リスキリング レポート

接客業の英語力に関する実態調査

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調査: スキルアップ研究所

インバウンド需要の回復や国際的な交流の活発化に伴い、接客業の現場では英語対応の重要性が一層高まっている。しかし、現場で求められる英語力や使用頻度、実際に直面している課題については、これまで十分に可視化されてこなかった。

本調査では、「接客業に従事し業務中に英語を使用した経験がある方」200名を対象に、英語スキルの自己評価、使用場面や頻度、困難の内容、職場での支援体制、さらには英語力向上のために有効と感じた学習手段や求められるサポートについて調査を行った。

「接客業の英語力に関する実態調査」調査結果のポイント
  • 英語対応経験者の約9割が英語対応で困ったことがある
  • 「英語で最低限対応できる」が約半数、ビジネスレベルは1割未満
  • ロールプレイなどの実践的な英会話研修へのニーズが高い

【調査概要】

項目

詳細

調査名

接客業の英語力に関する実態調査

対象者

接客業に従事しており、業務中に英語を使用したことがある方

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2025年8月6日~8月13日

回答数

200

英語対応における課題と職場環境の現状

約9割が英語対応で困った経験がある

接客業に従事しており、業務中に英語を使用したことがある方のうち、「英語対応に困った経験がある」と回答した人は全体の86%に達し、接客業全体で訪日客への対応が遅れていることを示唆する結果となった。

特定の業種に限らず、広く英語使用の機会がある中で、現場では語学スキルの不足だけでなく、状況判断やトラブル対応への不安が積み重なっている可能性がある。

「語彙不足」「聞き取れない」が英語対応の主な障壁

また、英語対応における主な障壁は「語彙不足」「聞き取り困難」であることが明らかとなった。特に、適切な単語やフレーズが即座に出てこないこと、相手の英語が速く聞き取れないことが多く挙げられ、理解力と表現力の双方に課題があるといえる。

また、表情やジェスチャーへの依存や、クレーム・緊急対応の難しさも一定数存在しており、実践的で予測不能な場面への対応力不足も示唆される。

これらの結果から、語彙力とリスニング力の強化が優先課題であり、併せて状況別ロールプレイやケーススタディを通じた実践的訓練が有効であると考えられる。

英語対応に関する支援がない職場が6割を超える

勤務先の英語対応に関する教育やサポートの有無について尋ねたところ「何の支援もない」との回答が過半数を大きく上回り、英語対応が必要な場面に対して個々人の努力や自己学習に依存している状況が明らかとなった。

定期的な研修やマニュアルの整備といった体系的支援は少数にとどまり、組織としての人材育成体制が脆弱であることが示されている。

このような状況は、現場の英語対応力の伸長を阻む要因であり、結果として顧客満足度やサービス品質にも影響を及ぼす可能性が高いだろう。

接客現場における英語使用実態とスキルレベル

続いて、現場においてどのような英語対応の実態があるのかを調査していく。

「英語で最低限対応できる」が半数、ビジネスレベルは1割未満

英語スキルの自己評価では、「カタコト・たどたどしいが最低限の対応はできる」が約5割を占め、最も多かった。

続いて「簡単な日常会話程度なら問題ない」が3割超となっており、一定の基礎力を持つ従業員も多いことがわかる。

一方で、「自然なビジネス英会話ができる」レベルはわずか7%にとどまり、流暢な接客対応が可能な人材は少数派である。

これらの結果から、接客業においては「基礎的な英語力の底上げ」が急務であり、業務上必要な範囲に絞った効果的な研修が求められるだろう。

宿泊・観光業では週数回以上の英語使用が7割近く

英語の使用頻度を尋ねたところ、宿泊業では「毎日」「週に数回」と回答した人が71.4%、観光・レジャー施設でも68.2%に達し、英語使用が明らかに日常化している。

一方、飲食・小売では頻度が分散し、医療・福祉やその他業種では6割が「ほとんど使用しない」と回答しており、英語対応の必要性は限定的であるようだ。

英語使用は「商品説明・あいさつ」が中心

また、英語の使用場面を尋ねたところ、「あいさつ・受付対応」と「商品・サービス説明」が突出して多く、接客の入り口段階での活用が中心であることが明らかとなった。

次いで会計や金銭授受といった取引場面が続き、現場では顧客対応の基本的やり取りに英語が多く用いられている。

一方で、観光案内や非対面型の対応は相対的に少なく、クレーム処理など高度な対応ではさらに使用頻度が低い。

英語教育やマニュアル整備は接客初期の対応を重点領域としつつ、将来的には案内業務やオンライン対応など、使用場面の幅を広げる施策が必要であるといえる。

英語力向上の方法と今後求められる支援策

英語力向上には独学と現場での経験が効果的

英語力を伸ばすための学習経験があると回答した方に最も役立ったと感じる手段を尋ねたところ「アプリや動画などによる独学」が比較的多く、次いで「実際の業務を通じて学ぶ」「オンライン英会話」が続く結果となった。

一方で、「留学・海外経験」や「職場の英語研修」は少数にとどまり、体系的かつ長期的な学習機会は限られていることがうかがえる。

これらの傾向から、現場経験と自主学習を軸にした実践的な学びが中心であり、組織的な研修機会の充実が今後の課題であるといえる。

ロールプレイなどの実践的な英会話研修へのニーズが高い

英語対応の支援として最も求められているのは、ロールプレイを含む実践的な英会話研修であることが明らかとなった。

次いで、観光や業種に特化した英語フレーズ集、電話やクレーム対応のマニュアルの需要が高く、実務直結型のサポートが重視されていることがうかがえる。 さらに、ネイティブとの会話練習や翻訳ツールの活用研修といった補助的手段も一定のニーズがある。

全体として、座学ではなく現場の対応力を即時に高める実践的・状況別の支援策が求められているといえる。

9割が英会話練習アプリに関心がある

接客シチュエーションに応じた英会話練習アプリへの関心を尋ねたところ、非常に高いことが明らかとなった。「ぜひ利用したい」「興味はある」を合わせると多数を占め、潜在的需要の大きさがうかがえる。一方で、「利用したいとは思わない」との消極的意見や、すでに利用中という回答はごく少数にとどまった。

これは、現場での英語対応力向上を目的としたデジタル学習ツールが、まだ十分に浸透していない一方で、高い期待感を持たれていることを示している。

今後、実務に直結する内容と使いやすさを備えたアプリ開発は、英語対応力強化の有効な施策となる可能性が高い。

課題と展望

本調査では、接客現場の英語対応は「最低限レベル」が中心で、流暢に対応できる人材はごく少数であることが判明した。さらに、英語対応経験者のうち、約9割が英語対応で困難を経験しており、その背景には語彙不足や聞き取りの難しさ、文法への不安、そして職場からの支援不足がある。

業種によって使用頻度や求められる対応内容が異なるため、一律の研修では限界があり、宿泊・観光業には実務直結型、飲食・小売には状況別対応型など、現場に即した育成策が必要である。

こうした課題への有効なアプローチの一つが、「Talkful」のような実践型AI英会話アプリの活用である。Talkfulならスマホ1台で、AI講師との会話を通じてスピーキング力とリスニング力を日常的に鍛えられる。

留学のような英語環境を手軽に再現でき、場所や時間を問わず実践経験を積むことが可能だ。現場で即戦力となる対応力を養い、自信を持って英語接客に臨むための強力なパートナーとなるだろう。

調査結果の引用・転載について

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