グローバル化やデジタル技術の進展により、英語力はあらゆる世代の社会人にとって欠かせないスキルとなっている。
一方で、学習方法や目的、モチベーションの維持といった点では、世代によって課題や意識に大きな違いがあるのが現状である。
では、若年層と中年層はそれぞれどのように英語学習に取り組み、何を求めているのか。
スキルアップ研究所では、世代ごとの英語学習の実態を明らかにし、今後の教材開発や学習支援のあり方を探ることを目的に、調査を実施した。
- 若年層は「タイパ重視」・中年層は「継続重視」
- 若年層は「モチベ維持」・中年層は「記憶力」が課題
- 両世代の8割超がAI活用に前向き—世代を超えた新たな学習潮流
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 若年層と中年層の英語学習実態調査 |
対象者 | 若年層の社会人(29歳以下) 中年層の社会人(40歳以上) 計125人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年09月04日~2025年09月11日 |
回答数 | 125(29歳以下:47人、40歳以上:78人) |
【調査結果】世代別で見る英語学習の教材選択とその理由
デジタルツールが世代を問わず人気

世代別に英語学習のツール利用状況を比較すると、共通点と相違点が浮かび上がった。
両世代ともに「スマホアプリや「YouTubeなどの動画」の利用率が高く、デジタルツールが幅広く支持されていることがわかる。
一方で、費用負担の大きいオンライン英会話や、時間と手間のかかる自作教材は、学習に腰を据えて取り組む中年層に多く選ばれる傾向が見られた。
「タイパ」重視か「継続」重視か世代で分かれる

英語学習ツールの選択理由としては、両世代ともに「使いやすさ・手軽さ」や「コスパの良さ」が上位を占め、世代を問わず重視されていた。
一方で、最も差が大きく出たのは「タイパの良さ(短期間で成果が出る)」で、10代・20代が12.8%と一定の関心を示したのに対し、40代以上ではわずか2.6%にとどまった。
若年層は効率や成果の早さを重視するのに対し、中年層は「継続しやすさ」(19.2%)など安定した学習環境を好む傾向が強くみられた。
英語学習の目的ー若年層はキャリアアップ・中年層は趣味や学び直し

英語学習の目的を世代別に比較すると、世代間の違いが明らかになった。
10代・20代は「キャリアアップ」(31.9%)や「就職・転職対策」(27.7%)が40代以上に比べて高く、キャリア志向が前面に出ている。
加えて「趣味・自己啓発」(38.3%)や「旅行・観光」(31.9%)も一定の割合を占め、仕事と自己成長の双方を意識した学習スタイルが見られる。
一方で40代以上では「趣味・自己啓発・学び直し」(66.7%)や「旅行・観光」(42.3%)が圧倒的に高く、生涯学習や自己充実を目的とする傾向が強いことがわかった。
世代別に見る英語学習の課題と求められるサポート
若年層は「モチベ維持」・中年層は「記憶力」が壁

英語学習における最大の障害として、10代・20代では「学習モチベーションの低下」(27.7%)や「時間がない/忙しい」(25.5%)が上位に挙がり、学習の継続が難しいことが課題となっている。
一方で、40代以上では「記憶力の低下・学習内容が覚えられない」(33.3%)が最も多く、続いて「成果が実感できない」(19.2%)や「時間がない」(19.2%)が挙げられた。
若年層は生活リズムやモチベーションの維持に苦労し、中年層は記憶力や成果実感の不足といった世代特有の壁に直面していることが明らかとなった。
若年層は継続支援・中年層は効率化サポートを期待

こうした課題は、求められるサポート内容にも反映されている。
10代・20代では、「モチベーションの低下」や「時間不足」への対応として、「個別指導やフィードバック」(27.7%)や「学習仲間とのネットワーキング」(27.7%)など、学習を継続しやすくする仕組みへのニーズが高い。
一方、40代以上は「記憶力の低下」や「成果が実感できない」といった課題を背景に、「効果的な学習法の紹介」(20.5%)や「学習アプリによる進捗管理」(20.5%)など、効率的かつ体系的な学習を支援する仕組みを求める傾向が強く見られた。
英語学習へのAI活用、若年層・中年層ともに8割以上が前向き

AI英会話アプリや生成AIツールの利用意向について尋ねたところ、「すでに利用している」「ぜひ利用してみたい」「どちらかといえば利用してみたい」といった肯定的な回答は、10代・20代で85.1%、40代以上でも88.4%に達した。
若年層は「ぜひ利用してみたい」(46.8%)が最多で強い期待感を示す一方、40代以上は「どちらかといえば利用してみたい」(48.7%)が最も多く、慎重ながらも導入に前向きな姿勢が目立った。
両世代ともに8割以上がAI活用を肯定しており、世代を問わず高い関心を寄せていることが分かる。
課題と展望
今回の調査から、英語学習における世代別の相違点と共通点が明らかとなった。
若年層は、スマートフォンアプリやAIツールなどのデジタル教材を積極的に活用し、「タイパ(タイムパフォーマンス)」を重視した効率的な学習を志向している。学習目的としては、キャリアアップや就職・転職対策が中心である。
一方で、中年層は書籍やオンライン講座を軸とした学習を行い、「継続性」や「安心感」を重視しながら、趣味や学び直しを目的とする傾向が強い。
また、若年層はモチベーションの維持や時間不足、中年層は記憶力の低下や成果実感の乏しさといった課題に直面しており、求めるサポート内容にも世代差が見られる。
一方で、両世代に共通してAI活用への期待が高いことは、今後の英語教材開発や学習支援サービスの設計において大きな可能性を示す結果であるといえる。
調査結果の引用・転載について
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