にとどまる一方、ネイティブ並みにできる層も2~4%とごく少数だった。
この結果から、多くの社会人は基礎的な英語力を持ちながらも、実務や高度な場面で活用するレベルにまでは到達していないことがうかがえる。
特にライティングでは「単語や短いフレーズしか書けない」と答えた人が17%と、他のスキルに比べて基礎レベルにとどまる層が目立った。
これはライティングが、自分の考えをゼロから文章として構築する必要があり、業務においては内容の正確さや論理の一貫性、読み手に配慮した表現など高度なスキルが求められるためと考えられる。
英語を使う業務で最も多いのは「会議・打ち合わせ」

業務で実際に英語を使う社会人200人に対して「実際に英語を使う場面について具体的に教えてください。」という質問を行うと、最も多かった回答は「会議・打ち合わせ」で、全体の49%を占めた。
この結果から、実際に相手と英語で話したり聞いたりする場面が多く、スピーキングやリスニングのスキルが特に求められる場面が多いと考えられる。
また、「オンラインチャット(Slack・Teams など)」や「Eメール」でのやり取りが37.5%と2番目に多く、文字ベースでのコミュニケーションも頻繁に行われていることがわかる。
そのため、リーディングやライティングのスキルのみで対応する場面も少なくないと推測できる。
実際の業務における英語4技能の実態を調査
業務で最もよく使う英語スキルはスピーキング

業務で頻繁に使う英語スキルについて尋ねたところ、「スピーキング」が61.5%で最も多く、次いで「リスニング」が48.5%、「リーディング」が44%、「ライティング」が27%という結果となった。
英語を使う業務として、会議や打ち合わせなどの口頭でのやり取りが多いため、スピーキングとリスニングの割合が高くなったと考えられる。
一方で、リーディングやライティングも一定の割合で必要とされており、文書の作成やメールのやり取りなど文字によるコミュニケーションも欠かせない場面があると考えられる。
つまり、職場での英語使用は特定の技能に偏るのではなく、複数の技能を組み合わせて使うことが求められていると推測される。
最も苦手に感じる英語スキルはスピーキング

「業務で英語を使う際、特に苦手だと感じるスキルはどれですか」と質問したところ、「スピーキング」が44.5%と最も多く、次いで「リスニング」が29%、「リーディング」が27.5%、「ライティング」が16%となった。
この結果から、最も使用頻度の高いスピーキングが同時に苦手意識を持たれやすい技能でもあり、実務での大きな課題になっていると推測できる。
特にスピーキングは、発音・語彙・文法・流暢さなど複数の要素を瞬時に組み合わせ、さらに相手の反応にも対応する必要があるため、他の技能に比べて負担が大きいことが理由の一つと考えられる。
最も強化したい英語スキルはスピーキング

「今後強化したい英語スキル」について質問すると、「スピーキング」が52.4%と過半数を占め、次いで「リスニング」が35.9%、「リーディング」が30.4%、「ライティング」が17.4%となった。
この結果から、現状で最も頻繁に使われ、かつ苦手とされるスピーキングを中心に、今後の学習や研修ニーズが高いと考えられる。
スピーキングは他のスキルの応用的要素を多く含むため、スピーキング力の向上は他のスキルの成長にもつながると言える。そのため、スピーキングは英語力を包括的に伸ばすうえでも特にニーズが高いのではないだろうか。
最も学習されている英語スキルはリーディング

業務で英語を使用している社会人200人に「英語を学ぶ際、特定のスキルを意識して学習していますか」と質問したところ、「リーディングのための学習をしている」が31.9%と最も多く、次いで「スピーキングのための学習をしている」が30.9%という結果となった。
最も苦手とされ、学習の需要が高いと考えられるスピーキングが最多ではなくリーディングがわずかに上回ったのは、スピーキングが独学で学習しにくい一方、リーディングは教材も豊富で取り組みやすいからではないかと推測できる。
一方で「特にスキルを意識せず、全体的に学んでいる」が27.4%を占めており、必ずしも特定の技能に絞って学習しているわけではないことも分かる。
さらに、「そもそも英語を学んでいない」と回答した人は3.4%にとどまり、多くの社会人が何らかの形で学習に取り組んでいると言える。
業務における英語4技能とAI活用の現状
必要に応じてAIを英語力の補完に活用する人が多数派

「英語を使う業務において、AI(翻訳ツールやChatGPTなど)をどの程度英語力の補完として活用していますか」と質問したところ、「必要に応じて活用している」が56%と最も多く、次いで「積極的に活用している」が19%という結果となった。
このことから、多くの社会人はAIを常用するのではなく、状況に応じて補助的に活用していると考えられる。
全体として見ると、AIを英語力の補完として取り入れる人がほとんどであり、こうした活用はすでに一般的になっていると言える。
英語の文章を扱うスキルの補完としてAIが活用されている

「AIツールをどのスキルの補助として活用しているか」を尋ねたところ、最も多かったのはリーディング(55.4%)であり、次いでライティング(37.9%)が続いた。
一方、リスニング(23.4%)やスピーキング(18.4%)は相対的に少数にとどまった。
この結果から、多くの社会人はAIを文書読解や資料作成といった文字情報に関わるスキルの補完として利用していると考えられる。
リーディングやライティングはAIとの相性が良い一方で、スピーキングやリスニングは音声認識や即時の反応が必要なため、AIの活用がまだ限定的であると考えられる。
今後の課題と展望
調査の結果、英語4技能のレベル分布には大きな差が見られず、全体的に似た傾向を示した。
業務で最も使用されているスキルは「スピーキング」である一方、多くの社会人がこのスキルを最も苦手としており、強化したいスキルとしても最も多く挙げられた。
このことから、本来であればスピーキングを中心に学習が行われていると考えられるが、実際にはわずかにリーディングの学習が多く、スピーキングは独学で学習しづらいためと推測できる。
今後は、このギャップを解消するために、AIツールや英会話サービスを活用した実践的な学習環境の整備が重要になるだろう。こうした環境が整えば、スピーキング学習に取り組む人が大幅に増加すると期待される。
また、現時点ではAIは主に文書作成や読解の支援に活用されているが、今後リアルタイムでの発話サポートや会話練習機能が発展すれば、スピーキングやリスニングの課題解決にも寄与すると考えられる。
調査結果の引用・転載について
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