リスキリング レポート

留学準備における英語学習法・教材選択に関する調査

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調査: スキルアップ研究所

近年、英語圏への留学を目指す学生や社会人が増える中で、「本当に必要な英語力とは何か」「何を使って勉強すればよいのか」と悩む人も増えている。

市販の教材やオンライン講座、アプリなど学習手段は多様化しているが、自分に本当に必要な学習を最初から体得している人はそういないだろう。

そこで今回、スキルアップ研究所は実際に留学を経験した200名を対象にアンケートを実施し、留学前の英語学習法や役立った教材、現地で直面したギャップや課題について調査を行った。

「留学準備における英語学習法・教材選択に関する調査」結果のポイント
  • 留学前の最大の不安は「話す力・聞く力」に集中
  • 留学先で英語が「通じない」 半数以上が週に何度も経験
  • 約半数が「英会話の練習不足」を後悔

【調査概要】

項目

詳細

調査名

留学準備における英語学習法・教材選択に関する調査

対象者

留学経験者(ワーホリ、海外インターン含)

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2025年5月8日〜5月15日

回答数

200

留学前に約6割がスピーキング・リスニングに不安

留学前に感じていた不安についての調査では、最も多くの人が挙げたのが「ネイティブのスピードや発音への不安」(66.4%)、次いで「スピーキングに自信がなかった」(54.4%)、「リスニングに自信がなかった」(54.4%)という結果となった。

一方、「文法や語彙の基礎が不十分だと感じていた」という回答は33.4%にとどまり、「話す・聞く」能力に対する不安が圧倒的に多いことが明らかになった。

インプット中心の学習では埋まらなかった「話す・聞く」への不安

調査の結果、留学前に多くの人が取り組んでいた英語学習法は「英単語帳」(58.4%)や「文法書」(41.9%)など、インプット中心の基礎学習であった。

一方で、「英会話スクール」(33.4%)や「オンライン英会話」(19.9%)といったスピーキング練習に取り組んでいた人は限られ、「映画やYouTubeなどの英語コンテンツ」(31.9%)によるリスニング練習も一部にとどまっていた。

このように、「話す・聞く」力を養う学習が不足していたことは、前設問で多くの人が「スピーキングに自信がない」「ネイティブのスピードが不安」と答えた内容とも一致しており、インプット重視の学習では実践的な不安を十分に解消できなかった現実が浮き彫りとなった。

留学先で英語が「通じない」 半数以上が週に何度も経験

「留学先で英語が通じなかった・理解できなかった経験はどれくらいありましたか?」という質問に対し、「よくあった(週に何度も)」と答えた人が52%、「時々あった(週に1〜2回程度)」と答えた人が40.5%にのぼった。

つまり、9割以上の人が週に一度以上は「英語が通じない」場面を経験していたことになる。

なぜ、これほど多くの人が英語でのコミュニケーションに苦労したのか。

以下で「英語が通じない」の背景を掘り下げていく。 

通じなかった原因は「話すスピード」への対応不足が最多

前設問で「英語が通じなかった」経験が「よくあった」「時々あった」と回答した人にその原因を尋ねたところ、最も多かったのは「話すスピードが速すぎた」(58.4%)だった。

留学前にリスニングに不安を感じていた人が多かったことからも、実際のネイティブのスピードに対応できなかったケースが多かったと考えられる。

また、「文法や語彙の知識が足りなかった」(44.9%)、「発音が通じなかった」(43.8%)といった基礎力の不足も多く挙がっており、インプットとアウトプットの両面での準備不足が「通じない」経験につながっていたことがわかる。

さらに、「スラングや現地特有の表現が多かった」(41.1%)という回答からは、教科書では学べない自然な英語表現への対応力が不足していた現実も浮き彫りになった。

留学で最も必要だったのは「話す力」

留学を終えた200人に「最も必要だった英語スキル」を尋ねたところ、最も多かったのは「スピーキング」(34.0%)、次いで「リスニング」(28.5%)だった。

さらに「コミュニケーションスキル」(22.5%)も多く挙がり、実際の会話の中で「話す・聞く」の基本的なスキルに加え、「自分の考えを伝える力」や「相手の意図を汲み取る力」を英語で運用することのハードルは高いといえる。

一方で、「文法理解」(2.0%)などのインプット中心のスキルはほとんど重視されておらず、教科書だけでは対応しきれない「実践的な英語力」の重要性が明らかになった。

約半数が「英会話の練習不足」を後悔

留学を終えた200人に「もっと準備しておけばよかった」と感じる語学スキルを尋ねたところ、最も多かったのは「英会話の練習をもっとすべきだった」(46.5%)という回答だった。 

これは、留学前に「スピーキングに自信がなかった」と感じていた人が多かったという調査結果とも一致しており、不安だったスキルがそのまま現地での後悔につながったことがうかがえる。

では、なぜ多くの人が不安を感じていながら、十分な対策ができなかったのか。その理由は、次の設問から見えてくる。 

なぜ不安だったのに準備できなかったのか?学習を阻むリアルな理由

「英語の準備があまりできなかった」「ほとんどできなかった」と答えた人に理由を尋ねたところ、最も多かったのは「学業や仕事が忙しかった」(45.7%)だった。

こうした背景から、最近では短時間で学べるアプリや、好きな時間に取り組めるオンライン英会話、動画を活用した「ながら学習」など、忙しくても続けやすい学習法が注目されている。

次いで多かったのは「何から始めればいいかわからなかった」(36.1%)、「効果的な教材が見つからなかった」(30.5%)といった声で、情報不足や教材選びの難しさが準備の障壁となっていたことがわかる。

さらに、「日常生活で他に優先したいことがあった」(23.8%)、「モチベーションが続かなかった」(20.0%)といった環境面や心理面の要因もあり、英語力そのもの以前に、学習を継続できる環境を整える難しさが浮き彫りになった。

本当に使える英語学習法はどれ?

留学を終えた200人に「やっておいてよかった」と感じた学習法を尋ねたところ、留学期間の長さによって、選ばれる学習スタイルに違いがあることが分かった。

以下では、留学期間ごとにどのような学習法が支持されていたのかを詳しく見ていく。

短期(3か月未満)は「基礎重視」の傾向が強い

短期留学(3か月未満)の参加者にとって、「やっておいてよかった」学習法として最も多く挙がったのは英単語帳だった。

特に1か月未満の超短期滞在では、34.2%が単語帳を評価しており、最低限の語彙力を身につけることが重視されていたと考えられる。

また、1か月〜3か月未満の層では、英会話スクール(21.6%)の評価も高く、出発前にある程度会話に慣れておくことが、現地でのスムーズなコミュニケーションにつながったようだ。

一方、映画やドラマ、英語学習アプリはあまり支持を集めておらず、短期留学ではまず基礎を固められる学習法が選ばれるようだ。

中期(3か月〜1年未満)は「実践型」学習

3か月〜1年未満の中期留学では、英語学習の重点がインプット中心から「実際に使う練習」へとシフトしていることが分かった。

特に評価が高かったのが、映画やYouTubeなどの映像コンテンツである。3か月〜半年未満では17.9%、半年〜1年未満では20.5%が「やってよかった」と回答しており、自然な会話スピードや表現、文化に慣れるのに役立ったと考えられる。

また、英会話スクールやオンライン英会話など、アウトプット型の学習法も一定の支持を集めており、現地での生活に必要な実践力として重視されていた。

長期(一年以上)は「リアルな英語」を意識 

1年以上の長期留学を経験した人たちから特に高く評価されたのは、映画やYouTube(28.3%)、英語ニュース(23%)といった、実際に使われている「リアルな英語」に触れられる教材だった。

日常的に英語を使う環境では、教科書的な表現が通じない場面も多く、自然な言い回しや文脈に沿った表現に慣れておくことの重要性が浮き彫りになっている。

一方で、英会話スクール(13.5%)や単語帳(14.9%)といった基礎的な教材の評価は他の層と比べて低く、「知識としての英語」よりも「現地で実際に使える英語」がより重視されている傾向が見られた。

課題と展望

今回の調査から、多くの留学希望者が「スピーキング」や「リスニング」といった実践的な英語力に不安を感じており、実際に現地でもその力が求められていることが明らかになった。

しかし、準備段階で多く使われていたのは英単語帳や文法書などのインプット中心の教材であり、実際に必要とされる力との間にギャップがあることが浮き彫りになっている。

その背景には、「何から始めればいいかわからなかった」「効果的な教材が見つからなかった」といった声に見られるように、情報の不足や学習設計の難しさがあると考えられる。

今後は、留学希望者が自分の目的、渡航期間、そして現在の英語力に応じて、最適な学習方法を選べるような環境やサポート体制の整備が、いっそう重要になってくるだろう。

調査結果の引用・転載について

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