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社会人の英語活用実態に関する調査

更新日:

調査: スキルアップ研究所

グローバル化が加速する現代において、英語は仕事からプライベートまで、あらゆる場面でその重要性を増している。

しかし、その必要性を認識しつつも、英語が依然として高い壁となっているのも事実である。英語が使えないという課題は、具体的にどのような影響を及ぼしているのだろうか

そこで今回、20代以上の社会人200名を対象に「社会人の英語活用実態に関する調査」を実施した。

本記事では、データと実体験の声から、実際の困りごとや英語学習の現状、今後の学習の方向性等について解説する。

「社会人の英語活用実態に関する調査」結果のポイント
  • 社会人の約半数が「英語が使えず困った」経験あり
  • 社会人の英語力「挨拶レベル」までが約7割
  • 英語学習の現実ー7割以上が「現在学習せず」という実態

【調査概要】

項目

詳細

調査名

社会人の英語活用実態に関する調査

対象者

20代以上の社会人

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2025年07月11日~2025年07月18日

回答数

200

社会人の45%が「英語が使えず困った」経験あり 

社会人200名を対象に、英語が使えなくて「困った」と感じた経験の有無を尋ねたところ、「はい、ある」と回答した人は45.0%にのぼった。

約半数の社会人が、英語でのコミュニケーションができないことによる何らかの課題に直面した経験を持つことを示している。

この結果から、英語の必要性が、海外と直接関わる業務を持つ人に限らず、より広い層にとって無視できない現実的な問題となっている実態がうかがえる。

では、具体的にどのような場面で、人々は「困った」と感じているのだろうか。以下では、本調査に寄せられた、特に印象的だった声を紹介する。

実際にあった英語が使えずに困ったエピソードを紹介

「英語が使えず困った」経験があると回答した方々から寄せられたエピソードからは、英語力不足が様々な場面で具体的な支障を生んでいる実態が浮き彫りになった。

ビジネスの場面

投資銀行業務に勤務していた際、重要なミーティングに外されたことがある

男性・50代以上

外国人の来客があったとき、スムーズなやり取りができなくて周囲から軽く「その程度なのか」と冷たい目で見られた。

男性・50代以上

ビジネスシーンでは、語学力の問題が原因で重要な商談や会議から外されるといった、キャリアにおける機会損失に直結するケースが報告されている。

これは昇進や昇給の機会を逃すだけでなく、周囲からの評価や信頼を失い、精神的なストレスを感じる一因にもなり得る。

プライベートの場面

アメリカの空港で乗り継ぎの際、ゲートが変更になったというアナウンスが英語で流れたのですが、聞き取れず、そのまま元のゲートで待っていました。

時間になっても搭乗が始まらず、不安になって近くの係員に尋ねたのですが、うまく説明できずに戸惑いました。

結果的に搭乗時間に間に合わず、次の便に変更してもらうことになり、手続きにもかなり時間がかかってしまいました。

このとき、もう少し英語が話せたらスムーズに対応できたのにと強く感じました。

男性・30代

街中で外国の方に話しかけられて何を話しているのか分からず困りました。

男性・20代

また、海外渡航時のトラブル対応や、日常生活で外国人と交流する場面など、プライベートな時間においても、英語で円滑に意思疎通ができないことへのもどかしさや不便さを感じている様子がうかがえた。

社会人の英語力「挨拶レベル」までが約7割  

20代以上の社会人200名を対象に現在の英語力について自己評価を尋ねたところ、「全く話せない」(23.0%)と「簡単な挨拶ができる程度」(45.0%)を合わせると68.0%に達し、回答者の約7割が基礎的なレベルに留まっていることが明らかになった。

一方、より実践的なレベルでは、「日常会話は問題なくできるが、ビジネスは難しい」が7.5%、「ビジネスレベルの会話ができる」と「ネイティブレベル」は合わせても、全体のわずか1.0%に過ぎなかった。

この結果から、多くの社会人が英語でのコミュニケーションに自信を持てておらず、特にビジネスの現場で通用するレベルの英語力を持つ人材は極めて少数であるという実態が浮き彫りになった。

実践的な英語力は1割未満ー学歴を問わず共通の壁が浮き彫りに

最終学歴と英語力には一定の相関が見られる一方、より実践的なスキルにおいては、学歴を問わず共通の課題があることがわかった。

学歴別に見ると、最多回答の「簡単な挨拶ができる程度」は「大学卒業者」(46.0%)、「専門学校・短期大学卒業者」(46.2%)、「高校卒業者」(43.7%)で、いずれも45%前後のほぼ同水準であった。

また、「日常会話が問題なくできる」以上の英語力を持つ人の割合は、大学院卒業者(18.1%)を除き、他の学歴層ではいずれも1割に満たない結果となっている。

このことから、学校教育の背景に関わらず、多くの社会人が基礎的なレベルから実践的な英語力を身につける段階で、共通の壁に直面している実態がうかがえる。

英語習得で「キャリアの選択肢が広がる」と半数近くが期待

英語が使えるようになることが自身のキャリアに与える影響について尋ねたところ(複数選択可)、最も多かった回答は「キャリアの選択肢が広がる(転職、異動、新たな職種など)」で、45.9%と半数近くの人が将来的な可能性に期待を寄せていることがわかった。

次いで「収入アップに繋がる」(16.4%)、「顧客や取引先との関係構築・強化に繋がる」(15.4%)といった、具体的なメリットを期待する声も挙がった。

その一方で、「特に影響はない」と回答した人も36.4%と高い割合を占めており、英語の必要性を感じていない層も一定数存在する。

英語力がキャリアに与える価値について、個人の置かれた環境や職種によって意識が大きく二分されている状況がうかがえる。

英語学習の理想と現実ー7割以上が「現在学習せず」という実態

先述の通り、多くの人が英語習得によるキャリアへの好影響を期待している一方で、実際の学習行動には大きな隔たりがあることがわかった。

現在の学習状況を尋ねたところ、「現在は学習していない」(42.0%)と「本格的に学習したことがない」(30.5%)を合計した72.5%が、現在学習していないという現状が明らかになった。

キャリアアップへの期待感は持ちつつも、それが必ずしも学習の継続には結びついていないという、理想と現実のギャップが示された結果である。

伸ばしたい英語スキル 83%が「スピーキング・リスニング」に集中

英語学習において最も伸ばしたいスキルを尋ねたところ、最多は「スピーキング(話す力)」(47.5%)、次いで「リスニング(聞く力)」(35.5%)となった。この2つを合わせると83.0%に達し、学習ニーズが双方向のコミュニケーションスキルに極めて集中していることが明らかである。

一方、「リーディング(読む力)」(9.0%)と「ライティング(書く力)」(1.0%)の合計はわずか10.0%に留まった。

この結果から、メールや文書作成といった読み書きの能力以上に、実際に対面で外国人と対話できる、即時性の高い実践的な会話スキルが強く求められている実態がうかがえる。

学習ニーズのトップは「日常英会話」次いで「ビジネス英会話」

関心のある英語学習の内容を尋ねたところ(複数選択可)、最も多かった回答は「日常英会話(海外旅行、外国人との交流など)」71.9%であった。

次いで多かったのは「ビジネス英会話(会議、プレゼン、交渉など)」33.4%となっており、3人に1人が業務で使える英語に関心を示している。

まずは海外旅行や身近な外国人との交流で困らない会話力を重視しつつも、キャリアに直結するビジネス英語にも一定のニーズがあることがわかった。

課題と展望

今回の調査では、多くの社会人が「挨拶レベル」の英語力に留まり、その結果としてビジネスでの機会損失や日常生活での不便といった「困った経験」に直面している実態が明らかになった。

英語の重要性を認識し、キャリアへの好影響を期待しながらも、7割以上が実際の学習には取り組めていない。この「理想と現実」の大きなギャップこそが、現代の社会人が抱える最大の課題である。

では、この課題を乗り越える鍵はどこにあるのだろうか。今回の調査結果は、その明確な方向性も示唆している。

多くの学習者が求めているのは、知識としての読み書き能力よりも、まず「話す・聞く」という即時性の高い対話スキルである

そして、その第一歩として、海外旅行や日常的な国際交流で困らないレベルの「日常英会話」を身につけ、その上で各自のキャリアに必要な「ビジネス英会話」へと応用していく。

このように、多くの人にとって身近な目標から始める段階的で実践的なアプローチこそが、英語を真の武器に変えるための一歩となるはずである。

調査結果の引用・転載について

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