近年、グローバル化の進展に伴い、企業での英語研修の需要が増加していると考えられる。しかし、英語研修は具体的にどのような目的で行われているのかは明確ではない。
そこで、今回は企業が従業員に英語研修を行う目的と研修の実態について調査を行った。
- 英語研修の目的で最も多いのは「海外との取引・交渉」
- 成果指標として英語資格のスコアを設定している企業が多い
- 理解力の向上やメールの作成などが効果として現れている
調査概要
項目 | 詳細 |
調査名 | 企業の英語研修の目的に関する実態調査 |
対象者 | 英語研修を導入している企業で働く社会人 |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年8月18日〜8月25日 |
回答数 | 200 |
英語研修の目的で最も多いのは「海外との取引・交渉」
英語研修を導入している企業で働く社会人200人を対象に、「あなたの企業で英語研修が導入されている主な目的は何ですか?」という質問を行うと、「海外取引・交渉への対応」という回答が54%と最も多かった。
成果指標として英語資格のスコアを設定している企業が多い
英語研修に関連して設定されている目標や成果指標(KPI)について尋ねたところ、「社員の英語資格スコア(TOEIC、IELTSなど)の向上」が64%と最も多く挙げられた。
これに対し、「社内での英語コミュニケーション頻度の増加」(19.5%)や「英語での業務資料作成・報告件数の増加」(11%)など、実務的な活用を重視する項目は比較的少数にとどまっている。
この結果から、多くの企業が英語研修の成果を資格スコアといった数値で測定しやすい指標に置いていることが分かり、社員のスキルの可視化を重視する傾向があると考えられる。
半数近くの人が企業から英語資格の受験を義務付けられている
「会社で英語資格(TOEIC・英検など)の受験を求められていますか?」という質問を行うと、「義務付けられている」が45%で最も多く、次いで「推奨されているが任意」が39%だった。
この結果から、半数近くの企業では社員に英語資格の受験を義務付けられており、企業として社員の英語力の可視化や研修の指標のために重視されていると考えられる。
一方、資格検定料の費用負担が大きいことも推測できる。
一部の社員個人を対象に研修が義務付けられている場合が多い
英語研修の義務について尋ねたところ、最も多かったのは「一部の社員個人を対象に義務付けられている」で50.5%だった。次いで「希望者のみが受講する」が25.5%であった。
多くの企業では特定の社員に絞って英語研修を義務化しており、全社員を対象とした義務化は少数であることが分かる。
社員ごとの英語力や仕事内容によって研修の必要性が異なるため、特定の社員に絞って義務付けられる傾向があると考えられる。また、全社員対象とすると費用が膨れ上がることを背景として、全社員への実施に踏み切れていない可能性もある。
営業職が最も英語研修の対象となっている
研修の対象となっている役職・職種について尋ねたところ、「営業」が57.4%と最も多く、次いで「特に役職・職種では決まっていない」が25.9%だった。
この結果から、英語研修は主に営業職を中心に導入される傾向があり、海外取引や顧客対応の必要性が高い職種で優先的に行われていることが分かる。
一方で、対象が特に限定されていないケースも25.9%あり、職種にかかわらず研修の機会が設けられている企業も存在することが示唆されている。
英語研修はリアルタイムのオンライン講義が人気
英語研修の形式について調査を行うと、「オンライン講義(リアルタイム)」が62.4%で最も多く、次いで「オンライン学習(オンデマンド)」が30.4%であった。
この結果から、多くの企業では場所や時間に柔軟性があるオンライン形式を中心に研修を実施していることが分かる。
一方、対面形式の研修の割合は少ないものの、実践的な学習の重要性から一定の需要があると言える。
英語研修が昇進や昇給に関わることが多い
英語研修への参加や成果が人事評価や待遇に与える影響について尋ねたところ、「昇進や昇給に関わる」が62.9%で最も多かった。
この結果から、英語研修の参加や成果は社員のキャリアや待遇に直接関わることが多いと言える。
一方で、約2割の社員は特に影響がないと回答しており、研修が人事評価や待遇に反映されにくいケースもあることが分かる。
英語研修を導入している企業には英語力を向上させたい人が非常に多い
「あなた自身は英語力を向上させたいと思っていますか?」という質問を行うと、「強く思う」が56.5%と最も多く、次いで「やや思う」が39%だった。
この結果から、ほとんどの社員が少なからず英語力を向上させたいと考えていることが分かる。
英語研修を導入している企業の社員は、自身の英語力向上に意欲を持っている傾向があり、その点で会社の方針と社員の意識が一致していると言える。
半分以上の人が昇進や昇給のために英語力を向上させたいと感じている
社員自身の英語力を向上させたい理由について尋ねたところ、「昇進や昇給のため」が54.4%で最も多く、次いで「業務に必要だから」が26.9%、「将来の転職やキャリアのため」が24.4%という結果になった。
社員は海外での活躍や英語を使った業務への志向よりも、自身の昇進・昇給といった社内での評価向上を目的に英語を学ぶ傾向が強いといえる。
一方で、企業側が研修を導入する主な目的として挙げる「海外交渉の成功」とは必ずしも一致しないものの、昇進や昇給に直結するケースが多いため、結果的に社員も積極的に英語研修に取り組む状況が生まれていると考えられる。
理解力の向上やメールの作成などが効果として現れている
英語研修を受講した95名に効果を尋ねたところ、「英語での会議やプレゼンの内容を理解できるようになった」が33.7%で最も多く、次いで「英語の学習習慣が身についた」が31.6%といった結果となった。
20%を超える回答が複数見られ、英語研修には幅広い効果があることが分かる。特に、音声や文章の理解、文書作成といったスピーキング以外のスキル向上を実感する社員が多い傾向が見られた。
一方で、「海外の取引先とスムーズな交渉ができるようになった」は19%にとどまり、企業側が最も重視する「海外交渉の成功」と、社員が実感する効果との間には一定のギャップがあることが示唆される。
課題と展望
調査の結果、英語研修は主に海外取引を目的として導入されており、その成果はTOEICなどの資格スコアで測定される傾向が強いことが明らかになった。
また、研修の成果が昇進や昇給に直結するケースが多いため、社員もキャリアアップを見据えて学習意欲を高めていると考えられる。
一方で、企業が掲げる「海外交渉の成功」という目的と、社員が実感する効果の間には乖離が見られる点が課題である。研修によって会議やプレゼン内容の理解力は向上するものの、実践的な交渉力の習得には必ずしも直結していない可能性が示唆される。
調査結果の引用・転載について
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