リスキリング レポート

働き方別リスキリングについての実態調査

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調査: スキルアップ研究所

近年、企業を取り巻く環境は急速に変化しており、従業員一人ひとりの能力開発、すなわちリスキリングの重要性が増している。働き方の多様化が進む現代において、出社を中心とする働き方とリモートワークを中心とする働き方では、リスキリングに対する意識や取り組み方に差異が生じている可能性が考えられる。

今回は、「働き方別リスキリングの実態調査」の結果に基づき、出社頻度の高い層とリモートワーク中心の層におけるリスキリングへの関心度、経験の有無、費やした費用と時間、学習方法、習得スキルといった多角的な側面を比較分析する。

この分析を通じて、働き方の違いが個人のリスキリングにどのような影響を与えているのか、その実態を明らかにしていく。

「働き方別リスキリングについての実態調査」結果のポイント
  • リスキリングへの関心は働き方に関係なくほぼ同じ
  • 学習時間の確保に対して働き方によって異なる課題がある
  • リスキリング費用の自己負担が重荷に、会社からの支援不足が働き方に関わらず課題

【調査概要】

項目

詳細

調査名

働き方別リスキリングについての実態調査

対象者

20代~60代の社会人

対象地域

全国

調査方法

インターネット調査

調査期間

2025年4月16日〜4月23日

回答数

300名

働き方によってリスキリングの関心や経験は変わらない

リスキリングへの関心は働き方に関係なくほぼ同じ

「あなたはリスキリング(新しい知識やスキルを学び直すこと)に関心がありますか?」という質問に対し、出社中心、リモート中心といった働き方に関わらず、約8割もの人が「非常に関心がある」または「ある程度関心がある」と回答した。

人々の自身のスキルアップやキャリア形成に対する意識は、働き方によらず普遍的に高いといえる。

リスキリングへの経験の有無も働き方に関係なくほぼ同じ

「これまでにリスキリングの経験がありますか?」という質問に対しても、働き方による差異はほとんど見られず、どの層においても約4割の人がリスキリングを経験済みであると回答した。

【働き方別】リスキリングを阻む要因

通勤時間の有無による学習時間への影響

通勤時間の有無がリスキリングにかけられる時間に与える影響について尋ねたところ、出社中心の人は「通勤による疲労」が学習時間の確保を困難にしていると感じる傾向にあることが分かった。

一方、リモート中心の人も通勤がない代わりに他の事情で学習時間を確保できていない現状が明らかになったほか、各層で3割前後が「通勤の有無はリスキリングにかけられる時間にあまり影響していない」と回答している。

業務の柔軟性と学習時間との相関

続いて、業務の柔軟性と学習時間の関係性についても、出社頻度が高いほど業務による疲労が、出社頻度が低いほどオンオフの切り替えの難しさが学習時間を確保する上での課題として挙げられた。

これらの結果は、働き方によって課題の性質は異なるものの、学習時間の確保は多くの人にとって共通の障壁となっていることがうかがえる。

情報源や学習機会とリスキリング方法との相関

働き方による情報源や学習機会の有無がリスキリング方法の選択に与える影響について尋ねたところ、出社頻度が多いほど対面での学習方法をやや選びやすい傾向が見られた。

しかし、どの層においても影響していないという意見が多く、リスキリング方法の選択に働き方が大きく影響するわけではないと考えられる。

会社からの費用補助と経済状況による学習費用への影響

会社からの費用補助の有無や働き方による経済状況の違いがリスキリングにかける費用に与える影響について尋ねたところ、どの層においても、「自己負担で学習費用を捻出する必要があり、経済的な負担を感じやすい」という意見が多数を占めた。

働き方に関わらず、会社からの費用補助制度が十分に普及していない現状が伺える。

また、「通勤費がかからない分、自己投資として学習費用にあてやすい」という意見を持つ人が少ないことから、働き方による通勤費の有無はリスキリングにかける費用に大きく影響を及ぼしていない可能性が示唆される。

働き方によるリスキリングの費用・時間・方法・種類の違い

働き方によってリスキリング費用に大きな差は見られない

リスキリング経験者に対して「これまでにリスキリングにかけた費用の総額(目安)」を尋ねたところ、出社頻度の高い人がやや高額な傾向が見られたものの、大半の人が20万円以下と回答した。この結果から、リスキリングにかける費用は、働き方によって大きく左右されるものではないと言える。

ただし、出社頻度の高い人がやや高額な傾向にある背景には、対面研修やセミナーなど、費用のかかる学習方法を選択する機会が多い可能性も考えられる。

リスキリングに費やす時間は出社頻度が高い方がやや多い

リスキリングに費やした総時間について尋ねた結果、「200時間未満(画像ピンク・オレンジ)」の割合を見ると、83.6%(週4日以上)、78.7%(週2~3日)、100.0%(~週1日)、94.1%(フルリモート)であり、出社頻度の高い人ほどやや多い傾向が見られた。

この背景には、企業内研修など、会社が主体となって提供する学習機会に出社頻度の高い人が参加しやすい可能性が考えられる。

ただし、どの層においても大半が200時間未満であることから、働き方によってリスキリングにかけられる時間に大きな差があるわけではないと言える。

リスキリング方法は働き方に関わらず書籍・専門誌が主流

リスキリングの方法について尋ねたところ、働き方に関わらず「書籍や専門誌」が最も多く、次いで「無料のウェブサイトやYoutube」が人気を集める結果となった。このことから、手軽に入手できる情報源を活用した学習が一般的であると言える。

ただし、出社頻度の高い層では、対面での学習方法をやや選びやすい傾向も見られた。これは、職場での情報交換や同僚との学習などが影響している可能性が考えられる。

得られたスキルは働き方によって傾向が異なる

リスキリングを通して得られたスキルの種類を見ると、出社中心の人では会計・金融スキルを習得した割合がリモート中心の人よりも高く、一方、リモート中心の人では語学スキルを習得した割合が高いという興味深い結果が得られた。

この背景には、それぞれの働き方や職種において求められるスキル、あるいは学習しやすい環境の違いなどが影響している可能性が考えられる。

課題と展望

本調査の結果、リスキリングへの関心や経験の有無、費用については働き方による大きな差異は見られなかった。しかし、リスキリングに費やす時間においては、出社頻度の高い層がやや多い傾向が見られた。

一方で、学習時間の確保は、通勤時間の有無や業務の柔軟性といった働き方特有の要因によって異なる課題が生じていることが明らかになった。また、リスキリングにかかる費用については、働き方に関わらず自己負担が多く、会社からの費用補助の不足が共通の課題として浮かび上がった。

今後の展望として、企業は多様な働き方に対応した柔軟な学習機会を提供する必要があるだろう。具体的には、オンライン学習コンテンツの充実や、時間や場所に制約されない学習プログラムの導入などが考えられる。また、経済的な負担を軽減するための費用補助制度の拡充も不可欠である。

リスキリングを個人の成長と企業の競争力強化に繋げるためには、働き方の多様性を考慮した上で、より効果的な学習環境の整備と支援策の提供が求められる。本調査の結果が、各企業が今後のリスキリング戦略を検討する上で一助となることを期待する。

調査結果の引用・転載について

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