グローバル化が進む現代、多くの企業が多額の投資を行う「英語研修」。
どのような研修が効果的で、現場の社員はどのように受け止めているのだろうか。
本記事では、担当者と受講者、双方の視点からその根深いギャップの原因を紐解き、これからの英語研修の在るべき姿を探る。
- 企業英語研修の主流は「対面(66%)×グループ(82%)」
- 英語研修の効果ー担当者の80%が「成果あり」も受講者の33%は「向上せず」
- 今後求められる英語研修とは? 企業は「会議・プレゼン特化」 受講者は「職種別研修」
【調査概要】
項目 | 詳細 |
調査名 | 企業における英語研修の実態と効果に関する調査 |
対象者 | 英語研修を受講したことがある方(100名) 英語研修を実施中の企業に務める人事・研修企画担当者(100名) |
対象地域 | 全国 |
調査方法 | インターネット調査 |
調査期間 | 2025年8月10日~8月17日 |
回答数 | 各100 |
企業英語研修の主流は「対面(66%)×グループ(82%)」
今回の調査では、企業が実施する英語研修の主流が、依然として「グループ型×対面」という従来型のスタイルであることが明らかになった。
研修の実施形態では「対面(集合研修)」が65.9%、実施形式では「グループレッスン」が81.9%と、いずれも半数以上を占める最多の回答となっている。
背景には「受講者の満足度が高い」(58.9%)「費用対効果に優れる」(26.9%)といった評価があり、効率と成果を両立できるスタイルが安定して支持されていることが分かる。
英語研修の効果ー担当者の80%が「成果あり」も受講者の33%は「向上せず」
今回の調査で、英語研修の「効果」に対する認識が、研修を企画する担当者と、実際に受講する社員との間で大きく異なっている実態が明らかになった。
研修担当者の8割が効果を実感ーうち46%は「期待以上」と高評価
人事・研修企画担当者に効果の実感を尋ねたところ、「期待以上の効果」(46%)と「期待通りの効果」(34%)を合わせ、実に80%が研修の成果を肯定的に評価していた。
受講者の3人に1人(33%)は「英語力は向上せず」
一方、実際に研修を受講した社員では「非常に向上した」がわずか11%にとどまり、「ある程度向上した」が56%と多数派となった。
つまり多くの社員は“限定的な成長”にとどまっており、さらに「あまり向上しなかった」「まったく向上しなかった」と回答した33%は、成果に物足りなさを感じているようだ。
なぜ効果実感に差が?研修目的のズレが原因か
人事・研修企画担当者
受講者
双方が「日常業務の読み書き対応」を最重要視
人事・研修企画担当者と受講者の双方に共通して挙がったのは、「メールや資料の読み書き対応」の強化だった。
人事側では70%、受講者側でも53%と、それぞれ最多の回答を集めた。
基礎的な業務遂行力の強化という点ではニーズが一致していることがわかる。
ズレは「会議・プレゼン対応力」25ptの差
しかし、受講者が2番目に期待する「会議・プレゼン/商談対応の強化」(37.9%)は、企業側の目的(12.9%)を25ポイントも上回っており、より高度で実践的な会話力に対する期待のズレが、効果実感の差につながっている可能性がある。
課題認識にもギャップ ー 企業側は“継続性”・受講者は“実務性”
企業側の課題トップは「効果が長続きしない」が6割
人事・研修企画担当者に研修運営上の課題を聞いたところ、最も多かったのは「効果が長続きしない(60%)」だった。
「受講者のモチベーション維持」(25%)や「学習時間の確保」(20%)が続く。
研修そのものの質というよりも、いかに学習効果を定着させ、継続的な成果につなげるかという“マクロな視点”で課題を捉えていることが特徴的だ。
受講者の不満トップは「教材が実務的でない」
一方、受講者に不満点を尋ねると、「教材が実務的でない」(28%)が最多で、「学習時間の確保が難しい」(24%)、「グループ内のレベル差」(23%)、「フォローアップ不足」(23%)が続いた。
ここで目立つのは「実務に直結していない」という声だ。
受講者は、学んだ内容が“目の前の業務に使えるか”というミクロな視点で研修を評価しており、人事との認識のずれが浮き彫りになっている。
今後求められる英語研修の在り方とは?
企業側ニーズの67%が「会議・プレゼン特化研修」に集中
今後強化したい研修として、人事・研修企画担当者の66.9%が「会議・プレゼンに特化した実践研修」を挙げており、特定の重要業務における成果向上を強く意識していることがわかる。
受講者ニーズのトップは職種別研修(44%)
一方、受講者が最も望むのは「職種別の専門研修」(43.9%)であり、より自身の専門性に紐付いたスキルアップを求めている。
一方で、人事が重視する「会議・プレゼン特化」を望む受講者は22%にとどまり、人事=組織的・場面特化、受講者=専門性・日常業務直結 というニーズのズレが浮き彫りとなっている。
課題と展望
今回の調査では、「企業側と受講者の視点のズレ」という根本的な課題が浮き彫りになった。
企業側は組織的・戦略的な観点を重視する一方で、受講者は目の前の業務で役立つ実践性を求めており、そのギャップが成果実感の差を生んでいるといえる。
今後の展望としては、効率性に優れた「グループ型×対面研修」を基盤としながらも、AIやハイブリッド形式を活用して個別最適化や実務直結性を高めることが不可欠だ。
企業が費用対効果を意識しつつ、受講者のニーズを的確に汲み取る研修設計こそが、英語研修の次なる成長のカギとなるだろう。
調査結果の引用・転載について
本レポートの著作権は、株式会社ベンドが保有します。 引用・転載される際は、必ず「スキルアップ研究所調べ」のような形で出典を明記し、本記事のリンクを付してください。 引用・転載されたことにより利用者または第三者に損害その他トラブルが発生した場合、当社は一切その責任を負いません。