競売不動産取扱主任者資格と不動産業界のリスキリング|不動産競売流通協会に聞く
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今回は、一般社団法人 不動産競売流通協会の代表理事を務めておられます、青山様にインタビューをさせていただきました。
競売(けいばい)不動産とは、住宅ローンの返済が滞った場合などに、金融機関が担保権を行使して裁判所に売却を申立て、裁判所が不動産を強制的に売却する物件を指します。
入札状況や落札価格は裁判所を通じて公開・管理されるため、売買のプロセスに高い透明性が確保されています。
さらに、仲介業者を介さず直接契約を結ぶため仲介手数料が不要で、コストをさらに節約できるのも大きなメリットです。
競売不動産取扱主任者資格は、競売不動産の入札から、落札、そして明渡に至るまでに必要な手続きや法律を学び、競売不動産の取扱いに関する一定水準の知識、能力を証明するものです。
不動産従事者はもちろん、金融関連従事者、士業、個人投資家、就職活動に役立てたい大学生など受験層は様々です。
競売不動産取扱主任者資格の設立目的
本日はお忙しい中、取材のお時間をいただき誠にありがとうございます。よろしくお願いいたします。

不動産競売流通協会の代表理事を務めております、青山です。よろしくお願いいたします。
まず最初に、簡単に競売不動産取扱主任者資格が発足した目的について教えていただけますでしょうか。

競売不動産は通常の不動産取引とは異なり、より専門的な法的知識が求められます。
この資格を取得することで、競売手続きやリスク管理について体系的に学ぶことができ、トラブルを未然に防ぐための実践的な知識を身につけることができます。
競売物件を取り扱いたい人にとっては、信頼性の高い取引を行うための有力な手段となる資格です。
競売不動産取扱主任者資格の特徴
競売不動産取扱主任者を通して具体的に学べることについてはどのようなことがあるのでしょうか。

競売不動産取扱主任者資格では、競売不動産に特化した法的な内容を学べる点が大きな魅力です。
不動産従事者や競売不動産に関連する人にとっては、競売不動産を法的に正しく扱えるようになることで、イレギュラーなトラブルや横槍にも冷静に対応できるようになります。
また、まだ広く知られていない競売不動産の魅力を一般消費者にも伝えていくことで、不動産を購入する際の新たな選択肢を提示できると考えています。
本資格の特徴についてはどうお考えでしょうか。

競売不動産に特化した資格は、競売不動産取扱主任者資格しかありません。宅建などは不動産業界に従事する人の多くが取得しますが、競売不動産取扱主任者資格は、不動産従事者にとって必須というわけではありません。
ただし、競売不動産を取り扱いたいのであれば、取得すべき資格です。この資格に独占業務があるわけではありませんが、競売不動産は宅地建物取引業法ではなく、民事執行法に基づいて取り扱われるため、そのルールを正しく理解していることが重要です。
かつては「競売不動産を扱うには、まず経験を積んでから」と言われていましたが、この資格の学習を通じて、長い時間をかけて経験を積まずとも、必要な知識を体系的に身につけることが可能になりました。
本資格では、どういったターゲットが設定されているのでしょうか。

競売不動産を取り扱うことで可能性が広がる方々です。不動産従事者はもちろん、不動産投資を検討されている方、不動産業界を目指す学生など幅広い方々に興味を持っていただきたいです。
宅建取得者であれば、20時間〜25時間程度の学習で合格が見込めるため、ぜひ多くの人に取得してもらいたいと考えています。
また、競売不動産についての知識がまったくない人にも興味を持って勉強してもらうことで、不動産を買うときに「競売不動産」という選択肢を、より多くの人に提供できたら嬉しいと考えています。
近年では、宅建の資格を取得した大学生が、プラスアルファとして取得するケースも増えています。
競売不動産取扱主任者合格によるメリットとは
競売不動産取扱主任者資格を取得することのメリットはどのようなところにあるとお考えですか?

やはり不動産従事者として最大のメリットは、競売不動産を扱えるようになることで、取り扱える案件の幅が広がる点です。
一般の方は不動産という大きな買い物をする際には、やはり資格を持っている人に相談したいと思う傾向があります。また、中古物件を仕入れる際にも、競売不動産を選択肢に入れることで可能性が広がります。このようにキャリアやビジネスチャンスにいい影響を与えることができると考えています。
競売不動産取扱主任者試験とリスキリングの関係性
競売不動産取扱主任者資格は社会人のリスキリングにどのようにつながってくるとお考えでしょうか。

不動産従事者の方にとってはもちろん、競売不動産というものを初めて知る人にとっても、競売不動産の売買という新たな選択肢を提供することができるという点で、リスキリングにつながるのではないかと考えています。
競売不動産が遠い存在だと思っている一般の方も、視野を広げるきっかけにもなると考えています。「誰でも安心して買える」と知っていただく機会にしてもらえると嬉しいです。
今後の不動産競売流通協会の展望は?
今後の不動産競売流通協会の目標について教えてください。

より多くの人に競売不動産取扱主任者という資格を知ってもらい、認知度や実務における需要を高めていくことが現在の大きな目標です。
特に近年では、経済状況の変化や金利動向の影響もあり、競売不動産の件数が15年ぶりに増加しました。これは、本資格の必要性や重要性についても高まっていることを意味しています。
実際にメディアでの取材も増えていることから、社会的な注目も集まりつつあり、今まさにこの資格が世の中に広く知られるチャンスがきていると感じています。
最近では、一般の方に向けて対面セミナーも行っています。多い時には50人以上が集まる大規模なセミナーとなっており、ウェブ上だけでは理解しにくい部分を噛み砕いて学べる場を提供しています。
競売不動産の正しい知識と活用方法を広め、安心して利用できる市場を形成していきたいと考えています。